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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3264話 はるかな過去編 ――支度――

 セレスティアの故国レジディア王国にて後に伝説的な英雄王として名を残す事になるレックス・レジディア。そんな彼の婚礼の儀に参加するべくレジディア王国を訪れていた一同であったが、婚礼の儀も終わり数日。今度はベルナデットの儀式があるという彼女に同行するレックスを見送る一方。自身らは武器や防具の修繕・強化のため冥界と神界に赴く準備を進めていた。というわけでレックスの率いる四騎士と共に準備を開始するソラの一方。瞬はというと、自身もまた冥界に赴くカイトと共に準備を行っていた。


「ということは元々冥界に向かう事は決まっていたのか」

「ああ。ただ各方面で準備して、それを王都レジディアで持ち寄って最後の支度になってたってわけ。で、オレが残ってるのもそこらの統率を行わないといけないから、って側面もあるな……あいつが居る時は神界の分はあいつがやるけど」

「そう言えば神界にも行った事があるのか?」

「あるよ……一番最初の道案内役はオレ達二人だったからな」


 どうやら一番最初の魔族達の侵攻の折りに、冥界と共に神界にも足を運んでいたらしい。というわけで立地的に冥界が近いから、という以外にシンフォニア王国組とレジディア王国組の割り振りの意味はないらしかった。


「ま、最初は大変だったけど……二度三度と繰り返すとさほど問題もなくなってきたしな。今じゃ少しの遠征とさほど変わらない。まぁ、採掘は若干大変だけど」

「あ、そうか……鉱夫がいるというわけでもないのか」

「連れては行けないからな……一度護衛して、ってのも考えられたけど」


 流石に無理だなとなった。カイトは瞬に対して色々と考えた結果、自分達が遠征に出るのが一番効率が良いと判断された事を説明する。

 まぁ、確かに誰がどう考えても鉱夫達は戦闘力がない。『銀の山』のドワーフ達を連れていけるならまた話は別なのだろうが、今度は『銀の山』での修繕の準備が出来なくなってしまうらしいかった。


「そういうわけで採掘も全部自分達だ……といっても、採掘用のゴーレムを持っていくから、結局はオレ達がやるのはその制御と戦闘なんだけどな」

「それでこの大きな箱になるのか。金属の箱で何なんだと思ったが……ゴーレムが入っているのなら納得だ」

「そういうこと」


 かこっ。カイトが目の前に置かれている一抱えほどもある箱の蓋を開く。それに瞬も横から覗き込ませて貰ってみると、中には四本腕のゴーレムが入っていた。腕の半分はドリル、残る二つはマジックハンドの様に伸びる様になっており、採掘された鉱石を回収するための籠が背中にあった。そんなゴーレムの頭の部分をカイトが少しだけ押し込んだ。


「……大丈夫そうだな」

「おぉ……便利だな」

「オレ達は戦闘が専門であってゴーレムを使う事が専門じゃない。だから使い方はシンプルにしてもらってる」

「これはノワールさんの作か?」

「ああ……良し」


 カイトはゴーレムの起動に問題ないことを確認すると、再度ゴーレムの頭を押し込んで停止を指示する。するとゴーレムが独りでに箱に戻っていき、元通りの姿勢で休止状態へと移行する。それに先程取り外した蓋を被せれば、チェック完了だった。


「良し。じゃあ、後はこれを繰り返してくれ。で、終わったらこのリストに何番から何番はチェック完了のマークをしておいてくれ」

「わかった」


 別に二人は暇だから駄弁っていたわけではない。単に瞬に作業の指示をするため、手が空いているカイトが指示をしていただけであった。というわけでこちらの指示が終わった所で、カイトは次にセレスティアの指示に取り掛かる。


「良し……待たせた。で、一応聞いておきたいんだけど、冥界には行った事あるのか? 神界には行った事ある、って聞いてたが」

「冥界は神界ほどではないですが……何度か。ただ両手の指で足りる程度です」

「まぁ、血筋としてもそりゃそうか。更に言うと未来のオレとの連携、ってのもオレと出会えたからこそわかったことでもあるしな」


 おそらく未来の自身について知らなければどうしようもない部分を入れていなかったのは、そこから未来の自分の居場所が探られない様にするため。カイトは少し前にノワールから聞いた話を思い出す。ここでノワールは未来のカイトが今エネフィアという世界にいて、冥界に強い繋がりを持つ事を知っている。

