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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3795話 様々な力編 ――戦闘回避――

 過去世の力が使えないため、その代替としてソラが契約者となるべく訪れる事になっていた風の聖域。挑む前から何処かの世界で起きた異変による通行止めというトラブルに見舞われながらもなんとかたどり着いた聖域の攻略を開始する。

 そうこうして大穴エリアを攻略して次のエリアへと足を伸ばした一同を出迎えたのは、広大な草原エリアであった。そこに横たわる鋼の巨人を警戒しながら鋼の巨人がもたれ掛かる小山の周辺を探索したソラ達であったが、ぐるりと一周した所で現れたのは鋼の巨人よりも更に巨大な漆黒の巨人であった。

 そうして空中戦になりながらも漆黒の巨人を鋼の巨人を駆ることでなんとか撃破したソラはその後、鋼の巨人を使って小山の中に封じられていた石室を発見。これを掘り出して、なんとか次のエリアへとたどり着いていた。


「……あれ?」

「どうしました?」

「いや……」


 少し先を覗いてみるだけ。そう思って先を覗き込んだソラだが、そんな彼は少しの訝しみを浮かべていた。というわけで空也の問いかけに顔を顰めていたソラだが、そんな彼がおもむろに扉を更に押し開く。


「あ、ソラ!」

「ああ、多分大丈夫」


 おもむろに扉を開いたソラに、トリンが思わず声を荒げる。そうして更に扉が押し開かれて、その次のエリアとそしてここが大丈夫と言われた理由が明らかになった。


「……ほらな」

「……ああ、なるほど」

「多分ここで終わりってわけなんだろ。このルートは」


 まぁ、ここまでにすでにいくつも面倒なエリアを突破したのだ。そしてルートがいくつかあったことを考えると、一つ一つが長くなっていることはないのだろう。ソラはトリンの納得に笑いながら、全員へと中が見える様に一歩進んで先のエリアへと進む。


「真ん中に宝玉が一つ……最初から出てないなら、シルフィちゃんが中ボスをここに置くとは思えない」

『え? なんで?』

「へ?」


 ぎょっとした様子で口を挟んだシルフィードに、ソラが思わず目を丸くする。聞かれていると思っていなかったらしい。まぁ、聖域の中なので聞かれていないと思う方がおかしいわけだが。とまぁ、それはさておいてもシルフィードの問いかけに、ソラは聞かれていたかと恥ずかしげに答えた。


「いや……だってシルフィちゃんだったら中ボスを三体も置くとは思えなかったし……何よりカイトが文句言いそうだし。計三体だろ? 全部に置いてたら。多分二体目ぐらいでカイトが文句言い出しそうだから」

『……』

「……え?」

『あはは。そうだね。流石に三つともはくどいからね。だからここには何も置いてないよ。カイトがくどいって言うもんね』

「……あれ?」


 なんか妙な間があったというか、その間は自身の指摘に確かにと思ったというか。ソラは妙に変な間を生じさせたシルフィードに何かやってしまったかも、と思ったらしい。そしてそんな彼女の様子に、トリンが肘で突っ突きながら小声で口を開いた。


「……ソラ」

「……ごめん」


 おそらく本当は宝玉を取った瞬間に出てくる仕掛けになっていたのだろうし、それも考慮に置いてその後に続けようと思ってはいた。だが、それを機先を制する形で前のめりにシルフィードが口を挟んでしまったので、言うに言えなかったのだ。一概には彼が悪いわけではなかっただろう。とはいえ、そんな彼にシルフィードが笑った。


『あははは。良いよ良いよ。確かに君の言う通り、全部はやめておくよ。若干ズルみたいな所はなくはないけど……ぶっちゃけて言うと今回の君達に作った試練もいつもよりかなり長いし』

「そうなの!?」

『うん。そもそもこんな大人数の試練なんてめったに無いからね。だから少し長くはしていたんだけど……』


 そもそもカイトが当初連れてきたのはソラと次の試練の練習になれば、と瞬の二人だけだ。なので三人で攻略する予定だったし、かつて三百年前の俗に言う勇者カイト一行でさえ実際の攻略メンバーはおそらく今と同じく助言役や監督役としてカイトとして、ルクス、ウィルことウィスタリアス、バランタインの三人に、入れられてユリィだけだろう。

 その倍以上の人数で挑んでいることが珍しいのは別におかしいことではないだろう。というわけで色々と気合を入れて作ったらしいが、その結果というわけであった。


『これは僕の不手際で良いかな。確かにそれで中ボスまで含め十体もボスを配置するのは少しやり過ぎた。気合が入りすぎちゃってたね。ごめん』

「「「……」」」


 全部で十体。中ボスまで含めて、ということは最後の一体としておそらく試練の最後に大トリとなるラスボスがいるということなのだろうが、流石にあまりに多すぎるだろう。というわけで今更明かされた本来の想定のボス数に、ソラがおずおずと問いかける。


「……えっと、ちなみに。当初の想定では?」

『えっと……各通路に一体ずつに、中ボスがもう一体。更に中央にラスボスと、中ボスが一体』

「「「……」」」


 シルフィードの反応から今までお前はなんてことを、という様子でソラを見ていたその他一同とそんな視線に針の筵だったソラだが、明かされた当初の予定に思わず全員が逆によくやったという視線を向けることになっていた。


『あはははは。まぁ、流石にそれはやめておくよ。流石にちょっとやり過ぎた。うん。中ボスは少し練り直しかな。僕もカイトに怒られたくないし』

『……もうおせぇよ』

『え?』

『だーらあれほど加減は考えろ、っつってんだろ! まさかと思って聞いてりゃ!』

『ご、ごめんなさーい!』


 どうやらこの会話はカイトにも聞かれていたようだ。そして今更言うまでもないのだが、そもそも瞬達は一日早くこの石室を見つけ出している。そうであるのなら今日はすでに中ボスに取り掛かっていることだろう。というわけでこの様子だとまさか、と勘ぐったカイトが監視していたというわけであった。


