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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3554話 はるかな過去編 ――休憩――

 カイト達主導で行われている北の砦攻略作戦。その重要な要素を占める古代の飛空艇の復元に携わる事になったソラ達。そんな彼らは冒険者としての活動の傍ら時にテストパイロットとして、時に極秘裏に飛空艇の部品を運ぶ輸送隊の一員として活躍しながら、日々を過ごしていた。

 そんな中でソラ達はマクダウェル領まで解毒薬を手に入れるべく赴いていたわけであるが、その帰り道。貴族派の妨害で一番厄介な正規兵による妨害を受ける事を懸念して冒険者達ぐらいしか使わない裏道を使って王都へと帰る事にしたソラはその道中で明らかに敵意ある何者かによる攻撃を受けるに至っていた。

 そうして始まった戦いは当初五分と五分という戦況で進むも、ソラが魔術師を撃破した事により戦況は一気にソラに傾き勝利を治めるものの、その代償としてソラは倒れる事になっていた。


「う……ぐっ……あれ?」

「目が覚めたようだな」

「イミナさん……あれ?」


 何が起きたかわからない。ソラはパチパチと火花を散らす焚き火と周囲を包む暗闇に、困惑した様に周囲を見回す。


「ここは……一体なにが……」

「毒だ。横目には見ていたが、剣が弾いた敵の短剣が僅かに頬を擦ったようだ」

「そういえば……」


 イミナに言われて最後に自分が見ていた光景を思い出す。あの瞬間、ソラはナイフ使いの攻撃を<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>の腹で軌道を逸らしつつ回避するつもりだったが、やはりかなり強引に動いたのだ。完璧とはどうしてもいかず、頬を擦ってしまっていたのであった。


「まぁ、あの程度の傷でお前ほどの戦士が意識を失う毒だ。かなり当たりは付けやすかったのは不幸中の幸いだったな。当たりが付けやすいおかげであの毒に対応する解毒薬もイザベラ様が揃えてくださっていた。手当は容易だった」

「……」


 イミナの言葉に、ソラは右頬を触る。そこには絆創膏に似たあて布がされており、布にはなにかの薬剤が染み込んでいた。


「すんません。お手数をおかけしました」

「別に構わん。今は仲間だしな……それに、私の手柄というよりこれはイザベラ様のおかげだ。感謝なら奥様にするべきだろう」

「ありがとうございます……解毒剤貰いに行って解毒剤使ってちゃ世話ないっすね」

「そうだな」


 恥ずかしげに笑うソラの言葉にイミナもまた笑う。まぁ、元々こうやって暗殺が仕掛けられる事を想定して用意していたものだ。ソラも早速役に立ったと有り難く思う事にする。というわけでまだ身体は十分に動かない事もあり、ソラは一つ聞いてみる。


「そういえば何の毒だったんっすか?」

「トリカブト系……ではあるが。少し特殊な高山地帯に生える毒草でな。同じ高山地帯の別の山に生える霊草でないと解毒出来ないものだ。即効性が高く、抽出した毒は少量で大型の象も殺せるものだが……ほら」

「へ?」

「見てみろ」

「……なんだこりゃ!?」


 イミナに促されるままに手渡された手鏡で自分の顔を見てみたソラであるが、彼の頬の丁度傷口がある辺りがまるで口紅でも塗ったのかと思えるほどに真っ赤に変色してしまっていた。

 とはいえ血が拭えていなかったり毒の影響で腫れているというわけでもなく、単に肌が真っ赤に染まっているだけであった。そんな彼の様子を見てイミナは笑いながら説明を続ける。


「見ての通り、症状が非常にわかりやすい。解毒剤がなければかなり厳しいものだが……逆に解毒剤さえあれば対処は楽なものだ。ただ傷口に塗り込めば良いだけだからな。お陰で魔術を使わずとも全部の処置が出来た」

「そうなんっすか……もし解毒剤がなかったらどれぐらいでやばいんっすか?」

「早くて二日。長くても一週間か」

「早くて二日……即効性高いわりに結構保つんっすね」

「意識を奪われた後、外で放置されて無事でいられるか?」

「……あ」


 イミナの指摘に、ソラが思わず目を丸くする。確かに町中などすぐに救助が貰えるだろう場で使えば即座に対応されてしまうだろうが、こんな森の中で使えば解毒剤がなければ一巻の終わり。次の日の朝には魔物の餌食か、襲撃者が複数であれば後で処分されるだけだった。


「そういうことだ。まぁ、今回は結局全員倒された挙げ句に解毒薬まで所持していたからこの通り、数時間で目を覚ます事になったがな」

「そういえば……セレスちゃんは?」

「セレスティア様ならご無事だ。当たり前だがな」


 周囲を見回して見当たらなかったセレスティアに一瞬不安になったソラであるが、彼で勝てるのにセレスティアで勝てない道理はないだろう。というわけでセレスティアが無事である事を教えられたのであるが、それとほぼ同時に木陰からひょっこりと顔が覗き込む。


「お? 起きたか。話し声が聞こえたから戻ってみたが」

「カイト? なんでお前がここに」

「誰がお前を運んでやったと思ってるんだよ」

「そ、そうなのか……ありがとう。どこなんだ? ここは」

「お前らが襲撃者と戦った場所からかなり離れた場所だ。さっきセレスの地図に現在位置をマークしたから、あとで確認しておけ。ま、駄賃は貰ったから良いんだけどな」


 駄賃。カイトはそう言いながら、音声を録音するための魔道具をクルクルと回す。それはソラが先程の襲撃者達とのやり取りを録音していたもので、今回の依頼人の一人の名前がはっきりと録音されているはずだった。


