第3716話 殺し屋ギルド編 ――再集合――
各国の暗部に蔓延り、各所で暗躍を重ねていた殺し屋ギルドという闇ギルド。それに対して昔から何度となく暗闘を繰り広げていたカイトであるが、そんな彼は自身を狙う暗殺者を捕縛した事。それに端を発する冒険者ユニオンの大改修を利用して、殺し屋ギルドへの一大攻撃を計画する。
そうしてラグナ連邦僻地のドゥリムという地にあった殺し屋ギルドの拠点を壊滅させると、冒険者達はそのまま増援部隊が来たルートを逆探知して他の殺し屋ギルドの拠点を襲撃。カイトはエネシア大陸から遠く離れ、ラエリアのあるアニエス大陸とエネシア大陸の間にある大洋のど真ん中にある隠された島の攻略に乗り出していたのだが、その最中。殺し屋ギルド最高幹部の一角であるセクスなる人物が島を訪れていることを掴み、彼は急遽その追撃に乗り出していた。
『にぃー。海面の凍結処理完了。これでどうやっても逃げらんないよ』
「あいよ……バルフレア達は?」
『バルっち達なら今上に居るよ。もう甲板に乗り込んだ……一応抵抗はあるみたいだけど』
「よっしゃ……ま、抵抗は無意味だろう。自爆するなら話は別だけどな」
これで制圧確定だな。カイトはソレイユからの返答に、今回の一件の大金星を確信する。というわけで暫くしていると、飛空艇が数隻殺し屋ギルドの潜水艇を取り囲むように飛来する。そして更に飛空艇から降下部隊が甲板に降下する。
「来た来た……本部直轄の制圧部隊。始まったな」
背後で響く怒声の嵐に悲鳴が混じり始めたことをカイトは知覚する。どうやらユニオン本部直轄の冒険者達が潜水艇に乗り込んで、戦闘を開始したらしい。まぁ、大半が戦闘力の乏しい船員だ。逃げ惑うしか出来なかったのだろう。そして更に少しすると、今度は念話が入ってきた。
『カイトさん。お久しぶりです、俺です』
「お? この声……ゴードンか?」
『はい。ご無沙汰してました』
「久しぶりだなぁ……制圧部隊をお前が?」
『ええ……艦橋エリア制圧しました。艦橋ハッチ開きます……投げないでくださいよ』
「あいよ」
古い馴染みの冒険者の声に、カイトは楽しげに応じながら今まで閉じていた艦橋に続く扉の封印を解く。そうしてそれと同時に、一人の30代前半ぐらいの冒険者を先頭に何人かの冒険者達が艦橋へなだれ込む。
「全員、動くな。この船は冒険者ユニオンが制圧した。抵抗は無意味だ」
「うわっ……おっさんになったなー」
「うわっ、ひどいなー」
「あははは……っと」
天井に顕現させた異空間に浮かんでいたカイトであるが、ゴードンという年嵩の冒険者――一番最初に入ってきた冒険者――が苦笑したのを受けて艦橋に舞い降りる。そうしてゴードンに歩み寄ると、彼は右手を差し出した。
「久しぶり」
「ええ……貴方の方はおかわりなく……で、良いですかね?」
「ま、おかわりありといえばおかわりありだが」
今のカイトは姿を偽ったままだ。なのでかつてと同じ容姿ではないといえば容姿ではない。というわけで、そんな古馴染みの求めを受けて彼は偽装を解除。本来の姿を露わにする。
「この通り、息災変わりなし。お前も元気そうじゃねぇか」
「ええ……ああ、ここからは俺が引き継ぎます。バルフレアさんが甲板でお待ちで……っとぉ!」
「おっと……」
ぐらり。潜水艇が大きく揺れて、ゴードンが驚きカイトが僅かに目を見開く。そして大きな揺れと同時に、ソレイユから再び念話が入った。
『にぃー。潜水艇、回収するって。海中から攻撃仕掛けられるのも面倒だからー』
「そりゃそうだ。いくらお前らが凍結させてるからってぶち抜けるからな……って、あれ?」
『来ちゃった』
「あはは」
ソレイユの言葉に艦橋から外を見たカイトだが、そちらでソレイユがひらひらと手を振っているのを見てカイトが笑う。なお、潜水艇の外側では分厚い鎖が垂れ下がっており、飛空艇数隻で潜水艇を持ち上げようと作業を開始していた。
「じゃ、後は任せるわ。下の方での戦闘も……ほとんど終わってるか」
「ええ。通信機からこっちへ第三階層までの制圧完了の報告が来ています。まぁ、まだ底部エリアは抵抗しているみたいですが……銃座の要員で戦闘力はいまいちですね」
「そうか……ま、じゃあ後は任せるか。オレはバルフレアの所でお楽しみに参加してくら」
「あははは……主賓も楽しめれば良いですけどね」
「いやぁ、楽しんで欲しいものだな」
ゴードンの言葉にカイトは楽しげに笑う。そんな彼の目線の先。甲板では一人の老齢の男が数人の冒険者達に囲まれて連れてこられており、その様子は明らかに連行という言葉が正しかった。
「殺し屋ギルド最高幹部……ナンバーズの一人か。オレも初めて見た」
「ユニオン史上初の快挙ですよ。流石ですね」
「あははは……懸賞金、上がるかな?」
「これ以上上がること、あるんです? もう払えるのか疑問ですよ」
カイトの冗談にゴードンが楽しげに応ずる。そんな彼の言葉を背に、カイトは甲板へと移動する。するとすでにそこでは何人かの別の拠点を攻めていたはずの古馴染みの冒険者や、アイナディスらまで集結していた。そんな所に、カイトもまた歩いていく。
「おぉおぉ、こりゃ壮観だ……バーンタインは……流石に間に合わなんだか」
『流石にのう。あっちはまだ砂漠を探索しておる』
「そか……ティナ、そういえばまだバッテリーは大丈夫なのか?」
『いや、そろそろまずいのう……そこの尋問を見届けたら、大気圏に突入させて自壊させる』
「時間目一杯使った感じか」
はるか上空を見上げて、カイトはそちらに移動していた人工衛星を確認する。というわけで一度だけ見上げた彼は再び前を向いて、バルフレアの真横へと立つ。
「はい、オレ様到着と」
「おう……大金星だな」
「おう」
バルフレアの突き出した拳に、自らの拳を突き合わせる。そして彼が到着したと同時に、天空からレヴィが舞い降りた。それにカイトが笑う。
「……最後の役者も到着か」
「いや、まだだ」
「うん?」
自身の問いかけに首を振ったレヴィに、カイトは訝しげに小首を傾げる。そしてその言葉と同時に、蒼炎が迸り黄金色の穴が生じた。そうして現れるのは、漆黒の大鎧に身を包んだシャヘルらであった。
「……」
「おいおい……まさかまさかの暗殺者ギルドの最高幹部達までお出ましか」
「殺し屋ギルドの壊滅を考えるのであれば、最長老らの助力は必須だ。故に打診をしたが……まさか長老達までお出ましとはな」
目深に被ったフードの下で、レヴィが僅かに口角を上げる。そうして全ての役者が揃った所で、殺し屋ギルドの最高幹部への尋問が開始されることになるのだった。
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