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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3708話 殺し屋ギルド編 ――進撃――

 各国の暗部に蔓延り、各所で暗躍を重ねていた殺し屋ギルドという闇ギルド。それに対して昔から何度となく暗闘を繰り広げていたカイトであるが、そんな彼は自身を狙う暗殺者を捕縛した事。それに端を発する冒険者ユニオンの大改修を利用して、殺し屋ギルドへの一大攻撃を計画する。

 というわけでラグナ連邦僻地のドゥリムという地にあった殺し屋ギルドの拠点を壊滅させると、冒険者達はそのまま増援部隊が来たルートを逆探知して他の殺し屋ギルドの拠点を襲撃。カイトはそれを横目に情報の解析を待つわけだが、その結果。エネシア大陸から遠く離れ、ラエリアのあるアニエス大陸とエネシア大陸の間にある大洋のど真ん中にある隠された島に殺し屋ギルドの拠点がある事が判明。カイトはソレイユらの支援を受けつつアイナディスと共に島の攻略に乗り出していた。


「ほいよっと!」

「ぐぇ!」


 十数人からなる衛兵達の攻撃を回避し、そのカウンターとしてカイトが魔銃に似たなにかの銃口をその身体に叩き込む。そしてくぐもった声が響いたその次の瞬間、カイトが容赦なく引き金を引いた。


「ぎゃあ!」

「はい、もう一人……次は?」

「「「っ……」」」


 引き金を引くと同時に放たれる紫電により仲間の一人が倒れ伏し、それを見た町の守備兵達が後ずさる。あまりに圧倒的。実力差は天と地よりも高い差があった。


(うーん……何処までこいつらがこの島が殺し屋ギルドの保有物と知ってるんだろう。普通の一般兵レベルの戦闘力しかないからなぁ……ガチで何も知らないパターンが怖すぎる)


 そこが一番の問題だ。カイトは下手をすればこの守備兵達さえここが殺し屋ギルドの訓練施設であると知らない可能性がある事にやり辛さを感じていた。

 下手に殺してしまって実は何も知らない、自分達は普通の衛兵と思い込んでいると判明したら流石に後味が悪すぎる。手っ取り早く殲滅して制圧、が出来なかった。というわけで攻めあぐねるカイトに、守備兵の一人が意を決して雄叫びを上げた。


「っ、おおぉおおおおお!」

「はいよ」


 両手剣を振り上げて迫りくる守備兵の一人に、カイトは一瞬でその背後へと移動。背中に魔銃を突き付けて紫電を流し込み意識を喪失させる。というわけで倒れる男を見て渋い顔で、カイトは宙返りして距離を取る。


「うーん……はい、一つ質問!」

「「「?」」」


 魔銃を消失させて柏手一つ、守備兵の視線を集めたカイトが笑って問いかける。その異質感に守備兵達は困惑しながらも、流石に警戒感から攻め込む事は出来なかったようだ。


「誰かラエリアについてご存知の方は?」

「ラエリア?」

「西の……確か大きな島だったか? あのデカい病院があるっていう」

「そういや……聞いた事があるな。町長のお嬢さんが行く病院だっけ?」

「あー……そういや言ってたな」


 どうやら当たり前のように常識から隔離された島らしい。カイトは世界中の情勢から完全に離れて、大国の名前さえうろ覚えな守備兵達の様子にそれを察する。そしてそれを察した事で、カイトはもう一つ理解する。


(この守備兵達は完全に何も知らない、ってわけか。おそらく町長のお嬢さん、ってのは<<人形使い(ドールマスター)>>。あのお嬢ちゃんだ……この守備兵は完全に一般的な兵士と同程度かそれ以下。平和な町の衛兵レベルだ。おそらく万が一紛れ込んでしまった奴が居た場合に、それを見せるためだけの兵士だな)


 おそらくこいつらは完全に何も知らず、平和な島を演じるためだけに用意された偽装だろう。カイトはそれを理解し、不殺を決める。そして決めた所で、彼は肩を竦めて告げた。


「はい、どーも。オレはラエリアに縁がある者ではあるが……ま、そこらは追々話があるだろう」

「……どういうことだ?」

「この島には色々と秘密がある、ってこった……ほら、その秘密の一つが来たみたいだな」


 守備兵の一人が訝しげにカイトに問いかけると共に、守備兵達の後ろから黒服の男が一人現れる。それは明らかに守備兵達とは風格が異なっており、身に纏う力もまた桁違いだった。そんな黒服の男の出現に、守備兵達が困惑を露わにする。


「あんたは……」

「町長の所の?」

「……何故貴様がここに居る」

「オレをご存知で? ま、これでも一応ラエリアじゃ英雄扱いされてるんだけど」

「……」


 すちゃっ。楽しげに笑って嘯くカイトの問いかけに、応ずるつもりはないとばかりに黒服の男が小型のナイフと魔銃を構える。そうしてそんな黒服の男が、守備兵達に告げた。


「町長の命令だ。お前らは墜落した飛空艇の救助に向かえ」

「え? ですが……」

「こいつはお前らが敵うような相手ではない。もうわかっているだろう。いたずらに守備兵に犠牲を出したくない、という町長のご判断だ。倒れた奴らを連れて、一旦詰め所へ戻り装備を整えろ」

