第3745話 様々な力編 ――帰路――
前世の力の代替として契約者となるべく動き出したソラと、元々カイトより契約者となる事を指針として示されていたという瞬。二人はカイトの手配により、彼と共に皇都で皇帝レオンハルトと謁見する事になっていた。というわけで皇都にて皇帝レオンハルトとの謁見を終えた後、三人はマクダウェル家が用意した飛空艇でマクダウェル領に戻っていた。
「ふぅ……飛空艇の部屋がこうも楽に思えるとは思わなかった」
「っすね……やっぱ今更っすけどカイトって公爵だって理解しました」
「あははは……いや、まったくだな」
今までは遠慮してくれていたのだろうな。ソラも瞬も今回垣間見えたカイトに対する応対を思い出し、二人して笑う。なお、そのカイトはというと現在マクスウェルとの間で連絡を取り合っており、ここには居なかった。
「だがわざわざ謁見させられるほどか」
「あぁ、そりゃしゃーないと思いますよ」
「うん? どういうことだ?」
やはり契約者となると対応が段違いなのだな。そんな様子を見せた瞬であったが、どうやらこれには裏事情もあったらしい。それを察していたらしいソラに、瞬が小首を傾げて問いかける。
「いや、多分聖域ってどこもかしこも何かしらの禁足地とかそういう場所にされてるんじゃないかと思うんっすよ。ってなると、行くにしても絶対に許可が居ると思うんっすよね」
「なるほど……確かに風の聖域であればそこへの道はエルフ達が管理しているという事だし、実際禁足地の一つか。そこはカイトが言えばどうにでもなるとは聞いた事があるが」
「まぁ、エルフ達はカイトなら、なんも言わないっすからね」
シンフォニア王国というか、過去世の世界でエルフ達の都に何度か訪れてみて、ソラはエルフ達がどれだけ排他的かを理解していた。なので浮かぶ苦笑いに、瞬もまた同意する。
「カイトなら、か。確かにな。俺達が行けば殺されても不思議はなさそうだ」
「っすね。そんな塩梅ばっかりなんっしょ。それこそ大精霊達を祀る宗教系な組織の聖地と化していても不思議はない。まぁ、そういった所に限ってカイトはほぼほぼ確実に伝手持ってるんで行ったらウェルカム状態になるんでしょうけど」
「あいつもほとほと面倒な立場だな」
何度か言われているが、カイトは基本的に宗教を嫌っている。無神論者でもなければ信者が嫌いというわけではなく、自分が祀り上げられる側になっているのだから仕方がなくはあっただろう。なので今度は瞬に浮かぶ苦笑いに、ソラもまた苦笑いだ。
「あははは……まぁ、あいつ自分がやった功績がデカすぎてって話ですからね。あいつ自身も大精霊達も、全部の大精霊と契約したのはカイトだけって言うぐらいですし」
「それは当然、か」
「まぁ、そこらの扱いは俺達も気を付けないとならないんでしょうけど……」
「そのための昨日……だったな……」
「ええ……」
契約者となるということはつまり、昨日のような超を幾つ付けても足りないようなVIP対応がされるというわけだ。二人は昨日のマクダウェル家に対する扱いを思い出し、ただただため息を吐く。契約者となる、ということはそういった大精霊を信奉する者たちからあの領域の対応を受けるという事だ。想像するだけで今から気が滅入っていた。と、そんな所に声が掛けられる。
「気後れするなら良しだ」
「カイトか……終わったのか?」
「ああ……皇帝陛下が動いて下さったら後はもう待つだけで良くなった。ま、流石に皇国が動いたら各国も入国の差し止めやらはないし、審査も迅速にされる。後は聖域やらへの道中の確保も容易になる」
「そんな事したら派手になって露呈しないのか?」
「そんな大っぴらに大々的に動くわけじゃない。あくまでも裏から、密かにという程度だ。入国審査を楽に、聖域までの普通は出ない渡航手段を確保、っていう程度かな。聖域も聖域と知られていないだけで冒険者が時折訪れる事がある場所も珍しくない。そういった所に偽装は出来るようになっている」
「「へー……」」
やはり聖域についてはカイトが詳しいようだ。と、そんな彼にソラが問いかける。
「だけどそれを皇国に明かして良いのか?」
「別にどの国にあるとかは隠していないし、それでやらかしたらどうなるかは誰もがわかっている……だろ?」
「あー……」
