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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3408話 はるかな過去編 ――捕獲――

 世界の情報の抹消という世界さえ滅ぼしかねない事態の発生を受け、事態の収拾に乗り出すことになったカイト。彼はソラ達と共に様々な地へと調査に赴くことになるのであるが、北の帝国ことエザフォス帝国に赴いた帰り。女魔族のイヴリースからの情報提供を受けることになり、一旦調査を切り上げてシンフォニア王国の王都へと帰還する。

 そうして魔族達からの情報を受けて少し危ない橋を渡ることを決めたベルナデットの要請を受け、彼は今度は『狭間の魔物』の一体を捕獲するべく動くことになっていた。というわけで王都から少し離れた場所にある老朽化と戦力の再編により放棄された古い砦に潜んだという『狭間の魔物』を捕獲するべく行動を開始する。というわけで始まった捕獲作戦であるが、想定に反して楽に終わりを迎えていた。


「……え? 終わった? まだこっち結界の展開をしたばっかだぞ?」

『それと同時に捕獲した……後は砦内部の魔物を殲滅すれば終わりだ。ロッシュ卿。手はず通り、殲滅戦を開始してください。大本が行動不能だから、おそらく連携やらにも不足が生じているはずです』

『了解です』


 カイトからの連絡に、ソラが困惑気味に問いかける。カイト達が陽動として砦の大広間で大立ち回りをしている間に結界の基盤のあるエリアまで向かったソラ達であるが、彼らが結界を展開して早々だ。

 カイトから捕獲完了の報告が入ったのである。とはいえ、これに瞬は特に疑問は抱かなかったようだ。ロッシュとカイトのやり取りを聞きながらも納得している様子だった。


「いや、不思議はないだろう。ここまでの道中、戦った魔物はほぼ雑魚だった。俺達で殲滅に苦戦しない相手にカイト達が手こずるとは思えん。そしてエザフォスのあの化け物の様になるにはかなりの数の生き物が必要になる点を考えれば、この砦でその条件が満たせるとは思えん。そのために周囲から魔物を呼び寄せとしていたんだろうが……周囲をロッシュさんが見張っていることを考えればそれも無理だ」

「確かに……そうっすね」


 確かに言われてみれば、カイト達が苦戦する要素はない。そして更にはこの砦は元々シンフォニア王国が保有していた砦だ。いくら放棄されたとはいえ、見取り図はしっかり残されていた。道に迷うこともなかった。

 そしてたった二人だ。砦の各所を回って殲滅して大本を取り逃すなぞという馬鹿なことは避けたい。陽動として大立ち回りをしながらも、一直線に大本が居ると思しき最深部を目指していた。


『あはは……まぁ、用心ってのは無駄になったらそれが一番なんだ。用心するに越したことはない、って言うだろう?』

「そうだけどさ……いや、そうだな。俺達が居ないでも良かったんじゃ、ってのは結果論か」

『そういうことだ。結果として問題なかった、というだけで問題があったら困るんだ。それに発見と同時に捕獲したから、実際にはまだ戦闘中だしな』

「まじかよ……呑気すぎるだろ」

「あ、あはは……」


 戦闘中にも関わらずこの呑気な会話を繰り広げられるのだ。やはり世界も時代も変われど最強に違いはない様子であった。というわけで二人して頬を引きつらせるソラと瞬であったが、ソラがすぐに気を取り直して問いかける。


「で、何処に行けば良いんだ?」

『ああ……やはり地下の訓練場に居た。あそこぐらいしか大きな場所を確保するのは難しいからな』

「やっぱりか」


 エザフォス帝国で遭遇した異形の個体はかなりの大きさを有していた。あれらがどれぐらいの数の生命を吸収したか正確な所は不明だが、少なくとも一体につき数十から百程度は融合していただろうというのがカイト達の見立てだ。

 あの異形の化け物の生成にそれだけ必要となると考えるのであれば十分な広さの確保が必要だろうと考え、それが可能なのは最深部の地下訓練場だと判断。大本はそこに潜んでいると判断していたのであった。そして結果としては案の定、というわけである。


「っと……わかった。じゃあこの結界の基盤を持ってそっちに行けば良いんだな?」

『ああ……道中、悪いが結界を切らさない様にしながら来てくれ。その間人力になっちまうから苦労は掛けるが……』

「良いって……じゃあ、こっちも支度したらすぐにそっちに向かう」


 カイトの返答にソラは笑いながら首を振る。そうして通信を終わらせると、そのまま彼は瞬を見る。


「先輩。背負うんで、手伝いをお願いできますか?」

「わかった……リィル、イミナさん。周囲の警戒をお願いできますか?」

「わかった……姫様。警戒の結界をお願いします」

「わかりました」


 瞬の要請を受けて、一気に全員が行動に入る。この砦の結界の基盤であるが、これは一抱えほどもある大きな石版だった。何度か言われているがこの砦はかなり古くからあるもので、カイト達後の世に八英傑と呼ばれる者たちが生まれるより前からあるものだ。ノワールらによる技術革新前の技術で作られており、性能も持ち運びも非常に大変になるものであった。

 というわけでソラは瞬に協力して貰いながら結界の基盤を背負って、一同はそんなソラを護衛しながら地下の訓練場を目指すことになるのだった。




 さて上層階にてロッシュらによる殲滅戦が開始された頃。ソラ達は地下にてカイト・モルテの二人と合流することになったわけであるが、その頃にはなんと地下の大半の殲滅まで終わっていた。


