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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3283話 はるかな過去編 ――神界――

 セレスティアの故国レジディア王国にて出会った八英傑残りの四人。その一人でありカイト達の武器や防具の修理や改良を行っているフラウというドワーフの少女の助言を受け、瞬は<<赤影の槍(シャドウ・ランス)>>の強化。ソラは力を失って久しい<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>の賦活を目的としてそれぞれ冥界と神界に赴く事になっていた。

 というわけで一足先にカイト達と共にシンフォニア王国に戻って冥界に向かった瞬らと時同じく。ソラらレジディア王国に残留した面々もまた、レックスと共に神界へと赴いていた。


「これは……石の門……?」

「そ。ここから神界に繋がってるんだ」


 見たままを口にしたソラの言葉に、レックスが一つ頷いた。まぁ、『銀の山』の山頂にたどり着いた一同が見た光景はソラが口にしたままだ。イギリスのストーン・ヘンジの様な石の門とその周囲におそらく古代の文明の遺跡だろう奇妙な紋様が刻まれた石の台座や、半ばから崩れ去った様なパルテノン神殿の石柱の様な柱が幾つか。更には元々は神殿の基部だったのだろうと思われる大きな岩石があった。全てを総括して言うのであれば、滅んだ神殿跡という所であった。というわけでレックスが石の門のすぐ近くまで移動する。


「さて……まぁ、別に俺じゃなくても起動はするんだけど。結構面倒だしコツがいるんだよなー」

「はぁ……」


 そんなものなのだろうか。ソラは楽しげに笑いながらおそらくこの神殿を保有していただろう文明の遺産だろうコンソールを操作するレックスにそう思う。なお、流石に滅んだ文明だ。こちらは冥界とは異なって案内人なぞいるわけもなく、その面で言えばカイト達より待遇は悪かった。それはさておき。コンソールを操るレックスは数分の後、一つ頷いた。


「……良し。これでオッケー」

「まだ動くんっすね」

「ノワール曰く、機能そのものは単純だからじゃないか、って話だ。まだそっちの時代でも動いてるだろ?」

「え、あ、はい……まだ動かせています。私は触った事はありませんが……」

「そか……ま、そんなぐらい機能は単純らしい」

「へー……」


 イミナの返答に石の門の動作が安定している事を確認していたレックスが頷きながら、ソラへと告げる。そうして安定している事を確認した所で、彼は改めてソラへ向き直る。


「いや、一応言うと、単純なのはこっち側だけであっち……神界側はきちんとした機能を有してるらしい。だから向こうが潰れると動かせないだろうって話だ」

「なるほど……こっちは単なる端末みたいな感じってわけですかね」

「そんな認識で良いってさ」


 どうやらレックスも正確な所をしっかり理解しているわけではないらしい。そもそも彼は指導者なのであってそこの原理を理解する必要は無いだろう。

 というわけで安定を確認したレックスは自身の作業を待っていた配下の騎士達に指示を飛ばして、一部をこの地域の確保に留めると共に自身はソラらと共に神界へ続く石の門へと進む事にする。


「良し……じゃあ、行くか」

「うっす」


 神界に行くのは久しぶりかな。ソラはエネフィアで何度か足を運んだ神界を思い出し、少しだけ気を引き締める。そんな彼に、レックスが気軽に告げた。


「そんな気張るな。どうせ向こうは誰もいやしない……居て魔物ぐらいなもんだ」

「それ、逆に気合入れないと入って即座に遭遇戦とかになりません?」

「時々なるな」


 あはははは。ソラの指摘にレックスが呵々大笑とばかりに笑う。まぁ、それでも軽く一捻りしてしまえる彼らなので気軽に告げても何ら問題ないのだろう。というわけでひとしきり笑った彼が教えてくれた。


「ああ、そうだ。一応つってもあっちの方は屋根とかはまだ残ってるから、こっちほど壊れてるわけじゃない。しっかり神殿だなぁ、って様子はある」

「そうなんっすか?」

「ああ……まぁ、それでも管理とか誰もしてないし、いつからあるかとかも誰もわかってない。本来は俺らが人を派遣して管理するべきなんだろうけどなぁ……流石に今のご時世そんな人手がありゃどっかの街に派遣した方が良いからなぁ……」


 やはりこういう所は為政者としての顔があるのだろう。レックスは歴史的に見れば文化遺産としても本来丁寧に取り扱うべき遺跡に対してある種の放置という状態を取らねばならない現状への憂いを僅かに覗かせる。そうしてため息を吐いた彼に、ソラも先程までの興奮を僅かに抑えて問いかける。


「そう言えばこの神殿の文明ってレックスさんのご先祖様の文明と同じなんっすか?」

「いや、違うらしい。更に昔の文明じゃないか、ってのが学者達の通説だ。地下の遺跡と同じじゃないか……とは言われている。俺も違うと思う。なんってか……こう、懐かしさ? そういうのが無い」

「はぁ……」


 一応『方舟の地』はレックスにとっては遠いご先祖様が居た場所だからか、どこか懐かしい様な印象があるらしい。しかしこの滅んだ神殿の文明からはそういったものが感じられず、繋がりがあったとしてもかなり時代を隔てているのではないかと思っているとの事であった。とまぁ、そんなこんなを話しながら歩く二人であるが、石の門までたどり着く。


「じゃあ、行くか。まぁ、さっきも言ったけど。先にウチの連中が行って周辺を確保してるからそこまで気張らなくて良いよ」

「あ、うっす」


 レックスとしてもソラとしても意図したものではなかったが、先程の会話は意図せずして緊張がほぐれる要因にはなってくれたらしい。ソラも先程までとは違い少し気軽さが滲んでいた。そうして彼に先んじてレックスが石の門を通った所で、そんな彼に今度は<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>が告げた。


『そうは言っても神域だ。敬意は忘れるな』

「わかってるよ。レックスさんも単に肩肘張るな、って話だろ」

『わかっているなら良い』


 ソラの言葉に<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>が一つうなずく。そうしてそんな彼の言葉に背を押され、ソラはレックスに続いて石の門を通り抜ける。


「……っ」


 石の門を通り抜けて感じたのは、神域に渡ると感じる神の気配。所謂神気の様なものだ。とはいえ、常々言われている様に神はすでに去った後だからかエネフィアで訪れた神域ほどの濃さは感じられず、敢えて言うのであれば確かにそこに神は居たのだと思わせる程度の残滓だった。


「……空は見えない、か」


 どうやらレックスの言う通り、石の門をくぐり抜けた先はまだ神殿の原型が残っている程度ではあったらしい。上は神殿の天井で覆われていた。が、同時にすでに管理がされていない事も間違いない様子で、神殿の側面の壁は一部が崩壊していた。魔物とばったり、というのが起きるのはそういう事なのだとソラも察する。と、そんな彼にレックスが笑う。


「良し、来たな。じゃ、作業手伝ってくれ。ここを拠点にして行動するからな」

「了解っす」


 兎にも角にも足場を固めない事には仕事にならない。というわけで、レックスの指示をソラは快諾。ひとまずは拠点の設営を手伝う事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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