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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3299話 はるかな過去編 ――呼び出し――

 セレスティア達の世界において後に八英傑と呼ばれる英雄となる八人の若き英雄達。その一人にしてカイト達の武器や防具を提供する『銀の山』の棟梁の娘フラウの助言を受け、武器と防具の修繕・強化を行ったソラ達。そんな彼らは『銀の山』で修繕と療養を兼ねて数日の間滞在すると、ようやく全員揃ってシンフォニア王国の王都へと戻る事が出来る様になっていた。


「はぁ……やっぱ色々と空けてると溜まってるっすね」

「まぁな……こうしていると冒険部で書類仕事をしていた事を思い出す」

「そっすねー」


 さらさらさら。王国や冒険者ギルドから発行された書類の束にサインや記載を行いながら、ソラと瞬が届いた書類の山を片付けていく。と、そんな中から一つの封書を見つけ、ソラが小首を傾げた。


「……なんだこれ?」

「うん? なんだ? 妙に豪華というか品のあるというか……しかも妙に分厚いな」

「っすね……よい予感しない」


 基本的にシンフォニア王国から発行される書類の多くは日本で言う所の茶封筒の様に比較的安価で量産がし易い封筒に入れられている。高価な封筒は王族などが出す手紙に使われるのが一般的だ。

 とはいえ、それも何度かヒメアやらロレインやらが出す手紙を見ていたので知っており、この薄緑色の封筒はそれではないと知っていた。なので見慣れない封筒にソラは首を傾げながら、ペーパーナイフで慎重に封を開く。


「ふぅ……これは……なんだ、これ」


 入っていたのは分厚い一枚の紙面だ。しかも紙面には文字が書かれているわけではなく、妙な紋様が刻まれているだけであった。というわけで少しだけ警戒しながらもそれが何なのか考える二人であったが、唐突に紋様が輝き出す。


「「わっ!」」

『……お久しぶりです、皆様』

「大神官様?」


 光り輝いた封筒から現れたのは、半透明のスイレリアだ。それに二人は僅かに安堵する。というわけで二人はその場から離れるわけにもいかず、ただ内容を聞く事になる。


「……とどのつまりまた『黒き森』の神殿……というか聖域に来いと」

「いう話……らしいな。まぁ、どうにせよ『黒き森』には行かねばならなかったから異論は無いが……ん?」

『おーい、二人共。オレだ、カイトだ。少し良いか?』


 部屋の扉がノックされるとほぼ同時に、部屋の外からカイトの声が響く。一応書類仕事だし中にはミスが許されない書類もあり、一応部屋は勝手に入らない様に全員気を遣っていたのだ。というわけで外から響いたカイトの声に、瞬が扉を開く。


「ああ、良いぞ」

「おう……ああ、ちょうどそっちにも届いていたか」


 開いた扉を通って中に入って早々、カイトの目に留まったのはスイレリアからの封書だ。それを見て彼もおおよそを理解したようだ。


「そっちにも? ということはそっちにも届いていたのか?」

「ああ。先代の大神官様の目撃情報らしい報告はオレの所にもあってな。それを含め一度集まって話をと。どっちにしろ向こうの方で改めて収集された情報を知らないとオレ達も次の行動が出来ないし」

「そうだよなぁ……ん?」

「失礼します」


 次はどうするか。そう考えたソラであるが、再び部屋の扉がノックされて今度はセレスティアがイミナを連れて入ってくる。


「ああ、悪い……一つ聞いておきたいんだけど、この現象が引き起こす事件はわかってるんだよな?」

「おそらく……という所ですが。状況から考えてになりますが……」

「で、日時などは不明と」

「流石にそこまでは情報は残っていませんでしたので……」


 結局の所なのであるが、セレスティアもどこで戦いが起きるかは知っていても何時それが起きるかの正確な日時は知っていない。彼女の言う通り、そこまで詳しい日時などは歴史の中に消えてしまっていたからだ。唯一この頃に七竜やら近隣諸国が集まった会議が行われており、そこに急報が持ち込まれたという所だけだ。その実何故この会議が行われたのか、などさえわかっていなかった。


