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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3381話 はるかな過去編 ――異変――

 世界の情報の消失という果ては世界の崩壊さえ招きかねない事態。それは自然には起き得ないはずの事態で、大精霊達は優れた何者かによる意図的は抹消と判断する。

 大精霊達の指示を受けたカイトであったが、彼はソラ達と共に世界の壁の消失によりこちら側に入り込んだ『狭間の魔物』により軍の一個中隊が壊滅させられたというエザフォス帝国の要請を受け、帝王との会合を持つ事になる。

 そうしてエザフォス帝国へと入国したわけであるが、カイト達が帝王と表向きの謁見を行う裏で、ソラ達は『狭間の魔物』に融合されたサンプルを密かに確保したという貴族派の軍人達が先帝の頃に密かに建造し保有する秘密研究所へと万が一に備えた潜入工作を行うことになる。

 というわけで会談の裏で秘密研究所の様子を探っていた一同であったが、どういうわけか事前に連絡があるはずの内通者からの連絡がなく外で支援をくれることになっていたグラキエースが帝都と連絡を取ることになっていた。


『ふむ……将軍。どう見る』

『は……最悪の事態もあり得るかと』

『か……』


 最悪の事態。それは内通者が捕まってしまったという事態ではなく、内通者を含め内部の人員が全て壊滅してしまっているという可能性だ。というわけでグラキエースの報告とリオートの言葉を受けて、兄王は少しだけ考え込む。


『……グラキエース。そのまま引き続き警戒を重ねよ。こちらからすぐに人を遣わす。報告を待て』

「はっ」


 万が一にも次代を担う存在にして帝国の英雄の一角であるグラキエースが敵の手に落ちてしまえば、兄王を筆頭とする現帝王派にとって最悪にも等しい事態だ。

 しかも『狭間の魔物』がグラキエースの力をどれぐらい利用できる様になるかわからない。彼女を討伐するのがカイトでも難しい以上、彼女を無策に突っ込ませるのは愚策にも程が遭った。


「……待機」

「了解っす」


 ここに来たことは正解ではあったのだろうが、厄介な状況になってきたらしい。ソラは氷像を介して帝都とのやり取りを行っていたグラキエースの返答にそう思う。そうして待つことしばらく。まるで音もなく、黒い影が木陰に舞い降りる。


『ヒムエス嬢』

「承知……十分に注意を」

『はっ』


 黒い影は声では男か女かもわからなかった。が、そんな声の主はグラキエースの言葉に小さく頷くと、そのまま再び影に溶ける様に消え去った。


「「「……」」」


 後は待つだけだが。一同は僅かな緊張感を漂わせながら、黒い影の報告を待つ。そうして再び待つことしばらく。黒い影からの報告よりも前に、氷像が僅かに動いた。


『グラキエース』

「はっ」

『こちらで僅かに動きがあった……どうやら貴族派の連中にも事態が伝わったらしい。今しがた慌ててアバリシアが出ていった』

「……将軍が」


 兄王からの連絡に、グラキエースが更に顔付きを険しくする。別にリオートら三人だけが将軍というわけではない。彼らは軍の最高幹部。謂わば大将なのであって、その下には中将や少将など何人も将軍は他にいた。


「確認……ということは、向こう側も」

『おそらく、連絡が途絶えたのだろうな。こちらの動きはアバリシアも理解しているだろう。我々の強襲や潜入工作に注意する様に指示を出していたはずだ……が、あの様子だと応答がなくなったということなのだろうな』

「……っ。陛下」

『どうした?』


 急に顔付きを更に険しくするグラキエースに、兄王もまた声音を僅かにだが固くする。これにグラキエースは氷像の向きを変更して遠くを見える様にする。


『……なるほど。アバリシアのところの部隊か。しかも物々しい雰囲気だな』

「肯定……おそらく内部の完全崩壊も想定しているのではないかと」

『だろう……はてさて……』


 どうなったものやら。兄王は険しい顔で少し考える。そうしてしばらくの後、彼は一つ結論を下した。


『……仕方がない。こちらからアバリシアに突っ込んでみるとしよう』


 最悪の場合は潜入工作ではなく大々的な交戦になるかもしれない。兄王はそう判断を下し、下手に犠牲を増やすべきではないと判断したようだ。


『そちらはしばらく待機しろ。最悪の場合に備え、竜騎士部隊を派兵出来る様にしつつこちらでアバリシアに派兵を認めさせる』

「はっ」


 兄王の言葉に、グラキエースは二つ返事で応諾する。そうして更に待つことしばらく。先程の黒い影が戻って来る。


『……グラキエース嬢』

「……報告」

『はっ……内部に人気はありませんでした。また調査の最中に将軍の部隊が来ましたため、撤退を』

「応諾……その判断は正しい。さっき陛下から連絡が入った。作戦を隠密行動から戦闘を前提とした殲滅戦に切り替える可能性がある」

『それほどと……』

「肯定……それで一つ確認。人気がなかった?」

『はっ。まだ調査は内部第一層でしたが、どういうわけか人気は一切感じられませんでした。血痕なども見受けられず、ただ人気がないという状況です』

「……」


 どういうことなのだろうか。グラキエースは黒い影の報告に困惑を僅かに浮かべる。秘密研究所なので元々そこまで人はいないのだが、施設規模としては山一つを丸々くり抜いて作られているなどかなり大きい。なので調査が第一層とやらだけで終わらざるを得なかった点は問題ないのだが、それでも誰一人見付けられなかったというのは疑問が残るだろう。というわけで黒い影も困惑を浮かべていたが、グラキエースは少しして首を振る。


「……ひとまず承知。陛下にも報告を行う。貴方はそのまま待機を」

『はっ……影に潜んでおります故、なにかありましたらお声がけください』

「承諾」


 黒い影の言葉に、グラキエースは一つ頷いた。そうして不気味な沈黙を保った秘密研究所を監視しながら、一同は兄王からの連絡を待つことになるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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