『はぁ……ちょっとシルフィ。お前オレの精神世界まで来い。ちょっちお前がどういう試練を作ったか先に聞かせろ。今まではお前の試練だからオレが口を挟むのも、と思って詳しくは聞かんかったが……やっぱり聞いとく』

『はい……』


 良いのだろうか、大精霊の試練がこんな簡単に変わって。ソラはそう思うが、そもそもソラがここに来ることが出来ているのだってカイトのおかげの部分は大いにある。というわけでシルフィードも好き勝手に試練を作れるわけだが、同時にだからこそやりすぎていたし、カイトも何度も掣肘と牽制をしていたのだ。だが結局、というところなのであった。


『はぁ……わかってると思うんだが、こいつらはルクスとかウィルとかおっさんとかの大戦の英雄じゃねぇんだぞ。アルやリィルでさえ当時のあいつらにも遠く及んでない。ああ、あとそれと。雪輝とサラ。アルとリィルの試練もついでに聞かせろ』

「はい!?」


 いきなり何故か自分にも話が飛んできた。リィルが思わずびくっと身体を震わせる。これに、カイトがうっかりといった様子を見せる。


『え? あ、悪い。切れてなかったか。何年先かまでは決めてないが、お前らも試練を受けろ。ちょっとソラ達だけ契約者ってのはバランスが悪い』

「は、ははははいぃ!?」


 常に冷静沈着という様子のリィルから聞いたことのない声を聞いた。驚きおののいた様子のリィルにソラが目を白黒させる。そうしてさも平然とした様子のカイトに、リィルが大いに慌てふためいて首を振る。


「い、いえいえいえいえいえ!? 契約者なぞ恐れ多い!」

『ああ、気にしないで良いよ。量産計画はしてないけど、これが必要だとは僕らも認めている。何よりこの案件にはちょっと僕らも注意したいから、受ける資格と必要性は僕らも認めているよ』

「……」


 そんな簡単な。リィルはシルフィードの言葉に思わず言葉を失う。この時、リィルは改めてカイトが伝説の勇者カイトであり、勇者の代名詞にして自身の主君でもあることを改めて認識したとかなんとか。とまぁ、それはさておいて。一方のカイトはため息を吐いていた。


『まぁ、なんっていうか。ソラと先輩は良いんだが、そうなるとエネフィア側が足りなくなる。それで二人……浬達は除外するとして、そっちはどうするかって塩梅だが』

『あとの問題は土と水、光、闇の四つかな』

『それと向こうもどうにかせにゃならんし、オレが帰る以上箔付けも必要って考えるとセレス……いや、あいつに契約者はちょいと面倒すぎるな。ってなると』

「あの……カイトさん? あの、一体何をお考えなんっすかね?」


 絶対この男は自分に語った以上先を見据えている。ソラは何やらを計画している様子のカイトとシルフィードの二人におずおずと問いかける。


『色々だな。まぁ、アルとリィルに関しちゃお前に話した監視機構の構想にも関わる。考えても見ろ。地球側は契約者が見張るんだ。その威光が強い以上、エネフィア側もバランスを取るために契約者が必要だろう。かといってアイナがやるわけにもいかんし、ヴァルタードの帝王陛下にお願いするってのも無理だ』

「あ……確かに……」


 カイトの話を聞いて、確かにそれを考えるとエネフィア側の契約者というものが必要だろうというカイトの指摘にソラも納得する。だがこれに納得出来ないのはリィルだ。いや、納得出来ないというより恐れ多すぎて、という所だろう。


「い、いえですがそれで私とアルというのはいくらなんでも恐れ多いと言いますか……」

『しゃーないだろ。お前らしか現状候補者いないんだし。バーンタインは資格ありだが、あいつは<<暁>>でバルフレア引退後のユニオンの監督してもらわにゃならんしなぁ……さりとて属性被りはあんま、だし』

「「「……」」」


 どうしたものか。そんな様子を見せるカイトに、一同はただただやはり為政者とは大変なのだろうと思うばかりだ。というわけでこんな所でそんな悩みを聞かされても困るだけ、とソラは大慌てで口を挟むことにする。


「あ、あのー……カイトさん。そろそろ俺らも戻りたいんっす。ご相談はそちらでお願い出来ますでしょうか……」

『え? ああ、すまんすまん。まぁ、ここらの話は追々お前らにも共有はする。何より将来的な話だし、天城のおじさんにも相談した上で色々と計画したい所でもあるしな』

「お、おう……」


 それならそれでやってくれ。ソラはカイトの謝罪を受け入れ、切れた念話に安堵した。


「はぁ……あの、リィルさん」

「……はい」

「大変っすね、あいつの部下って」

「……貴方も何時かそうなるので覚悟なさい」

「……あぁあああああ!」


 マジでそうだった。ソラはどこか他人事のように考えていたらしいが、リィルのどこか恨みがましい目で思い出して思わず絶叫する。


「あはは……ま、ソラ。もともと君が始めた話なんだから。とりあえず取って戻ろう。幸い君のおかげで、ここでの戦闘は避けられたんだからね」

「……はい」


 これに巻き込まれるのか。ソラは自分で決めたこととはいえ、流石にこんな無茶振りを受けねばならないと理解して少しだけ憂鬱だった。が、トリンの言葉でなんとか気を取り直して、部屋の中央にあった宝玉を回収。少しだけ重い足を引きずりながら、拠点へと戻ることにするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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