第3777話 様々な力編 ――再戦――
過去世の力が使えないため、その代替としてソラが契約者となるべく訪れる事になっていた風の聖域。挑む前から何処かの世界で起きた異変による通行止めというトラブルに見舞われながらもなんとかたどり着いた聖域の攻略を開始する。
そうして蛇を模した守護者もどきを前に一時撤退を余儀なくされていたソラ達であったが、その後監督するというカイトが自身が率いる班の攻略を見届けた所で、再度攻略を開始。ソラと空也がレバーを引いた所で改めて蛇を模した守護者もどきが出現し、ソラと空也は猛ダッシュで入口付近まで戻り、伊勢とそれに乗った面々に合流。戦闘開始となっていた。
「さてと……」
『どうする?』
「どうしよっか」
エドナの問いかけに、カイトは楽しげだ。当たり前の話でしかないが、ソラ達が加護を使わないと移動もままならないような空間であろうと、カイトにとっては特に苦労もなく飛翔出来る。エドナに乗っているのは単に他に合わせたからで、彼に限って言えば蛇を模した守護者もどきも遊びながら倒せる程度でしかない。
そしてここでの彼はあくまで監督役。本質的に手助けはしなくて良く、彼も過度な手助けはしない様に回数制限を自己に課していた。というわけで彼は少し前の、レバーを引きに向かう直前のソラとの会話を思い出す。
『で、言っておくがオレはあくまで手助けとか監督役。攻撃はしない。それを前提として考えておけ』
『だよなぁ……』
いっそカイトに決めてもらえるのなら手札が一枚出来るのに。カイトの言葉にソラはがっくりと肩を落とす。というわけでトリンと一緒に考えていた対策を行うしかないかと諦めてレバーに向かう彼を思い出し、カイトは改めて今の彼を見る。
「さて、お手並み拝見と」
今までは逃げるためにこちらに向けて一直線にしか飛翔出来なかったが、ここからは縦横無尽に飛べる。無論今まである程度方向性のあった蛇を模した守護者もどきの動きも複雑になるわけだが、こちらも人数が増えて手札は増えた。ここからが本番だった。というわけでカイトの視線を感じ、ソラは深くため息を吐く。
「はぁ……余裕ぶっこきやがって」
『実際余裕だろうからね』
「だわなぁ……それでも数回だけ援護が手に入れられただけマシか」
『そう考えるべきだろうね』
ここはあくまで自分達の試練であって、カイトの試練ではない。一応仲間に応援を求める事は可能というわけだが、すでに言われている様にそれをするとその平均に合わせて試練が構築される事になる。カイトを仲間や支援者として勘案するわけにはいかなかった。
まぁ、浬らはそれなら良いのかという疑問はあるが、こちらにソラと空也を固めている以上、あちらはシルフィード当人の興味は別にして、試練というシステムにとってすればとってどうでも良いのだろう。
というより試練に挑む当人と別の所で試練に失敗されては試練もなにもあったものではない。いっそカイトが居た方が良かったのだろう。
「っしゃ。とりあえずは一発ぶち込んでみる」
『了解。支援するよ』
「頼む」
とりあえずこの蛇を模した守護者もどきが見た目どおり硬いのか、それとも見た目に反して攻撃は通用しそうなのか。それを知らない事には攻略も何もあったものではない。故にソラは小手調べとばかりに攻撃を仕掛けに行く。
『ソラの進路上に斉射!』
「おし!」
爆撃を掻い潜りながら蛇を模した守護者もどきに近づける力量はソラにはない。あったらそもそも入口まで撤退してトリンらの支援を受けながら戦おうと判断していない。というわけで彼の進行方向目掛けて、無数の魔弾が放たれる。
(侑子ちゃんが籠手、鳴海ちゃんが筆……だったよな)
ショートカットのスポーツ少女と何度か煌士から聞いた事のあった生徒会書記の女の子を思い出し、ソラはそれぞれの武器を思い出す。前者が侑子。後者が鳴海だ。
(侑子ちゃんの籠手からは本来デカい一発が打てるけど、今は指先からの連射で弾幕。どちらかといえばアタッカー。鳴海ちゃんの筆は文字を書く事で効果を発揮する所謂バッファー兼デバッファー……ってか生徒会書記って聞いてたからもっと真面目な子かと思ったけどあの子、割とギャルっぽいよなぁ……)
