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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3479話 はるかな過去編 ――再開――

 『狭間の魔物』による侵略。魔族による侵略戦争に端を発する形で訪れていた戦乱の時代のセレスティア達の世界で起きた事態に巻き込まれていたソラ達。そこで彼らはかつて存在していたという八英傑というかつてのカイトの仲間達と共にその事態の収拾に乗り出す事になっていた。

 そうして『狭間の魔物』の大元と思われる巨大な触手の海の化け物により敢え無く敗北を喫したこの時代のカイトを媒体とする形で召喚された未来の時代のカイトは、自身がシステムとしての魔王のオリジナルである事を知る大魔王との交戦に臨む事になるのであるが、そんな戦いも大魔王が一通り自分の今後と現状に満足する形で終わりを迎えていた。そうして戦いの終わりとほぼ時同じくして訪れた討伐隊の先遣隊第二部隊到着を見て、カイトは盛大に苦笑いを浮かべる。


「やれやれ……相変わらずか」

「いえいえー。流石に大魔王様との戦いがちょうど終わるタイミングとは思っていませんでしたー。これは完全に偶然ですねー」


 先遣隊第一部隊が大魔王の戦闘力と終わりの見えない戦いに精神的に敗北を喫しようとしたまさにそのタイミングで、カイトの出現により大魔王と互角かそれ以上の存在の喧伝。そこから間を置かずの先遣隊本隊の到着だ。各国の第一部隊は見えた勝機に沸き立っていた。というわけでそれを見越したかのようなベルナデットの采配であったが、後の彼女曰く本当に偶然だったらしい。


「そうか……えーっと。多分この力はマーリンだよな?」

「そうだね。出所するための奉仕活動だって」

「そうか……そりゃセカンドが喜ぶ」

「セカンド?」

「うん? ってことはまだセカンドが居ない時代か……いや、そう言えば生まれた頃にはパソコンあったって言ってたもんな、あいつ……あれ……もしかしてあいつオレとあんま年変わんないのか……?」


 セカンドというのは現在地球にてアーサー王を支える次世代の宰相。マーリン・セカンド(二世)だ。ただマーリンの名だと全員が祖父のマーリンと紛らわしいため、関係者は揃ってセカンドと呼んでいるのであった。というわけでまだセカンドが生まれていない時代から来たらしい事を理解して、カイトは深く言及はしない事にする。


「……まぁ、良いか。とりあえずマーリン」

『やぁ、こうして話すのは初めてかな?』

「さてなぁ……」

『その言葉の意味を理解できれば、ということか。ならはじめましてはやらないでおこう』

「あはは……だったら再会の言葉も今はいりませんよ。またいつかで」

『そうかい』


 意味深なカイトの言葉の意味を正確に理解したのか、マーリンは挨拶は不要と理解する。そして同時に、自身がまたどこかでカイトと再会を果たす事もだ。というわけでまるで霧の中から現れるように、彼が姿を露わにする。


「さて……」

「マーリンさん!?」

「やぁ……私も手伝いに来た」

「それは……ありがとうございます。ですが良かったのですか? ヴィヴィアンさんも……」


 カイトからしてみればマーリンやヴィヴィアンがここに来る理由がわかっているので特に気にもならないのだが、レックスからしてみれば他世界の魔術師であるマーリンまで手助けしてくれるというのだ。気になっても仕方がないだろう。


「そうだね……まぁ、君には話したけれど。私は本来、世界からしたら爪弾きされる立場で自らを追放した。けれどどうやら、いつか戻してくれる予定はあったらしくてね。こうして人助けをすれば、というわけだ」

「は、はぁ……」

「なんだか懐かしいな、この光景は」


 かつて自分が魔術を教えた者たちが勢揃いしているのだ。惜しむらくはそれを覚えているのはカイトだけという所であるが、それでもマーリンも少しの懐かしさがあったらしい。僅かに目を細めていた。


「……まぁ、良いか。さて、カイト。もうしばらくは時間を稼げそうだ。レックスくん。君は今の内に自分の部隊の所へ戻りなさい。この総司令部は私一人で十分だ」

「……お言葉に甘えさせて頂いて良いですか?」

「もちろん」


 流石にこの状況で総司令官と前線の一角を担い続けるのは限界があるだろう。レックス自身、ここから先の戦闘を考えてそう理解していた。というわけで総司令部の護りをマーリンに頼む事を決意したようだ。というわけで臨時で総指揮を担う事になったマーリンは早速とヒメアとベルナデットの方を向く。


「さて……ヒメちゃんにベルちゃん。二人共、今の内に魔法陣の構築をしてしまいなさい」

「……我々の事もご存知なのですか?」

「まぁね……カイト。総司令部の防備を完全にするまでの間、一人で敵を抑え込めるかい?」

「あれ、ですか?」

「あれ、だね」


 マーリンの求めをカイトは的確に理解していたようだ。カイトのどこかいたずらっぽい問いかけに、マーリンも似た顔で応ずる。というわけでそんな彼の顔に、カイトが恭しくお辞儀する。


