表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3603/3930

第3570話 はるかな過去編 ――発進――

 魔界への扉を閉じる上で最重要となる開祖マクダウェルが使ったとされる<<雷鳴剣>>。永き時を経て力を失った二つの刃の再活性化のため、是が非でも<<雷鳴の谷>>の大砦を攻略せねばならなくなってしまったカイト達。彼らは未来から来たソラ達の協力を得ながら、偶然元の状態をほぼ維持したまま墜落した古代の飛空艇を復元。更にノワールが手慰みで拵えた輸送車をベースとした輸送車を量産して陽動部隊としてその攻略に取り掛かる。

 そんな攻略作戦は第一攻略目標である丘を魔族側の爆薬により吹き飛ばされるという事態に見舞われ後詰の兵力さえ前線に投入するという事態に見舞われる中進められた攻略戦であるが、無人の輸送車部隊をすべて投入。更には兵力も大きく消耗させながらも大砦前に設置された地雷原を突破するに至っていた。


『輸送車部隊第二陣、地雷原突破しました!』

「よし!」


 想定より投入している戦力は多いが、それを加味してもここまでは上出来と言えるだろう。カイトはノワールからの報告に拳を握り締める。


「接近戦は?」

『仕掛けてきません! やはり自爆を警戒している様子です!』

「っしゃ! 今の内にとりあえず進めるだけ進ませろ!」

『そうしてます!』


 カイトの言葉にノワールは言われるまでもない、とばかりに答える。そうして大砲をなぎ倒しながら、大型の輸送車が突き進んでいく。だがそんな進行は当然だが順調には進まなかった。


『副砲、動きあり! 奴ら撃ってくるつもりだ!』

『そんな!? まさか味方ごと!?』

「っ……流石にやってくるか。レックス!」

『おう! ノワール! 展開しろ! お前らも準備を!』

『りょ、了解です! 障壁展開! 障壁展開!』


 大砲をなぎ倒しながら進んでいた輸送車が一箇所に集中していく。副砲は主砲ほどの威力はないものの、流石に使い捨ての障壁で耐えきれるものではない。なので何台もの輸送車の障壁を連結して防ぐ事にしていたのである。とはいえ、それでも出来て一発か二発だった。というわけで輸送車部隊が隊列を整え集結していくのを見ながら、カイト達もまた支度に入る。


「ソラ、瞬。そろそろオレ達の出番だ」

「おう。ソラ、そろそろ出力を上げるぞ」

「うっす!」


 状況の推移を見守っていた瞬が作業に入ったのを受けて、ソラもまた椅子に腰掛けてシートベルトをしっかりと着用する。そうして今までオフになっていた全システムを立ち上げていく。その一方、自身も後ろに戻ったカイトは後部エリアにも備え付けられたモニターで状況の推移を確認していた。


「っ」


 後部エリアに戻ったカイトが見たのは、丁度副砲が輸送車部隊に向けて放たれた直後だったらしい。閃光で一時的に何も見えなくなる。だがそれも一秒も満たなかった。


「よし……頼んだぞ」

『それは我々の言葉だと思うがな、団長』

『ええ……こちらで敵を引き付けるんです。壊してもらわないと困りますからね』

『支援はできそうにありません。後を任せるしかないのは心苦しいですが……』

『こっちもひどいことになりそうなのだから、言っても一緒でしょう』

「そうだな……ま、任せとけ。あのデカブツは絶対に叩き壊してやる」


 通信機から響く四騎士達の声に、カイトはぱんっと手を鳴らして応ずる。そうしてその言葉を最後に、輸送車の下部以外が吹き飛ぶ様に弾けた。


「「「おぉおおおお!」」」


 輸送車の土台以外が弾け跳んで、その中から現れたのは両国の四騎士達を中心とした二つの騎士団。そうして弾けた破片は宙を舞って地面に落下するかと思われたその次の瞬間、輸送車同士を繋ぐ橋となって即席の戦場を築き上げる。


「な、なんだありゃ!?」

「移動式の足場!?」

「お、おい! あれを止めろ! なんかはわからんが、あれはマズい!」

「進路上の奴らは飛び乗れ! 上に乗れるはずだ!」

「お、おう!」


 唐突に現れた超高速で移動する足場には流石の魔族達も泡を食った。そうして呆けている間にも騎士達の足場と化した輸送車は一気に大砦へと直進していく。


「はははは! 奴ら相当泡を食った様子だな!」

「それはこんな物を出されれば誰だって呆けるでしょうよ。私だって聞いた時は目が点になったもの」

「お前が? 信じられんな!」


 ライムの冗談にグレイスは楽しげに大砦からの砲撃を切り捨てながら笑う。当たり前だが騎士達だって移動しながら戦う事は不可能だ。

 それなら足場そのものを移動させてしまえば良い、となったのだ。そして幸い、輸送車はブロック化している。そのブロック化の利点はこうして様々な機能を取り替えられる事だ。

