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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3567話 はるかな過去編 ――本格化――

 魔界への扉を閉じる上で最重要となる開祖マクダウェルが使ったとされる<<雷鳴剣>>。永き時を経て力を失った二つの刃の再活性化のため、是が非でも<<雷鳴の谷>>の大砦を攻略せねばならなくなってしまったカイト達。彼らは未来から来たソラ達の協力を得ながら、偶然元の状態をほぼ維持したまま墜落した古代の飛空艇を復元。更にノワールが手慰みで拵えた輸送車をベースとした輸送車を量産して陽動部隊としてその攻略に取り掛かる。

 そうして魔族側の作戦により人類側の第一攻略目標であった大砦付近の丘を吹き飛ばされ本陣を直接狙い撃たれる羽目になるという想定外の事態が起きながらも、カイトの奮戦もありなんとか作戦を修正。人類側はもはや後に引けない状態になり、本来の後詰の戦力も投入した総力戦を行う事になってしまう。

 というわけで本陣から大砦が目視可能な距離まで戦線が押し上げられ、人類側は魔族側の策略により半壊させられた輸送車部隊を修繕。再び輸送車部隊による突撃を行わせ、改めて歩兵達による大砦への進軍を再開する。


「撃て撃て撃て!」

「あの変な鉄の箱を進ませるな! 爆発してくるぞ!」

「兵士共は後回しで良い! 最悪はこっちも戦士を出してぶち殺せる! あの鉄の箱を狙え!」


 輸送車とカイト達は呼んでいるが、それはある意味正しい。中に積んでいるのは謂わば爆薬で、それを運んでいると言える。いくら一般兵の時点で人類側の兵士数人から数十人に匹敵する魔族の兵士達といえど、輸送車の自爆に直撃しては無事では済まないだろう。

 もちろん、数発ならまだしも数十発も大砦に直撃すればいくら大砦でも無事ではない。そうである以上、魔族側も大砦からの砲撃の多くを割かねばならなかった。


「よし……流石の魔族共も自爆にゃ警戒してきたな。流石にあの速度で近付いてきて自爆なんてされりゃ警戒しない道理もないか」

『そのために、派手に爆発する様にしましたからねー』

「え? あれ単に派手に爆発してるだけなんですか?」

『はい。あれで砦を攻略出来ると思えるほど、あの砦は甘くありませんからね。威力はさほどです。まぁ、流石にゼロ距離で直撃すればただじゃ済みませんけど、ちょっと近くで爆発した程度じゃさほどダメージにはならないかと』


 ソラの問いかけに答えるノワールは楽しげだ。ちなみに、先程の修理の際に色々と現地改修とでも言うべき改修を加えた結果、障壁発生装置を増設した機体は総合的な出力も増したようで爆発の規模も更に派手になっていた。それが一層、魔族側の警戒を誘発していた。

 と、そんな一同が見ている前でも更に突き進んでいた輸送車の中でも最前列を進んでいた輸送車が、唐突に吹き飛んで宙を舞う。これに瞬が目を丸くした。


「なんだ?」

「来たか」

「何が起きたんだ?」

「地中に埋められた魔術が作動して、吹き飛ばされたんだ。騎馬兵達の突撃を防ぐための地雷、だな」

「地雷……つまりあそこからは地雷原というわけか……」


 確かにこれだけ距離があるのだから普通は仕掛けてくるよな。瞬はカイトの返答に顔を顰める。だがその一方のカイトの顔には笑みが浮かんでおり、これが逆に彼らにとって良い方向である事を理解させていた。というわけで、そんな彼は宙を舞うと共に大砦からの狙撃を受けて粉砕される輸送車を見てノワールに声を掛ける。


「上手くいってるな」

『はい。あの地雷とて連発は出来ない。そして……』

「なんだ!?」

「あの位置で自爆させて良いんですか?」

『構いません。あの爆発は地雷原に埋まっている術式を吹き飛ばすためのものです。もとより輸送車は地雷原さえ突破出来てしまえば構いません……ん。りょーかい』


 どうやら本陣側でなにかの報告があった――反応の軽さから相手はサルファと思われる――らしい。ノワールがそれを受け取って一つ頷いていた。というわけで彼女から今しがたの報告内容が共有された。


『主砲、発射準備を確認。準備の状態から見て輸送車を一掃するつもりのようです』

「来るか」

『はい』

「噂の?」

『だと』


 ソラの問いかけに、ノワールが一つ頷いた。魔導砲が通常の大砲と異なる点は魔力を砲弾とする以外にも、砲弾に込められる魔術を変更する事で様々な砲撃を行う事が出来る事だ。なので先程の様に威力と範囲を重視した砲撃を行うことも、対『強欲の罪(グリード)』戦で行われた狙撃を行う事も出来るわけだ。というわけで、ここからは自分達が何より警戒する攻撃が行われるのだろうと一同判断。固唾を飲んで、敵の攻撃を確認するべくモニターに注目する。


「ノワールさん。まだ発進までは時間ありますよね。外で直に目で見て良いですか?」

『……そうですね。特に瞬さんはメインパイロットですから、直接見て頂く方が良いかもしれません』

「ありがとうございます」

「あ、俺も行きます」


 確かにここからあれを避けねばならないのだ。直に見ておきたいと思ったのは無理もなかった。というわけで瞬が立ち上がったのを受けて、ソラもまた慌てて立ち上がってそれに続く。そうして飛空艇から外に出て、二人は上部ハッチを開くではなく飛空艇を隠す輸送車から外に出る。