トリンの指示を受けて行われる無数の弾幕を眼の前に見ながら、そんな事をソラは考える。ここからは情報を集め、それに逐一対策をして攻撃していくしかない。戦闘と思考を分離させて戦わなければならなかった。
というわけで加速した思考で数秒の間にそんな益体もないことを考えていたソラだが、流石に蛇を模した守護者もどきに肉薄すればそんな事を考えていられるわけもない。
「はぁ!」
気合一閃。ソラは大上段に振りかぶった<<偉大なる太陽>>を振り下ろす。そうして放たれた剣戟は見事に蛇を模した守護者もどきに命中するも、ソラの顔は渋かった。
『ソラ! 離れて!』
「わかってる!」
剣戟に反応したかの様に一斉に光り輝く身体の各所の魔石を見るまでもなく、ソラはトリンの言葉に一気に距離を取る。この蛇を模した守護者もどきに感情があるかは定かではないが、いうなれば怒りやそういった感情の発露にも見えた。
そうして身体の各所から溢れんばかりの輝きが生じて、その次の瞬間。ソラは相手にとってもここからが戦闘開始なのだと思い知る事になる。
「ぐっ!」
「貸し1って所かな」
「わ、悪い! あ、あっぶねー……」
緩やかな爆撃が来るとソラが思った次の瞬間だ。身体の各所に取り付けられていた魔石から放たれたのは、細長い光条だ。その速度は音速の数倍で、エドナに乗ったカイトが彼を強引に移動させていなければダメージは免れなかっただろう。というわけでカイトに引っ張られるソラへと、トリンが声を掛ける。
『ソラ! 大丈夫だね!』
「お、おう……爆撃以外もありっぽいな」
『みたいだ……ただ空中に留まったり途中で風で軌道が変化したりしない分だけ、爆撃よりは遥かに良い。威力はどう?』
「わかんね……一撃一撃の総量は爆撃と同程度だと思う。ただ多分、爆撃よりは俺もやりやすい……と、思う」
おそらくあの攻撃なら受け流す事は容易だろう。ソラはあくまでも光条に過ぎない攻撃を思い出し、そう判断を下す。
『そう?』
「ああ……爆撃は爆発だから、全身を保護する必要がある。さらには受け流しも出来ない。触れた途端にどかんっ、だからな。でも今のレーザーはあくまでレーザーだ。多分盾に張った魔力の膜で誘導してやれば受け流せる。直撃したらヤバいのはレーザーだろうけど」
『となると問題は……君が反応出来るかどうか、か』
「ああ……一瞬でレーザーか爆撃か見極めないと駄目だな。なにか兆候とかあれば良いんだけど……」
トリンの指摘にソラもまたはっきりと同意しつつ、先ほどなにか別の兆候はあっただろうかと考える。
「ソラ。そろそろ放り投げるが良いか?」
「っと、悪い。エドナさんもどうもっす」
『カイトよりは軽かったわ』
「今のオレは軽いだろ」
『今の、はね』
主従の軽口に反して、ソラは少し勢いよく放り投げられて蛇を模した守護者もどきの少し離れた所で一瞬だけ滞空。そこでソラは再度飛空術を起動して、再戦闘に備える。と、それと時同じく。一つの猛火が蛇を模した守護者もどきに激突する。
「さて……っ。リィルさん?」
『ええ……こちらも槍を投げてみましたが……風で勢いがかなり弱まってしまいますね』
「となると、やっぱメインは俺か空也っすか」
『そうなるでしょう』
やってみたは良いが、やはりこれは自分の攻撃は通じ難くされているのだろう。リィルはこういった試練の本命と言える相手に対する攻撃はソラか空也が一番通じる様に設定されているのだとなんとなくだが察していたようだ。
「となると決め筋は俺か空也が攻撃を誘発して、もう片方が……っすかね」
『それが安牌でしょう。後はそれをどうやってやるか、という所ですが』
「まぁ……しばらくはヤツの手札を全部出し切らすしかないでしょうね」
これはまた長い戦いになりそうだ。ソラは改めてカイトの支援を有り難く思いながらも、気を引き締める。そうして彼は再び支援を受けながら突撃を開始し、蛇を模した守護者もどきの情報収集を行う事にするのだった。
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