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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3533話 はるかな過去編 ――改修――

 後に『強欲の罪(グリード)』と呼ばれる強大な魔物となる触手の軍勢との戦いで呼び出された未来のカイトから、東の島国鬼桜国にて<<廻天>>という属性を操って別の属性を生み出すという力を学ぶ事になっていたソラと瞬。そんな彼らは数ヶ月の修行の末になんとか基礎を習得し、再びシンフォニア王国へと戻って来る事になる。

 そうして再び訪れた冒険者稼業の最中、おやっさんと話していた瞬の所へと訪れたのは再び各地を転戦していたカイトであった。そんな彼から王城の地下で研究されている古代文明の飛空艇の復元への協力を求められた瞬はノワールの要請を受けて、飛空艇の開発に足りていない部分の改修に協力する事になっていた。


「……とりあえずの改修案は纏まった……という所でしょうか」

「オートバランサーとやらに操縦桿の制御装置に、制限出力のオーバーブースト……なぁ、別に出力のオーバーブーストは必要無いんじゃないのか? というか、ぶっちゃけ制限を超えられるのって危険じゃねぇの?」

「いえ、制限を掛けた上でも制限以上に出せる仕組みは必要です」


 カイトの問いかけに、ノワールは瞬の話を噛み砕いてきちんと理解できていたからこそその必要性も理解出来ていたのだろう。カイトへと教えてあげた。


「大昔、フラウの頼みで自動で動く荷車を作ったこと、覚えてます?」

「ああ、あれか。なっつかしいな……あのバカがあれもこれも乗っけて持って行きたいって鉱石を乗せまくったせいで坂道がキツかったのなんの。レックスと二人してなんでこんな事してんだろ、ってクタクタになりながら押したな。アイク連れてこりゃ良かったとか愚痴ったり」

「そういえばそういうこともありましたねー」

「あははは……で、それがどうしたんだ?」


 なんでこんな昔話をしたんだろうか。カイトは昔を懐かしみ笑うわけであるが、同時に何故こんなどうでも良い話をしたのだろうか、と小首を傾げる。というわけでそんな彼の問いかけに、そんなこともあったと思い出したノワールが首を振る。


「いえ、そういうことですよ。あれは私の設計ミスというか、想定が甘かったというか……確かに積荷は十分な積載量があったわけですけど、私が想定したより悪路を進んでました」

「そういえば言ってたな。こんな坂道を進むなんて想定してなかったんです、って」

「そうなんです。でも今思えば、仕様上は十分以上に出力を出せるようにしておいて、制限を掛けて普通は出せない様にしておいて、必要な時に出せる様にしておくべきだったんですよ」

「あ、なるほど……」


 平地より坂道の方が必要な力が多いのは当然の話だ。そしてそれを理解したカイトに、ノワールは飛空艇も同じなのだと告げる。


「それで言えば飛空艇も同じです。上空だと地上より強い風が吹いている事もありますし、魔力の乱流に巻き込まれる事もあり得る。戦場ならばより顕著でしょう。ならそれを見越して、出力を制限以上に解き放てる様に出来なければ押し戻されます」

「なるほどな……確かにそれを考えりゃ制限の解除は必要不可欠か。いや、それならいっそ出せる出力はそれを見越した値にしておいた方が良いんじゃないか? もちろん、制限は必要としてさ」

「そっちの方が危険じゃないですか?」

「いや、そりゃ危険だけどさ。でも戦闘って突発的な遭遇戦もあり得るだろ? ってなると、いつも即座に制限が解除出来るわけじゃない。それこそ即座になら制限してないも一緒だしな。ならある程度は余剰を設定しておいて、更にそれ以上を出す時は制限を解除、にした方が良いんじゃないか?」

