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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3505話 はるかな過去編 ――廃城の賢者――

 後に『強欲の罪(グリード)』となる触手の軍勢との戦い。それは未来から召喚されたカイトや、彼の顕現を見抜いたヴィヴィアン、今まで全て定めと受け入れ特別な感情を見せなかった大魔王らの奮戦により、その全てが討伐されることとなる。

 そうしておおよそ分かる限り全てが討伐された後、カイトはかつての相棒たる双剣の真の力を開放。大精霊達と共に世界を改変する力により、無茶苦茶に乱れてしまった世界を元通りに正していた。


「ふぅ……」

「すげぇ……今のは何なんだ?」

「大精霊達全員に加えて、こいつの真の力を解き放ったんだ」


 神の力にも等しい神撃が放たれた後。砕けた世界がゆっくりとだが元の色を取り戻していく。それに伴って砕けていた世界は端から元の青空へと戻っていき、遥か遠くの東の空では黄金色の朝日が昇っているのが見える様になっていた。と、そんな朝日を浴びると共に、カイトの身体からも虹色の粒子が放たれる。


「カイト、お前……」

「ああ。壊れた世界を戻すと共に、本来あり得ざる部位も元通りにした。オレを含めて、な」


 今のカイトは本来この時代に存在する彼に、ソラ達を経由して未来の因子を注ぎ込んで擬似的に未来の彼を召喚している形だ。そしてこれも必要なことだったので世界も認めているが、あくまでこれは一時の夢。終われば元通りにするのもまた、この世界に呼ばれた彼の仕事だった。そしてそうなれば必然として。


「私達も今回はこれでおしまいかな」

「そうだね」

「そうだな……ヴィヴィ」

「うん。待ってる」


 カイトが抜けていくような感じであれば、ヴィヴィアンとマーリンの二人は薄れていくような感じだ。というわけで所詮は一時の夢と緩やかに薄れていくヴィヴィアンが本当の出会いを心待ちにすることを決めて、カイトは改めて元通り復元されていく世界を見守る。


「ま、後はゆっくりとだが元通りになるに連れて……ん?」

「これは……」

「色々あり得ざる状況が出ちまってるからな。世界の整合性を取るために、というところか」

「……兵達には世界が再生する余波みたいなもの、って説明しておくか。綺麗だしな」

「あははは。それで良いと思うよ。間違いじゃないしな」


 レックスの言葉に、カイトはキラキラと舞い踊る小さな輝きへと手を伸ばす。壊れたのは天だけでなく、世界全体が壊れている。地面も空間も次元も全てが無茶苦茶で、感じ取れないような微細な領域で壊れた部分が戻る際の余剰な力が光として放たれていたのであった。


「さて……クロードでも誰でも良い。聞こえてるなら四騎士全員こっち来る様に伝えてくれ」

『全員って……僕らがですか?』

「ああ。残された時間は少ない。終わらせることをさっさと終わらせないとタイムアップになっちまう。頼む、急いでくれ」

「どうしたんだ?」


 世界を戻した後にまた何かをしなければならないらしい。どこか切羽詰まった様子のカイトにレックスが少しだけ驚いた様に問いかける。これにカイトは少しだけ恥ずかしげにそっぽを向く。


「オレだって駄賃は欲しいんですよ。残った時間を少し懐かしむぐらいのな」


 あの永劫の旅の後、一度として会えなかった仲間達。本当ならば一千人の騎士全員と言葉を交わし、刃を交えたかった。だがそれをするにはあまりに時間が足りなかったし、許されているわけでもない。だからこそ、自分が最も信頼する騎士達に全てを預けるつもりだった。そうして彼がどこか懇願するような声だったからだろう。四騎士達が即座に現れた。


「揃ったぞ。どうした?」

「おう……まずはお疲れ。お前らがやってたあの力について、少しだけ助言をしたくてな」

「……あれか」

「あはは」


 どこか恥ずかしげにそっぽを向くグレイスに、カイトは楽しげに笑う。確かにあれは四騎士達にとって秘中の秘だが、大精霊や数多の神々と繋がりを得たことであの拙さを理解出来たのだ。


「これからちょっと大変なことを言うぞ。心して聞け」

「「「……」」」


 団長が残された僅かな時間を削ってまで自分達に言葉を遺そうというのだ。四騎士達にとって全ての疑問や聞きたいこと、言いたいことを後回しにしてでも心に刻み込む価値はあった。そうして、カイトの顔が『廃城の賢者』と呼ばれていた頃の物へと変わる。


