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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3630話 禁足地編 ――謎の遺跡――

 カイトの生誕祭の最中にもたらされた天領ノクタリアで起きている異変の情報。そこは天領とは名ばかりで、実際は交通の要衝でありながらも禁足地と呼ばれる危険地帯を含むがゆえに国が直接管理するという曰く付きの場所だった。

 というわけでユーディトの案内でマルス帝国の秘密研究所にやってきていたカイトであるが、調査の末その秘密研究所の更に奥に採掘場と呼ばれるエリアがある事が発覚。禁足地の影響を受けていると考えたカイトは単身採掘場へと乗り込むのであるが、そこで彼が目の当たりにしたものはルナリア文明とも異なる古代文明の遺跡であった。

 そうして古代文明の遺跡の中で自分を無視して巡回を続ける謎のゴーレムたちの巡回について回って謎の古代遺跡を進んでいたわけだが、その道中。ふとした事で巡回されていない亀裂を見つけると、カイトはその中に<<闇結晶(ダーク・クリスタル)>>という本来は邪神の影響の強い地に生ずる危険物質を発見。この遺跡の謎は更に深まっていたのだが、それを一旦横において調査を続行。

 更に奥へと続く通路にて、彼はこの古代遺跡を調べていたと思しきマルス帝国の研究員の白骨死体を発見すると、休憩がてら研究員が持っていた手帳を読んでいた。


『よくそんな所で食べられるわね』

「慣れたよ、いつの間にかね」


 ぱくぱくぱく。カイトはおそらくこうなるだろうと見越して持ち込んでいた携帯食料を口にしながら、シャルロットの問いかけに答える。

 色々と動き回っていたし、途中何度と足を止めたりゴーレムを追跡して脇道に逸れたりしていた。すでに昼食を食べる時間としては丁度よい頃合いか少し遅いぐらいの時間に差し掛かっていた。そうして食べながらも手帳を読み進めること暫く。無関係な部分を読み飛ばした事もあり、大凡の内容は読み込めたようだ。


「……」


 なるほど。手帳を読み進めてカイトが感じたのは、ある種の納得だ。だが同時にその顔には僅かな苦みが乗っていた。というわけで手帳を閉じた彼に、シャルロットが問いかける。


『何かわかって?』

「ああ……どうやらマルス帝国の研究員たちもこの古代遺跡が何なのかわかっていなかったらしい。というよりも、こいつはそれを調べるために組まれた調査隊の一員だったようだ。こいつ個人の感想としては古ルナリア文明の遺跡じゃないか、と思っていた様子だ」

『的外れも良い所ね』

「そう言えるのはシャルやオレだからだ」


 実際そうなのだし、他の遺跡と見比べてみればこの遺跡が古ルナリア文明の遺跡と異なっている事はカイトにもわかる。だがそれはシャルロットの神使として各地の遺跡の情報の収集を行ったカイトだから言える事で、そういった事前知識もない研究員たちがわからなかったのも無理はないことではあっただろう。というわけでそんな事を口にするカイトは更に続けた。


「それで<<闇結晶(ダーク・クリスタル)>>についてはこの遺跡で見付かっただけで、他の所では見付かっていなかったらしい。あの秘密研究所があったのはそれが理由だな。魂に影響を与えるという性質を見込まれたようだな。危険物質としてあまり他所には持ち出したくなかったんだろう。相当ヤバめな研究もやってたようだ」

『ほんと、狂気の沙汰ね』

「だな……」


 流石人体実験を山程やった末期のマルス帝国だろう。カイトをして呆れ返るしかないほどであった。


「まぁ、それはそれとしてだ。このゴーレムたちは当初攻撃性を示していなかったらしい。無視して遺跡の調査及び古代文明がこの結晶をどう利用したかなどを調べようと考えていたらしいな」

『でもこの有り様、と』

「そういうわけ」


 二人は改めてゴーレムにより殺害されたと思しき白骨死体を見る。何があったかは相変わらず定かではないが、途中までは問題なかったようだ。


「どうしようかねぇ。これ以上奥に進めばアウトなら進みたくはないんだが」

『進みたくない、で調査が進めば良いわね』

「二の舞を演じる事にはなりたかないんだがなぁ……」


 どうしたものか。カイトは少しだけ悩ましげに考える。どの時点までこの調査隊が大丈夫だったのかは定かではないが、少なくともゴーレムと敵対関係になる可能性は示唆されている。下手に進んでこの高性能なゴーレムとの交戦になるような事は避けたい所であった。とはいえ、答えはすでにシャルロットが述べている。