「ふぅ……やはり戦場は遠いな」

「っすね……爆発音も魔術の炸裂も遠い」


 本陣と一言で言っても、今回<<七竜の同盟>>が動員している規模が規模。それに合わせて本陣も非常に広く数百メートル規模だ。それに対して瞬達は最後の切り札で、本陣の移設に伴って一番厳重な中央に近い一角に居る。最後方ではないが、それでも最前線までは遠かった。と、そんな二人の背後からカイトの声が響いた。


「そんな話はどうでも良い……ほら、来るぞ」

「「……」」


 自分達の一番警戒せねばならない砲撃が来る。この地平線の先からでもわかる膨大な魔力の収束に、ソラも瞬も眉をひそめる。そうして直後の事だ。収束した魔導砲から、先程の魔弾よりも遥かに細長い魔弾が発射された。


「「っ」」


 やはり丘と輸送車を隔てていたから感じられなかっただけで、ここからでも感じられるほどの圧がある。二人は発射と共に撒き散らされる膨大な魔力に思わず顔を顰めた。

 そうして二人や兵士達が注視する中で放たれた主砲の魔弾は一瞬の後に空中で閃光を放ち爆ぜる様に分裂。無数の光条となり、大砦からの砲撃を避けながら突き進む輸送車部隊へと降り注いだ。


「やはり誘導弾か」

「あれを、全部避けないといけないんっすね」

「威力重視の一撃なら次元潜航。誘導弾なら根性で回避と障壁展開で防御、か」

「実に狂ってるだろう?」


 肝が冷えるな。そんな様子で苦笑いを浮かべる瞬に、カイトが楽しげに笑いながら問いかける。そんな彼に、瞬も頷いた。


「確かにな……直進だけじゃ駄目か」

「最初から言っていた通りな」

「はぁ……心の何処かで俺達でなくてもとは思ったが……」


 これはおそらく無理だろうな。瞬は飛空艇のパイロットに任命されている現状に対してそんなボヤキを発する。これは完全に未来のカイトが巫山戯て学ばせただけだが、飛空艇での変態的な挙動は実は出来て、瞬とソラはそれを行う事が出来た。

 確かに飛翔機も原理としてはジェット機と同じような反動推進だ。だがそこに使われている技術は別物で、機体全体に刻まれた術式も併用すれば急制動も比較的容易に行う事が出来た。それを応用して直角的なジグザグ飛行や急速後退などが――操縦士と副操縦士の連携が前提ではあるが――出来たのである。だがそれを一から学ぶ事なぞ出来ない。二人だって未来のカイトが巫山戯て教え込んだから出来るだけだった。


「……一応聞きたいんだが、まさか未来のお前がこの時代の事を覚えていて、とかはないよな?」

「それは未来のオレに聞いてくれ。聞いてる限りじゃこの時代の事は覚えてないと思うがね」

「それはそうだと思うんだが……」


 そもそもカイトからして、ソラ達と出会ったのはエネフィアから地球に帰った後だ。その時のことはソラも覚えており、一切自分を知っている様子はなかった。

 この時代の事を覚えていなかった事は明白だし、時乃から基本的には必要な時まで記憶は封じられると聞いている。なら、本当に単に巫山戯た結果がここに繋がっているだけと考えられた。


「……なんとかやってみよう。そうだ。ノワールさん」

「なんですか?」

「うわぁ!」


 通信機を使ったはずが唐突に背後から響いた声に、瞬が思わず仰天した様子で声をあげる。


「あはは……それでどうしました?」

「あ、あはは……後付したっていう小型の魔導砲。あれであの分裂した魔導砲は相殺出来ないんですか?」


 思わぬ声を上げてしまった事に少しだけ恥ずかしげに、瞬が問いかける。流石に一つも攻撃用の武器がないのでは単なる速いだけの的だ。なので飛空艇には後付で魔導砲が搭載されており、万が一空中に敵が来た場合はそれを使って牽制。飛空艇の速度で引き離す事になっていた。


「わかりません。一応、何発も撃てば相殺は出来ると思いますが、それを前提として突っ込むのはやめた方が良いと思いますよ」

「そうですよね……まぁ、流石にあれの中に入れば敵も来ないでしょうから、万が一に留めておきます」

「そうして頂く方が良いかと」


 瞬の言葉に、ノワールも頷いて同意する。そんな彼らに、カイトが告げた。


「ま、最悪の最悪はオレやセレス、イミナで切り払う。オレは何度かやってるから問題もない。二人はとりあえず突っ込んで回避することだけに専念すれば良いよ」

「そのための上部ハッチですからね」

「わかった。頼りにさせてもらおう」


 流石にこれは最悪の最悪だし、最終目標である主砲の破壊とその後に待ち受けるだろう雷鳳との決戦を考えれば可能な限りそうはならないようにしたい所ではある。あるのだが、流石に撃墜されるよりは良い。選択肢には入れておかねばならなかった。

 そうしてその後も数度行われた主砲の砲撃を改めて確認して、二人はおおよその兆候を掴んだ所で再び飛空艇へと戻るのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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