「うーん。やっぱり特に手こずらない相手さねぇ」

「この程度だったら手こずらないってだけだ。これが集まって集まって、になると一気に面倒になる」

「面倒になるってだけで苦戦する様には思わないけどねぇ……ああ、一応手印とかの珍しいものは行使するんだっけ?」

「見ての通り、って様相だからな」

「口もあるから詠唱ぐらいなら出来そうなもんだけどねぇ……」

「口もあるっていうか……」


 その口というか頭は一つや二つじゃないよなぁ。カイトは今しがた捕獲した融合個体を見ながら、僅かに苦笑いを浮かべる。というわけで融合個体を見ながら苦笑いを浮かべていた彼であったが、そこに声が響く。


「カイト」

「おう、遅かったな」

「もう終わったのか? 何も居ない様子だが……」


 響いた声の主は瞬だ。警戒しながら階段を移動した彼はカイト達が居た地下階に移動して早々に見えたカイト達に少しの困惑を浮かべていた。


「そうだな。ま、さっきも言った通り雑魚ばっかりだ。しかも北の帝国で戦った個体とは比べ物にならんレベルでの雑魚だ。それに、モルテの腕はすごいからな」

「褒めても何も出ないさね?」

「褒める言葉は出てるさ」


 モルテの言葉にカイトが笑う。と、そんな二人の間に居たクリスタルに似た物質に包まれた奇妙な存在に瞬が言及する。


「それが……ここで見付かった融合個体の大本か?」

「ああ……不気味なもんだろ?」

「ああ……だがこれなら一目で大本とわかるな」


 瞬は改めて融合個体の大本を見て、そう判断する。そしてその理由にカイトも頷いて言及する。


「そうだな……こいつだけは他の個体との融合を進めていた。他の雑魚どもとは違う点だ。もしかしたら帝国での融合個体もしっかり見極めていれば大本がわかったかもしれないな」

「確かにそれはあり得るかもしれないな……にしても。まだ原型がわかるだけでエザフォスの時より一気に不気味さが増すな」


 エザフォス帝国で見た融合個体はいくつもの生命体が取り込まれた弊害かいくつもの腕や足、胴体が詰め込まれたようなもはや魔物でさえないような化け物であったが、今回カイト達が捕獲した個体は頭が三つのまるでケロベロスのような見た目であるが、その三つの頭一つが人のそれ。もう一つは犬の。最後の一つはおそらくゴブリン種と思われる醜悪な顔となっていた。

 だが胴体には腕が六本以上生えていたり足も四つん這いに近いかたちでありながらも何処か巨大なヘビのような様子もあり、取り込まれた個体が顔の個体以外もあることが察せられた。が、だからこそ想像が出来てしまうので瞬も不気味に思ったようだ。


「あはは……流石にこういうヤツはオレも出会ったことはない。まぁ、三つの頭がある魔物とかは見ないでもないが……こんな顔だけでも明らかに色々とヤバいヤツは見たことがない」

「ああ……本当に不気味というかなんというかだな」


 瞬は改めて捕獲された融合個体を見る。先にも言われている通り、すでに何体もの生命を取り込んでいるのだ。身体の至る所に変異が起きており、しかもそれが規則性などがないのだ。

 一応そういった所からエザフォス帝国で交戦した異形の化け物を想起させる部分がないわけではないが、やはりまだまだ原型を留めている様子だった。そうしてしげしげと融合個体の大本を観察する瞬に、おずおずといった塩梅で声が掛かる。


「あのー……すんません。これ、下ろして良いっすかね……」

「ん? ああ、すまん。カイト、これをどうすれば良い?」

「え? ああ、すまん。えっと、ちょっと待ってくれ。結界はそのままな」


 ソラの声掛けを受けた瞬に問われ、カイトが慌てて次の支度に入る。そうして彼はノワールに指示された手のひら大の板状の魔道具を取り出した。


「ソラ、少し押すからしっかり踏ん張れ……モルテ」

「あいさ。ちぃっと強度上げるよ」

「……おっと」


 カイトが声を掛けると同時に、ソラが背負う結界の基盤に先の手のひらサイズの板状の魔道具が押し当てられる。そうして数秒すると先ほどまで輝いていた石版の紋様の部分が輝きを失っていき、それに入れ替わる様にカイトの手にした板状の魔道具が輝いていく。


「……良し。これで大丈夫だ。もう基盤を下ろして良いぞ」

「おう……なんだったんだ?」

「ああ、古い結界の基盤を移行させた。流石にあれを持ち運びに使うのはキツいし、規模もデカくなりすぎる。あのマーカーを中心としてより強固かつ小型化させたんだ」

「ふーん……出来そうなもんだけど……」


 おそらくなにか理由があって魔道具を介して捕縛用の結界を展開することにしたんだろうな。ソラは結界を制御している板状の魔道具を見ながら石版を降ろす。


「ああ……魔族側からの情報で魔術を逆流させて洗脳やらをしてくるかもしれないと警戒する文言があった。どうやらオレ達が鉱山で見た時の結界は逆流されて破られたみたいだな。洗脳に関しては流石に推測で正確な所はわからんらしいがな……ただ長時間になればなるほど相互作用で影響が出るかも、と警戒するに越したことはない」

「うわっ、マジかよ」


 長時間結界などで影響が出ることをすると術者にも影響が出るかもしれない。そんな魔族側の推測を教えられてソラが顔を顰める。と、そうなるとふと気になったことがあった。


「……モルテさんは大丈夫なのか?」

「そこが、<<隔絶結界(かくぜつけっかい)>>の良い所さね。こいつは世界と対象を分かつためのものだから、こっちには影響が絶対に届かないのさ。で、その外側を普通の結界で包んで運べる様にしてる、ってわけさね」

「はー……」


 さすがは対魔法使い用とさえ言われる結界だ。世界を改変してしまえる相手に使うには、逆流が出来ない様になっているらしかった。というわけで一同は魔族側の情報も使いながら、捕獲作戦を完了させて帰還することにするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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