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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3669話 暗殺者ギルド編 ――交渉――

 冒険者ユニオンから非合法の暗殺者ギルドへの情報の流出。それに対応するべくバルフレアら冒険者ユニオンのトップは、三百年前の大改修に協力したマクダウェル家に協力を依頼。その依頼を受けたカイト達は三百年ぶりの大改修に向けて新しい規格を構築し、それをエネフィア全土のユニオン支部へと展開するべく準備を進めていた。

 その最中。カイトは最近暗殺者ギルドとの交戦で手に入れた保護した暗殺者を取り返す、もしくは情報を盗まれないように殺そうとした暗殺者ギルドの暗躍を受けて孤児院に赴くと、かつて自身を狙ったジェレミーという少年と再会。彼の幾つかある人格の一つ――ジェレミーもその一つであるが――にして、主に他者との関わりを担当するデュイアという少女の人格との交渉に臨む事になっていた。


「……」

「と、いうわけでな。現在デュイアと交渉中なわけなんだが」

「……」


 カイトの言葉を聞き、元暗殺者ギルドの幹部であるリトスは苦い顔というか渋い顔だ。まぁ、元々ジェレミーの事を知っていた彼女だし、デュイアのことも当然知っていた。

 だが元々が暗殺者であるためある意味日常を司るデュイアと関わるのはある意味これが初めてに近く、彼女が何を知っているのかも知らなかったのだ。そうしてカイトから受け取ったメモ紙を見ていた彼女が、しばらくしてため息を吐いた。


「恐れ入ったわ。デュイア……だっけ。あの殺ししか能のないクソ生意気なガキよりよほど使い物になるわ」

「何か有益な情報があったのか?」

「いや、ないわ。でも知っている可能性は示唆出来る」


 渋い顔をしていたリトスであるが、しばらくして浮かべたのは感心だ。そうして、彼女が数度頷いた後にはっきりと告げた。


「色々と鑑みた上で、何を提供して何を提供するべきでないか理解している。ここにあるのは暗殺者ギルドが使う幾つかの暗号よ。中には幹部しか知らないはずの暗号まである……あの子、本気で暗殺者やったら幹部になれるわ」

「幹部しか知らない暗号?」

「そりゃ、末端の小物に知られたくない話とか色々とあるわ。組織の内情とか。それを伝達するのに使う暗号文よ。といってもそんな情報は書いてないけど……内容は人をおちょくる内容……だったら破り捨ててやるけど、貴方への口利きを頼む文章。はぁ……本当にデュイアって子と関わりたかったわ」


 基本的にリトスが関わるのは殺し屋であるジェレミーだ。故に基本は生意気な態度を取られ印象は最悪だったわけだが、逆に社交性の高いデュイアはそういった事が一切なかった。

 後のリトス曰く自分に不快感を与えないように配慮しつつ、自身の有益性を伝えるのに十分な文章になっていたそうである。というわけでそんな彼女の返答に、カイトは一つ問いかける。


「ということはこの交渉は続けて損がないと」

「間違いなく。どこで知ったのやら……いや、大体は推測出来るわね。意外と、暗殺者ギルドの幹部って言っても腕はピンキリだったわけ」


 吐き捨てるように。しかしどこか楽しげにリトスはデュイアがこの情報を手に入れた経路を推測して笑う。この暗号を知っているのは言うまでもなく幹部だけだ。一端の暗殺者でしかないデュイアというかジェレミーが教えてもらえる事はない。ならばどこかでこの情報を盗んだとしか考えられなかった。


「何かわかったのか?」

「ええ……大方どっかのクズがデュイアを抱いたんでしょ。で、そいつが寝ている隙に情報を盗み見た。もしくはおだてられて気が良くなって暗号文を見せたのかもね。どうせわかりはしない、って高を括ったんでしょう」

