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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3738話 様々な力編 ――示唆――

 殺し屋ギルドとの交戦から数日。ソラはカイトの力を借りて、自身の前世である浅井長政の抑制になんとか成功。しかしやはりその性根から相容れないとして、冒険者の中でも切り札と言える力を使う事に難色を示す。

 というわけでそんな彼の様子を受けて、カイトは一つの試験を提示。数時間に及ぶ戦いの末に、ソラが力を手にするに足りる素体があると判断するに至っていた。そうしてその力についてカイトが語ろうとした時に会話に割り込んできた声に、ソラが目を丸くする。


「この声は……シルフィちゃん?」

『そ……こうして話すのは久しぶりかな』


 ソラの問いかけに、シルフィードは笑う。最後に直接会ったのは一ヶ月ほど前の聖域での事だろう。その時もソラ達と問題なく話をするという観点からこちら側の彼女の性格を取ってくれており、確かに特に久しぶりと言えただろう。


「それで大精霊の力っていうと……加護の力? あれ強化とか出来るのか?」

「流石にあの力の強化は無理だ。あれはシステム的なものでもあるからな」

『そうだね。あの加護は一般的には僕らに気に入られた証とかなんとか言われているしその面もあるっちゃあるけどそんな主観的な物ってわけでもないし』

「あー……そりゃそうだよなぁ……」


 そもそも大精霊達自身が世界の端末のような趣きがあるというのだ。そんな存在が彼女らの感情一つで人生さえ左右しかねない力を与える事はあるのだろうか、とソラは予てから疑問ではあったようだ。なのでカイトとシルフィードの返答にはどこか納得したような様子を露わにするだけであった。


「でもそれならどういう基準なんだ?」

『それは企業秘密だね……だって明かしたらそれに合致出来るようにしちゃうでしょ? 人の世で知っているのはカイトだけだよ』

「そりゃそうだ」


 シルフィードの指摘に、ソラは思わず目を丸くする。条件があり、それがわかれば手にしようとするのは人の性だ。ならばそれが明かせないのは当然の事であった。というわけで納得した彼であったが、更に追加で話された情報に今度は目を見開いた。


「って、お前条件知ってんの?」

「まぁな……祝福による代行はそこらを知っているから出来る事でもある」

「はー……」


 前々からカイトは加護を一時的に付与出来るとは聞いた事があったし、実際ユリィに付与している所は見た事があった。ただ冒険部の前でそんな事が出来るわけでもないので本当に切り札のような扱いで、めったに使われる事はなかった。

 まぁ、勇者カイトとしては隠している力ではないので、あくまでも戦闘方法の切り替えや死者の召喚と共に勇者カイトの正体を隠すためでしかなかった。というわけで改めて納得するソラに、シルフィードは続けた。


『で、兎にも角にも流石に加護の強化は無理だ。あれはあくまでもそういうシステムだからね。その強化は無理だし、対価もなしの手に入る力としては破格。あれ以上を求められても困る』

「破格……破格だよなぁ……」

『魔力を消費する以外にデメリットないからね』

「やっぱ破格だよなぁ……」


 それが使えなくなっているのも更に痛い所ではあるんだけど。ソラはシルフィードの言葉を聞きながら、内心でため息を吐く。以前にカイトから言われていたが、本来ならばシルフィードの力が使えなくなるという事はない。

 だが彼が手にした<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>が保有するものはこのエネシア大陸で有数の太陽神の力だ。無論単なる太陽神ならば押し負けないが、最高神かつ大陸最大の神という悪要素が重なる。結果、加護が押し負けるという普通は起きない事が起きてしまうのであった。


「でもそれならどうするんだ? 確かに俺としてもシルフィちゃんの力が強くなるなら万々歳。それこそ長政なんていっそどうでも良いほどの力だ」

『そ、それはそれでどうかと僕も思わなくもないけど……』

「いや、他に迷惑かかるかも、ってな力なんて使いもんになんないだろ。しかも今は良いかも、ってだけで将来的に危険性は上がっていくんだから、危なすぎて使えないって」

『まぁ、それはね』


 ソラの指摘にシルフィードは苦笑しながらもその言葉を認める。彼の言う通り、長政の力を借り続けるという事は即ち将来的には同じようにカイトに反乱を仕掛ける可能性が高くなるという事だ。

