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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3619話 禁足地編 ――出発――

 幾らかのトラブルに見舞われながらも、無事に終了したカイトの生誕祭。そんな最中に皇帝レオンハルトから禁足地ノクタリアという場所にて異変が起きている事を知らされ、彼はその調査と異変が生じていた場合解決を要請される事になる。

 というわけで降雪の関係から年内最後になるだろう北部への大規模な遠征を行うソラ達の出発を見送って数日。彼は彼で禁足地ノクタリアへ向かう準備を整えていたのだが、そのために彼はルークの所へとやって来ていた。


「というわけなんだ。それで同行を頼みたい」

「禁足地ノクタリア……聞いた事ぐらいはあるね」


 カイトの問いかけに答えるより前に、ルークは一つ頷いてそう告げる。禁足地ノクタリア。またの名を天領ノクタリア。有名というほど有名ではないが、知っている人は知っていた。そんな場所だった。というわけでルークはカイトの要請に対して一つ頷いた。


「同行の申し出については勿論、請け負わせて貰おう。聞く話によるとマルス帝国より更に前の文明の痕跡がある、という事だ。そうなってくると私自身の研究分野に関わってくる可能性はおそらくあるんだろうね」

「そうだな。マルス帝国も終焉帝が人を派遣し、調査に当たらせたと聞いている。間違いなくマルス帝国時代の遺跡ではないんだろう」

「それは初耳だね」


 カイトの言葉にルークが少し驚いた様子で目を見開く。まぁ、この話は実際先にユーディトから聞くまで皇国の誰も知らなかったものだ。そしてこの話はホタルからも裏が取れており、間違いなくマルス帝国よりも前の時代の痕跡があるとの事であった。


「わかった。それならなおさら請け負わせて貰うよ。それで出発予定は?」

「明後日の朝一番に出発。昼過ぎには到着する予定だ」

「そういえば近いんだったっけ」

「ああ。まぁ、ウチの飛空艇だから、という所はあるがな」


 本来なら飛空艇を使っても一日二日は掛かるだろう距離だが、マクダウェル家の有する高性能な飛空艇であれば一日も掛からず到着出来るらしい。特に今回は皇帝レオンハルトからの要請もあり少数での行動になるので、遅い船を使う必要がなかった。


「そうかい……わかった。じゃあ、こっちもすぐに準備に取り掛かるよ」

「良いのか?」

「どうせ父達は僕の行動をどうしようともできないからね」


 サンドラに許可を取る必要などはないか、というカイトの言外の問いかけに対してルークが一つ笑う。すでにルークの魔術師としての才覚は並の魔術師を遥かに凌駕している。『神の書』の神を呼べる時点で父の腕も上回っている事は明白だ。そしてサンドラは魔術の腕こそが全てだ。一応親子としての掣肘はできても魔術師としての掣肘はできないのであった。


「っと、それは良いや。兎にも角にも承知した。さっきも言った通り、すぐに準備に取り掛かるよ」

「何か用意であるか? すぐに準備させるが」

「いや、エテルノさえ居てくれて衣食住さえ確保出来ればそれで問題ないよ」


 元々『星神(ズヴィズダー)』と関わらざるを得なかったルークだ。身一つ――エテルノは魔導書として――で戦う事は想定に入れており、最低限の装備で戦える程度の戦闘の腕もあったようだ。


「わかった。じゃあ、当日は公爵邸に来てくれ。今回はそちらから飛空艇が出る」

「そ、そうなのか」


 邸宅から直接飛空艇が出られる設備があるのか。流石にルークもこれにはわずかに呆れたようだ。とはいえ、技術力にせよ何にせよエネフィア随一のマクダウェル家だ。可能ではないとは思えなかったようだ。


「わかった。時間に遅れず行かせて貰うよ」

「頼む」


 ルークの返答にカイトは一つ頷いた。そうして彼はルークの招聘に成功すると、再びその他の用意に奔走するべく各所を回って支度の確認やら指示やらを執り行う事になるのだった。




