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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3725話 様々な力編 ――会合――

 殺し屋ギルドとの交戦から数日。再び平穏に戻ったカイトであったが、そんな彼の元へと今回の一件の情報共有と共に、最大の出資者への今度行われる暗黒大陸への遠征の進捗報告を行うべくバルフレアが訪れる。そんな彼から報告された現状を聞き終え、一段落していた両者に入ってきたのは暗黒大陸へ向かう航路の近辺での幽霊船発生の報告と、日本側からのソラの異変に関する状況確認の連絡であった。

 というわけでソラの異変に対して彼の父にして総理大臣である星矢へと状況を共有していたカイトであるが、そんな彼へ状況を聞いた星矢から協力を要請されることになる。

 そうして遂にソラの過去世が浅井長政であるということをカイトが知ることになったわけだが、そうなって出たのはどうしたものかという対処に困る反応と言わざるを得なかった。そんなカイトは星矢との通信を終わらせると、その夜。彼は宗矩と共に日本酒を傾けていた。


「……そうか。あれは浅井であったか」

「ええ……因果なものです。お江とは」

「ああ。何度か話をさせて頂いた……自然な話だが」


 宗矩は浅井長政の娘、お江の方が最終的に嫁いだ徳川の二代将軍徳川秀忠、そして三代将軍徳川家光の指南役だ。その信望は相当厚く、徳川の将軍三人とは深い付き合いがあっても不思議はないだろう。

 というわけで流石に元主君の妻であり母親の親とあってはカイトも隠し立てするべきではない、と宗矩に事の次第を共有したのであった。


「どうしたもの……と悩んでいる様子はないな。何か定まったか」

「……ええ。彼の父君と話す中で、声がありましたので」

「そうか」


 星矢との会談の終わり、カイトはまるで何か連絡が入ったかのような様子で会話を打ち切った。それに星矢は確かに話し込んで時間が経ち、別の用事が入ったとしても不思議はないと若干は訝しみながらもそれをおかしくは思わなかった。が、それには何か理由があったらしい。というわけで宗矩はカイトへと問いかける。


「それで俺は何をすれば良い」

「お頼み出来ますか? これからやることは些か厄介を生じさせかねませんので……」

「構わん。秀忠様には大恩がある……奥方の顔を立てよう。それを浅井に返すのは些か不思議な話ではあろうが」

「ありがとうございます」


 自身の要請を聞いて応諾を示した宗矩に、カイトは深々と頭を下げる。そうしてこの日はこの後宗矩と共に、カイトはソラに対する対応を話し合うことになるのだった。




 さて明けて翌日。この日は特に何か目立った業務があったわけではなく、カイトもソラも普通にギルドホームに詰めて仕事をしていた。というわけでカイトは朝一番のどうしてもしなければならない仕事を終わらせると、自分の手が空いたタイミングとソラの手が空いたタイミングが重なるように調整し、彼へと声を掛ける。


「ソラ。少し大丈夫か?」

「え? あー……」


 カイトの問いかけに、ソラは視線が泳ぐ。当たり前だが彼とて父に相談した時点で、カイトに伝わるだろうことは察していた。それぐらいは出来る男だし、やる男だ。そして父がそうするだろうというのも今までの経験から理解している。このタイミングで話がされるということは、と察するには十分だっただろう。


「……今じゃないとだめか?」

「だめだな。用件も全部わかってるだろ?」

「……まぁな」


 苦笑気味にソラはカイトの問いかけに応ずる。だがだからこそこの男を裏切りたくないと思うのだ。というわけで彼は一つ問いかける。


「場所、変えて良いか?」

「ああ……外の方が良いだろう」

「おう……あははは。はぁ……なーんでこうなっちまってるんだろうな」

「わからん。オレが聞きたいぐらいだが」

「あははは」


 若干やけっぱちになりながら、ソラはカイトの言葉に笑う。というわけで二人は周囲の困惑を他所に立ち上がるわけだが、そこでカイトがティナへと告げた。


「ティナ。後はちょっと頼む」

「しゃーないのう。若人の悩みを聞くのも先達の努めじゃ。やったれ」

「あいよ」

「ああ、ティナちゃんもか……そうだよな……ごめん。迷惑掛ける」

「良い良い。こればかりは誰にもどうにもならんもんじゃ。仕方がなければ甘えればよかろう」


 どうやら色々な相手に相当な心配を掛けてしまったらしい。ソラはそれが少し恥ずかしくもあり、嬉しくもあった。とはいえ、だからこそ彼は何故ティナが何をやれと言うかを理解出来ていなかったのだが。閑話休題。変な雰囲気で去っていく二人に、瞬が訝しげにティナへと問いかける。


