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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3779話 様々な力編 ――撃破――

 過去世の力が使えないため、その代替としてソラが契約者となるべく訪れる事になっていた風の聖域。挑む前から何処かの世界で起きた異変による通行止めというトラブルに見舞われながらもなんとかたどり着いた聖域の攻略を開始する。そうして蛇を模した守護者もどきとの決戦に及ぶソラだが、そんな彼の盾には奇妙な刻印が浮かんでいた。


「一発限りの使い捨て……カイトと合わせて許されるミスは二回」

『ミスというよりバッドラックと思うよ』

「それも含めてミスって話」


 完璧に読みが当たったならば、この盾の使い捨ての防備もカイトによる支援も不要だ。だがもし外れれば、使うしかない。そうして気を引き締めながら加速するソラは、改めて蛇を模した守護者もどきを見る。


「……」


 相変わらず余裕というかなんというか。守護者もどきによる全力の攻撃を受けながらもカイトは全く揺らがない。それどころか口腔の光条さえ軽く斬り裂いているあたり、ソラ達とさえ実力差は歴然という所であった。


「……こっちに来る、か」


 エドナの向きが変わり、カイトがこちらに視線を向ける。そうして一瞬だけ彼が僅かに笑みを浮かべ、直後。彼が蛇を模した守護者もどきの顔面を蹴っ飛ばす。


『じゃあ、後は好きにやれ』

「マジかよ!」


 いくらなんでも無茶苦茶すぎるだろ。カイトが顔面を蹴っ飛ばした蛇を模した守護者もどきだが、どうにもうまくカイトはソラに向ける形で蹴ったようだ。音速を超えた蹴りで蹴っ飛ばされた蛇を模した守護者もどきは勢いよく回転すると、ソラに顔を向けて口腔に蓄積していたらしい魔力を光条として解き放つ。


「ちっ! マジでお前覚えてやがれ!」


 あくまでも漏れ出たという形なのだろう。どういう理屈で蓄積した物を吐き出させたかはわからないが、光条にしては威力が弱い。ソラはそれを見抜くと、放たれた僅かな光条に向けて盾で振り払う様に弾き飛ばす。


「ちっ……」


 ここからの猶予はただでさえないってのに。ソラは勢いよくこちらに突っ込んでくる蛇を模した守護者もどきを正面に捉えながら、ぐっと虚空を踏みしめる。そうして一瞬、彼は息を深く吸い込んだ。


「ふぅ……っ」


 だんっ。こちらに勢いよく突っ込んでくる蛇を模した守護者もどきに対して、ソラもまた一気に肉薄する。


「っ」


 来る。ソラは蛇を模した守護者もどきの口が大きく開いて、中に緑色の光が収束するのをしっかりと確認する。距離はそこそこ。噛みつく事が出来る距離ではないのなら、これしか選択肢はないだろう。

 なのでここはまだ、賭けになっていない。賭けはこの次だ。そうして突っ込んでいくソラを囮として、伊勢がその下を走っていた。


「はぁ!」


 ソラを囮として蛇を模した守護者もどきの下へ一気に距離を詰めた伊勢の上で、リィルが炎の槍を投げつける。そうして放たれた炎の槍に対して、蛇を模した守護者もどきが身を捩る様に回転。更に爆撃を降り注がせる。


(良し!)


 ここで一番最悪だったのは追尾弾だ。これでリィルと伊勢を狙われれば、更に次に向けての行動が移れなくなる。無論ソラが狙われても駄目なので、その時は盾を使って強引に突っ込むかカイトに支援を頼むかのどちらかしかなかった。というわけで一番良い札を引いたとソラは内心でほくそ笑み、一瞬だけちらりと視線を蛇を模した守護者もどきから外す。


(リィルさん、問題無し)


 伊勢の上には鳴海と侑子の二人が乗っている。なのでこちらは謂わば移動式のガトリング砲の様に魔弾を撒き散らして砲撃を爆破してリィルへ攻撃が命中しない様にサポートしていた。そうして彼女らが問題ない事を理解すると、ソラは視線を戻しながら空也の動きを確認する。


(空也は……良し)


