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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3788話 様々な力編 ――起動:助言――

 過去世の力が使えないため、その代替としてソラが契約者となるべく訪れる事になっていた風の聖域。挑む前から何処かの世界で起きた異変による通行止めというトラブルに見舞われながらもなんとかたどり着いた聖域の攻略を開始する。

 そうして大穴エリアを攻略して次のエリアへと足を伸ばした一同を出迎えたのは、広大な草原エリアであった。そこに横たわる鋼の巨人を警戒しながら鋼の巨人がもたれ掛かる小山の周辺を探索したソラ達であったが、ぐるりと一周した所で現れたのは鋼の巨人よりも更に巨大な漆黒の巨人であった。

 流石にそのままでは戦えないと判断したソラは一時撤退を選択して再度の探索を開始するも、次は複数体の漆黒の巨人が出現した事によりついに完全撤退を決定。最初の拠点に戻り瞬と相談を重ねていたわけだが、そこに瞬と共に行動していた海瑠が鋼の巨人に関する疑問を提示。

 今度は鋼の巨人を目覚めさせるべく行動を開始する事になる。だがそれも全員で魔力を注ぎ込んでも失敗した事により、起動の失敗が魔力の不足によるものではないと判断。改めて周辺や鋼の巨人の調査を行っていた。


「だー! だーめだ! なーんにも見付かんねぇ!」

「うーん……ここまで見つからないとなると、流石にちょっとこれは不正解かも、と思うね……」

「だー……」


 自身の苛立ちの滲んだ絶叫にも似た言葉にこちらも少し顔を顰めるトリンに、ソラはがっくりと肩を落として膝を屈する。漆黒の巨人に邪魔されながらもあの後、まる一日ほどの時間を掛けて草原の逆側や鋼の巨人、小山の逆側などを徹底的に調べたのだが、結論から言ってしまえば全く何も見つからなかった。

 ほぼ一日。昨日も同じ様に調査をしていた事を考えれば、まる二日完全な徒労に終わっているようなものだ。それはこうもなろう。とはいえ、成果がなかったわけではない。なのでトリンは慰める様にわかった事を告げる。


「でもまぁ、一応これで鋼の巨人か漆黒の巨人がこのエリアの攻略の鍵である事はわかった。それは良かったんじゃないかな」

「まぁ……そうなんだけどさ。これだけ探し回って何もなけりゃ、あいつらのどっちかの起動が鍵ってのは間違いないだろ」


 小山の逆側の草原を二時間。小山の裏側の草原を二時間。小山と鋼の巨人の調査に二時間。それだけ掛けた成果がこれだけか。ソラは結局としてなにもないから、という消去法的な結論にやはり不満げだ。


「あはは……まぁ、試練だからこういうものなんじゃないかな」

「かもなぁ……ってか、今更だけどカイト、よくこんなの一人で攻略してたな……いや、一人じゃなかったんだろうけど」


 こうやって愚痴を言える相手に、わからない時は一緒に考えときに助言が貰える相手が居るからこそ挫けないで済んでいるが、カイトが契約者となった際は大半ユリィとの二人旅だ。

 そして言うまでもなく当時のユリィが攻略方法を相談出来るような相手かと問われるとそんなわけがない。今更ながら冒険者時代のカイトの冒険心に敬服していた。


「うーん……確かにね。でもそうか。攻略できない試練にはならないはずだから、行けるはず、なんだと思うんだけど」

「そうだよなぁ……はぁ。一体全体どうしろってんだ」


 草原には何もなかった事もあり、鋼の巨人も再度確認した様子をソラは思い出す。


「一応胸が開いた以外にも身体の細かい部分が開いてはいたんだよな」

「うん。肩の部分とか、脚の部分とか……中にスラスターみたいなのも見付かってるから、間違いなく戦う想定にはなっていると思う」

「後の問題は敵か味方かって所だけど」

「これで敵だったら最悪だけどね」

「マジでな」


 ここまでやって結論敵でした、となるともう笑えもしない。ソラは笑いながらトリンの言葉に応ずる。というわけで話しながら次に向けての施策を考えながら戻るわけだが、そうして戻った拠点ではすでにカイト達が戻ってきていた。


