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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3681話 殺し屋ギルド編 ――迷宮――

 かつて『子鬼の王国(ゴブリン・キングダム)』の一件にて捕らえた殺し屋ギルドの幹部リトス。彼女は謂わば現地の司令官という感じではあったが、それを捕らえた事によりカイトは殺し屋ギルドの襲撃を受けた事をきっかけとして捕縛した何人かの殺し屋達。

 その一人であるジェレミーという少年の別人格デュイアが殺し屋ギルドの暗号を知っている事を掴んだカイトは、その情報を元に殺し屋ギルドへの反撃をバルフレア達に打診。その受諾を受けて、彼はデュイアが対価として求める『陰陽石(いんようせき)』という特殊な魔石を求めて中津国にある『光闇山(こうあんさん)』という特殊な山へと訪れていた。

 そうして『光闇山(こうあんさん)』にたどり着いた二人だが、目指すのは山頂ではなく麓にある迷宮(ダンジョン)だった。というわけでモノトーンの迷宮(ダンジョン)を進む二人だが、早々に魔物との遭遇に陥っていた。


「……」


 じりじりっ。瞬は間合いを測りながら、敵の動きを見定める。その一方、相手方の魔物もまた間合いを測りながら瞬の動きを見定めるかのような様子を見せていた。


(モノトーンの槍兵……お手並み拝見と行きたい所だが)


 この戦いだが、相手が槍兵と見るや瞬が望んでカイトに譲ってもらっていた。同じ槍使い同士、と言うべきかは定かではないが、魔物で槍使いだ。子鬼(ゴブリン)種なら珍しくもないが、この魔物は少し毛色が異なっていた。


(動く鎧か……中身があるかどうかが肝要か)


 槍兵の魔物は珍しくはあるが、やはり見たこともないようなほどではない。故に瞬も何度か相対しており、可能な限り交戦はしてきていた。そして同じく動く鎧、もしくは鎧を身に着けた魔物とは何度も戦っていた。


「……」


 数瞬のにらみ合いの後、瞬は一瞬だけ呼吸を止める。そうして止めたと同時に地面を蹴って跳躍し、鎧の魔物へと肉薄。その胴体に向けて刺突を放つ。


「っ」


 放った刺突を騎兵達が持つランスのような幅広の槍で流されて、瞬は僅かに顔を顰める。だがこの程度で倒せるほど甘い相手とは思っていないし、だからこそこれは次への布石でしかない。故に彼はそのまま突き進み、更に距離を詰める。


「はぁ!」


 更に距離を詰めた瞬は鎧の魔物が持つランスへと裏拳を叩き込み弾く。そうして弾かれた所に、更に一歩踏み出して胴体へと掌底を叩き込む。


「はっ!」


 がんっ。甲高い音が鳴り響いて、鎧の魔物が吹き飛ばされる。そうして彼は先ほどの一撃の感覚を確かめるように、数度拳を握りしめる。


(中身はある……か)


 中身がないのならもっと音は甲高いはずだし、衝撃も軽くなるはずだ。瞬は先程の一撃で中に何かが入っている事を察知したようだ。


(こいつを倒そうとするとこの鎧をまずはなんとかしないと、か)


 改めて槍を構えながら、瞬は起き上がってくる鎧の魔物をしっかりと見据える。そうして彼は鎧の魔物が起き上がったと同時に、再び地面を蹴って跳躍。距離を詰める。


「はぁ!」


 今度の一撃は先程のように次への布石のためではなく、攻めるための一撃だ。故に彼が仕掛けた攻撃は初撃の比ではない速度だったのだが、やはり鎧の魔物も並ではなかったようだ。


「っ」


 弾かれた。瞬は自身の一撃がランスの薙ぎ払いにより弾かれた事を理解する。そうして弾かれがら空きになった瞬の胴体へと、鎧の魔物がランスの穂先を突き付ける。


「まだまだ!」


 弾かれたは弾かれたが、地力の差としてはさほど大きく離れていなかったようだ。瞬は殆どダメージもなかったようで、迫りくる穂先に対して強引に腕を割り込ませるようにして軌道を逸らす。


「はっ!」


 だんっ。ランスの軌道を逸らした瞬は更に一歩踏み込んで、そのまま鎧の魔物へと蹴りを叩き込む。そうして距離を離すと共に、彼は空いていた左手に槍を顕現。二槍流となると吹き飛ばされた鎧の魔物へと追撃を仕掛ける。


「はぁ!」


 中身があるのなら狙うべくは鎧の接合部。瞬はそう判断すると、吹き飛んでいる鎧の魔物の首部分を上から串刺しにする。そうしてぬるりと潜り込んだ槍の穂先だがしかし、相手は魔物だ。喉を突き刺したところで死ぬわけもなかった。とはいえ、痛みは感じているのか先ほどまでの攻撃よりはるかに強い力で瞬をランスで薙ぎ払う。


