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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3541話 はるかな過去編 ――偽装工作――

 北の砦攻略に向け、古代文明の飛空艇の復元を目指すカイト達と、それに協力する事になったソラ達。そんな一同はレジディア王国の僻地にて見付かった飛空艇の残骸をシンフォニア王国の王城地下に設けられた秘密研究所にて組み上げる作業を手伝う事になり、システムの改修への意見や部品輸送の極秘任務への協力など、数々の協力を行っていた。

 そんな中、アサツキに内密に話したいと呼ばれたソラは彼女から自分達が未来から来た存在である事を看破されると共に、自分達がカイトに戦後の主導権を握られる事を厭う勢力により狙われている事を知る。

 その対抗策として飛空艇に代わる巨大魔導砲対策の自動で動く荷車の開発という偽情報を外へと流出させ、貴族派と呼ばれる者たちの動きを探る事になっていた。

 というわけで、カイトの叔母にして王立研究所に勤めるノアへの接触を利用して情報を意図的に流出させて数日後。一同は偽装工作の一環として、王都近郊の一角を軍により封鎖させて試験運転を行っていた。


「へー……面白いな。自動車っぽいというか……輸送車か」

「っす。すんません、こっちも手伝ってもらって」

「構わん。何より邪魔されて困るのは俺も一緒だし、こういうのは少し興味があった」


 ソラの謝罪に対して、瞬は笑って首を振る。基本偽情報や妨害工作への対抗はソラが行っていたが、実際の運転になると一応メインの操縦士である瞬が出ないわけにはいかなかった。というわけで彼が今回の試運転にも関わる事になったのだ。というわけで操縦席に腰掛けると、通信機が起動する。


『お二人共、聞こえていますか?』

「一条です。聞こえます」

『はい……操縦方法は飛空艇の操縦方法に合わせました。ただ左右に動かすだけで良いので、そこらは少し変更していますけど……』

「ということは……あ、本当ですね」


 飛空艇と同じというのは有り難いな。瞬は内心自動車と同じだったら面倒だな、ぐらいは思っていたようだ。それが飛空艇と同じ簡単な操作で行けると理解して、胸をなでおろしていた。というわけで操縦席を一通り確認して、瞬が問いかける。


「ということは立ち上げの方法なども飛空艇と一緒ですか?」

『ええ……ただ差異として、それは魔導炉を搭載していません。特殊な魔石に魔力を貯蔵。それを動力として動く形です』

「そうなんですか?」

『ええ……ぶっちゃけて言うと使う人が使う人なので無茶な使い方をしかねませんので……』

「はぁ……」


 本来使う人とは誰なのだろうか。瞬は想定された使用者が想像出来ず、ノワールの言葉に小首を傾げるばかりだ。とはいえ、そんな事はどうでも良いのだ。彼はソラと共に飛空艇同様の手順で輸送車を立ち上げると、次の指示を待つ。


「立ち上げ、出来ました。かなり簡略化されてますね」

『ええ。それはあくまで地面を這うような形で動くだけですから、バランサーやらは必要ありませんでしたし。魔導炉もないので大幅に手順を省略出来ました』

「量産する予定とか、あるんですか? ここまで簡略化出来ていると普通の兵士でも操縦出来そうですが」

『今の所はありませんね。外装の素材も素材ですし、軍用なら考えても良いかもしれませんけど……結局それ一台作るのはそこそこ手間ですから。森とかだと使えませんからね』

「そうですか」


 別に欲しいわけではないが、簡単に量産出来そうなのならそういう予定があるのか気になっただけらしい。瞬はノワールの言葉にそうなのかと思う程度だった。というわけでそんな彼はノワールからの指示を待つわけであるが、やはり一応は魔道具の塊だ。ノワールが外から色々とチェックしていたようだ。


『うん。諸々大丈夫そう。突貫工事の割にはよく出来た……かな……こちらからのチェックも完了です』

「わかりました。それだと何をすれば?」

『やって頂く事は飛空艇の試験と変わりません。ただ走らせて、というだけで良いです。何より今回は単なる偽装ですし』

「わかりました」


 ノワールの指示に、瞬はソラに視線を向けて一つ頷く。そうしてそれとは逆にソラからの頷きを受けると、彼は飛空艇同様にスロットルを動かして出力を上げる。

 と、どうやらやはり飛空艇とは色々と違う部分もあるようだ。飛空艇ならある程度出力を上げるまでは動かないのだが、こちらの輸送車は自動車がアクセルペダルを少し踏むだけで反応するように少しスロットルを動かすだけで動き出す。


「ん?」

『ああ、ごめんなさい。あくまで地面を動く形なので、どうしても出力に過敏に反応してしまうようで……ここらはまた改良が必要ですね』

「ああ、いえ。こちらの方が良いかと。地面を走る形なので、逆にある程度ゆっくりという事もあるでしょうし」

『なるほど……確かにそれはそうかもしれませんね。ならそのまま逆にもう少し繊細に出力の調整が掛けられるようにしたほうが良いかな……』


 瞬の返答に道理を見て、ノワールは現状の仕様をそのまま改良する事にしたようだ。通信機の向こう側でなにかを書き記す音が僅かにだが聞こえてきていた。というわけで、その後は暫く輸送車を地面で走らせる。そうして走り出した輸送車の最大速度に、ソラが目を丸くする。


「凄い速いっすね。この間は軍馬並の速度って聞いてたんっすけど……ずっと速いですね」

『まぁ、馬力を求めた結果という所ですね……どうしても出力を上げると荷物がないとその分速度に反映されてしまうので……』

「あ、なるほど……」


 どうしても出された力は何かしらには反映しなければならない。そういうわけで速度に反映することになったというわけだろう。というわけでおよそ一時間ほど。平坦な道やら魔術で作られたでこぼこ道などを走行して、試験は一旦休憩となる。


『はい、ありがとうございます。ひとまず一旦はこれで良いかと。座り心地などについてはまた調整しておきますが、一旦は車内で休んでおいてください』

「わかりました。休憩はどれぐらいですか?」

『そうですね……いまのアイデアや情報を纏めたいので、30分ほど頂けますか? その間、自由にして貰って……あれ? フラウ?』

『よぉ! これが例のアレか!?』


 どうやらなにかの用事でフラウが王都に来ていたらしい。なにかがあったのか、こちらに来たようだ。通信機の先から彼女の声が響いてくる。


『うん。久しぶりに話して前の失敗作を改良してみようって思って』

『へー……今中は見れるのか?』

『あ、見れるけど……』

「開けましょうか?」

『ん? 瞬か』


 どうやら来たばかりである事もあり、フラウは瞬達がテストパイロットを務めている事を知らなかったようだ。というわけで、一旦の休憩を挟んだ後。瞬とソラは引き続き偽装工作のためという名目で輸送車をこの日一日掛けて走らせる事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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