 さてカイトがルークの招聘を行ってから二日。彼は全ての支度を整えると飛空艇の上に居た。その横には言うまでもなくユーディトが一緒だった。


「そう言えばユーディトさん」

「なんでしょう」

「ノクタリアは元々あんな闇で溢れかえっていたんですか? 三百年前にはすでにあの状況だった事はオレも知ってるんですが……皇国の最初期の頃の情報は失われてしまっていたのでおそらくそうだ、という程度でしたんで……」

「そうですね。私が赴いた頃……と言っても入った事まではありませんが、そうだったと記憶しております」


 カイトの問いかけに対してユーディトは少しだけ目を閉じて一つ頷いた。彼女にしても数百年前の記憶だ。思い出そうとしてすぐに思い出せるものではなかったようだ。


「そうですか……となるとシャル」

『……私が記憶する限りでもあそこはああだったわね。おそらくルナリア文明よりも前の可能性は高いわ』

「ルナリア文明は調査隊を派遣したりはしなかったのか?」

『したわ。ただ危険度が高すぎて、調査はうまくは進まなかったみたいね。数百年手つかずのままよ』


 カイトの問いかけに、シャルロットはため息混じりだ。当然だが今回の一件、何が絡んでいるか誰にもわからない。闇が蠢いているという見張りの兵士達の報告も要領を得ないもので、単なる気の所為の可能性だってあった。だが様々な可能性がある以上、対邪神の切り札であるシャルロットに同行を依頼したのは当然の話であった。


「そうかぁ……だが可能性か」

『まだ私の記憶の解凍が完全ではないことぐらい知ってるでしょう。特に無関係な記憶の解凍なんて急ぐ必要もないのだし。全部を復活させようとすれば数年は掛かるわ』

「だな……まぁ、ルナリア文明崩壊期にはああなっていた事がわかっているだけ御の字か」


 間違いなくマルス帝国が出来るよりも前に禁足地の状態が出来上がっていた事はわかるのだ。そこにマルス帝国が何を見出して、というのはこれからの調査で調べる事だが、少なくともマルス帝国が何かの実験をしでかした結果ではないことは間違いない。それだけで情報は一つ消せた。


『そう考えなさいな。それにそれがわかっているからこそ私も同行してあげてるんでしょう?』

「そうだな」

『……何がそんな嬉しいの』

「久しぶりにお前と冒険出来てるのが」

『……あまりはしゃぎ過ぎて怪我しないように注意しなさい』


 カイトの返答にシャルロットが少し恥ずかしげな様子を見せた後、そんな事を口にする。そしてこれにカイトが笑った。


「あいよ。ま、あのガキの頃よりは色々と経験を積んだんだ。手は掛からなくなっているぞ」

『どうだか』


 くすくすくす。カイトの言葉にシャルロットが笑う。と、そうして話しているとどうやら禁足地ノクタリアが近付いてきていたらしい。カイトが一瞬顔を顰めた。


「っ……近付いてきたな。風にぬめった気配が混ざり始めた」

『こっちはまだ感じないわね』

「そっちは室内だろ」


 一瞬だが風に乗ってやって来たどこか軟質ななにかの気配にノクタリアへの到着が近い事を感じながら、カイトは笑う。


「このぬめった気配……相変わらずだ。どうやら相変わらずのようだな」

『そう……さっきも言ったけど注意なさいな。何が起きるかわからないわ』

「あいよ……じゃ、オレもそっちに戻る事にしますかね」


 この気配が漂い始めたという事はもうしばらくするとこれが常態化するのだ。カイトとしても不快感を感じるこの気配の中に常時居たいわけではなかった。

 というわけでノクタリアへの到着の前に、カイトもまた飛空艇の中へと戻っていく。そうして彼が飛空艇の中に戻っておよそ1時間後。飛空艇はノクタリア近郊にある飛空艇の発着場に着陸するのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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