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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3566話 はるかな過去編 ――再始動――

 魔界への扉を閉じる上で最重要となる開祖マクダウェルが使ったとされる<<雷鳴剣>>。永き時を経て力を失った二つの刃の再活性化のため、是が非でも<<雷鳴の谷>>の大砦を攻略せねばならなくなってしまったカイト達。彼らは未来から来たソラ達の協力を得ながら、偶然元の状態をほぼ維持したまま墜落した古代の飛空艇を復元。更にノワールが手慰みで拵えた輸送車をベースとした輸送車を量産して陽動部隊としてその攻略に取り掛かる。だが、その作戦は最初の攻略目標であった丘を魔族側が魔術を使わず吹き飛ばした事により変更を余儀なくされてしまうのであった。

 そうしてアイク率いる艦隊と大砦との間で砲撃戦が行われる一方で再度の作戦の練り直しが行われて攻略作戦を仕切り直す形となった人類軍は改めて戦列を整えて、戦闘に臨む事になる。


「何も出来ないまま、ってのも辛いもんだな」

「しょうがない。現状無策に突っ込んでも撃ち落とされるのが関の山だ。お前も見ただろ? さっきの主砲からの砲撃は」

「あれはなぁ……」


 自分が見ていたのは所詮射程距離を重視した狙撃用のものだったのか。ソラは先程カイトやレックスに向けて放たれた主砲を思い出し、射程距離を犠牲にすればあれだけ高威力の一撃が放てるのかと肝を冷やしていた。

 <<強欲の罪(グリード)>>戦での攻撃を最初から最後まで見ていたわけだが、あれはあくまで数百キロ先の目標を狙撃するためのものだ。距離によって威力を摩耗させない様に収束率を高めていただけなのであった。というわけで避ける事なぞ最初から許されていない一撃を思い出して、彼は盛大にため息を吐いた。


「はぁ……あんなの撃たれちまったら避けようがないな」

「だから次元潜航だかなんだかを使用する事になった、って話だ。残念な事に、あの威力だ。次元もぶっ壊してくるから数発でアウトになっちまうだろうけどな」


 あれだけの破壊力だ。次元も空間も無事では済まない。それを一人で破壊出来るカイトとレックスがおかしいだけで、同じ八英傑のアイクでさえ無理と断言していた。数発でも猶予があるだけまだマシだと考えるしかなかった。というわけでため息が止まらないソラだが、ふと気になった事があったらしい。


「はぁ……なぁ、セレスちゃん」

「なんでしょうか」

「そっちにもこんなもんか同じレベルの物、あんの?」


 現在進行系でセレスティアらの時代も魔族達による攻撃を受けているという。そしてその戦闘力はこの時代の魔族達と比肩する領域らしく、違うと言えば<<七竜の同盟>>があるこの大陸の攻略は後回しにされているという点ぐらいだろう。

 そう考えれば、この大砦と同様の戦闘力を有する砦の一つや二つはありそうなものであった。というわけで、ソラの問いかけに対してセレスティアは少し険しい顔で頷いた。


「あります……私はまだ直接見た事はありませんが……」

「そうなの?」

「ええ……魔族達はこの時代同様に嫌らしい手を打ってきています。よほどカイト様達に退けられたのが効いていたのでしょうね」

「オレ達も現在進行系で苦しめられてるんですけどね……」


 笑いながら告げるセレスティアの言葉に、カイトは盛大に苦笑を浮かべる。これにセレスティアもまた苦笑する。


「あはは……とはいえ、その結果我々の大陸には大砦を設営しない事にしたようです。ですがだからこそ、こちらから大戦力を送る事が出来ない」

「なるほど……海を渡らないといけないから、か」


 こればかりはどの世界でも当てはまる事で、エネフィアでもこの解決にレガドという古代文明の遺産を用いている。だがそれだって限度があり、増援は精々<<無冠の部隊(ノー・オーダーズ)>>とカイトが率いるマクダウェル家だ。レガドがないこの世界でこの大陸から他大陸に増援を送る輸送手段が問題になるのは至極当たり前の話であった。


「そういうことです。いくら八英傑皆様の遺物が幾つも残されている我々でも、海を渡ってまで援軍に出る事は非常に困難。これがノワール様やアイク様がいらっしゃれば、話は異なっているのかもしれませんが……」

「一番の難敵なら無視も手、か。今の魔族達からすると考えにくいが……」

「ええ……開祖マクダウェル様の時代に一度。この時代で一度。更に数百年後に一度……都合三度退けられています。流石に魔族達も戦略を変えざるを得なかったのでしょう」


 横で話を聞いていた瞬の言葉に、セレスティアも同意する様に頷いた。数百年後の一度、というのはカイトが無限の旅から戻ってきた後。彼が再び戻らねばならない、と告げている時代の事だ。

 この時こそが八英傑全員の最盛期と言える時代で、今の時代の彼らでさえ比較にならない高みにいる。それこそカイトとヒメアが旅立たねばならないという制約さえなければ、魔界を統一する事さえ夢ではなかった。

 まぁ、それが自分の都合で出来なかったからこそ、未来のカイトはけじめとしてセレスティアと共にこの世界に戻る事を決意しているのであった。と、そんな会話を聞いていたカイトが告げた。