「あ、それ俺の……」

「申しわけありません。ただカイト様をお呼びする事もあり、渡しておいたほうが良いかと……」

「セレスちゃん……ってことは二人で話してたのか。もしかして気を遣わせたか?」

「ま、流石にけが人の横で話す事はないよ」


 ソラの問いかけに、カイトは笑いながら近くにあった倒木の椅子に腰掛ける。


「悪いな、言った傍から襲撃に遭わせちまって」

「それは良いんだけど……結構な数だったんだけど。あいつら本当に手を組んでないのか?」

「貴族ってのは横にも繋がりは強い。襲撃者同士は知らされてなくてもそういう事は往々にして起こり得る。襲撃のタイミングを合わせる事は不思議でもなんでもないだろう」

「なるほど……」


 確かに襲撃者本人達は知らなくても、裏で貴族達同士が繋がっている可能性はあるだろう。そして襲撃者達もそれを理解しているだろう。

 しかし同じ襲撃者を蹴落としたからと自分の取り分が増える事なぞあり得ないことも、だ。ならば襲撃者達にとって楽かつ成功率を上げられる手を組む、という選択肢は自然な話でしかなかった。とはいえ、それが必ずしも有利になるだけかと言うとそんなわけがなかった。


「ま、それは良し悪しだな……」

「芋づる式に、ってことか」

「そういうことだな。一人捕まりゃ芋づる式に捕まる……流石に冒険者相手に暗殺者を出しただけで捕まるとかはないが」

「世知辛いなぁ」


 同じ人だというのに、お貴族様は捕まらないらしい。まぁ、そんな事を言い出すとソラもとい冒険者が盗賊を殺した所で罪には問われない。生命に貴賤がない、という言葉はこの世界においては嘘偽りでしかなかった。というわけでそこらは理解しているソラのどこか苦笑の滲んだ笑みに、カイトもまた同じ顔で笑った。


「だな……ま、それでもこっちとて背後にゃ王侯貴族がいる。なんだったら姫様の背後にゃ公爵家もあるしな」

「え?」

「「「え?」」」


 驚いた様子のソラに、カイト達――イミナとセレスティアもこちら側――が驚いたような様子を見せる。とはいえ、少ししてカイトもおおよそを理解したようだ。


「ああ、もしかして姫様のお母様……王妃殿下の事について何も知らなかったか? 会う事もないから当然といえば当然か」

「お、おぉ……でもまぁ……確かに王様の正妻なんだったらそれぐらいの家柄にはなる……か」

「まぁな。そして流石にこの公爵家は王侯派だ。陛下の正妻の実家だ。陛下と敵対する必要性がなさ過ぎる。で、その娘の騎士であるオレを支援しない道理もない。貴族同士の軋轢なら色々と動いてくださっている」

「敵も多いけど味方も多い、か」

「有り難い事にな」


 良くも悪くもカイトは目立ちすぎている。時代柄そうならざるを得ないが、だからこそ彼から利益を得る事が出来る者たちは最大限の支援を約束する。その利益の享受者の内で最大の享受者と言えるのが、アルヴァやヒメアを除けばこのヒメアの母の実家である公爵家なのであった。というわけでそんな事を語った彼が立ち上がる。


「さってと」

「もう行くのか?」

「ああ。大体は理解したし、何人かは有名な奴が居た。証拠そのものもいくつか手に入れた。公爵家が動くには十分だ」


 ソラの問いかけに応じながらもエドナを呼び寄せる。その手には一つの小袋があり、ソラの録音機もこの中に入れていた。入れた際になにかにぶつかったような小さな音がしていた事から、セレスティア達もまた何か証拠たり得る物を手に入れていたというわけなのだろう。というわけでそんな彼の背に、ソラは問いかける。


「なんとか妨害は阻止できそうか?」

「さてな。それはオレじゃなくて公爵家に聞いてくれ。まぁ、名ありの冒険者に依頼を出してたっぽいんだ。そいつの足跡やらを追えば、自然動きを牽制出来るぐらいにはなってくれるだろう」


 いくら貴族派の貴族達とはいえ、アルヴァに自分達の妨害工作がバレるのが問題になるぐらいはわかっている。目に余るようであればお家取り潰しも十分にあり得るのだ。自分達の喉元付近までナイフが近付けば止まらねばならないのは道理でしかなかった。


「じゃ、とりあえず急ぎ行ってくる。セレス。あの登録証、助かった。オレもあいつの事は聞いた事がある。確かここ暫く公爵領付近で活動していたはずだから、公爵家なら足跡を追うのは可能なはずだ」

「となるともしや……」

「有り得てほしくはないが……逆にだからこそ狙われた可能性もある。周辺に疑心暗鬼が蔓延すれば動きにくくなるのは道理だからな」

「それは……あり得るかもしれませんね」


 公爵領付近の貴族が貴族派に回ったのではないか。そんな懸念を抱いたセレスティアであるが、カイトの提起にそちらの方が可能性は高いかもしれないと思い直したようだ。というわけで闇夜に紛れて超速で宙を駆け抜けるカイトの背を見送って、ソラはセレスティアへと問いかけた。


「何があったんだ?」

「倒した襲撃者の遺体を漁ったのですが、懐に登録証がありました。後世に残ったほどの実力ではありませんでしたが、実力からしてこの時代のカイト様であればご存知であっても不思議はないのではと思ったのですが……やはり案の定でした」


 知っていた結果、カイトもその足跡を追えると判断したというわけなのだろう。そして襲撃者の敗北を知れば、依頼した貴族達が事態の隠蔽に勤しむのは想像に難くない。セレスティアが急いでカイトを呼び寄せたのも、カイトが闇夜に紛れて足早に去ったのも当然だった。というわけでこの日はそのままその場で一泊して、次の日から再び三人は王都を目指して帰路をひた走る事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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