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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3739話 様々な力編 ――相談――

 殺し屋ギルドとの交戦から数日。ソラはカイトの力を借りて、自身の前世である浅井長政の抑制になんとか成功。しかしやはりその性根から相容れないとして、冒険者の中でも切り札と言える力を使う事に難色を示す。

 というわけでそれを受けてカイトが代替案として提示したのは、契約者となるというある意味では更に難しい難行だった。そうしてカイトの提案から暫く。ソラはトリンに相談していた。だが相談された彼の顔に浮かぶのは、盛大な苦笑いであった。


「ま、また凄まじいね、それは……」

「やっぱりそうだよな?」

「そりゃあね。そもそもそんなものはカイトさんでなければ出来ない提案だし、そんな提案がされたのはカイトさんの身に危険が及ぶからでもある……と言っても良いんだろうね」

「だろうなぁ……」


 自分とカイトを比較した時、どちらの方を世界側が優先するかというと間違いなくカイトだ。そんなものはソラをして自明の理でしかなかった。


「そもそもあいつは世界の……何なんだ? あいつ」

「あはは……それは誰にもわからない、かな。おそらく世界において非常に重要な役割を担わされている事はわかっているけれど」

「そうなんだろうな、とは誰もが思っているな」

「うん……先のリーナイトの一件然り、世界側がトラブルに彼を起点としている所は間違いなくあると思う。だからその彼に不意の一撃を受ける可能性はなるべく減らしたい、というのは当然の話ではあると思うよ」

「そりゃ一番やばいタイミングでやられたら堪ったもんじゃないもんなぁ……」


 そして誰がそれが可能かと言われれば間違いなく自分しかない。となると自分への対策に支援を、というのは自然な話とソラにも感じられた。というわけで現状の再確認を終えて、ソラはトリンへと問いかける。


「それで聞きたいのは、現状でどんな代替案があり得るか、だ」

「それだね……さて、まずは過去世の力を借りる事に対してのメリットから考えてみようか」

「おう……まぁ、言うまでもなく想定が不可能って所だよな」

「そうだね。その人の前世が何か、なんてよほどでもない限り予想は出来ない。目覚める前、半覚醒の反応から推測は可能だけど……それだって君やカイトさんのような特例的な縁がない限りは不可能に近い。カイトさん……一度だけであれば、伝説の勇者にさえ通用する可能性を有する手札。それは強大な相手を相手取る冒険者達にとって最高の切り札足り得る」


 もちろんそんな事をしないような超上位の冒険者も居るわけだけど。トリンはソラに対して改めてそう告げる。


「さてこのデメリットは言うまでもなく今回君が陥ったように過去世の自分が侵食していくため、最終的には自分がコントロール不可能になる可能性を有してしまうこと……あまり語られることがないけど、この末路は聞いたことがある?」

「一応調べた……というか貰った本に書いてた。自己崩壊。自己と前世の衝突により、自分が消し飛んでしまう……まぁ、滅多に起きる事例でもないらしいけど」

「そうだね。大抵ランクSレベルまでたどり着いた冒険者は自我が強いからね。基本は封をされている過去世に負ける事はない……んだけど、前世も強固な場合やあまりに相性が悪くて反発がすごいことになると自我の崩壊が起きてしまう」


 ソラの言葉に応じて、トリンが改めてあまり語られないデメリットについて語る。というわけでそれを語った彼が更に続けた。


「だからか、実は切り札という割にはデメリットの側面からあまり使わない冒険者も居たりするね。と言っても当然そうなると代替策を持っておく、更に上への到達を諦めるという形になる」

「代替案、か」

「うん……この代替案は正直に言えばかなり限られる。そりゃ、あれだけメリットの大きい札だからね。それに比類する物は限られて然るべき、と言うべきなのだろうね」

「……」


 当たり前の話だ。ソラはトリンの言葉を内心で認め、その先を促す。


「さて。それで代替案だけど、まず最大の切り札は武器や防具、魔道具の収集。君にわかるように言えば、イングヴェイさん。彼が魔道具を集めているのは、過去世の力が厄介だからではないか、という噂がある」

「そうなのか?」

「うん……まぁ、そう言っても<<道具使い(アイテム・マスター)>>と呼ばれる人たちはそこらを隠れ蓑にしていたりするし、彼の場合は特に切れ者で知られているから嘘の可能性としてはあるかもね」

「あー……たしかにあの人の場合は有り得そうだよなぁ……」


 トリンの言葉に、ソラは馴染みの冒険者の一人を思い出す。そうして思い出した彼だが、だからこそそのデメリットも聞いていた。


「最大のデメリットは言うまでもなく……か」

「そうだね……まぁ、これは正直イングヴェイさんだから出来ている、と言っても良いかも」

「お金掛かるらしいもんなぁ……これ以上俺借金抱えたくないわ……」

「あははは。そうだね。まぁ、君の場合は僕がしっかり管理してるから気にしなくて良いけど……流石に今の収支を考えればオススメは出来ない」

「それでも胃がいてぇんだよ……」

「あはは……」


 当然の話だが、ここで二人が話している武器や防具も普通のものではない。ソラの持つ<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>や<<地母儀典(キュベレイ)>>のように名のある武器と防具、魔導書の類だ。運用は当然非常に金が掛かる事になり、非常に綿密な収支計画が必要だった。


