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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3793話 様々な力編 ――鋼の巨人:交戦――

 過去世の力が使えないため、その代替としてソラが契約者となるべく訪れる事になっていた風の聖域。挑む前から何処かの世界で起きた異変による通行止めというトラブルに見舞われながらもなんとかたどり着いた聖域の攻略を開始する。

 そうして大穴エリアを攻略して次のエリアへと足を伸ばした一同を出迎えたのは、広大な草原エリアであった。そこに横たわる鋼の巨人を警戒しながら鋼の巨人がもたれ掛かる小山の周辺を探索したソラ達であったが、ぐるりと一周した所で現れたのは鋼の巨人よりも更に巨大な漆黒の巨人であった。

 というわけで漆黒の巨人の妨害を受けながらも鋼の巨人の調査を繰り返していたソラ達だったが、調査の結果なんとか鋼の巨人の起動に成功。鋼の巨人を駆って、出現した漆黒の巨人と戦うことになる。


「ふぅ……」


 だんだんだんっ。駆けるような形でこちらへと迫りくるこれまた別の漆黒の巨人に、ソラはこちらから向かうことはせず意識を集中させる。せっかくトリン達から距離を離したのだし、向こうから来てくれるというのだ。動くだけで魔力を消費するというのにわざわざ魔力を使いたくはなかった。というわけで彼は待ち構えつつも、右腕を上げる。


「腕部魔導砲起動」

『腕部魔導砲起動』


 ソラの指示に合わせる形で、<<地母儀典(キュベレイ)>>が腕部に取り付けられた魔導砲を起動させる。そうして起動した魔導砲を使って、こちらへ迫りくる漆黒の巨人を狙い撃つ。


「……だめか」

『牽制にはなっているでしょう。これで殴り込みは無理でしょうね』


 腕部に取り付けられた魔導砲は所謂軽機関銃の様に速射出来るタイプのものだったらしい。小型の魔弾を何十何百とばらまいて、漆黒の巨人を打ち据える。

 だがやはり速射ということは小型かつ低威力なのだろう。漆黒の巨人は両手を前で交差して、まるで防御しているかのような姿勢を取っていた。そんな光景を見ながら、ソラは脚部のスラスター、背部バックパックの飛翔機を起動させる。


「……このまま距離を保つ」

『了解。肩部の魔導砲も準備しておくわね』

「頼む」


 漆黒の巨人は飛ぶ力もなければ、遠距離攻撃が出来る力もない。ただ殴る、蹴るの二つだけだ。ならば距離を取って射掛けるのが常道。ソラはそう判断し、地面を滑走するかのような形で距離を取りながら戦うことにしたのだ。

 というわけで踏みつけていた最初に出てきた漆黒の巨人から飛び退いて、彼は滑空する様に緩やかに下降しながら地面すれすれまで降下。そこからは滑るような形で後ろに移動し腕部の魔導砲で牽制しながら、肩部の魔導砲の照準を合わせる。


「ふぅ……こいつは、どうだ!」


 先ほどの漆黒の巨人は無防備に受けて半壊だ。現状防御の姿勢を取っていると言っても、ダメージは与えられるはず。ソラはそう考えて、肩部の魔導砲を発射する。そうして放たれた二つの巨大な魔弾は小型の魔弾の速射を受け防御の姿勢を取る漆黒の巨人へと肉薄し、一息に巨人を飲み込んだ。


『腰部魔導砲起動』

「おうよ」


 おそらくこれで仕留めきることは出来ないだろう。ソラはそう考えていたし、<<地母儀典(キュベレイ)>>もそう考えていたようだ。だが必ず効果はあったはずで、防御を崩す程度は出来たはず。<<地母儀典(キュベレイ)>>はそう考え、ソラへと間髪入れず腰部の貫通式の魔導砲を叩き込むことを提案したのである。そうして閃光が収まり爆炎が晴れた瞬間、現れた漆黒の影へとソラは間髪入れずに貫通式の魔導砲を叩き込む。


「おらよ!」


 貫通式の魔導砲は速度はそこそこだったが、この状況ならば避けることは出来ないはず。ソラはそう考え、意識はすでに次の個体へと向いていた。これまでのことを考えれば、いつ次が来ても不思議はない。

 そしていくら冒険部の中でも有数の魔力量を誇るソラでも、この鋼の巨人を長時間操ることは出来ない。出来て数十分。このあとも考えるのなら、十数分程度に留めておくべきだろう。だがそうだからこそ、油断があったと言っても良かった。


『お坊ちゃん!?』

「お坊ちゃんはやめろって! なに!?」


 貫通式の魔弾が閃光と爆炎を斬り裂いた先に現れた漆黒の巨人の姿を見て、視線を外してしまっていたソラが思わず仰天する。そしてソラが驚き、一瞬の停滞を生じさせた瞬間。漆黒の巨人に生えた巨大な翼が開いて、その姿を露わにする。