「くっ……だが!」


 放たれたランスの一撃に対して、瞬は左手に持っていた槍で迎撃。吹き飛びそうになる身体を魔力の放出により強引に押し留める。そうして自らの身体を押し留めると、彼はそのまま突き立てた右の槍に力を込める。


「はぁ!」


 堅牢な鎧で覆われているのであれば、内部から焼き尽くす。瞬は鎧を身に纏った、もしくは鎧のように強固な外殻を持つ魔物を相手にする場合の常道を取ったようだ。だが、そうして放たれる業火が内部から焼き尽くすわけだが、再び鎧の魔物が瞬へと刺突を繰り出す。


「!?」


 薙ぎ払いならまだしも刺突はまずい。瞬は業火に焼かれながらも刺突を繰り出す。鎧の魔物に思わず目を見開き、一瞬だが反応が遅れてしまう。とはいえ、幸いな事にかなりのダメージがあったからか鎧の魔物の刺突は先ほどまでの力強さはなく、瞬を吹き飛ばす程度しかなかった。


「くっ……思った以上に耐久力があったか」


 ガシャンガシャンと音を立てながら再び立ち上がる鎧の魔物に、瞬は僅かにしかめっ面でそう呟く。だが確かにダメージはあったようで、鎧の魔物の各部から煙が上がっていた。そうして、鎧の魔物がまるで雄叫びを上げるかのように大気が震え上がる。


「ぐっ!」


 音ならざる音が鳴り響き、瞬が思わず更に顔を顰める。そうして震え上がる大気を切り裂いて、鎧の魔物が瞬へと肉薄する。


「なに!?」


 明らかに手傷を負った魔物の速さと強さじゃない。瞬は繰り出された薙ぎ払いの一撃に目を見開く。明らかに手負いの魔物とは桁違いの速度で、下手をすれば最初の交戦と比べてもより速い可能性があった。そうしてその薙ぎ払いにより、瞬は更に大きく吹き飛ばされる。


「くっ!」


 ずざざざっ。土煙を上げながら地面を滑り、瞬は急減速。そこに鎧の魔物がランスを振り下ろす。


「ちっ!」


 やはり思ったより速い。瞬はその速度が尋常ならざる事を察すると、制動をキャンセル。勢いに乗ってその場から跳躍してランスの叩き付けを回避すると、そこで改めて姿勢を整えてぐっと足に力を込める。だがその時にはすでに鎧の魔物も次の行動に移っており、その姿は空中にあった。


「はぁ!」


 再び迫りくる鎧の魔物に対して、瞬は右手の槍を突き出してそのランスを迎撃。だがその一撃に思わず再度目を見開く事になる。


「っ! やはり!」


 先ほど以上に力を上げている。瞬は鎧の魔物の一撃が片手では堪えきれない事を察するや、即座に両手でその攻撃を受け止める。そうして受け止めると同時に彼の身体から雷と炎が吹き出して、鎧の魔物を一気に押し戻した。元々<<雷炎武(らいえんぶ)>>は使っていたが、自身が押し負けた結果を受けてその出力を上げたのだ。


「ふぅ……」


 鎧の魔物を弾き飛ばし、瞬は一度だけ呼吸を整える。何が起きているかは定かではないが、少なくとも当初より戦闘力が上がっている事は事実だ。ならばそれを前提に戦略を構築する。そう判断した。と、そんな彼の前で再び鎧の魔物が雄叫びを上げるように大気が震え上がる。


「……ふっ」


 確かに一度目は驚き、思わず動きを止めてしまったが、二度目となると耐性がある。故に瞬は震え上がる大気を切り裂いて、鎧の魔物へと肉薄。そのまま一気に鎧の魔物へと槍を突き付ける。


「はぁああああ!」


 雄叫びを上げて、音ならざる音の震源地へと槍を突き出す。そうして穂先が音ならざる音を切り裂き、しかしその穂先はランスにより弾かれる。


「くっ! ん?」


 ぱんっ。まるで何かが弾け飛ぶかのような音が鳴り響き、瞬は僅かに鎧の魔物が膨張したような印象を抱く。


「っ」


 何かまずい事が起きようとしている。瞬はそう直感的に理解する。


「ちっ! 禁式!」


 このまま時間を掛けると、おそらく良くない。瞬はそう判断すると、更に<<雷炎武(らいえんぶ)>>の出力を増大。追加で魔槍の力を解き放つ。


「おぉおおおお!」


 続くランスの攻撃を強引に相殺し、瞬が僅かに広がっていた鎧の隙間へと穂先を潜り込ませる。


「奪い尽くせ!」


 穂先が鎧の隙間に潜り込んだと同時に、瞬が自らの相棒へと簒奪を命ずる。そうして真紅の輝きが鎧の内側から放たれて、跡形もなく鎧の魔物が消滅するのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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