「四騎士の家に伝わる代々の技法を融合するまでは間違いじゃない。だがあれでは足りていない。相剋、相生……」

「それは確か東の国の古い理論?」

「そうだ。五行相生、五行相剋……いや、悪い。今の五行の部分は忘れろ……ったく、時間ねぇのに……」


 似た名前、似た理論。賢者としてのカイトの頭の中には数多世界の法則と理論が蓄えられている。故にきちんと整理しないと似た理論――ここでは日本――がつい口をついて出ることがあった。本来ならばきちんと準備して教えを与えたいところだったが、彼にとってもあまりに時間がなさ過ぎた。

 というわけでこめかみの辺りをトントンと叩いて脳内を整頓して、ライムの問いかけに答えた彼は改めて話を進めた。


「相剋と相生を心掛けろ。それだけで飛躍的に効率は上がる。そして切り替えも出来る様になるから、汎用性も一気に上がる」

「……つまりは全属性で今のをやれ、と」

「そうだ……そのために各地に居る古い異族達に会いに行け。時間がないことは百も承知だ。だが土はドワーフ。フラウの伝手で行ける。水は人魚族。こちらもアイクで事足りる。なんで問題は光と闇だ」


 ライムの言葉にカイトはしかし残る半分は問題ないと語る。そしてならば、と助言を続けた。


「闇は冥界に助言を求めに行け。光は神界……かつての神々の生き残りを探せ。光神はまだ生きている」

「かつての光神? それってあれですかー? 輝く神。天秤の担い手。裁く者とかなんとかー」

「それ。裁きの神。闇を暴き、そこに隠された悪事を指弾する神様だ……てか、お前がとかなんとかって言うなよ。それ従者の方々に聞かれたら姫様! って怒られるぞ」

「あははー」


 呆れ返るカイトの指摘にベルナデットが楽しげに笑う。なぜ彼女が笑うのか。それは簡単だった。


「ま、早い話ベルが中央に居た頃に居た神殿の祭神だな。あの方はまだご存命だ。全ての崩壊の生き証人……セレス」

「はい」

「わかってるな? お前がオレの学園の生徒だったのなら」

「噂には、でしたが……まさか本当に?」

「どの噂かはオレは知らんが……だがあの方について噂が流れていたことは知っている」


 幾つか噂がある――しかも幾つかは噴飯ものではあったが――のでカイトは呆れ顔だが、少なくとも光神に関しての噂が流れていることをカイトも報告を受けて知っていた。


「この時代のことをなんとか思い出して、四人に教えてやってくれ。あの方に会うことは絶対だ」

「はい」

「良し……セレスに手伝って貰いながら四人で手分けして、残る四属性を制覇しろ。んで、最終的に東の国へ向かって相剋・相生の理論を手に入れろ……いや、待てよ……ソラ」

「え? あ、おう。なんだよ」

「お前らちょっと東行って希桜様に会って魔術教えてもらってこい。レックス。希桜様への紹介状頼む」

「おう……そりゃ良いけど」

「えぇ!?」


 唐突に出された指針に、ソラが思わず仰天する。だがこれにカイトは押し通した。


「お前も先輩もちょっと相剋と相生の理論学んでこい。ここらは相殺出来るからと魔術の理論で軽視される部分だが、利用出来る様になれば非常に強い」

「そうなのか?」

「おう。日本の陰陽五行思想は古い時代の世界の知識への不足がある理論だが、現代魔術に流用出来ればかなり強い理論だ。オレも理解してるし、応用している。しかもこっちの世界の奴だとそこらの補完がある程度なされているから、十分学ぶ価値はある」

「マジか」


 ソラはカイトの助言に驚きながらも、それならばと前向きに動くことにしたようだ。というわけで次の指針をカイトから貰った彼らはそれに向けて動くことにする。


「でも簡単に行けるものなんか?」

「そこらは……頼んで良い?」

「ったく、お前は……わかった。やっとくよ」

「さっすが」


 人を使うことを覚えた様子のカイトに、レックスは苦笑しながらも悪い気は全くしていなかった。ここらのやり口は自分もやるやり方で、それをカイトが覚えていることが嬉しく思えたのだ。