 なので少し力業――実は本陣で魔術師達が輸送車同士の足場を維持している――ではあったが、こうして無茶が出来たのであった。そして一気に大砦へと距離を詰めていく騎士達に、魔族達もまた大きく動きを見せる。


「雷鳳様! 青と赤、共に戦場に出現! 奴ら、鉄の荷車の中に潜んでいた様子!」

「うむ……」

「はっ! <<雷剣隊(らいけんたい)>>、総員出陣準備! 私が出るまでには準備を終えておけ!」

「全員、とっくに出来てますよ」

「そうか」


 雷鳳の視線を受けると同時に、彼と同じようなどこか和風の陣羽織に似た格好をしていた壮年の剣士が号令を下して指揮所を後にする。そうして彼が指揮所を後にすると共に暗雲が立ち込め雷鳴が轟いて、大将軍直属部隊の出陣を戦場全域へと知らしめる。


「……来るか」

「……雷鳳は?」

「……まだでしょう。奴が兄さんが出ない限り出てくるとは思えない」

「侮られた、とは思うべきではないでしょうね……皆さん。ではまた、勝利の後に会いましょう」

「「「……」」」


 ルクスの言葉に四騎士達は無言で頷き合う。そうして彼らはこの数ヶ月で身に付けた全属性による強化を身体に施すと、無言で闘気を立ち昇らせていく。そんな光景を、最後方のソラ達もまた見ていた。


「嘘だろ……本当に天候が変わるのかよ」

「天候を変えた、は少し間違いだな。本来ここらは雷雨が頻繁に降る所だった。それを自分達に都合が良い様に書き換えて、こうして攻め込まれたタイミングで振り戻しをさせるんだ。当然だが今まで押し込まれていた変化が一気に振り戻してくるんだ。その雷雨は普通の雷雨よりも激しくなる」

「元々の想定が雷雨だったんだ。問題はない」


 ソラの言葉に応ずるカイトの解説に、機器の調整を雷雨に対応出来る様に変更していく。そうして砦から揃いの陣羽織を羽織った剣士達が飛び降りて来ると同時に、騎士達もまた空中へと躍り出る。


「……」


 どちらの戦士達も人類、魔族からトップクラスの精兵達だ。しかも両陣営最高クラスのサポートが行われており、その初撃の激突は巨大な爆発を幾重にも引き起こす。そうして生まれた衝撃は周囲で飛び交う魔弾をすべてかき消して、一瞬の空白を生じさせる。


『今です! 全砲兵、一斉射開始! フラウ、砲撃、投石、撃てる物はすべて撃ち込んで!』

『しゃあ! 投石機とかも全部準備整ってる奴から連射しろ! 幸い奴らが丘を吹き飛ばしてくれたおかげで、弾は山程ある! 投石機はじゃんじゃんやっちまいな!』

「「「おぉおおお!」」」

「出力上昇よし。障壁準備よし」

「カタパルト反応よし。カタパルト展開開始」


 ノワールの号令と共に人類側のすべての投擲装置、魔導砲、火砲のすべてが火を吹いて、一斉に攻撃を開始する。元々この展開は想定されていたものだ。そうして生じた空白にこちらが全部を投入する事も、だ。そしてそれこそが、飛空艇発進の合図でもあった。


「射軸確認……ソラ。前方右斜め下の投石機は見えるか?」

「これっすか?」

「ああ……それが今装填した輸送車の残骸を投げて、次を撃ち出す瞬間にこちらも発進するぞ」

「うっす」


 これは即席の作戦だったが、人類側は飛空艇を残骸に紛れ込ませるために輸送車の残骸も投石機で弾丸として撃ち出していた。なのでそれに紛れて発進するつもりだった。


「「「……」」」


 飛空艇の発進までおそらく残り一分もないだろう。全員が無言でその時を待つ。そうして一同が無言で見守る中、飛空艇の出力は上昇を続け臨界点を突破。いつでも飛翔可能な状態へとたどり着く。


「出力臨界突破。飛行可能です」

「了解……カイト、ノワールさん」

「オレはいつでも構わん」

『……後は、お願いします』

「……はい」


 二人の応諾に、瞬は一つ頷いた。そうしてその数秒後、二人が合図と見定めた投石機へと輸送車の残骸が乗せられ、更にその数秒後。投石機が輸送車の残骸を投擲すると共に飛空艇がまるで射出されるかの様に飛び立つのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