「ユスティーナ……何があったんだ?」

「ソラの過去世じゃ。相当な難物を抱え込んだようでのう。誰にも語らぬが父であれば語ったようじゃ」

「父というと……天城首相か。そうだったのか……ソラの過去世はなんだったんだ? 俺も聞けなかったんだが」

「まぁ、どうせこれが終われば隠す意味もなかろうて。あれの過去世はな。浅井長政じゃ」

「「「はっ!?」」」


 織田信長に浅井長政。共に日本史を学べば絶対に聞く名前だ。そしてその両者の関係性は誰もが知っている。そしてその末路もまた。だからこそ、耳をそばだてていたその他の全員まで揃って声を大にして驚きを露わにする。というわけで桜が思わず、という具合で問いかけた。


「大丈夫なんですか? 二人を二人だけにして……」

「あ、あぁ……何よりソラは今まだ制御出来ていないんだろう?」

「じゃーから外に出るか、という話じゃろう。外は外でも街の外じゃが」

「「「……」」」


 どうやらカイトは一悶着を起こしてでも解決することにしたらしい。瞬達は全員、カイトとソラの出ていった方を無言で見るしかなかった。その一方。ギルドホームを後にしたカイトとソラはというと、出てすぐに飛空術で町を出ると、そこそこ離れた場所を目指して進んでいた。そうして暫くして、カイトは目的の二人が居る場所を見付けてそこに舞い降りる。


「ああ、居た居た」

「おお、来たか」

「……」

「武蔵さんに宗矩さん?」


 カイトが降り立った場所に立っていたのは、ソラの言う通り武蔵と宗矩の二人だ。そうしてそんな二人を前に、カイトがソラへと告げた。


「少し荒療治にせにゃならんだろうからな。万が一の万が一が起きた場合に備えて、お二人に協力を依頼した」

「……すんません」

「良い良い。それにしてもまさか浅井か。儂も知らなんだが、織田信長を裏切ったことは聞いておる。まさかそれがお主に転ずるとはのう」


 因果なこともあるものだ。ソラの謝罪に楽しげに笑いながら、武蔵はそう口にする。


「で、先輩と<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>に聞いた。オレに似た力が手に入ったそうだな」

「お前……」

『すまぬ。だが神使殿に言わぬわけにもいくまいというこちらの立場もわかってくれ。それに正体を明かしてはおらん。あくまである程度の共有だけだ』

「まぁ、そうだけどさ」


 やはりなんだかんだカイトには伝わってしまうものだし、<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>に至っては本来太陽神シャムロックの神剣。月の女神の神使であり伴侶であるカイトとは深い繋がりがある。

 本来であれば神使でもなんでもないソラの過去世の正体がわかり、彼が危害を加えることが判明した時点で共有せねばならないはずで、それをしてくれなかっただけ温情と言えただろう。それは道理としてわかっているソラであったが、やはり少し不貞腐れていた。そんな彼に、カイトは告げた。


「ま、とりあえず……ソラ。もうおおよそわかっているだろう」

「……」


 こくん。カイトの問いかけに、ソラははっきりと頷いた。こんな町の外まで連れ出して、武蔵と宗矩の二人まで用意したのだ。それが何を意味するかは彼にも理解できていた。そうして、カイトが指をスナップさせる。それだけで超広域に結界が展開され、周囲から隔絶された空間が出来上がった。


「……来い。浅井新九郎長政。かつて狙った首、今目の前にあるぞ」

「っ」


 どくんっ。カイトの声に応ずるかのように、ソラの奥深くに眠っている浅井長政が脈動する。そうして次の瞬間、ソラの姿が光り輝いて陣羽織を羽織った姿へと変貌を遂げるのだった。

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