「良し……だから幾つかに別れて行動しろ。セレスは光神、ソラと先輩は東……後なんだ。色々と助言をしてやりたいんだが……」


 ここで自分が出来ることはなんだ。カイトは未来の情報が最終的に封じられることを踏まえて、ここで自分が与えられる助言とそのやり方を必死で考える。


「とりあえずそんな塩梅で良いか。わかったな? 相剋と相生。それが重要だ」

「「「はっ!」」」

「おし……で、クロード」

「はい」

「<<雷鳴剣>>」

「はい?」

「<<雷鳴剣>>!」

「あ、はい!」


 カイトに言われ、クロードは異空間にお守りとして入れていた小太刀の方の<<雷鳴剣>>を取り出す。カイトが述べているが、四騎士達は全員がお守りとして開祖達の遺品を携えていた。

 クロードはこれだったのだ。そしてだからこそ未来の彼は自身とカイトを、そしてマクダウェル家を繋ぐ(よすが)としてエドナに持っていく様に告げたのであった。


「良し……」

「え?」


 唐突にカイトがぺこりと頭を下げたのを受けて、クロードが困惑気味に後ろを振り向く。するとそこには、絵姿で見たリヒトが立っていた。そうしてそんな彼は何も言う必要はないとばかりに、カイトから差し出された自らの小太刀を受け取った。


「天雷よ」


 リヒトが小太刀を掲げてそう告げると、青空に一筋の雷が生まれて小太刀へと降り注ぐ。そうして本来の力を取り戻した小太刀を、今度はクロードへと手渡した。


「……この世界を頼むぞ。俺達はその先で待つ」

「……はっ!」


 自分達が憧れた騎士から掛けられた言葉に、クロードは若干上ずった声で応ずる。そうして彼は少し離れたところで待つ仲間のところへと歩いて行こうとして、しかめっ面のエドナに気付いた。


「……なんだ」

「なんだじゃないでしょ! 話すことは話す! 言葉にすることって重要なの!」

「……そうか」


 これで十分だと思ったんだが。エドナの言葉に尻を蹴られ、リヒトは踵を返してカイトの方を向く。


「……大変ですね、そちらも」

「似たようなものだと思うが……」

「あっはははは……まぁ、あいつに関してはこの時代のオレが頑張りますんで」


 あいつ。それは状況があまりに複雑になり過ぎてどうすれば良いかわからないヒメアだ。とはいえ、それについてカイトはただ苦笑いを浮かべるばかり。彼女に関する全ても終わった彼にとっては、こうするしかなかったのもまた事実だった。


「そうか……また会おう。勇者カイト」

「ええ。勇者リヒト……お会いできて光栄でした」


 どちらともなく差し出した手を二人が握る。そうしてカイトの言葉に、リヒトが頷いた。


「ああ……あいつを頼んだ。あの『果て』に、あいつも連れてきてやってくれ」


 あいつ。今度は自分の仲間達に囲まれながらも、唯一この時代に置き去りになるグウィネスだ。そうして仲間を託すリヒトの言葉に、カイトはしっかりと頷いた。


「はい。数百年先ですが……必ず彼もまた共に。ま、長い旅なので。吟遊詩人の一人ぐらいは欲しいところですからね」

「そうだな」


 カイトの言葉にリヒトが笑う。そうして言うべきことは言った、と今度こそリヒトは仲間達のところへと帰っていく。そんな彼の背を見るカイトに、クロードが問いかける。


「……どういう意味なんですか?」

「いつか、遠い未来にな。ちょっと考えてることがあってさ……それについてだ」


 自分と知識等がある程度共有されているからだろう。リヒトはカイトが全てが終わった後に考えていることを知っていたようだ。というわけでそんな彼はここで為すべきことは終わった、と勇者でも賢者でもない子供のような顔へと戻った。そんな彼は双剣を腰に帯びると、レックスを見る。


「……」

「なんだよ、おい。時間無いんじゃないのか?」

「残り時間ぐらい自分のために使って良いだろ……それにやってみたかったんだろ?」

「駄賃ってわけか?」

「当たり前よ。欲しくないのか?」

「そんなもん……欲しいに決まってるだろ!」


 にたり。二人が同時にまるで子供のような笑顔を浮かべる。そうして今のカイトの実力を確かめるべく、レックスが神速で踏み込んで拳を放つのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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