「まぁ、それに。それについては君はすでに手に入れている。これ以上は君の側が耐えられないだろうね。だからこれはまず却下」

「おう……で、次は神使か」

「だね。次に有名な強化プランとしては神使……神との契約だ。だけどこれは契約者の下位互換と言っても良い」

『き、貴様な……』

「あ、ご、ごめんなさい……」


 流石に下位互換と言われては見過ごせなかったらしい<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>の指摘――ただしそれそのものは事実でもあったので苦笑い気味だが――に、トリンが慌てて謝罪する。


「ま、まぁ……とりあえず。神使化のメリットは言うまでもなく強化率の高さ。流石に過去世が神様やら英雄でもない限り、神使化の方が上だ。まぁ、普通に考えれば神様の方が強いんだから当たり前だね」

「だよな……で、デメリットは?」

「言うまでもなくそれ相応の振る舞いは求められるし、色々と儀式やらにも参加したりしないといけなくなる。更には神々同士の付き合いやら云々が絡んでくるから、厳密に言えば冒険者と神使の両立をしないといけなくなる、という所かな」

「デカいな、それ」

「うん……まぁ、もう遅いかもだけど、今だと邪神との戦いの最前線にも立たないといけなくなる。当然その対策会議なんかも出ないといけなくなるだろう。それに加えて君が地球に戻る事も考えるのなら、地球では使えない事も見過ごせないかな」

「あ、そうか……そういえば使えなかったもんな……」


 シンフォニア王国での事を思い出して、ソラは目を見開いて危うく失念する所だったと僅かに冷や汗を拭う。


「うん。これは一般的には知られていないけれど、神様はその世界の端末だからね。別の世界では使えない」

「……あれ? でもそういえばカイトは確か地球のエレシュキガルって女神の力をこっちで使ってるよな? なんか手があったりするんじゃないのか?」

「……うん……本当に何なんだろうね、あの人……これは大精霊様は関係ない、とか言ってたけど。そうだとするなら本当に何なんだろうね……」


 あまりに例外的な存在が一番近い所に居るせいで色々と説明が難しい。トリンは改めてカイトの状況があまりにイレギュラーである事を思い出して乾いた笑いを浮かべる。とはいえ、そういう事でもあった。


「まぁ、特殊なサンプルは置いておいて。そういうことだから、二つの世界で活動するなら使わない方が良い。鎧に『太陽石』? とかなんとかっていう特殊な鉱石を装着して貰ったそうだけど、それも何時まで使えるかわかったもんじゃない。前提とする事はやめておいた方が良いだろうね」

「わかった」


 やはり自分達の今後を考えると、神使化が最善の一手ではないのだろう。ソラはトリンの助言に、これは一旦前提から外すべきだろうと判断する。というわけでその後も幾つかの代替案を口にするも、やはりどれもこれもが一長一短。多くは選択肢としては入れられるが、決定打に欠けていた。


「さて……それで最後の最後。契約者だね……正直に言えば、これはある一つのデメリットを除けば一番オススメではある」

「ある一つのデメリット、か」

「うん……それは言うまでもなく今までのように無名で動く事は不可能になる。現状から言えば、カイトさん同様に公的な立場での動きも求められる。現状を考えれば、爵位は授けられるだけの功績を立てる事になる」

「だろう、じゃなく?」

「断言だね」


 ソラの問いかけに、トリンは苦笑気味に頷いた。現状想定されている戦いで、ソラが中心となる可能性が高いのは言うまでもなく邪神との戦いだった。


「対邪神の戦いはすでにこの大陸とアニエス大陸を巻き込んでいる。そこで契約者として活躍してしまえば、それが最後。まず授与はしなければならない。神使なら辞退は出来るけど、そうじゃない冒険者なら喩え有名無実な爵位だろうともね」

「そしてそれを後押しするだろう貴族は……か」

「うん。言うまでもなくマクダウェル家だ。断れる?」

「無理だな」


 間違いなく無理だ。なにせカイトでさえ無理だったのだから。ソラはそれを思い出して、避けられぬのだろうと納得する。


「場合によっては領地も与えられる事になるだろうね……契約者にせよ神使にせよ、大きな力を授かるからこそ、そこは避けられなくなる」

「……その場合、サポート貰えるか?」

「あはは。お給金は弾んでね」

「あはは。その時は期待しておいてくれ」


 冗談っぽく言うが、そういう話でもないのだろう。ソラはそう思いながら、現状で最善の一手がこれなのだとも理解していた。そして何より、彼の背を押した物がもう一つあった。


「……親父が日本を背負ってるんなら、俺もそれ相応は担えるよな」

「出来ると思うよ、君なら」

「そか……よっしゃ。いっちょやってみますか」


 元々ソラは答えを決めてはいたが、踏ん切りがつかなかっただけという所だった。元々彼は考えすぎの所があった。だからトリンも敢えて契約者を一番最後に持ってきていたのであった。というわけで全てを決めて、ソラは立ち上がってカイトの所へと向かう事にするのだった。

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