「お……今日はえらく遅かったな。大丈夫か?」

「先輩……まぁ、肉体的には大丈夫っす」

「肉体的には、か」


 確かに見た所怪我も負ってないし、魔力はかなり減っているが戦えないわけではないだろう。手持ち無沙汰だったのか槍で軽い型稽古のような物をしていた瞬は、ソラ達の様子を見ながらそう判断する。

 というわけで全員拠点に戻った事もあり休養や怪我の治療を行うべく散っていく一方で、ソラは瞬の近くに腰掛け今日の事を問いかける。


「そっちは早かったんっすか?」

「まぁ、昨日ぐらいという所か。流石に無理も出来ないからな」

「まぁ……あんな漆黒のデカいヤツ相手ですからねぇ」

「あははは。ああ……あれはな。流石に相手をするのは厳しい」


 ふっ、ふっ、ふっ。瞬は型稽古を繰り返しながらも、ソラの言葉に笑って同意する。まぁ、そもそもカイトの支援がありながらも一体と戦っても勝てないとなったのだ。だがそれでも逃げる時に戦わねばならない事もあるわけで、無理が出来ないのは当然の事であった。


「まぁ、ヤツは良いか。流石にあんなのを頻繁に相手にする事もないだろう」

「それ、最悪っすね」

「ははは……そっちはどうだ?」

「こっちはなーんも。今日一日起動させてみて調査してみて、それでもなーんも見つからなかったっす」

「ああ、なるほど……あれは確かにな」


 この様子だとどうやらその更に一歩先は届かなかったか。ソラの口ぶりに、瞬はカイトの言う通りだったと笑う。そんな様子に、ソラが僅かに目を見開いた。


「え? そっちわかったんっすか?」

「ああ。あれは確かに普通は気付けないな……まぁ、気付く要素はあったらしいが。えっと、なんだったか。もし聞かれてもソラ達の試練なんだから答えは言うなよ、と言われているんだが」

「ぐぅ……」


 やっぱりカイトは色々なパターンを想定して言い含めているか。完全にカイトの手のひらの上で踊っている自分を理解して、ソラはがっくりと肩を落とす。


「扉は意外とその場から近い。その場にある物を使え……だったか」

「はい? え? あの巨人関係ないんっすか?」

「ん?」


 ソラの言葉に瞬の手が止まりきょとん、と首を傾げる。これにソラもまた首を傾げた。


「え?」

「いや、え? あの鋼の巨人、起動はさせたんだろう?」

「え? あ、え!? あの巨人起動させた後の話っすか!?」

「そこか! し、しまったな……」


 ソラが起動させてみて、と言っていた事からどうやら瞬はソラ達も鋼の巨人の起動までは成功しているのだと勘違いしていたらしい。そしてその先。起動させた後に扉を見つけ出す事が出来ず、時間切れで撤退したのだと考えてしまったようだ。

 実際、答えを知った瞬もなんのヒントもなく――実際にはヒントもあったらしいが――この扉を見つけ出すのは少し厳しいのではないかと思う所があり、カイトがもしもと言い含めていた範囲で教えようと考えたのであった。というわけで少ししまったというような顔で頬を掻く瞬は、少しして型稽古に戻ってソラに告げる。


「まぁ、起動そのものは難しい事はなかった。ただそうだな……多分そっちだとお前かリィルでないと無理だろう。後は……空也だったか。お前の弟は」

「っす」

「その三人ぐらいだろうな、動かせるのは。ただお前の弟は厳しいだろう。この場合、一番の最適解はお前なんだろうな」

「はぁ……」

「すまん。言えるのはこの程度だ。というかこれ以上言い過ぎるとカイトに怒られる。これ以上は聞かないでくれ」

「……うっす」


 そもそも先程の助言は鋼の巨人を起動させたならば与える様に、と言われていた助言だ。それを変に勘違いして先出ししてしまった以上、下手に情報を話せなかったのだろう。というわけでソラは期せずして手に入れた助言を考える事にして、自身もまた休養を取る事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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