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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3581話 はるかな過去編 ――帰還――

 過去での様々な騒動を経てついに未来への帰還を開始したソラ達一同。そんな彼らは途中更に未来のカイトとの出会いやソラの落下などのトラブルを経つつも、着実に元の時代へ向けて進み続ける。そうして元の時の道へと戻ったソラは流石に心配させまいと平静を保ちながらも再び歩き続け、ついに一同は終わりまでたどり着く。


「また白い壁……か」

「っすね……また調整するのか?」

「いや、もうこれで終わりじゃ。この先はお主らの知る冒険部の執務室じゃ」

「「「っ」」」


 やっとか。一同はおよそ半年と少しぶりに帰還する自分達の時代に僅かに息を呑む。そうしてそんな彼らに、時乃は一応の確認を行っておく。


「では元の時代へ戻すが……覚悟は良いな?」

「「「……」」」


 誰ともなく視線を交わし、頷きを交わす。そうして全員異論がないことを確認して、先頭を歩いていた瞬が時乃へと頷いた。


「うむ。では、これで長かった時の旅も終わりじゃ。良いな?」

「はい……あの、時乃さん。ありがとうございました」

「くくく……お主ら主様が言う通り礼儀正しいのう」


 頭を下げた瞬に合わせて全員頭を下げてきた事に、時乃が上機嫌に笑う。これに瞬が告げた。


「いえ……これでお会いする事はないでしょうから……そちらはカイトと一緒だと思うので、見てるとは思うんですが」

「そうか……では、行くぞ」


 ぱちん。瞬の言葉に頷くと共に、時乃が指をスナップさせる。すると再び一同を白い光が包みこんで、その次の瞬間。カイトの声が響いた。


「ソラ! せんぱ……あれ?」

「カイト……か?」

「あ、あぁ……ん? 時乃?」

「「「うわぁ!」」」


 てっきり時乃はどの時間、どの世界でも顕現出来ないものだと思い込んでいたらしい。カイトの指摘で彼女まで一緒だった事に全員思わず仰天して腰を抜かす。

 そもそも勝手に瞬達が勘違いしただけだ。まぁ、それをそのままにしておいたあたり、相変わらず時乃は良い性格だった。というわけで腰を抜かした一同を笑いながら、時乃はカイトへと告げる。


「くくく……主様。とりあえず荷物をお届けじゃ」

「なるほど。大冒険は終わった、ってわけか。オレにとっちゃ一瞬だったが、どれだけの時間が経過したか察せられるな」


 時乃の言葉で、カイトがおおよそを理解したらしい。何より全員少しだけではあったが肉体的に成長し、戦闘力としては大幅にパワーアップしたのだ。超常の戦士であるカイトがそれをひと目で見抜けないはずがなく、時乃が現れた事でおおよそを理解するには十分だった。


「あいたたた……はぁ。やっと帰ってこれたってのに……あー……」

「あはは……ま、とりあえずみんなお疲れ様。報告は後で良いから、一旦自室に戻って……自分の部屋の場所、覚えてるか?」

「忘れるほど馬鹿になってねぇよ……あいたたた……」


 流石にこの一幕は落ち込んでいたソラに普通の反応をさせるには十分だったようだ。彼は時乃の顕現に驚いて自分の執務用の机に打ったお尻をさすっていた。


「そうか。それは結構……ん?」

「カイト! 何が起きた! とてつもない力が……なんじゃ、これは。何が起きた?」

「「「あははは……」」」


 駆け込んできて見てみれば、ソラ達がそれぞれどこかしらをぶつけていたのだ。一体何が、とティナが思うのは無理もなかった。というわけで恥ずかしそうに笑う彼らを横目に、カイトが笑った。