 それが明日になるのか、一年先、十年先になるのか。はたまた結局なんだかんだ言いながら起きないのか。それはソラ当人にさえわからない。そんないつ爆発するかもわからない爆弾を使いたくない、というのは当然の帰結だった。


「しかもカイトだ。うっかりで殺されかねねぇって」

「おいおい」

「いや、でもお前後ろから斬りかかられたり戦闘中に割り込まれたりして手加減出来るか?」

「んー……まぁ、厳しいタイミングはあるかもなぁ……」


 流石に長政の性根などから考えると人質などは取らないだろうが、最悪のタイミングで裏切ってくる可能性は十分にあり得るだろう。それがどういうタイミングかは想像出来ない以上、ソラの指摘はあり得ないとは言いえない事であったようだ。カイトも苦笑しながらも、その言葉を認めるしかなかった。


「だろ?」

『そうだね。それについては僕らも君に同意するよ……で、その上でのお話だ』

「うん」


 兎にも角にも何を自分に指し示そうとしているか。それを知らない事にはそれを受け入れるも何もない。というわけで、一つ頷いたソラにシルフィードは語った。


『契約者……その試練に挑む資格を君に与えるよ』

「え?」

『風の契約者……それになる素体は出来上がっている。カイトに危害を加えたくない、だけど力が必要……だけど現状の君で力を手に入れるにはもう選択肢は非常に限られてしまっている。武器による強化は無理。魔導書は入手済み。前世は時限爆弾。となると後残る選択肢は二つ。太陽神の神使となる事による神剣の底上げか、加護の力の強化しかない』

「……」


 シルフィードの指摘に、ソラはしかめっ面ながらも応ずるしかない。確かに指摘されている通り、現状で追加で手に入れられる力はその二つだけだろう。もちろん更に探せば何かあるかもしれないが、戦闘力のブーストが可能かと言われるとそれは中々なかった。というわけで少しだけ真剣に考え込んで、彼は問いかける。


「出来るのか? 俺で」

『まぁね。本来ならここから更に聖域を探して、とかしないといけないんだけど……今回に限って言えばカイトの安全や今後の方針にも直結する。良しとしたよ』

「良しとした?」

『ああ、探す必要はないって話だよ』

「ほん……」


 どうやらカイトが教えて良いという事になったという事なのだろう。ソラはシルフィードの言葉をそう理解する。というわけでカイトが口を開いた。


「ま、そこらについてはこちらに任せろ……ただ風の聖域だからクズハやらも連れて行きたくてな。色々とあって、という所だが」

「そうなのか……って、ああ、そうか。ハイ・エルフって風の眷属なんだっけ」

「そ……そこで即位の折には謁見しないといけなかったりというのもある。まぁ、今回はそういう即位は関係ないからそこまでかしこまった話でもないが」

「ふーん……」


 やはり長い歴史を持ち、眷属と言われる種族には色々とあるのだろう。ソラはカイトの言葉にそうなのか、と思うしかなかった。


「ま、少し考えてみろ。知っていると思うが、契約者となるなら試練に挑む必要もある。そしてそうなると当然、政治的な話やらにも関わらないといけなくなってくる」

「そ、そうなのか?」

「流石にな。何よりお前も契約者が一国の大臣や王様に、なんて話は聞いた事があるだろう。どうしてもそうなってきちまう」

「わ、わかった」


 カイトの言葉にソラはそんな軽く考えて良い事ではないのだと改めて理解する。そうしてこの日の話はおしまいとなり、ソラには数日の猶予が与えられる事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
これでようやく『勇者の弟妹』の441話辺りと合流する訳か(見返したら5年前だよ)。
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