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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3790話 様々な力編 ――起動:起動――

 過去世の力が使えないため、その代替としてソラが契約者となるべく訪れる事になっていた風の聖域。挑む前から何処かの世界で起きた異変による通行止めというトラブルに見舞われながらもなんとかたどり着いた聖域の攻略を開始する。

 そうして大穴エリアを攻略して次のエリアへと足を伸ばした一同を出迎えたのは、広大な草原エリアであった。そこに横たわる鋼の巨人を警戒しながら鋼の巨人がもたれ掛かる小山の周辺を探索したソラ達であったが、ぐるりと一周した所で現れたのは鋼の巨人よりも更に巨大な漆黒の巨人であった。

 というわけでふとしたことから調査を重ねてなんとか鋼の巨人の中に入れことがわかったわけなのだが、そこでソラは鋼の巨人の中に入っていた。


『ソラ。聞こえてる? 中はどう?』

「聞こえてるよ……中は……結構薄暗い。外の方はどうだ?」

『こっちは君が入ったとほぼ同時に各所が淡く光ったよ。多分中に入ることそのものがスイッチの役割を持っていたんだろうね』

「そっか……はぁ」

『どうしたの?』


 これで攻略まで一歩進んだ。そう思い喜色を浮かべたトリンだが、一方のソラの大きなため息に首を傾げる。


「いや、結局こんな簡単な話か、って話でさ」

『あぁ、なるほど……』


 今まで触れてみたりはしていたが、押し入ろうとするようなことはしていない。もちろん叩いたりもしていなかった。というよりあんな下手な行動は本来は避けるべきで、ソラの恥ずかし紛れの行動という偶然がなければまだまだ時間が掛かった可能性は高かった。というわけで自身の恥ずかしげな発言にトリンは笑い、ソラもまた笑った。


「ま、言っちまえばコロンブスの卵だってのはわかるけどさ」

『なにそれ?』

「コロンブスって冒険家が昔いたんだけど、そいつが成した成果に対して別の冒険家がそんなの誰でも出来るって言ったんだ。それに対して卵を立たせるにはどうすれば、と問いかけた時の話」

『卵を立たせる? まぁ、出来なくはないだろうけど……難しくないかな? 魔術なしだよね?』

「そりゃな。それでそいつも他の連中も卵を立たせるなんて無理だろう、って言うんだけどさ。コロンブスってヤツはテーブルに卵を叩きつけて平らにして立たせたんだよ」

『それ卑怯じゃない? いや、まぁ立たせてるけどさ』

「でもお前も難しくない? って言っただろ? 答えを言われりゃ簡単だって誰でも言えるけど、最初にそれを考え付くってのは難しいって例え話だよ」


 それと一緒だな。こんな簡単なことに何故気付かなかったんだ、と言われればあのクリスタルみたいなものがそのまま入れると考えていなかったからだ。なのでソラはわかってしまえば何故気付かなかったんだろう、と思うしかない現状に対して自身にそう言い聞かせることにしたようだ。そしてそんな彼の心情をトリンも理解し、そして現状にも理解を示した。


『なるほどね……確かに答えを言われれば誰もが簡単だ、とは言える。でもそれを最初に考えた人が難しいのは当たり前の話だ』

「そういうこと……良し。調整完了だ」


 ソラもなんの意味もなく話していたのではなかった。先ほど彼も言っているが周囲は薄暗く、下手に動くべきではないと考えていたのだ。そしてここが何なのかわからない。魔術を使って良いかも不明だ。

 カイトとティナが開発した特殊な視力を強化する魔術で周囲を見える様にしていたのである。ただこの魔術は暗視ゴーグルの様に周囲の光を増幅させることにより暗闇でも見える様にする、というものなので段階的に明るくしていく必要があったのだ。


『どう?』

「……なんだろ。説明むずかしい。なんってか……魔導機のコクピットとかには似てる。足場が平らで、周囲は何かモニターに似た様子……コンソールは……」


 ティナが拵えた魔導機や半魔導機はモーションセンサーの技術を応用して操縦者の動きをトレースする形になっている。なので現行の大型魔導鎧のような身体に装着させるセンサーのような物はないのだが、ソラが今居る場所はそれに似ていたらしい。

 だがセンサー類が無いだけでコンソールが一切無いわけではなく、そういった類の物がないだろうかと思ったのである。何よりせめて出口ぐらいなければ戻ることも出来ないのだ。せめてスイッチの一つぐらいは見付けねばならなかった。そうして周囲を見回すこと少し。ちょうどティナの魔導機のコンソールと同じような位置に、縦長の細長い円筒があった。


「あった。コンソールみたいなもの発見」

『良し……こっちも距離は十分に取っている。起動しても大丈夫だよ』

「おし」


 トリンの返答に、ソラは円筒の周囲を確認する。すると円筒の上部が蓋の様になっていたことに気が付いた。


「蓋だ……開いた。スイッチを確認。押してみる」

『了解』

「ふぅ……っ」


 やはりどうなるかわからないのだ。ソラは少しの緊張を滲ませつつ、目に展開していた魔術をカット。明るくなった場合に備えつつ、意を決してスイッチを押し込んでみる。すると途端、周囲が明るくなった。