「気にするな。色々とあった、ってこった……とりあえずオレの幻聴の理由も分かったから、とりあえず本体を起こしてくる」

「うん? そうなのか?」

「ああ……なんてこたぁない、世界の異変の予兆だったってだけだ」

「なんてこたぁないことじゃないぞ、それは……」


 相変わらず世界の異変などに関しては気楽に答える奴じゃ。ティナはお気楽な様子のカイトに呆れ返る。


「はぁ……まぁ、とりあえず何がなんだかはわからんが、ひとまずお主らもここを出よ。あれだけの力が放たれたんじゃ。何が起きておるか……時乃様!?」

「うむ。ま、色々とあったというわけじゃ」

「は、はぁ……」


 なぜ時乃様までソラ達といっしょに。ティナは状況が掴めず困惑する。そうして滅多に見れるものではない光景を見ながら、一同はひとまず自室に戻ってしっかり身体を休める事にするのだった。




 さて一同が一旦自室に戻ってようやく帰還の実感を手にして数時間。カイトも本体を起こして、改めてソラ――数時間の間にとりあえず区切りは付けられた――と瞬、更にセレスティアらを交えて消えた一瞬の間に何が起きたかの共有を行う事になっていた。そしてカイトの方もまた、本体を起こした際に過去の記憶を共有されていたようだ。


「ということはお前もあの戦いの記憶はあるのか」

「ああ。分け身だったから無理だったが、本体側に意識が戻った瞬間に記憶が戻った。随分と大変だったな」

「いや……お前に比べれば相当マシだと思い知った……」


 こちらもこちらで相当な修羅場をくぐり抜けていたのに、過去世は過去世で相当な修羅場をくぐり抜けていたのだ。瞬はカイトのねぎらいの言葉にただただ深くため息を吐く。


「あははは。それも二回な」

「はははは……はぁ。だがまぁ、色々な力は手に入れられた。実りはあった」

「そうか……にしても希桜様とか久しぶりに名前を聞いたなぁ。流桜も元気なのか」

「はい。そういえば同盟以外の話なぞとんとしておりませんでしたね」


 カイトの言葉にセレスティアは自分の世界にまだ生きている彼の時代の人々についてほとんど話していなかった事を思い出す。そしてこれにカイトも頷いた。


「そうだな……今思えば、オレも少し意図的に避けてたかもな」

「そうなのですか?」

「さぁな。話さなかったということはそういうことなのかもな、ってことだ」


 もしかしたら必要がなかったというだけかもしれないけどな。カイトは笑いながら、そう述懐する。と、そんな彼に瞬がそういえばと話の流れで問いかける。


「そうだ。カイト」

「ん?」

「結局流桜様はなんなんだ? 希桜様も教えてはくださらなかったし……セレスティア達もわからないということだ」

「え、マジ?」


 もしかして未来でも話されていないのか。瞬は今のカイトが過去のカイトとまるっきり同じ顔をしている事が少しだけ面白かった。そしてそれはセレスティアも一緒だった。


「はい」

「ん?」

「ああ、いえ……まるっきり過去の御身も同じような顔をされていらっしゃったものですから」

「あははは」


 まるで成長していないということか。カイトはセレスティアの指摘に恥ずかしげだ。というわけで少し笑った後、カイトが教えてくれた。


「流桜は精霊の一体。『星の卵』から生まれた精霊だ」

「『星の卵』!?」

「知ってるのか?」

「え、えぇ……ですが実際に聞くのは初めてです。まさか流桜様がその精霊だったとは……」


 瞬の問いかけに頷くセレスティアの顔には満面に驚きが浮かんでいた。それほどまでに珍しい存在だったらしい。


「先輩とかソラにわかりやすく言うと斉天大聖……西遊記の孫悟空だ。大地を親として、大地の力が集まって生まれる精霊。大精霊に次いだ星の守護者にも等しい。本来は龍族が育てるはずだったんだが、なんかあって希桜様に預けたらしい」

「そ、そうだったのか……あれだけの力を持っていたのも納得だ……」


 謂わば神話の神や伝説の英雄と同格の肉体を持っているわけか。瞬は流桜が幼くして無双の戦闘力を有していた理由に納得する。


「だがなにがあったんだ?」

「知らん。爺さんにでも聞けば教えてくれるだろ」

「爺さん?」

「……あ、気にするな」


 一瞬考え込んだカイトが、どこかしまったというような様子で慌てて笑う。というわけで触れたくなかったらしい。彼は話をすぐに転換する。


「それはともかく、だ。二人共……その、そろそろカイト様とか御身とかはやめて?」

「いえ! やはり過去の御身とお会いして、我らが呼び捨てなぞ烏滸がましいと理解しました。それに私はやはり巫女。その巫女が御身を呼び捨てにするなぞ民に示しが付きません」