「それはそれは。オレも気を付けないとな」


 元々そういった性愛の対象となる事を前提として生み出された人格がデュイアだ。それ故に非常に高い社交性を有するわけだが、同時にだからこそ知性も非常に高かった。それを暗殺者ギルド側はしっかり認識出来ていなかったようだ。というわけで改めて示されたデュイアの有益性に笑うカイトに、リトスが笑う。


「抱くつもり? 気持ち良いらしいけど。何人か夢見心地でくたばったから間違いないでしょ」

「まさか。男……というか男の娘? それは別にしてもガキを抱くつもりはねぇな。しかも寝首を掻かれそうなな」

「そうね……ま、それはそれとして。独学で暗殺者ギルドの幹部の暗号を解読してそれを使いこなせるのは非常に有能よ。交渉は進めて良いと思うわ」


 おそらく自力で色々と探り、知っているのだと思われる。リトスはデュイアの知性を非常に高く評価していたようだ。


「よっしゃ……じゃ、交渉は継続。情報を出させてみるか」

「私も同席して良い?」

「ん? まぁ、別に構わんが」


 どうせ何度かはリトスに助言を求める事にはなりそうなのだ。カイトはそれならいっそ同席して貰った方が手間が省けるかと考えたようだ。そんな彼に、リトスが理由を語る。


「少し興味が湧いたわ。元々はクソ生意気なジェレミーとしか殆ど関わらなかったし、あいつがターゲットに犯されている所を後ろからぐさりはしたけど。だからデュイアとは殆ど関わらなかったのよ。暗殺者ギルドが求めてたのは殺しの腕だから」

「ふーん……あれ? そういえばその時に話さなかったのか?」


 よく考えればそういう対象になるための人格がデュイアだ。情事の際を狙ったのなら、必然的に関わりがあるのではと思ったようだ。だがこれにリトスは首を振る。


「言ったでしょ、殺しはジェレミーの仕事。あいつ、必要なら犯されもするわ」

「お、おぉう……意外と仕事熱心なのな、あいつ……」

「そりゃ、殺すのにそれしか手がなけりゃね」

「その割にゃ初心っぽかったけど」

「それが殺しに役立つからでしょう。男ってのはどいつもこいつも手慣れた情婦より初心な小娘の方が油断するのよ。小娘じゃないけど。割と様にはなってたわよ、あいつの演技も。まぁ、今にして思えばデュイアって子に教わったのかもだけど」

「そんなもんかねぇ」


 殺しの依頼が出されるような相手がどういう人物かはカイトもわかりかねるが、プロの殺し屋達がそう判断したのならそうなのだろう。カイトはそんな様子でリトスの呆れ混じりの言葉を受け入れるだけだ。


「まぁ、良いわ。そこらはどうでも……とりあえず交渉に参加したいならどうぞ、って塩梅だ。ああ、ただ教育室の室長も同席するから、その点だけは覚えておくように」

「げっ……」

「何だ、苦手なのか」

「苦手というかなんというか……」


 あの人怖いから。リトスは少しだけ恥ずかしげに視線を逸らす。ルーナの面倒見の良さは折り紙付きだが、手の出る早さも折り紙付きだ。故に新しく入ってきたメイドや執事達は全員がルーナの事を畏れていた。まぁ、同時にしばらくすると全員がマクダウェル家で教育室を担当するとなると腕っぷしが必要なのだとも理解するようになるが。


「元暗殺者ギルドの幹部に怯えられるのなら教育室の室長の面目躍如だな……ま、それはさておいても。今はルーナさんがあいつの教育、もとい説教も担当してるから同席は必須になるんだ」

「そう……」


 粗相のないように気をつけよう。リトスはルーナの前だと理解して、心にそう刻み込む。まぁ、ここでやっぱりやめた、となろうものなら後々それがルーナに伝わって何を言われるかわかったものではなかった。というわけで諦めたリトスと共に、カイトは再びデュイアとの交渉に臨むべく孤児院へと向かう事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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