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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3450話 はるかな過去編 ――支度――

  世界の情報の抹消という世界を崩壊させかねない事態の発生。それを受けて大精霊が動いたことによりようやく一丸となり動き始めた大陸各国は大陸全土の国家を集めた会合を開くことを決定する。

 そんな会合の裏でレックスらの要請を受けたカイトは単身狭間の世界へと移動。敵情の偵察を行うのであるが、敵の首魁らしき超巨大触手の集合体に発見されてしまう。そんな彼であったがなんとか尖兵を撃退するものの、謎の攻撃を受けて敗北。瀕死の重傷を負うもエドナの助けもありなんとか王都へと帰還する。

 そうして勇者カイトという人類側最強の一角が敢え無く敗北するという異常事態の発生に、魔族側は今まで一度も動く事のなかった大魔王が出陣。人類側もまたそれに呼応する様に統一軍という統一王朝発足より前に出来た軍の結成を採択。もはや敵も味方もない状態でことに臨む事態になっていた。

 というわけでソラ達もまた冒険者の一人として統一軍への参加を申し込むと共に、レックスの要請を受けておやっさんへと情報を共有すると、再び忙しなく準備に戻っていた。


「よし……これでひとまずおやっさんへの情報共有は完了、と……」


 レックス達ほどではないが、やはりソラ達もまたやる事は多かった。というわけでソラはナナミが作ってくれたチェックリストにチェックを入れて、続けて次にやる事を確認する。


(道具の買い出し……は先輩がやってる最中……武器防具の再調整……は、今大急ぎでやってもらってる所……これの受取が今日の午後だから……)


 今回は誰がどう考えても大きな戦いになるだろう。なので武器防具の調整不足は即座に命取りに繋がりかねず、武器と防具の再調整を王城の一角に臨時で設けられた鍛冶場にて行ってもらっていた。

 勿論、その主導はフラウら『銀の山』のドワーフ達だ。彼女らもわざわざ『銀の山』に持ってきてもらうよりそちらの方が運ぶ手間が少ないため、オーバーホールなどの大規模な修繕でもなければそれで十分だったようだ。


(……まだ早いよな。よし……じゃあ、次と)


 やるべき事は多いが、今出来る事。今出来ない事が色々とあった。というわけでソラは一旦状況を確認するべく通信機を起動させる。


「先輩。そっちの道具調達どうっすか?」

『ああ、ソラか……いや、少し厳しいな。どこの店も軒並み品切れが多い。一応、かなり値引きされていたから予算としては余り気味ではあるんだが……』

「あー……やっぱそうなるっすか」


 想定された展開ではあったが、実際にそうなってしまうとソラとしても苦い物がこみ上げるしかなかった。なにせこの戦いで敗北すれば即ち人類は終わりというまさしく背水の陣だ。各店舗割引での提供か王国へ全部定価で買い上げて貰い、店じまいした店も少なくなかった。というわけでソラが瞬へと提案する。


「こっちでも買える物買って帰りましょうか?」

『いや、一応肝心要の回復薬についてはなんとか買えた。偶然『黒き森』の薬師達が商品を持ってきた所だったからな。俺達を知っている人だったみたいで、ほぼほぼ原価で手に入れられた。予算は若干余っている』

「了解っす。こっち今手が空いたんで、なにか必要な事があれば言ってください。次の予定は昼からの武器とかの回収なんで」

『そうか。わかった。助かる』


 ソラの申し出に瞬が一つ礼を述べる。そうして通信が終わった所で、彼はふと<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>へと問いかけた。


「そういやよ、<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>」

『……なんだ、藪から棒に』

「いや、お前もう何千年近くも戦ってるんだよな?」

『何人もの英雄達と共に、何百何千の戦場を駆け抜けた。それは知っておろう』

「おう……それで疑問だったんだけど、今回みたいに『狭間の魔物』の襲撃? 侵略? そんなのに遭遇した事ってあるのか?」


 この世界でも今回の『狭間の魔物』の侵略は異常事態だというのはわかっているが、エネフィアでそういう事がなかったのだろうか。ソラはそんな疑問を抱いたらしい。そしてその問いかけの理由まで<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>は理解して、首を振った。


『……いや、ない。いや、これは語弊があるか……『狭間の魔物』との戦いであれば何度かはある。どれもこれもが強き魔物であった事も覚えている。我が主人達の一人はそれで命を落としたほどの、だ』

「その時ってお前は勿論、全盛期っていうか今と違って全性能を取り戻してる状況……だよな?」

『無論だ。その時の主人もまた、今のお前とは比べ物にならん強者(つわもの)であった』

「それでも、か」

『うむ……だがそれでも相打ちとなるほどの魔物だった』


 今のソラ以上の戦士が今の<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>以上の力を手にして戦って、それでなお相打ちが精一杯だった。<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>はかつての主人の一人を思い出して、そう語る。そうして<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>はソラの問いかけの根底にある問いかけに答えた。


『正直な話を言えば、このような事態はエネフィアでも遭遇していなかった。より言えば、魔物がこの様に世界を侵略出来るとは誰も思っていなかったとも言えるだろう。それこそ、此度の一件は持ち帰り共有するべきほどだ。シャムロック様にもお伝えせねばなるまいな』


 どうやら今回の一件はそれほどの事態だったらしい。ソラは<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>の言葉にそう理解する。


「そっか……おっけ。わかった……まぁ、なにか情報が手に入ればなー、ぐらいだったし。更に言えばどうせ『狭間の魔物』ってのはほとんど共通点のない魔物なんだろう?」

『そうだ。本来『狭間の魔物』とはこちらの常識の通用しない、という一点以外に共通点がない魔物だ。力になれずすまんな』

「良いよ……良し。ああ、そうだ。使い捨てのナイフ補充しておくか……」


 ソラ自身は使う事がないが、使い捨てのナイフは冒険者であればなにかで使う事がある。というわけでそれを調達するか、と進路を店に向ける事にしたソラであるが、そこで今度は通信機に着信が入った。


「あ、はい、天城です」

『あー……ああ、繋がってるな。俺、レックス』

「レックスさん?」


 通信機から聞こえてきたレックスの声にソラが大きく目を見開く。確かにノワールに通信機の調整をして貰った関係でレックスも通信機に通信を入れる事は出来るし、実際カイトはやっている。だが彼がそれをするとは想像していなかったようだ。


『おう……ちょっと王城……ああ、シンフォニアの王城まで来てもらえるか?』

「あ、わかりました。なんかあったんっすか?」

『カイトが目を覚ました。大精霊様に一度ご指示を仰ぎたい』

「カイトが?」


 今回の戦いではカイトが要だろうとは予想されているが、彼が意識不明の状態に陥っている。なので大精霊達から切り札について聞こうにも、カイトが目を覚まさない限りはどうしようもない状況だった。聞いた所でそれが出来るかどうかは彼以外にはわからないからだ。そしてその彼が目覚めたのであれば、急ぎ動くべきだった。というわけで、ソラは進路を変えてシンフォニア王国の王城を目指して足早に進んでいくのだった。

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