「起動した……ああ、やっぱ周囲がモニターっぽいってイメージは合ってたらしい。外の状況が確認出来る」

『そっか……どう? 何か動かせそう?』

「わかんね……このスイッチ以外今のところ何もない……かな」


 周囲のモニターが起動したことで中の状態ははっきりと確認出来る様になっていた。そうして見えたのはやはり見たままの状態だ。


「……だめだな。何か動かせそうなもんはない。そっちは?」

『中央のクリスタルが緑色に輝いたぐらいかな。こっちも動いている様子はない』

「はぁ……今度はこっからか。で、それそれとして俺はどうやってこっから出れば良いんやら」


 明るくなれば何かわかるかも、と思っていたソラだが、相変わらず出口のようなものはない。入ったが最後ということにはならないだろうから、ここで何かが出来るはずだった。


『さっきのコンソールは?』

「……スイッチ以外は今のところ……あ、待った。スイッチの場所の少し下の所が若干凹んでる……ここにもスイッチがいくつか……レバーもあるな」


 おそらくこれが鋼の巨人を動かすための鍵なのだろうな。ソラは直感的にそう考える。そうして指で触れていた彼だが、更に屈んでみてスイッチやレバーの近くに文字が掘られていることに気が付いた。


「文字がある……英語? Exit……出口? ONOFF……なるほど。出るのはこのボタン、この鋼の巨人を動かすならこれ、ってわけか」

『よし……なら起動してみて』

「おう」


 先ほど言われているが、すでにいつ動き出しても良い様にトリン達は鋼の巨人から離れている。というわけでソラは出口のスイッチも見付かったことで、鋼の巨人そのものの起動レバーを入れてみる。すると途端、彼の身体が浮かびあがった。


「うぉあぁ!? 何だ!?」

『どうしたの!?』

「い、いや……悪い。身体が急に浮かんだからびっくりしただけだ……うっと……えっと……あれ……」


 まるで座るような姿勢にされていたソラだが、彼は飛空術を使って姿勢を制御しようと試みる。だがその試みは上手くいかなかったようで、しばらく彼が悪戦苦闘する声が響くだけだ。と、そうして悪戦苦闘する中で、彼が手を動かした瞬間。それに合わせたかの様に、少し離れた所で大きな音が響き渡った。


「なんだ!?」

『ソラ! 多分その巨人、君の動きに合わせて動いてる! 君が腕を動かしたと思われるタイミングで腕が動いた!』

「マジか……ってことは……」


 おそらく魔導機やらと同じようなものなのだろう。ソラはそれならばと飛空術を使わず、鋼の巨人がしている様に自分が小山に腰掛けている形をイメージ。足に力を入れて、起き上がってみる。


「……おぉ、立てた。モニターも……高くなった。多分立ててると思うんだけど、どうだ?」

『うん。立ててる……っ』

「どうした?」

『多分、来るよ。あと、起動をトリガーにしているみたいだ』

「……」


 トリンの報告に、ソラは意識を集中させる。すると彼の耳にも地響きにも似た小さな音が聞こえてきており、漆黒の巨人が近付いてきていることが察せられた。


「……」


 漆黒の巨人が来ている方を向いて、ソラは更にそちらに意識を集中。するとそれを感じ取ったかの様にモニターの一部が拡大され、外の映像がピックアップされる。


「見えた。守護者もどきが……まぁ、わんさか。更に黒い巨人も一体」

『やれそう? 守護者もどきは僕らで受け持つしかないだろうけど』

「やるしかないんだろ、多分。魔力は常に食ってるから、あんまり時間は掛けらんないだろうけど」

『わかった。無理はしないでね』


 ソラの返答にトリンが一つ激励を告げる。そうして彼らが戦闘準備を整えるべく支度に入った一方で、ソラはソラでトリンらではどうしようもない漆黒の巨人と相対するべく呼吸を整える。


「ふぅ……」


 魔導機にも似た巨人を操った経験はソラにはあまりないが、操ったことがないわけではない。だからこそ、彼は自分ひとりでこの鋼の巨人を操ることが出来るとは毛ほども思っていなかった。故に彼は気を引き締めると同時に、口を開いた。


「<<地母儀典(キュベレイ)>>」

『あら……私?』

「ああ……多分こいつはお前の方が適しているような気がする。補佐してくれ」


 自身の声に応ずる<<地母儀典(キュベレイ)>>に、ソラは補佐を願い出る。そしてそれは正解だったらしい。<<地母儀典(キュベレイ)>>が応じた。


『わかったわ。じゃあ、未熟なお坊ちゃんのために人肌脱いであげましょう』

「おう!」


 <<地母儀典(キュベレイ)>>に助力を願い出たのは、カイトが持つ二冊の魔導書達の操る『神』のイメージが根底にあったからだ。ならば<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>よりも<<地母儀典(キュベレイ)>>だろうと考えたのである。というわけで、ソラはある意味初めて<<地母儀典(キュベレイ)>>の声と共に戦いに臨むことになるのだった。

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