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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3395話 はるかな過去編 ――連絡――

 世界の情報の抹消という世界の崩壊さえ招きかねない事態の発生を受けて、その調査に乗り出していたカイト。そんな彼はその影響の一つとしてこの世界に入り込んだ『狭間の魔物』の襲撃を受けて軍の部隊が壊滅したというエザフォス帝国に招かれることになっていた。

 そこで帝王より『狭間の魔物』を捕獲しているという帝王と敵対する軍の一派が保有する秘密研究所へと赴くことになったわけであるが、その研究所は原因不明の連絡途絶状態に陥っていた。

 というわけで中を調べることになったカイト達はその最深部にて『狭間の魔物』を中心として出来上がったらしい異形の化け物達と遭遇。事故から交戦に発展することになってしまうのであるが、なんとかこれを撃破。ひとまずの危機は乗り越え、後をエザフォス帝国軍にまかせてカイト達はとんぼ返りに帝都に戻っていた。


「と、いう塩梅か」

『うーん……』

「なんだか苦そうだな」

『いやなぁ……ベルのもしも、ってパターンの中にそれがあるんだ。そのパターンがカイト様から報告があった場合はすぐに私にご報告いただけますかー? って』

「えぇ……嫌だな、それ……」


 ベルがすぐに報告をくれ、という場合はその情報が次のなにかの推測に重要な手がかりとなる場合が大半で、そういう場合は得てして最悪の場合を引き起こしかねないのだ。それを二十年近い付き合いでカイトもレックスも嫌と言うほど理解しており、二人共盛大に苦い顔をしていたのであった。そしてそれはもちろん、ヒメアも一緒だった。


『それ、最悪の事態じゃないの?』

「最悪になるかも、って考えてるんだろうなぁ……いや、てか何が恐ろしいってこの可能性も推測に入ってたってのが怖いんだけど」

『あっははははは……つなぐわ。最悪お前に直接聞きたい、ってなったらまーた俺こっちに来ないといけないし』

「あはは……そうだな。オレも二度も三度も話をするのは面倒だ」


 カイトとヒメアが契約によって繋がるように、レックスとベルナデットもまた契約に似た力で繋がっていた。彼女がレジディア王国の王都から動かなくても良い理由の一つでもあった。

 というわけでしばらく。カイトからの報告を受けたレックスからの連絡を受け、中継に中継を重ねてベルナデットも含めて報告が行われることになる。


『なるほどですねー……』

「……最悪っぽそう?」

『最悪っぽいですねー……いえ、最悪に成り得る可能性もありますがー』


 何度か言われているが、ベルナデットの推論はあくまでも推論。その正答率が異常に高いというだけに過ぎない。その正答率も情報が集まれば集まるほど精度は高まるわけで、こうして情報を与えているわけでもある。


『うーん……でもそうですねー……万が一を考えると、やはり諸々大軍は用意した方が良いでしょうかねー……うーん……となると決戦の地として最適なのは……』

「決戦?」

『え? ああ、はい……おそらく今回の一件、最後に一度敵の首魁を退けねばなりませんからねー。その際には敵も大軍で攻めてくるでしょうからー……そうなると場所は選ばないと盛大に痛い目に遭うことになりかねませんのでー』


 カイトの言葉にベルナデットは先程までの真剣な顔を一変させ、いつもののほほんとした様子で答える。と、そうして話していて少し意見が纏まったようだ。


『あ、そうですねー……カイト様のお顔を見てたら一つ妙案を思い付きましたー……いっそ巻き込んでしまうのはあり、ですねー……そうなると場所としては……問題はそこに誘導出来るか、という所ですがー……あれ、もしかして……』


 どうやら、ベルナデットは推測に推測を重ねてなにかにたどり着きつつあったらしい。一同を完全に無視して自分の世界に入り込んでいた。


「……無理そうだな、これ以上は」

『だな……はぁ。まぁ、色々とはこっちで聞いておくよ。そっちは帝王陛下との謁見やら協力を取り付けてくれ』

「あいよ……まぁ、協力は取り付けられそうだ。貴族派も黙ったしな。今回の一件で諸々バレたくないものまでバレたらしいから、権勢はかなり弱まりそうだ」


 元々秘密の研究所なのだ。帝王側にバレたらマズい資料はかなり多く収められており、中には他の秘密研究所などの情報もあり貴族派は仕方がないとはいえかなり焦っているらしかった。


『不幸中の幸い、か……良し。わかった。じゃあ、こっちもこっちで色々と動いておくよ』

「ああ……そっちは頼む。姫様、そっちもなにかあったらすぐにオレを呼び戻してくれ」

『ええ……ああ、そうだ。レックス。さっきの話』

『あ、そっか。悪い……ごめん、もう一個。あ、私的な、じゃなくてな』


 どうやらベルナデットを交えることになって失念していたらしいが、もう一つ話があったらしい。これに通話を終わらせようとしていたカイトが上げかけた腰を下ろす。


「なんだ?」

『ああ……魔族達の動きだ。どっかから情報のタレコミがあった。そして向こうさんも動きがかなり沈静化しているっぽい』

「……そう言えばここしばらく大々的な動きが報告されていないな……」


 各地を旅しているカイトでさえ、最後に銀剣卿ら高位の魔族と遭遇したのはあの廃坑の一件以来ない。そしてそれはどうやら、七竜の同盟各国で同様だったらしい。


『おそらく、あっちの方が情報は持ってるだろう。あっちはサンプルも確保してるみたいだし』

「よくやるよ、ってのが正直な所だけどなぁ……今回の一件見ても、確保してやっちまったー、になった時点でヤバいだろ」

『ま、あっちはこっちに比べ粒が多い。多少のヘマでも取り返せるだろう。何より、大魔王様ってのは俺らより数段上っぽいしな』

「それもそうか」


 大魔王とやらがどういった存在かはカイト達も未だ詳細を掴んでいないが、少なくとも自分達より知略の面でも武略の面でも上と認識している。そしてトップがそれで、下にも粒ぞろいの戦士。知恵者が揃っている。技術面でも自分達と同等かそれ以上の面も少なくない。劣勢なのは当然と言える陣容なのだ。貴族派のような失敗が起きたとしても、十分に取り戻せる可能性はあった。


「やれやれ。結局オレ達は烏合の衆と」

『言うな。悲しくなるだろ』

「あはは」


 今回の貴族派の一件でもそうであるが、言ってしまえば足の引っ張り合いは人類側にとっていつものことなのだ。呆れるしかないが、それももう諦めに近かった。


『ああ、まぁ……そんな感じだから多分、しばらくは向こうも今回の一件に取り掛かりになってそうだ』

「まぁ……お互いにこの世界が滅んじまったら終わりだもんなぁ……」

『だな』


 魔族達にしてみれば侵略戦争になるわけであるが、その侵略先が滅んでしまっては何の意味もない。しかも今回は世界の崩壊。この世界が滅んでしまえばそこに接続している魔界も滅びるのだ。彼らにとっても死活問題だった。


「わかった。この状況下で魔族共の心配をしなくて良いってのは有り難い。この上あっちまで気にしてちゃ調査が進むものも進まない」

『ああ……それぐらいか。後はまた適時連絡するよ』

「あいよ……じゃあ、これで」


 どうやら本当にこれで話としては終わりだったようだ。カイトの掛け声に合わせて、通信が今度こそ終了する。そうして、カイトは今手に入れた内容を持ってエザフォス帝国側との会談に臨むことになるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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