「なるほど……確かに一理ありますね……そうなると制限を超える際にアラートを出したりして、きちんと分かる様にした方が良いかも……」


 カイトの指摘に今度はノワールが道理を見て、その方向で改修を進める事を決める。そこに瞬が口を挟んだ。


「エネフィアの飛空艇も基本はそんな形ですね。ある値までは普通に出せて、制限速度を超える場合はアラート。ただしリミッターの解除をしない限りはリミッターを超える事はない……という感じです」

「ということはやっぱりそっちの形式が最善かな……わかりました。ありがとうございます。とりあえず急務は出力の制限の構築と、オートバランサー。操縦桿の制御機構ですね」

「そうですね。一番はオートバランサーかと。あれだけはないことには水平が保てないので……」

「そうなのか」


 飛空艇の操縦は慣れてしまえば簡単だとは聞いていたカイトが意外そうな様子で問いかける。これに、瞬は一つ頷いた。


「ああ。確かに人力で水平を保つ事は出来なくはない。非常時の講習でやらされるからな。だが非常時に無理やりやるようなもので、常時は流石に集中力が保たない。それこそ、可能ならオートパイロットシステムも入れて欲しいぐらいだが」

「「オートパイロットシステム?」」


 ここに来て聞いたことのない単語が追加されたぞ。カイトのみならずノワールさえ小首を傾げる。


「ああ、非戦闘時など人手が不要な状況で設定した経路を通る様に自動化した操縦システム……という所でしょうか」

「そんなのあるんですか?」

「戦闘時はもちろん使えませんよ。あくまで長時間の飛行を行う上で、操縦者の負担を軽減させる目的で使うものなので……そうじゃないと流石に何日もぶっ続けで操縦桿を握るのは不可能に近いですから」

「なるほど……確かに戦闘を想定しないのなら、必須のシステムですね……」


 今回は戦闘を想定して飛空艇を復元しているのでそんなシステムを使う余裕はないし、そんなシステムを構築する時間もない。なのでノワールも今回は必要ないものとして割り切りつつも、将来平和になった時には必要なシステムだと頭の片隅には叩き込んでおく。


「っと、話を戻しましょう。オートバランサーは姿勢を一定に保つもので、ある程度の衝撃や乱流に飲まれても機体が変な軌道を取らない様に制御するシステムだ。これがないとさっきみたいな突発的な乱流に巻き込まれるときりもみ回転になったりしてしまって、墜落しかねない」

「なるほど。確かに乱流の流れを完璧に読めるのなら問題はないだろうが……こんな中から外の乱流を見抜いた上でそれに合わせて姿勢を制御なんて無茶か」

「そういうことだな。特に今回は戦闘になるから、オートバランサーは必要だ。もちろん、使っても乱流に巻き込まれたりすると手動で調整してやらなければならないがな」

「……思ったより簡単じゃねぇのな」


 聞けば聞くほど瞬達が言うほど簡単には思えない。カイトは段々と複雑になりつつある説明に顔をしかめつつボソリと呟いた。が、これにノワールが首を振る。


「いえ、それでも瞬さんが教えて下さったシステムを搭載出来れば一気に楽になりますよ。それがなかったらどうなっていたことか」

「マジか……てかそれを嬉々として操縦してるっていう未来のオレはなんなんだ……」


 やっぱオレはエドナが一番だわ。カイトは未来の自分が好き好んで飛空艇を多用するという話を思い出し、ただただ呆れた様にため息を吐く。これにノワールが笑った。


「あはは。まぁ、本当はもっと簡単なんでしょう。今はまだ突貫工事なのでこの程度というだけかと」

「それもそうか……悪いな、無茶の連続で」

「私はそれが仕事ですから……それに、それならお姉さんに言ってあげるべきなのでは?」

「いつも言ってるよ……いや、言わされてるか?」

「あはは……っと、ごめんなさい。そんなどうでも良い話をしてる場合じゃないですね」

「っと、そうだな。それで、改修にはどれだけの時間を要しそうだ?」


 飛空艇の重要性は最初からカイトも認めている。単に操縦はしたくないな、というだけだった。そして彼は操縦しなくても良い立場でもあったし、戦力的に考えれば操縦してはならない立場でもあった。何より彼を運ぶための飛空艇だ。彼が操縦しては意味がない。というわけでそんな彼の問いかけに、ノワールは少しだけ黙って考え込む。


