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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3400話 はるかな過去編 ――帰還へ――

 世界の情報の抹消という世界の崩壊さえ招きかねない事態の発生を受けて、その調査に乗り出していたカイト。そんな彼はその影響の一つとしてこの世界に入り込んだ『狭間の魔物』の襲撃を受けて軍の部隊が壊滅したというエザフォス帝国に招かれることになっていた。

 そうしてエザフォス帝国にて『狭間の魔物』により壊滅させられた秘密研究所での掃討戦を終えた一同はエザフォス帝国からの協力を取り付けると、一路シンフォニア王国へと帰還。そこで今度は王都からの使者が資料を持ってやって来ているとの連絡を受けカイトは使者と接触を図るわけであるが、その使者は魔族の一人イヴリースであった。

 そんな彼女より魔族側からの情報提供を受けることになったカイトは抜きかけていた刀を鞘に納め、魔族側の資料を査読。その返礼として彼もまたエザフォス帝国での一連の事件の情報を提供。お互いに変に接触を取り合うより、とそのまま情報の精査に入っていた。


「……」


 魔族側の資料を読むカイトであるが、やはりその顔は険しかった。


(やはり事態が生じているのはウチや北の帝国だけじゃないか……最初は……五ヶ月も前? まぁ、発生は魔族の制圧地の様子だからオレらが気付けないでも仕方がない……か)


 スイレリアが読み取った情報でも魔族の制圧地である一帯は闇に覆われており、情報の入手は不可能となっていた。そこで発生していたとしても、カイト達には見つけようがなかった。


(というか、今更だが何処かで大増殖なんてならなくて良かった……いや、流石に『狭間の魔物』がこちらに入り込むにはある程度の規模が必要になる。単に穴が空いた程度では入り込めないか)


 おそらく穴を空けるにしてもある程度の技術の収斂などは必要だろう。カイトは情報の抹消という事態の発覚から『狭間の魔物』の侵入まである程度の時間はあったのだろうと判断する。


(対策……が見付けられたのか。メインはこっちか……融合の対策としては特定波形への変化を防ぐ手段の確立……これはまだ開発中か。なるほど。ここらの開発はこちらはこちらで願う、ってわけね)


 流石に何もかもを与えてくれるほど魔族側も優しくはないだろうし、この技術の開発はどちらとしても急務だ。情報を共有し開発を促すのは正しい判断と言えるだろう。というわけで一通りの情報を確認し、カイトは魔族側の要望を読み取った。


「……こっちは読み終えた。とりあえず概ねの要望は理解した。ひとまず急務になりそうなのは、この融合対策か」

「そうね。そこがなんとかならない限り、末端の兵士は戦いようがない。まぁ、そもそも今回のような相手に末端の兵士が役に立つかどうかと問われれば私も首を傾げるけれど」

「オレらがどれだけ強大な力を持とうと、数が限られる……まぁ、今回の場合は敵が増えるから考えものっちゃ考えものだったが……その対策ができるのなら数はいた方がウチとしちゃ有り難い」

「ふーん」


 やはり個人主義が強い魔族だからだろう。イヴリースはカイトの返答に人類側はそんなものかと思うばかりだ。というわけでそんなあまり興味なさげな彼女であったが、向こうも向こうで情報の精査が終わっていたようだ。


「それでこっちも読み終えたわ……まさか他の融合個体を取り込んだ、ね。しかも手印による魔術の行使……また面白い情報ね」

「そっちはそんな情報はないのか?」

「そんな間抜けはしないわよ。今回の案件は特に大魔王様直々に指揮を取られている。サンプルの保存には厳重な体制が取られていて、8時間交代制の24時間体制で常時封印が多重に行われている……何よりそんなことになってしまっては研究者達も命はないわね」

「そっちもそっちで大変だな」

「貴方達よりマシよ。足を引っ張り合うことはないもの……まぁ、今回はその足の引っ張り合いのお陰で情報が手に入ったのだから私としても避難するつもりはないけれど」


 肩を竦めて苦笑いを浮かべるカイトに対して、イヴリースは楽しげに笑う。これにカイトも笑う。


「そうかい……まぁ、良いさ。とりあえず他の個体を放置しておくとこういうことになっちまうようだ。穴を空けて何をするか、ってのはいまいちわからんが……」

「とりあえず穴は空けられそうということはわかる、と」

「そうだな。そいつらを呼び水にして他の個体をこちらに呼び寄せようとしているのか、それとも今回の元凶のなにかを隠せるブラフなのか……それについてはわからんがな」


 穴を空けて何がしたいのか。それについては未だに誰もわかっていなかった。それが分かればと思わなくもない二人であるが、わからないものは仕方がないと諦めもしていた。というわけで二人は気を取り直してお互いの情報の共有を進めることにする。


「とはいえ、厄介は厄介そうね。他の個体と融合し、さらなる強化を図れるとなると最悪狭間に居る奴らを呼び寄せてこちらに引き込んで自身を強化、ということができるかもしれない」

「それはあり得るだろうな……まぁ、それ以前としてそこまで巨大な穴を空けられるかという問題がないわけでもないんだが」

「そこはそれだし、起こり得るとしたらそちらでしょうね」

「それはなぁ……やれやれ。大精霊様のご指示と全員が素直に従ってくれれば良いものを」


 大精霊云々は別にしても、魔族達は大魔王の指示は遵守する。それだけ大魔王の恐怖が根付いているわけでもなるが、如何せんカイト達人類側は軽視する者もごく一部であるが存在する。無論蔑ろにするつもりはないのだろうが、それはそれとして今回の一件の様に密かに確保していたりすることがあるのであった。


「やっぱり貴方達の方が大変そうね」

「そんなもんかね……まぁ、良い。これでおおよその情報は理解した」

「こちらもね……そっちの融合個体のさらなる融合についてはこちらでも対策が可能か考えさせるわ」

「こちらも、例の装置の開発は進めよう」

「『黒き森』に向かうの?」

「そうした方が良いだろうな」


 イヴリースの問いかけに、カイトは次の方針をそう定めていることを口にする。こちらで最優の技術者は、と問われれば言うまでもなくノワールだ。彼女に情報を共有し、対策を進めてもらうのが吉であった。というわけでお互いに情報の共有は終わりとイヴリースが部屋を後にする。それを見送って、カイトは深くため息を吐いた。


「やれやれ……結局の所面倒は変わらず、だが……少なくとも全体に共有できる内容が増えたのは有り難いか……姫様」

『あら、カイト。どうしたの?』

「使者と会った……使者というより魔族だったが」

『はぁ?』

「王立研究所から出された使者そのものが魔族だった……といっても情報提供には変わらなかったようだが」


 困惑気味に顔を顰めるヒメアに対して、カイトは状況を説明する。そうして概ねの状況を確認し、ヒメアが問いかけた。


『ということはこれから一度ノワールの所へ向かうの?』

「ああ。そうした方が良さそうだろう。このまま調査隊が調査を進めるのも良いが、どこかで融合されたら面倒だ。何より今後の戦いを左右しかねん。ノワに頼んで、というのがベストだろう」

『そう……ああ、そうだ。それだったらレックスにもそう伝えておくわ。また近々来るだろうし』

「わかった。そうしてくれ」


 一度何処かで顔をあわせてしっかり話す方が良いだろう。カイトもヒメアの言葉にそう判断。可能ならばノワールの所で一度、と考えていた。そうしてカイトもカイトで部屋を後にして、一同に次の目的地を共有することにするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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