無資格に挑めばどうなるか。それはすでに語られている通り、精神崩壊さえ起きかねないという手酷い末路だ。ソラ達のように大精霊達が良しと認めているなら話は別というだけで、知っているからと腕試し感覚で挑めるようなものでもなかった。
「今回行く場所は……まぁ、ぶっちゃけると風の聖域は兎も角、雷の聖域は超危険地帯だ。この間の『光闇山』と比べ物にならんな」
「あれをか?」
「ああ……だからその地域は封鎖されていてな。アイナが聖域を見付けたのもあいつだからと依頼されたからでもある」
「な、なるほど……そんな場所か……」
アイナディスだから依頼された。それは即ち三百年前の大戦でエースとして活躍し、今なお最前線で活躍するトップクラスの冒険者でもなければ達成出来ないと考えられたという事だ。封鎖されるのは至極当然でしかなかった。そして即ち、ほぼ全てがそういう危険地帯や異族達が聖地として禁足地にしている場所だという事だと理解するは、二人にも簡単だった。というわけでそんな二人に、カイトも頷いた。
「そ……だから当然行くとなっても冒険者でも勝手には行けない。勝手に行かれて救助なんて言われてもどうにもならんからな」
「救助隊は……出せんか」
「出せなくはない……まぁ、アイナみたいな猛者が救助出来るような状況を整えてくれて、になるけどな。それも無理になるともう無理と判断されて見捨てられるだけだ。だから入る前には一筆書かされるし、保証金やらも払わされる。保証金は戻ってこれれば返されるけどな……返すから戻ってこい、って話だ」
「「……」」
やはり所詮は冒険者相手ということか。ある意味冷酷な対応に、ソラも瞬もどこか鼻白んだように沈黙する。そんな彼らに、真面目に話していたカイトが一転して笑った。
「まぁ、それに。後は幾つかやりたい事もあって、陛下にも話を通した形だしな」
「やりたいこと?」
「ああ……ほら、以前遺跡が見付かってるだろ? あれのテスト運用をしてみたくてな」
「使えるのか?」
俺が聞く限りでも眉唾物に思うんだが。瞬は過去の世界に飛ぶ前に見付かった遺跡を思い出し、更にシンフォニア王国などで聞いた聖域の話を思い出して顔を顰める。そんな物が役立つとは思えなかったのだ。そしてこれにはカイトも苦笑いで同意するしかなかった。
「オレ自身、あれが役に立つとは思っていない。だが作って放置されていた以上は何か意味はあったんだろう。補修作業が出来たから、一度使ってみるかとはなっていたんだ。だがそうなると陛下やらには話を通さんとならん、ってわけ」
「? 意味がないから放置されたんじゃないのか?」
「それは<<星神>>にとって、だ。奴らにとって破壊する意味がなかったというわけなんだろう。古代文明の連中にとっては無意味なら潰せば良い。希少な素材も結構使っていたみたいだし、あの規模の施設はいくらでも利用出来る。解体もせずそのまま、というのも不思議だろう? 聖域は見付けられんでも何かは探せたんじゃないか、って考えてるわけ」
「なるほど……」
確かにあれだけの施設であれば、色々と使い道はあるだろう。それがそのままになっているのであれば、何かしらの使い道があったのではないか。カイト達の考えは間違いではなかった。とはいえ、懸念がないわけではないらしい。
「まぁ、ぶっちゃけると実際の所はどうよ、という事もまた事実だ。攻められて解体してる余裕もなかったんじゃないか、という事もあり得るしな。そこらはわからん……まぁ、わからんからやってみてとりあえず調べてみるか、って話だ」
「なるほどな」
概ねの流れは掴めた。瞬はカイトの言葉に納得を露わにする。というわけでそこらの話に一段落が着いた段階で、ソラが問いかける。
「あ、そうだ。今後の予定としちゃどうなるんだ?」
「ああ、それか。とりあえず契約者となる、と言ってすぐにやれるわけでもない。まずは武器防具やらの調整を完璧に整えろ。後は魔力もしっかり溜めて、万全を整えろ。それで全部の準備が整ったらオレに言え。そこで案内しよう」
「「わかった」」
兎にも角にも準備を整えない事には試練に挑むも何もあったものではない。そんな様子のカイトに、ソラと瞬が応ずる。そうして二人はマクスウェルに戻ってからすぐに支度に取り掛かると共に、自身の状態を万全とするべく休息に努める事にするのだった。
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