「まー、さっきも言ったが。そりゃしょうがない。数百年先だからな……で、一個確認なんだが。オレ達が現地に張り込んでおく事は無意味なのか?」

「無意味……と言いますか、おそらく張り込めない因果になっているのではないかと思われます」

「ふむ……続けてくれ」

「はい……後世に伝わる歴史書によると、その時御身とレックス様は共に別所にいて急報を受けたと記されています。我々がいるので後世にそう記されているだけ、という可能性もありますが……」

「その顔だと、その可能性はなさそうだな」


 少しだけ苦い顔をするセレスティアに、カイトがおおよそを理解する。そしてそんな彼に、セレスティアははっきりとうなずいた。


「はい。当時御身がその場に居なかった事を記載していた資料は他国の使者の日記に記載されています。また当日はヒメア様がご一緒にいらっしゃった事も記載されておりましたため、間違いなく」

「姫様が一緒か……外交使節かなにかか。そうなるとオレも護衛をほっぽりだして現場に張り込むとは思えんか。とはいえ、どこかは知らんが姫様も外へとなると、よほどのなにかが起きたのか?」

「わかりません……ただ会議が行われる予定だったと。ですが話に取り掛かるより前に、この一件が起きて話し合うべき内容も話し合えぬまま、と使者の日記にはあったそうです」

「なるほどね……」


 確かに会議が行われるのであれば、自分達が招集されて不思議はないな。そしてそれを考えて、カイトはおおよそを察した。


「……」

「なにかわかる事が?」

「ああ……会議の発起人はベルだな。あいつが会議を招集したんだろう……で、オレ達を集めておいて、と」

「まさか……ベルナデット様にはいつ起こるかもうわかられているのですか?」

「多分な……あいつはそういう奴だよ。おそらく今回の一件を利用して、大陸全土で集まって会議を行おうと使者を走らせたんだろう」


 おそらく確実にそういうことなのだろうな。言葉を失うセレスティアに対して、カイトは半ば笑いながら因果関係が逆。会議が起きて偶然集まっている所に事件が起きたのではなく、事件が起きる事がわかっていたのでそれに合わせるべく偽装工作として会議を行う様にベルナデットが差配したのだと理解する。


「とはいえ、それをするためにはある程度の情報が必要だ。やっぱりオレ達が調査に出ないと駄目だろうな」

「となるとやはり招集に応ずるべきと」

「ああ……だからオレも来た。良し。ソラ、瞬。二人共、悪いがオレと共に……いや、今回はどっちかだけで良い。おそらく風の大精霊様に話を聞くだけって話だしな」


 今までの情報を鑑みるとソラ達は誰かが居れば、それがカイトと共に中継地点となれるようだ。そう考えていたカイトに、ソラが首を傾げる。


「大丈夫なのか?」

「ああ……ノワール曰くお前達の誰かが居れば時間軸の中継地点になって、オレがこの世界側での中継地点になるんだろうという事らしい。だからそっちは誰か一人で良いそうだ」

「それなら私一人で良いのでは?」

「ああ、それか……それはそうかもしれないが、という所らしいんだが……」


 どうやらノワールによるとそうではないらしい。セレスティアの問いかけに、カイトは苦い顔で首を振る。


「ここからはおそらくになるそうなんだが、セレス達こっち側の世界の住人だとエネフィア? とやらの世界情報が取得されないんじゃないか、とかなんとか。だからオレの情報が半端になるからソラ達の方が……その中でもソラ達地球にも居た奴の方が良いんじゃないか、って話らしい」

「なるほど……」


 確かにカイトはエネフィア以外にも地球でも活動している以上、その情報を取得する必然性はあるだろう。となるとその情報はリィルとナナミは持っていないだろうと考えられ、必然として大精霊達を呼び出す場合はリィル達エネフィアの住人達、セレスティア達この世界の住人達は除外されるというわけであった。


「まぁ、それでも。逆にこの世界の情報を持っているのがセレス達だから結局は来てもらわないと駄目なんだけどな」

「わかりました」

「おう……ってなわけで、ソラか瞬。どっちでも良いから準備しておいてくれ」

「わかった」


 そういうことであれば行かねばならないだろうな。カイトの言葉にソラが応ずる。そうして結局の所今回は大局的な視点も必要だろうとなり、ソラとセレスティアはカイトと共に『黒き森』へと赴く事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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