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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3781話 様々な力編 ――次へ――

 過去世の力が使えないため、その代替としてソラが契約者となるべく訪れる事になっていた風の聖域。挑む前から何処かの世界で起きた異変による通行止めというトラブルに見舞われながらもなんとかたどり着いた聖域の攻略を開始する。

 そうして蛇を模した守護者もどきを最後は即興劇になりながらもソラ達はなんとか撃破に成功するも、流石に試練とあって無傷の討伐とはならず、ソラと空也は満身創痍。他も魔力を盛大に消費するという状況に陥っていた。というわけで一旦回復のために最初の簡易拠点まで戻ってきた一同は同じく戻っていた浬らと共に休息を取っていた。


「はい、これで大丈夫です」

「あいたたた……すんません」

「いえ……この程度の無茶で済んだのなら試練では御の字かと」


 爆撃の中を強引に突破して、その上で急降下する蛇を模した守護者もどきの総重量を受け止めて数秒だが食い止めていたのだ。ソラの全身に掛かっていた負荷はとてつもなく、普通であれば押し潰されても不思議はなかった。それこそ数十メートル級の巨人に踏み潰されたと同等のダメージは負っていた。


「それで、カイト様」

「はい、すんません」

「はぁ……もう少し楽な方法もあったはずです」

「いやぁ、あったはあったんだけどさー」


 リーシャの指摘に、カイトは恥ずかしげに笑う。まぁ、こんな状況になっていたのはカイトの責任が大きいと言えば大きい。ただ同時に彼がいなければあの状況で決めきれたか、と言われればまたこれも微妙だ。

 最初の作戦に失敗していた以上、ああしなければ再度撤退してやり直しをせねばならなかっただろう。なのでソラも即興劇になり無茶をさせられた事に文句はあれど、そうするしかなかったとも同時に理解していた。というわけで流石にこれでカイトが怒られるのも忍びない、とソラは口を挟んだ。


「まぁ、あれはしゃーなかったんかと。撤退になってたでしょうから」

「撤退で済むのなら撤退する方が正解です。無理して今みたいに医者の世話になる方が間違っています」

「うぐっ」


 藪蛇だった。ソラはリーシャの強めの言葉に言葉を詰まらせる。そうして二人して説教を受ける事になるのだが、その程度で済んだのだから御の字と二人共思っていた。というわけでこの日はこの後しっかりと休んで、次の日からの攻略に備える事になるのだった。




 さて明けて翌日。朝食を食べて再び攻略をとなるわけだが、朝起きたソラは朝稽古の最中にかなり調子が良い事に気が付いた。


「あれ……」

「どうした?」

「なんか結構調子が良いんっすよ。いや、別に調子が良い分には良い事なんで良いんっすけど」

「……お前もか」


 ソラの疑問に、瞬もまた僅かに驚いたような顔を浮かべる。昨日はあれだけの激闘を繰り広げたのだ。魔力はすっからかんとまではならずともかなり減っており、次の日は基本不調気味――といっても精神的に疲労感が抜けきらないという塩梅だが――になっている事は多かった。

 なので今日も朝からそうだろうとあくまでも調子を整える軽めの鍛錬にするか、場合によっては今日一日を休養に当ててしまおうと考えていた二人だが、予想に反して肉体的、精神的な疲労がほとんどなかったのだ。というわけで、自分だけでなく瞬もまたそうなのだと理解したソラもまた驚いた様子で問いかける。


「ってことは先輩も?」

「ああ……これならいつもの訓練も出来そうだ。いつもより遅めに訓練を開始したんだが……」

「ああ、そういえば先輩、激闘の後は一応少し遅めに訓練している、って言ってましたね」

「ああ……どういうことなんだ?」

「いや、俺に聞かれましても」

「……それはそうだ」


 ソラの返答に瞬が思わず呆けた後、吹き出して同意する。確かにソラと二人してどうしてだろうと悩んでいたのに、その悩んでいる相手に聞くのはおかしいだろう。と、そんなわけで頭を捻る二人に、少し離れた所でいつも通り正座で精神鍛錬を行っていたカイトが教えてくれた。


「ここは聖域だ。外の数倍の魔力濃度がある。回復もそれ相応には早い……もちろん、それに耐えられるだけの身体があってこそ意味があるものではあるが」

「そうなのか。それだといつも通り朝練しても大丈夫か」

「それはやめておけ。あくまでも普通よりは回復するというだけだ。消耗したらしただけ肉体的な回復が早まるわけじゃない。もちろん、魔力が回復するから肉体の回復も早まるが……だから無茶をしてしまう、という可能性もある」

「それもそうか」


 カイトの指摘に道理を見て、瞬も確かにと納得を露わにする。というわけでここではあくまで軽く、身体の調子を確認し整える程度の鍛錬に留める事にする。そうしてしばらく。全員朝練を終えて、改めて2つの班に分かれて行動を再開する。


「良し……全員大丈夫っぽい……よな? だ、大丈夫か!?」

「だ、大丈夫。大丈夫だよ!」


 ソラの問いかけに、トリンが恥ずかしげに笑いながら手を振って応ずる。昨日の時点でそうだったが、足場の間に吹き荒れる風はすでに身構える必要のないものになっていた。

 なので後は足場を乗り継いで次の場所までたどり着けば良いだけになっているのだが、そうなると要求されるのは足場を乗り継いで移動出来る体幹というか身体能力だ。

 というわけで最も身体能力の低いトリンは一度飛ぶ度にかなり慌てふためいており、ソラも何時でも駆けつけられる様に中々彼から視線を外せないでいたのであった。


「……とりあえず……まぁ、良いかな」


 ソラはトリンの返答に苦笑いを浮かべながらも、とりあえずは問題ないと思うと思う事にする。一応危なっかしいものの、まだなんとか移動は出来ている。大丈夫かと思われた。というわけでソラは改めて目の前の扉を僅かに押し開いて先を確認する。


「……」

「どうなっていますか?」

「草原……だな。それも相当に広い。これ、迷うと終わりだな」

「建物の中とかなどではないのですか?」

「違うな。天井も壁もない、だだっ広い草原だ」


 なんでもありだな、本当に。ソラは空也の問いかけに答えながら、延々と続くような草原を見てため息を吐く。どうやら昨日見た守護者もどきの群れは移動しているらしい。

 あの砲台に見えた守護者もどきが動けるとは思わなかったのだが、ここに居た砲台もどきとは別の存在だったのだろう。どこにも居なかった。というわけで中を確認してひとまず問題ない事を確認するソラだったが、そこに最後のトリンもたどり着いた。


「ととととと! ふぅ……」

「……うん。絶対にお前はあの風の中移動出来なかったよな」

「あ、あははは……で、ソラ。どう?」

「なーんもない」


 全員が揃った事もあり、これ以上覗き見るような形を取る必要もないだろう。ソラは肩を竦めながら、若干勢いよく扉を押し開く。


「草原」

「ああ……ま、昨日見た奴らは全員どこへやらって話だ」

「まぁ、安全な分には良いかな……問題は先への扉やらも何もない、って話だけど」

「だなぁ……とりあえず入ってみてから考えるか」


 トリンの指摘にソラは草原へと一歩足を踏み入れる。そうして踏み入れた彼は続く一同が入れる様に更に先に進んで、他の一同が大丈夫かどうか後ろを振り向いて、この草原エリアとでも言うべき場所の特徴とでも言うべきものに気づく事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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