 伊勢の上から飛び出した空也はトリンの誘導を受けながら、足場を器用に渡り歩いていた。更にどうしようもないタイミングは由利が足場から狙撃して爆撃を破壊しており、移動に不足はなかった。


「ふぅ……おぉおおおお!」


 雄叫びを上げながら、ソラは変わらず自身を正面に捉える蛇を模した守護者もどきの口に注目する。そうして彼は放たれる光条に対して、身を捩って回避。自らの真下を巨大な光条が通り抜けるのを知覚し、更に盾を光条に載せる。


「おぉらぁ!」


 だんっ。まるで叩きつけたかのような大きな音が鳴り響いて、ソラは光条を利用して大きく上に飛翔。一気に蛇を模した守護者もどきの正面から離脱。更に加速して、蛇を模した守護者もどきの上まで舞い上がる。


「良し!」


 これだけは成功するかわからなかった。ソラは一か八かの賭けに勝った事を理解して、思わず牙を剥く。が、当然全てが全てうまく行くわけがなかった。


『ソラ! 駄目だ! 最悪パターンが来る!』

「ちっ! やっぱそうなるか!」


 となると来るのは追尾弾か。ソラは本来ならここから一気に急降下して倒すつもりだった。だが流石に追尾弾を逃れながら十分な威力を発揮する事はまず無理で、しかも現状では十分な支援も望めない。一枚手札を切るしかなかった。


「はぁ!」


 蛇を模した守護者もどきの身体が僅かにぶるっと震えた直後。身体の各所の魔石から小さな魔弾がまるで鱗が剥がれ落ちるかの様に無数に放たれる。ソラを目掛けて殺到するも、彼はそれに盾に懇親の力を込めて巨大な盾を顕現。衝撃に備える。


「はぁ!」


 ソラが衝撃に備えたとほぼ同時。リィルが炎の槍を放って追尾弾のいくらかを消し飛ばす。すでに言われているが、この追尾弾を全て防ぐ事はソラには不可能だ。そしてここで逃げてやり直しは少し厳しい。カイトの支援が望めなくなる可能性があったからだ。やるならここで一気に、しかなかった。


「ぐっ!」


 やっぱバフもらっておいて良かった。ソラは自身の盾に激突する無数の小さな魔弾の嵐を受け止めながら、思わず顔を顰めるしかない。そうして嵐はたった数秒で過ぎ去って、それと共に刻まれた刻印が消滅する。


(流石にあのレーザーへの叩きつけとこの防御の連続じゃこうなるか!)


 鳴海が施してくれた刻印はあくまでも一時的かつ、使い捨てのものだ。だからこそ追加出来るという所もあったのだから仕方がなくはあった。とはいえ、そもそもこの支援は予定していなかったものだ。故にまだ十分な余裕を残せた方、と言って良かっただろう。


「はぁ!」


 まるで火の粉の様に舞い踊る追尾弾の残滓を盾を振り払って吹き飛ばし、ソラは再度ぐっと虚空を踏みしめる。そんな彼を、蛇を模した守護者もどきは身を捩って正面に捉えた。


「っ……」


 ここまでは想定内。ソラは最悪パターンは引いたものの、まだ十分に想定内だと自らを鼓舞する。そうして次なる攻撃に備えつつも、彼もまた急降下して蛇を模した守護者もどきを迎撃する姿勢を見せる。


「っ」


 すでに音速は超過した。やはり光条は放てない。ソラは急速に縮まる距離の中で、蛇を模した守護者もどきの牙が光り輝いたのを理解する。そうして急速に縮まる中、トリンの誘導により最適な足場へ移動していた空也が足場を踏みしめる。


「<<火よ>>、<<土よ>>!」


 火の加護による筋力の増強に加え、土の加護による身体の強度の強化。風の加護に加えて2つの加護を重ねがけして、空也が一気に加速する。その速度はソラ達の全力にも匹敵しており、短時間の増強と考えるのなら凄まじい強化であった。