「そうか……まぁ、この通りちょいと厳しいが、攻略は無理じゃない……何かしらは攻略法はあるはずだ。参考になるかは知らんが、今回の戦いが参考になれば幸いだ」

「そうですね。御身らを前提とした作戦は流石に、ですが地走艇……輸送車など、流用出来るものはありそうです」


 何度か言われているが、セレスティア達の時代にはすでに失われた技術や戦略が多くある。それをここで直に見れた事は彼女らにとって戦略上の何よりもの収穫と言えただろう。


「そういうこった……ん?」

『お兄さん。聞こえますか?』

「おう。聞こえてる……作戦の第一目標はぶっ飛んじまったわけなんだが。攻略作戦の再始動可能か?」

『はい。歩兵部隊、騎馬兵部隊、飛竜部隊、地竜部隊……諸々再出撃可能です』


 元々の予定では輸送車部隊がある程度の砲撃を引き付けて、その後ろを兵士達が追従。輸送車部隊が先行しつつ歩兵達が今新たに総本陣を設営した場所に橋頭堡を設置して、攻略戦を本格化させる予定だった。

 だがその橋頭堡を設置する予定の地盤そのものが吹き飛んだ事で大砦から主砲以外の砲撃も受ける事になってしまい、いくらカイトの支援があったとはいえ想定以上に歩兵達にも負担が生じてしまったのであった。というわけで本陣の移設に合わせて一旦全隊に小休止と共に部隊の再編成を行わせていたのである。


「よし……本陣の移設は?」

『半分ほど……という所でしょうか。ただ<<魔風結界>>など重要なものはすでに設置完了。後は物理的な障害や魔導砲の設置という所ですね』

「流石に時間掛かってるか」

『全部移設になっちゃいましたからね』


 当たり前だが、流石に人類側も背水の陣といえど本当に後先考えていないわけではない。万が一撤退せねばならなくなった場合に備えて、本陣にもある程度撤退を支援するための魔導砲などを備える予定だった。だがそういった撤退を支援するための一切合切も前線に移動させねばならなくなった事で、想定以上に本陣の移設に移動が掛かっていたのである。


「だが結果的により攻撃的な作戦が取れる様になった、とも言える」

『撤退が出来なくなっちゃった、とも言えますねー』

「そうなんですよねー」


 ノワールの言葉にカイトが若干やけっぱちに応ずる。先の通り、撤退を支援するための魔導砲なども一切合切前線に持ってきたのだ。そうせねばならなかったのだから仕方がないが、これで本当に退路を断たれてしまったも同然だった。というわけでおちゃらけていたカイトが、急に真顔になる。


「マジで勝たないとやべぇぞ」

『それは皆さんに掛かっているかと』

「あいよ……ん。砲撃の勢いが互角になり始めたな」

『……はい。敵もこちらの退路を断ったつもりなのでしょうが、お兄さんの言う通りこちらは全部を攻略作戦に費やさざるを得ない事になりました。魔導砲の数としてはこちらが圧倒的に上。連射力、威力では若干劣りますが、<<魔風結界>>が合わされば十分に補えます。歩兵達を狙う余裕はほとんどないかと』


 基本的に魔導砲による砲撃戦は如何に相手の魔弾をこちらの魔弾で相殺し、歩兵達を守るかに主軸が置かれる。なので威力も重要だが魔導砲の数と連射力も重要で、<<雷鳴の谷>>の大砦にある主砲のような超巨大かつ超強力な一門があれば十分というわけではなかった。


「だな……ここからが本番か」

『さっきも言った気がしますねー』

「しゃーないだろ。事実なんだから」


 先ほどは第二波として歩兵や騎馬兵達が出陣したとほぼ同時に、丘が吹き飛んでカイトが出る事になったのだ。そして同時に歩兵達も本来橋頭堡の確保後は即座に攻略作戦を本格化させるはずが、本陣の移設と転倒したりして動けなくなった輸送車の回収、修理のためその場を守る事になってしまったのであった。

 というわけで再び再出撃に備えて調整を行われた輸送車部隊が、再設営された本陣の中から出てくる。が、その出てきた輸送車にカイトは違和感を感じて小首を傾げる事になった。


「ん? なんだ? 幾つかの輸送車、伸びてないか?」

『あはは……流石に半分ほどは爆発から逃れたとはいえ、実際には使えなくなったのも多かったですから……タイヤやらが壊れて使えなくなった物に搭載されていた障壁の発生装置を無事な物に追加で乗せたんです。で、余った部品やらを使って積載量を確保した結果、伸びてしまいました』

「なるほど……それでプランBダッシュ、ってわけか」

『そういうことですね。若干操作性は下がりましたが、どちらにせよ向こうもこちらの突撃戦術に気付いて輸送車に向けて一気に砲撃をしてくるはずです。ここからはほとんど一直線である以上、さほど問題にはならないと思われます。より一層、歩兵達の安全は確保出来るかと』


 何が本来の予定から変更されているかはカイト達以外には定かではないが、ダッシュと付けている以上はなにかは変更されているらしい。というわけでそんな彼らの見守る前で、防御性能を更に底上げされた輸送車が発車。それから遅れる事少しで、兵士達もまた砦を目指して行動を開始する事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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