第3706話 殺し屋ギルド編 ――発見――
各国の暗部に蔓延り、各所で暗躍を重ねていた殺し屋ギルドという闇ギルド。それに対して昔から何度となく暗闘を繰り広げていたカイトであるが、そんな彼は自身を狙う暗殺者を捕縛した事。それに端を発する冒険者ユニオンの大改修を利用して、殺し屋ギルドへの一大攻撃を計画する。
というわけでラグナ連邦僻地のドゥリムという地にあった殺し屋ギルドの拠点を壊滅させると、冒険者達はそのまま増援部隊が来たルートを逆探知して他の殺し屋ギルドの拠点を襲撃。カイトはそれを横目に情報の解析を待つわけだが、その結果。エネシア大陸から遠く離れ、ラエリアのあるアニエス大陸とエネシア大陸の間にある大洋のど真ん中にある隠された島に殺し屋ギルドの拠点がある事が判明。カイトは単騎大洋に乗り出していた。
「……うーん。見渡す限り海海海……何も見付からんな」
『そう簡単に見付けるわけでもないんでしょう?』
「飛空艇の航路からは外れている。更に言えば船の航路からもな……まぁ、皇国とラエリア間の直通ルートを使う便はもう殆ど出てないけどさ。あまりに沈没のリスクが高すぎて……まぁ、今ならやれるかもしれないけどさ」
とはいえ時間も掛かるし、危険度もあまりに高い。カイトは自身が乗った幾つもの船が沈没した事を思い出して、ため息を吐く。
『そういえば貴方も船旅をしたんですって?』
「ああ……昔は考えられなかっただろ?」
『私でひとっ飛びだったものね』
「そ。まー、言っても詮無きことだけど。やっぱ魔物だけじゃなくて嵐に巻き込まれるだけで沈没のリスクは激増する。それが木造船ならなおさらだ。今は一応金属の船が主流だが……それでも魔物と天候不順による沈没のリスクは避けられん。どうしても移動は北方の流氷を破砕して進むか、南方を大きく迂回するルートにならざるを得ん。そこらの新航路発見はバルフレアの功績の一つでもあるしな。ラエリアに若干近い程度のここはもう見付かりっこない場所だ」
見渡す限りの海で、しかも飛空艇の主要航路からも船の主要航路からも外れている。下手に航路を外れれば一気に危険性が増すのがエネフィアだ。主要航路から外れ航海しようという者は滅多にいなかった。
「さて……まぁ、それはさておきだ。どっちでも良い。どこかに島は?」
『うーん……多分大規模な結界が使われてるっぽい。私達じゃ見えないかなー』
『うん。僕の方でも無理だ……多分地脈かなにかを使って大規模な結界を展開してる。僕らの目も所詮は魔眼の一種。しかも距離や精密性を重視しているから、こういった大規模な結界には弱い』
「ま、そりゃしゃーないわな。それにだからこそ現地の観測手が居るってわけだし」
ソレイユとフロドの返答に、カイトはさもありなんと納得していた。これについては物の道理という所で、超長距離からの狙撃を成し遂げられるからにはある程度の制約は存在していたのであった。というわけで、カイトはどうしたものかと少し考えて、一番簡単かつ効果の出やすい魔術を使用する事に決める。
「こーいう場合楽なのは……はっ!」
どんっ。気合一閃、カイトが大剣を振り下ろし剣圧で水面を叩く。するとそこを中心に巨大な波が生じて、周囲へと散っていく。
座標はわかってもその座標はかなり大きく誤差がある。おそらく殺し屋ギルドの者たちは内々になにか信号を出し合っているのだろうが、こちらにはそれがない。ならばこの何ら目印のない海の中で探すなら、なにかしらの手段は必要だった。
『何をやったの?』
「簡易のソナーみたいなもんだ……周囲の島を探すためのな」
『バレない?』
「構いやしねぇ……どうせこっからやんのは襲撃だ。今バレるか数分後にバレるかの差だ……それに、だ」
にたり。カイトは返ってきた反応と反応と共に現れた異変に、僅かにほくそ笑む。そしてそれで、エドナも彼の意図を察したようだ。
『なるほど。敢えて変化を起こさせる事で、敵の居場所を探ろうというわけ』
「そーいうこと……見付けたぞ」
カイトのソナーが到達すると共に、おそらく島と思しき方角からなにかの魔術行使の僅かな兆候が現れる。そうしてそちらの方向へ虚空を蹴って移動を開始すると共に、カイトが推測を口にする。
「おそらくこれは自動で反応する隠形系の魔術だな……周囲で戦闘反応があった場合に自動で展開されて強固にするためのものだろう」
『まだ気付いていないの?』
「流石に来るとは思っていないんだろう。なにせこっちはさっきまでエネシア大陸はラグナ連邦の東端だ。それがなんの脈絡もなく一足飛びに大洋のど真ん中。来てる事を想像しろ、って方が流石に酷ってもんだろう」
しかも情報も厳重に隠されている場所だ。それをまさか一日と掛からず探し出して攻め込む、というのはまず不可能に近い。最初から情報が漏れていたからこそのこの結果だった。というわけで進むこと数分。二人の前に、かなり大きな島が現れる。
「……あれ、だな」
『みたいね……高度下げるわ』
「おう」
周囲で魔物かなにかが交戦した事はこの島にも伝わっている。見張りも立っている事は間違いなく、現段階でそちらにまで見付かるつもりはなかった。というわけで高度を下げて海面スレスレで隠形の魔術を展開。それと共に、ソレイユ達へと通信を入れる。
「こちらカイト……見えてるか?」
『うん……こっちからも隠形を抜けた』
『場所さえわかってしまえばこっちのものだからね』
「よっしゃ……じゃ、タイミングは合わせてくれ。オレが仕掛けると同時に、逆側にアイナを転移。一気に両側から攻めかける」
『『りょーかい!』』
カイトの指示に兄妹が威勢よく応ずる。そうして二人の返答を聞くと共にカイトはエドナの背を叩き、攻略が開始される事になるのだった。
お読み頂きありがとうございました。