「はぁ!」


 巨大な斬撃が蛇を模した守護者もどきの首へと襲い掛かる。そうして巨大な斬撃が蛇を模した守護者もどきの首を覆うが、その結果は空也の顔が何より物語っていた。


『すみません! やはり駄目でした!』

「いや、良い!」


 流石に蛇を模した守護者もどきも構造的に首を思い切り叩かれれば顔を背けるしかない。故に自身に向けていた顔が海老反りになる様に明後日の方向を向いたのを見て、ソラはしかしそれで良いと断言する。というよりこれが目的だったとさえ言える。


「おぉおおお!」


 太陽の輝きを身に宿し、太陽のフレアのような輝きがソラの背を押す。確かに飛翔するのなら風の加護がなければ無理だが、単に落ちるだけであれば別に加護は必要ない。ならば火力を上げるべく、<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>の力を解き放つ事にしたのである。そうして自ら首を差し出すような格好になった蛇を模した守護者もどきの首目掛けて、太陽の輝きを模した黄金の斬撃が迸る。


「!?」


 勝った。そう思ったソラだが、自身の攻撃が命中するかに見えたその瞬間に起きた現象に思わず目を見開く。なんと蛇を模した守護者もどきが口から巨大な光条を放ち、その反動で身を捩って見事に斬撃を回避してみせたのである。


「ありかよ、っ!」


 なにかが自らに覆いかぶさろうとしている。それに気付いたソラが上を見上げると、そこにあったのは蛇を模した守護者もどきの尻尾だ。言うならば蛇の宙返り。その様にして、蛇を模した守護者もどきはソラを叩き落さんと尻尾を振るっていたのである。だがその尻尾がソラを叩き落とす事はなかった。


「やれやれ……あんな威力だ。反動は制御してただけと気付いとけ」

「っ」


 防いだのは当然だがカイトだ。というわけで彼が勢いよく叩きつけられた尻尾を大剣で受け止め、そのまま一気に大剣を消して尻尾を引っ掴む。


「おらよ!」


 背負投げの様に、蛇を模した守護者もどきを穴へと投げ落とす。そうして彼が風に声を乗せて、ソラへと問いかけた。


「さ、どうする?」

「っ」


 カイトの問いかけに、ソラは彼が自身に即興劇を望んでいるのだと理解する。そうして彼は自らの懐に忍ばせた<<地母儀典(キュベレイ)>>へと指示を飛ばす。


「空也! さっきと逆でやるぞ!」

「え!?」

「逆! お前が決めろ! 俺がなんとか止める!」

「わ、わかりました! っ!」


 ソラの指示に応諾を示したその直後。蛇を模した守護者もどきの体全体が震えて、無数の魔力の爆弾が空中に撒き散らかされる。


「トリン!」

『了解! 誘爆に気をつけて!』

「おう!」


 太陽の加護に加えて大地の力を鎧に宿して、ソラは超重量級になった鎧の重量と防御力を活かして強引にまるで地雷原の様に空中に生じた危険地帯を突破する事にしたようだ。

 そうして由利らの狙撃により生ずる爆発の中を更に<<輝煌装(きこうそう)>>を使って防御して、更に盾を真下にしてまるで落下するかの様に強引に突き進む。


「おぉおおおお!」


 飛ぶ必要はないし、何も考える必要もない。ソラは音速を超えて、大気の摩擦で熱を帯びる盾をぐっと握りしめる。そうして一気に蛇を模した守護者もどきの下まで潜り込んで、彼は全魔力を放出するかのような勢いで強引にその場に制動を掛ける。


「ぐっ! っ、んなろぉおおおおお!」


 かなり強引な制動だ。ソラに掛かる負担は生半可なものではなく、全身に激痛が走る。しかしそれにより生ずるアドレナリンをバフとして利用して、彼は自身に向けて落ちてくる蛇を模した守護者もどきを盾で受け止め、更に魔力を放って強引にその場に押し留める。こんなもの、出来て数秒の荒業だ。だからこそ、それを理解した空也は即座に自身も無理を承知の荒業で押し出す事にする。


「<<雷よ>>! はぁああああ!」


 兄が保つのは数秒しかない。それを理解した空也は更に雷の加護を起動して、四重の加護で加速。そうして雷を纏った岩石の如き存在となった空也は紫電の速度で一気に距離を詰めて、ソラが押し留めた首へと<<三日月宗近>>を振り下ろすのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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