「ま、行くしかないか。楽観視するわけじゃないが、いくら性能が高かろうと所詮はゴーレム。退路も問題ないから行けるか」


 退路はいくつも用意している。最悪この世界から放り出されてもエドナが居てくれる限り、カイトにはなんの問題もない。というわけでカイトは立ち上がると、再び奥を目指して進む事にする。


「……ふぅ」


 白骨死体が散乱する更に内部へ続く場所の前に立って、カイトは一度だけ深呼吸する。もしここから先に進む事が敵対の原因なら、カイトも例外なく敵として指定される事になるだろう。というわけで彼は深呼吸一つで意を決して、足を踏み出した。


「……」


 何が起きても不思議はない。故にカイトは更に内部へと足を踏み入れると同時に、わずかに鯉口を切る。カイトにとっては悪い視界だが、どうにも謎のゴーレムたちは周囲の状況が検知出来ているらしい。即座に駆け付けてくる可能性はないではなかった。そうして待つこと数分。何も起きない状況に、カイトはほっと胸を撫で下ろす。


「大丈夫……か」

『そうみたいね』

「ふぅ……っ」


 何かが近付いてくる。それに気付いてカイトは再度刀の柄を強く握りしめる。この音が何かはすでにわかっている。というわけで案の定、彼の前にこの古代遺跡を守るゴーレムの一体が姿を現した。


「……」


 ゴーレムが停止してカイトを認識する。そうして数秒何も起きる事がなく、そしてそれからも何も起きる事はなかった。


「……場所……じゃないみたいだな」

『そうみたいね。そういえば下僕、気付いていて?』

「次は何に?」

『このゴーレムたちが貴方を認識して、数秒タイムラグが生じているわ』

「そうだな。敵対者か何かを確認していると思うんだが」


 とりあえず自分が敵ではない事を確認しているのだろう。カイトはそう思っていたが、どうやらシャルロットは違う推測を立てていたようだ。


『もしかしてあのゴーレムたち。貴方がこの周囲に満ちる闇に侵食されていないか確認しているのではないかしら』

「なるほど……たしかにそれはあり得るな。んで、ある程度以上の侵食が確認された時点で敵と認定、か」


 現時点でこの古代遺跡周辺で何かしらの生き物を確認していないので正解かどうかはわからないが、このゴーレムたちに遭遇する度、ゴーレムたちがカイトを無視するまでに数秒のタイムラグがあるのだ。それが彼が侵食されいないか確認するためなのであれば、確かに筋は通った。

 そして侵食に関してはカイトは大精霊たちの力により無効化される。これが真実であれば、カイトはこの中では完全に無害な存在として認識されている可能性は高かった。


「よし。とりあえず真実かはわからないが、それを真実としておこう……てかそれならオレしかやっぱ来れないんか」

『流石私の下僕よ』

「あははは……はぁ。あ、いや。アイナとかも行けるか。でも流石に他国の要人に任せらんないか……はぁ」


 何度となく言われているが、別に侵食を無効化出来るのはカイトに限った話ではなく、大精霊の契約者であれば問題ない。これは世界のシステムとしての保護なのでいくら神々の力と言えど侵食は無理だった。だが結局色々と考えた結果やはり自分しかないとなり、カイトは諦めて先に進む事にする。そうして中に入って見えた光景に、カイトは目を丸くした。


「……これは……デカいな」

『……』


 中はどうやら巨大な空洞があり、そこに浮かぶような形でいくつもの構造体が存在する奇特な形状だった。しかもどうやらその構造体に吸収されているのか、この中は黒いモヤがかなり薄く見通しが良かった。というわけでその光景に驚いていたカイトであったが、一方のシャルロットは険しい顔だった。


「どうした?」

『下』

「あれは……」


 空洞の最下部を見て、カイトもまた険しい顔になる。そこには巨大な<<闇結晶(ダーク・クリスタル)>>が何個もあったのだ。そしてその近くには石碑のようなものも設置されており、古代文明が何か情報を残した事が察せられていた。


「……全部を調べる時間はなさそうか。とりあえずあの石碑を調べてみよう」


 流石にここには色々とありすぎて、今日一日で全ての調査は難しそうか。カイトはそう判断すると、ひとまず最下部へと降りてみる事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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