「イミナさんは」

「わ、私がですか!?」

「そうっすか……」


 どうやら過去世の自分と会ったせいで、せっかくこちらの認識に合わせていたのが過去世の八英傑のカイトに上書きされてしまったようだ。カイトは過去の自分同様に様付けで呼ばれる様になっていた事にがっくりと肩を落とす。

 特にイミナに至ってはガッチガチに固まってしまっていた。過去のカイトの偉大さを再認識した事で緊張までしてしまっている始末であった。


「はぁ……大した事してないとは言わんがなぁ……レックス達が居て初めて成し遂げられた事だ。オレ自身はそんな偉い奴でもなんでもないんだが」

「それでも御身が当時の人々にとって希望であった事に間違いはありません。私はあの時代を直に見て、それをはっきりと理解しました。改めて、私は御身に仕える事を誓います」

「おいおい……」


 巫女としての最上級の敬礼を行うセレスティアに、カイトは盛大に嫌そうに顔を顰める。


「で、ソラはどうした? なんか妙に変な様子だけど」

「いや、まぁ……ちょっと色々と」

「うん? まぁ、色々とあったのはわかるが……遠征、きついなら先輩に頼むか?」


 どこか妙に避けられている雰囲気がある。カイトは報告を受ける最中に自分からの問いかけに対して一瞬だけ反応が遅れている事に気が付いていた。とはいえ、この時点での彼からしてみればやはり疲れているのかもという程度でしかなく、そんな彼の提案に瞬もまた同意する。


「そうだな……たしかに俺も今回、王国とのやり取りは基本お前に任せていた。遠征は変わった方が良いか?」

「あ、いえいえいえ! 大丈夫っす! すんません、気を使わせて。ほんとに自分の事じゃないんっすけど、自分の事というか……ちょっと踏ん切りが付けにくい事があって……ただそれだけの事っす」

「そうか……? それなら良いんだが……」


 瞬からしてみれば時の道に戻ってきた後から急に変な様子なのだ。一応カイトにも先にそれとなく伝えてはいるが、当人が大丈夫と言うのならと信じるしかなかった。というわけでソラの言葉に瞬もそれを受け入れる。そしてそれはカイトも一緒だった。


「そうか……わかった。まぁ、出発までは幸いまだ時間がある。それまでしっかりと身体を休めておけ」

「そうする……悪い、気を遣わせちまって」

「良いって。お前らも大変だっただろうからな。何より、巻き込んだのはあのバカだし」

「あははは」


 やはり王子とはいえ結局カイトにとっては幼馴染で親友というわけなのだろう。もはや立場もない、とあけっぴろげにバカ呼ばわりであった。というわけでそんな彼の懐かしさの滲んだ言葉で、ソラは思い出した。


「あ、そうだ。カイト、これ。レックスさんがお前に誕生日プレゼントって」

「うん? これは……うぃ!?」


 ソラから手渡されたアクセサリーに、カイトが素っ頓狂な声を上げる。過去の彼が言っていた通り、このアクセサリーは非常に重要なものだ。本来は国宝として扱われていても不思議はなかった。それがいきなり出てきたのだ。こうもなった。だがその一方、瞬もこれで思い出したらしい。そういえばと収納用の魔道具を開く。


「ああ、そうだ。そういえばあったな……えーっと」

「え? 待って? オレ記憶消えてんだけど、あのバカども何してんの? てかなんでオレ止めてねぇの?」


 本当に過去のカイトとこのカイトはただ成長の過程が異なるだけで魂を同一とした同一人物なのだろう。そうわかる様子で困惑して良いのか怒れば良いのかという様子の彼が頬を引きつらせる。そうしてカイトへと様々な遺物がもたらされる事になり、彼は暫くの間嬉しいやら怒れば良いのやらと頭を抱える事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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