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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3767話 様々な力編 ――木の間――

 過去世の力が使えないため、その代替としてソラが契約者となるべく訪れる事になっていた風の聖域。挑む前から何処かの世界で起きた異変による通行止めというトラブルに見舞われながらもなんとかたどり着いた聖域であったが、そこでシルフィードのいたずらにより桜らが合流。

 更にその先で、地球で活動していたカイトの弟妹である浬や海瑠。桜の実弟の煌士やソラの実弟の空也などと合流。シルフィードの思惑を読み取ったカイトの指示で二つのパーティを一度解体し、ソラは実弟の空也らと共に攻略に臨んでいた。第一の試練でさえない不可視のイタチを撃破したソラは、本番となる巨大な木の構造体の中へと突入する。そうして構造体に一歩足を踏み入れて早々、ソラは思わず興奮を隠せないで居た。


「うおー……すっげ」

「その第一声、出来るの君かカイトさんぐらいじゃないかな……いや、わからなくもないけれど」


 ソラの反応に苦笑い半分呆れ半分という塩梅で笑いながら、トリンもまた構造体の内部を一望する。天井はどこまで高いかわからないほどに高く、広さは数百メートルという規模だ。幸いな事に穴はないらしく切り株の様に落ちれば命はない、というような印象はなかった。というわけで圧倒されていたソラも同じ様に観察しながら、一つ問いかける。


「でも普通にゃこんな光景お目にかかれないだろ? いくらエネフィアでだからってこんな直径数百、下手すりゃ数キロの巨木なんてないだろうし……世界樹ぐらいか?」

「まぁ、そうなるだろうね……まさかそんな事はないとも思うけど」


 流石にここが世界樹の中だとは思いたくない。トリンは少しだけ畏怖を滲ませながらも内心でそう思う。


「ま、それはそれとして……改めて周囲の状況を確認したいんだけど……」

「……まぁ、多分上の方は見るからに無理だろうね」

「だよなー」


 トリンの指摘にソラは上の方を見上げて苦笑する。天からまるでターザンロープの様に幾つもの蔦が吊り下がっていたが、それはまるで強風に煽られているかの様に暴れていた。


「あの足場から足場まであの蔦を使って移動するパターンがない事だけは祈っとこ」

「その場合、僕は一番最初に脱落するね」

「あはははは」


 おそらく空也ら地球側の面々を含めてさえ、肉弾戦になった場合に一番弱いのはトリンだろう。ソラは相棒としてそれを誰より熟知していればこそ、彼の冗談にただ笑うばかりであった。というわけでそんな二人に、空也が指摘する。


「それは良いのですが……この巨大さ。どう攻略しますか? 何も手掛かりもなく攻略は難しいかと」

「だな……と、言いたいところなんだけど。リィルさん、後ろどうっすか?」

「……」


 ソラの問いかけに、最後尾で殿を任せられる形になっているリィルが無言で首を振る。彼女が最後尾なのは戦闘力であれば一番高いのが彼女だからだ。

 一応ソラも<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>を解放してしまえば上回れるが、あれは超短時間だ。総合的なものを考えれば彼女になったのは当然の帰結だろう。というわけで無言で首を振った彼女が口を開いた。


「ただ開かないわけではない、のでしょう。明らかに鍵が掛かっている様子がある」

「鍵穴は?」


 ガタガタガタ。リィルがドアノブを動かす動きに合わせて扉が揺れ動く。それこそ後少し力を込めればそれだけで扉が壊れるのではと思えるが、実際には無理なのだろう。

 かなり強い力で動かしていたものの、ただ同じ様にガタガタと音を立てるだけであった。というわけで扉に衝撃を加えていたリィルがソラの問いかけに再度首を振る。


「見当たりませんが……おそらくそういう物理的な鍵ではないのでしょう。ここは大精霊様の試練。鍵を鍵と認識する事は危ういかと」

「っすね………さて」


 退路は断たれ、ひとまずはここから先に進まねばならないだろう。というわけでそう判断すると、ソラは一番最初の指針をトリンへと問いかける。


「まずは最優先事項から始めるべき……だよな?」

「どういう場合でもね。常道だよ」

「常道……ですか。何かこういう場合の常道が?」

「ああ。遺跡探索だと最優先は必ず退路を確保しておくこと。それが肝要なんだよ……まぁ、カイトの受け売りなんだけど」


 偉そうに語っているが、大半がカイトから教え込まれた事だ。ソラはそれがわかっていればこそ、偉そうに語れる事ではないと少しだけ恥ずかしげだ。とはいえ、そのカイトもまた誰かに教わっている。こうして恥ずかしげにしている事はカイトもまた同じような姿を見せていた。というわけでそんなソラは少しして気を取り直す。


「空也は確か飛空術は使えないんだよな?」

「ええ」

「となると……上はおそらく後回しだな」


 空也の返答にソラは改めて構造体の内部を観察する。飛空術が使えない者をわざわざ一緒の攻略班に加えさせているのだ。そういう飛空術を使って移動する場所はないだろう、とソラは判断する。


「正面に扉一つ。左右に扉一つずつ。上には……橋が幾つかと、足場だけの場所が幾つか。手すりあるよな、あれ……」

「その内上幾つかは強風で飛空術やらじゃ行けそうにないね」

「多分上全部無理だろ」


 絶対にそんな近道をさせてくれるような仕掛けにはしていないはずだ。ソラはトリンの言葉にそう口にする。それにトリンもまた頷いた。


「だろうね……そして中央に妙な祭壇のような何か」

「多分あそこに何か持って来いって話なんだろうなぁ……」


 明らかに何かが捧げられそうな台座が三つ。そして入口を除いた扉も三つ。とどのつまり各扉の先に一つずつ何か捧げ物があるのだろう。ソラは見ただけでそれを察してため息を吐く。


「後は……特別なにかは見当たらないけど。まぁ、この部屋の探索から開始するしかないか」

「だね」


 ソラのボヤキにトリンが一つ頷いた。おそらくこの部屋は謂わばエントランスのようなものなのだろうとは思うが、同時に何かが隠されている可能性はないではないのだ。


「トリン、中央を頼む。由利もお願い。全員が何か消えたりしてないか注意してくれ。これだけの空間だから、流石に俺とかじゃ対応出来ない。リィルさんは遊撃で万が一の場合に応戦出来る様に待機で」

「「「了解」」」

「じゃあ、全員散開してこの部屋の調査から取り掛かるぞ」

「「「おう!」」」


 ソラの号令に、全員が応ずる。そうしてまずはエントランスと思しき部屋の調査からスタートする事となり、一同は数百メートルもある巨大な空間の各所に散って調査を行う事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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