「つ、翼なんて生えんのかよ! っ」

『まぁ、飛べるでしょうね!』


 漆黒の巨人がばさっと羽ばたいた瞬間、周囲の草花が大きく揺れる。そしてそれを反動として、漆黒の巨人が宙へと舞い上がる。


「こっちも飛ぶぞ!」

『了解!』


 流石に空中から一方的に殴られるのだけは勘弁。そんな考えで地面を踏みしめたソラだが、そうして地面を踏みしめた所に漆黒の巨人の翼がはためいた。


「っ!」

『来るわ!』

「みたいだな! 盾! それからシールド展開! 後ろに飛ぶ!」


 漆黒の巨人の翼がはためいて、まるで羽が舞い落ちるかの様に。もしくは鱗が剥がれ落ちる様に落ちた小さな破片が、ソラを目掛けて殺到する。それにソラは前に飛ぼうとしていた動きを変更して、後ろへと跳躍。飛翔機を全開にして急速に距離を取る。と、そんな逃げの一手を許してくれるほど試練は甘くなかったようだ。


『お坊ちゃん!』

「だからやめてくれって!」

『今言い方考えてる暇はないのよ! 次が来るわ! しかも複数!』

「っ」


 <<地母儀典(キュベレイ)>>の言葉と同時にモニターの映像の一部が拡大され、どしんどしんどしん、と走る二体の漆黒の巨人が映し出される。

 だが幸いなことに、この二体の巨人はソラの駆る鋼の巨人が標的のようだ。トリン達地上で戦う面々はスルーして、彼の方向を目指していた。というわけで一瞬だけ考えた後、ソラは結論を下す。


「……先にこいつを片付ける。同時に三体も戦えない」

『了解』


 それが良い。<<地母儀典(キュベレイ)>>はソラの発言に同意する。三体同時に相手を出来るか、と言われればソラも<<地母儀典(キュベレイ)>>も厳しいと言わざるを得ない。

 あの地上の二体が飛べるかどうかはわからないが、律儀に地上を走っていることを考えれば飛べないのだろうと考えられる。何故この二体目だけ飛べるかはわからないが、それならそれで二体目を空中で優先的に片付け、同時に戦う数を減らすだけだった。というわけで、ソラは今は戦わなくて良い三体目と四体目を意識から外す。


「ふぅ……」

『……あら……』

「どうした?」

『だめね、これ。そういうこと』

「……は?」


 どこか苦笑にも似た雰囲気が漂った<<地母儀典(キュベレイ)>>が、再びソラへとモニターの映像の一部を拡大する。そうして見えた光景に、ソラは思わず目を見開くことになる。


『融合……しているようね。そしておそらく……』

「そんなのありかよ!?」


 そしておそらく。その言葉に続くことは、聞かずともソラにも直感的に理解出来た。そして案の定、三体目と四体目が一体化。四体目の身体が大きく崩れ、今二体目の背に生えている翼と同じ、漆黒の巨人を包み込めるほどに巨大な翼が出現する。


『っ! お坊ちゃん! 来るわよ!』

「っ!」


 三体目と四体目に起きた変化に呆気に取られている間に、二体目はソラへと肉薄していた。今の光景から察するに、一体目は完全には倒せておらずあの閃光の中で二体目が一体目を吸収融合。この形へと変貌を遂げたということなのだろう。そうして轟音が鳴り響いて、ソラの駆る鋼の巨人が大きく吹き飛ばされる。


「ぐぅっ! ちぃ!」


 吹き飛ばされながらも、ソラは肩部の魔導砲を起動。当たるも八卦当たらぬも八卦の気持ちで発射する。このまま追撃を仕掛けられることだけは御免被りたかった。


『ソラ!』

「ちっ!」


 どうやら<<地母儀典(キュベレイ)>>も茶化していられる余裕はなくなったらしい。思わず名前で読んでいたが、そんな彼女のサポートにソラは三体目と四体目が急浮上していることを理解する。


「腕部起動!」

『了解!』


 とりあえずこのまま連携を受けるわけにはいかない。ソラは腕部の魔導砲を起動して、速射砲を発射。少しでも勢いを弱めようと試みる。そしていくら二体が融合したからとて、色々と強化されているわけではなかったらしい。放たれる速射砲に漆黒の巨人は勢いを緩める。


「はぁ……」


 距離を取って、ソラは一呼吸入れる。二体目の漆黒の巨人はどうやら放った肩部の魔導砲の爆炎に煽られ、こちらも動きを一瞬だが止めていた。追撃は防げていたようだ。そうして、ソラは二体になった漆黒の巨人との空中戦を開始することになるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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