「システムの構築だけであれば、半月あれば出来ます。幾つかはおそらくそういった類のシステムがあるのだろう、と考えて準備を進めていましたから、それを流用してしまえば作業の前倒しが出来ます」

「だけであれば、ということは実際に動かせるのは?」

「一ヶ月……ううん。だめ……二ヶ月。実装はあくまでもシステムの根幹となる部分です。オートバランサーなど一部の制御装置は当然ある程度の情報が必要なのでここからは異空間での試験飛行も必要になってきます。そこでのデータの蓄積はどれだけ急いでもそれぐらいは欲しいです。ただこれも実際に動かせる様になるのは、ですが」

「それはわかっているが……それでも長いな」


 もういつ飛空艇の復元計画が魔族に嗅ぎ付けられてもおかしくないのだ。ならば急げるのなら急ぎたいカイトであるが、そんな彼の苦言にも似た言葉にノワールは首を振った。


「それでも瞬さん達にも協力を頂く必要がありますし、何よりそれ以前として飛翔機の残りの部品が届いたら、その修繕もしないといけませんから……」

「そっか。そっちもあったな……」


 すっかり忘れていた。カイトはこの飛空艇はまだ要となる飛翔機が欠けている事を思い出して、どちらにせよ飛べない事を思い出す。というわけで急ごうにも急げない現実を認識した彼に、ノワールが最終的な結論を述べた。


「諸々考えて四ヶ月……という所でしょう」

「追加分の理由は?」

「操縦士の教育です。実際に飛ばせる様になってようやく本格的な教育が出来る様になる。ならそれぐらいは必要かと……ごめんなさい。流石にこれについては例がないので、それぐらいとしか」

「それはわかってるよ。まぁ、二ヶ月あれば大半はものになる……か。オレとしても自分の生命を預けるってのに付け焼き刃でやって貰っても困るしなぁ……」


 ノワールの謝罪に対して、カイトは自分の身にも関わってくるが故にここは良しと認めたようだ。そんな二人に、瞬が申し出た。


「……それなら操縦士は俺がやりましょうか? 俺なら、すでに操縦出来るので……多少慣熟は必要ですけど、ゼロから教育するよりは早いかと」


 ノワールの返答を聞いて、瞬が申し出る。これにカイトが顔を顰めた。


「危険だぞ?」

「わかってる……だがお前でも直撃すればヤバい、レベルの大砲なんだろう? しかも射程距離は超長距離の……なら戦場に立てばどこも一緒じゃないか?」

「……まぁ、そうだな」

「……ですね」


 瞬の問いかけに、カイトもノワールもその言葉が道理であればこそしかめっ面を浮かべるしか出来なかった。そもそもそうだからこそ魔導砲を掻い潜って一気に接近が可能な飛空艇を用意しているのだ。戦闘を考える必要がなく回避に専念出来る分だけ、下手をすれば地上より安全でさえあるかもしれなかった。


「……わかった。ノワ。瞬達が最大の協力をしてくれると仮定すると、どれだけ短縮出来る?」

「……短縮して一ヶ月。正味それでも三ヶ月は欲しいです。かなりの無茶をしていただかないといけませんので……我々としてもその無茶に耐えきれる調整が必要です。甘い調整は出来ません」

「……わかった。陛下にはそれで報告しておこう」


 今回の作戦の要となる飛空艇がこれ一隻しかない以上、次はないのだ。しかもこんな古代の遺物に頼らねばならないほど、北の砦の攻略作戦は行き詰まっている。少しの調整不足が命取りになりかねない以上、この一回限りのチャンスに全てを費やすしかなかった。というわけで、カイトはここからの予定をアルヴァへ報告するべく上に戻り、瞬は瞬で今日の仕事は終わりとホームへと戻る事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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