「おまかせを」

「よし……それで二人共。魔法陣の構築はどれぐらいで出来そうかな。構築する魔法陣はわかっているね?」

「「……」」


 このマーリンなる人物は何者なのだろうか。ヒメアは一方的に自身を見知っている様子のマーリンに警戒を浮かべながらも、まるでカイトも自然と馴染むその姿に迷いを捨てる事にする。カイトが彼が信頼するのであれば、それ以外に何も必要ないのだ。


「10分頂ければ大丈夫です」

「よし……カイト。10分だ。内7分は私が稼ごう」

「楽してません?」

「ははは。ロートルは引っ込んで、若い世代に頑張って貰わないと」


 どうやら本気でやればマーリンは更に長くの時間を稼ぐ事ができるらしい。カイトの問いかけを言外に認める。とはいえ、だからとカイトに問題があるかというとそんなわけがなかった。


「やれやれ……そんな所は変わらないですね」

「全部が全部変わっても困るだろう? 放蕩の賢者。不良魔術師。そして王宮で最も高貴なゴミのままさ」

「うっわ。その言葉、億万年ぶりに聞きましたよ」


 原初の世界においてやりたい放題好き勝手にした頃の仇名を羅列するマーリンに、カイトは楽しげに笑う。そしてそうならば、とマーリンが一つ大地を小突いた。


「そう。私の力は王宮で最も高貴なゴミのままだ……だから後ろは気にしなくて良いよ。今度はね」

「……」


 原初の世界において、カイトが原初の世界から追放される事になった原因の一つ。それにマーリンは手を貸していた。その当時の彼にとってどうでも良い事だったからだ。

 しかしそれで苦しんだ友の姿を見て悔いればこそ、マーリンはかつてと違いカイト達と敵対するつもりはなく、その背を任されるつもりだった。というわけでその強さを誰より知る者の一人であるカイトは、後ろの心配はせずただ自分の為すべき事を見据える。


「えーっと……あー……えーっと……」


 やばい。なんて言えば良いかわからない。カイトは自分の為すべき事の一つをしようとして、万感の想いが自らの内側に渦巻いている事を自覚する。彼らとは再会を果たせていないままのだ。というわけで少しだけ深呼吸した後、カイトは口を開いた。


「……おう、オレだ。全員無事だな」

『なんだ。思ったほど変わっていないな』

『そうね』

「グレイスにライムか……ルクス、クロードは?」

『ここに』

『はい』


 カイトの問いかけに、今度はルクスとクロードの二人が応ずる。


「よし……全員、一旦休憩を取れ。後、その馬鹿みたいな力。多用すると疲れるからな。こっから長い。今はまだ使うな」

『『『!』』』


 気付いていたのか。四騎士達は全員目印として使っていた力がカイトに届いていた事に驚きを浮かべる。が、これに。カイトはただただ呆れるだけだ。


「あのなぁ……オレは未来から来てるんだぞ。お前らのその力を知らいでか。つーか、現状での改善点やらも色々と知ってるわ」

『『『……あ』』』


 カイトの指摘に四騎士が全員揃って間抜け顔を晒す。それに、カイトが楽しげに笑った。


「あはははは……ああ、帰って来たんだ、オレは」


 もう何年も帰って来ていなかった世界と永劫にも等しい時間離れ離れになった仲間達の声に、カイトは再会に目指す決意を固める。そしてだからこそ、かつての騎士団長として告げた。


「隊列を整え本陣へ帰参しろ。オレの切り札を使うのにお前らが必要だ。特にお前らがな」

『……その切り札とは?』

「奴らの影響を受けない兵団を呼ぶ必要があるまでは聞いているな。それを呼ぶのには縁が必要だ。だがそれはオレ一人の縁では駄目なんだ。強い縁を持つ者たちが必要だ」

『了解した。これより総司令部へと戻る』


 おそらく自分達が知る団長とは異なる人物ではあるのだろうな。グレイスはカイトの声に乗る覇気が騎士団長としてのものではなく、王者やそれに類する者のそれであると直感的に理解する。だが同時にそうであれ彼なのだとも理解していた。そしてそれは他の四騎士も一緒だった。


「頼む」

『……団長』

「おう?」

『実は泣き虫な所、変わってないわね』

「うぐっ!」


 楽しげに、どこかおちょくるようなライムの言葉にカイトは知らず涙が零れ落ちていた事を理解する。というわけで顔を真っ赤にした彼は恥ずかしげに声を荒げた。


「そんな事どうでも良いからさっさと戻れ!」

『『『はっ!』』』


 おそらく自分達の知る彼でもあり、自分達の知らない彼でもあるのだろう。騎士達は全員、安堵と共に応諾を露わにする。そうして即座に隊列を整え総司令部を目指して移動をする<<青の騎士団>>を遠くに見るカイトへと、マーリンが告げる。


「そろそろ時間だ……任せて良いかな?」

「ええ……じゃあ、やるか」


 ぱちんっ。カイトが指をスナップさせると、その瞬間。ただでさえ崩れかけていた世界が更に大きく裂ける。それはどことも知れぬ世界へと通じる扉だった。そうしてどことも知れぬ世界への扉が開かれたと共に、マーリンの施した幻術が解除されるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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