「「「……はっ!」」」


 おそらく隊長と思われる守備兵の困惑気味な問いかけに、黒服は重ねてこれが町長の命令であると告げる。そして守備兵達もカイトにはどう足掻いた所で勝てないと理解はしていた。

 町長も同意見で、黒服を差し向けたのがその代替案だと言われると納得するしかなかったようだ。倒れた守備兵達を抱えて、撤収の用意を開始する。


「どうぞどうぞ……オレとしてもあんたらにいられちゃ邪魔でしゃーないんだわ。黒服のおにーさんもそれで良いよな?」

「……」

「相変わらずだんまりか」


 カイトの問いかけには応ずるつもりはないらしい。黒服の男は楽しげなカイトの問いかけに無言を貫く。そうして倒れた守備兵達を抱えた残りの守備兵達が去っていったと同時に、黒服の男が消える。


「ふっ」

「っと」


 消えた黒服の男がカイトの真後ろに出現すると同時に、カイトの喉を掻っ切るような動きでナイフを振るう。だがこれにカイトは出現よりも前から屈んでおり、それを回避。そのまま地面にぺったりと張り付くように屈むと、そのまま地面を舐めるように足払いを放つ。


「っ」


 たんっ。カイトの足払いを受けて、黒服がその場から飛び退く。そうして空中に舞い上がった所で、彼は手にしていた魔銃を速射。カイトに向けて魔弾の雨を降らせる。


「はっ」


 降り注ぐ魔弾の雨に、カイトは地面に着いた手で地面へとルーン文字を刻む。そうして刻まれたルーン文字が即座に発動し、地面が壁のように隆起。降り注ぐ魔弾の雨を防ぎ切る。


「……」


 黒服の男は魔弾の雨を降り注がせながら空中を移動し、距離を取って着地。魔弾で壁を削っていくと共に、どこからともなく取り出したナイフを弧を描くような軌道で投げる。そうして壁の裏に居るカイトを狙うが、壁が崩れ去ると共に彼はカイトの姿がそこにない事を理解した。


「っ」


 上にも左右にもどこにもいない。黒服の男は壁を隠れ蓑に何処かに消えたらしいカイトの気配を探る。だが数秒、どれだけ気配を探ってもどこにもカイトは影も形もなかった。それに、黒服の男は僅かにだが警戒を緩める。


「……逃げた、か」

「いや、全然?」

「ぐっ!」


 ばちっ。紫電が迸り吹き飛ばされながら、黒服の男はカイトの声がした自分の後ろを確認する。そこでは彼が楽しげに魔銃を振るっていた。流石に守備兵達とは異なり一撃で昏倒するという事はなかったようだ。


「貴様……! どうやって!」

「さぁ? 流石に飯の種は教えてやれんよ」


 言うまでもないが、黒服の男は先程自分がしたように自分の後ろに回り込まれている可能性は最初から念頭に置いて、気配を探る際にもいの一番で真後ろの気配を探った。

 にも関わらず、一切の気配がなかったのだ。更に探知の距離を広げて周囲数十メートルにカイトが居ない事を確認したからこそ、僅かに警戒を緩めたのだ。それが最初から後ろに居た、は少し信じられなかったようだ。というわけで驚きと怒り、そして痛みを深呼吸で鎮め、男は立ち上がる。


「っ……ふぅ……」

「頑張るねぇ……ま、お前から聞く必要がない、ってのがわかってるからお前はもうどうでも良いんだが」

「なに?」

「守備兵達が言ってたろ? 町長の所の、って……つまり、この島の町長とやらは殺し屋ギルドと繋がってるってわけだ。後どれだけの奴が殺し屋ギルドと繋がっているかは知らんがな……おかげで島民全員に聞いて回る必要がなくて助かるよ」

「ちっ……」


 流石に何も知らない守備兵の口を塞ぐ事は難しい。しかも意図的に平和な島を演じさせるため、敢えて守備兵の練度も少し低めにしてある。必然要らぬ事を口にしてしまったとしても仕方がない所ではあった。


「じゃあオレはさっさと次の仕事に取り掛かりたいんでね。ああ、逃げられるとは思うなよ? もう気付いているだろうが、本土からフロドとソレイユが狙ってる。飛空艇は離島出来んぞ」

「……」


 カイトの指摘に黒服の男の顔が歪む。流石にあの二人の腕前は殺し屋ギルドでも有名過ぎるのだろう。しかも射程距離が射程距離。どこに居るか掴めていても、平然と狙撃してくる可能性があるのだ。なにもない海上では狙撃してください、と言っているようなものでしかなかった。

 というわけで、再び黒服の男との戦いを再開。聞く事も何も無い黒服の男は数秒後に地に倒れ伏し、彼は楽しげに町の中央にある一番大きな建物を目指していく事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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