 なので巫女服の原案を作成する時に未来のカイトとの連携を前提として巫女服を作れば良かったのではと思うが、今度は後世の者がなぜそんな事をとなって未来の世界からの来訪者の情報を探られても困ると判断したのだろうとのことであった。


「あ、そうだ。それだったら巫女服に冥界対策が組み込まれていたりはしないって事なのか?」

「いえ、それは組み込まれている様子です。それについては基本的な要素として、という所だそうですが」

「なるほど……だったら『冥魔石(めいませき)』とランタンの調整は任せて良さそうか」

「『冥魔石(めいませき)』も持っていくのですか?」


 『冥魔石(めいませき)』というのは冥界で取れる鉱石の一つらしい。強い闇属性の力を秘めた魔石らしいのだが、未来の世界でこれを持っていくのは稀な事だったらしい。セレスティアはカイトの言葉に驚いていた。


「ああ……未来じゃ別の方法をしているのか?」

「いえ……『冥魔石(めいませき)』を使うと魔物が集まってしまうのでは?」

「だから集めて一気に討伐しようって腹なんだが」

「あ、あぁ……なるほど……」


 そうだった。今自分が話しているのはこの世界どころかおおよそ全ての世界を見回しても最強クラスの戦力を有する騎士団だった。セレスティアは冥界の魔物を集めて一掃してしまおうという通常なら狂気の沙汰でしかない行動も単なる時間短縮にしかならないことを理解する。


「とまぁ、そういうわけだから。『冥魔石(めいませき)』とランタンの調整を頼む」

「わかりました。光量の調整は?」

「30で……ああ、柱に立てるから、後で柱の調整をやっている奴をそっちに寄越す。といってもイミナだが……そことの接続も頼んだ」

「わかりました……30で量も多いと、今回の採掘はかなり広域に?」

「ああ……そっちだと大体どれぐらいの光量にしてるんだ?」

「10か20です。あまり照らしすぎると魔物が寄って来てしまいますから……」


 先にもセレスティアが常識外れである事を思い出していたが、本来は魔物を集めてしまうので冥界でまばゆい光を焚く事はない。なので未来の世界では光量を抑えてなるべく息を潜めて動くらしかった。が、カイト達は逆に面倒臭いからと言ってなんとか出来てしまうのであった。


「本当はその方が良いんだろう……が、ゴーレム使うしそれなら一緒っちゃ一緒だからな」

「ですか……わかりました。とりあえず30で設定しておきます」

「頼む……真っ暗だと作業の方が大変だからな」


 セレスティアの応諾にカイトが一つ頷いた。そうして話が終わった所で、彼に声が掛けられる。


「マクダウェル卿」

「ん? ああ、なんだ?」

「レックス殿下より伝言が」

「あいつからか。聞こう」


 どうやら聞かれてまずい話とかではないらしい。カイトは伝令が耳を寄せる動作もなかったことから、そう判断する。というわけで伝令の兵士が普通に報告してくれた。


「はっ……予定通り神殿に到着。問題は特にない、とのこと」

「そうか……わかった。下がって良い」

「はっ! ありがとうございます」


 報告の内容はレックスからの定期的な連絡の一つだったらしい。それにしても特に問題なかったため、伝令をすぐに下がらせる。そうして伝令を下がらせた所に、丁度報告が入ってしまったため作業に取りかかれずにいたセレスティアにそう言えばと彼が問いかける。


「そう言えば……セレスの時代だと統一王朝の神殿はどうなってるんだ? ああ、いや……中央じゃなくて、今レックスとベルが向かってる統一王朝の王墓だけど」

「王墓……ああ、先墳墓(せんふんぼ)……ですね。第一統一王朝時代の墳墓として遺跡扱いとなってしまっています」

「ああ、流石に遺跡扱いになっちまったか……そりゃしゃーないか」


 セレスティアが何度か口にしているが、ベルナデットが属していた統一王朝はセレスティア達の時代には第一統一王朝となる。その後第二統一王朝の興りがあるわけであるが、流石に数百年も昔に滅んだ王朝の墓は一応第二統一王朝の系譜として敬われはするが、やはり王墓などの様に特に丁重に扱われているわけではないらしかった。というわけで長い時の流れを改めて理解するカイトであったが、ため息一つで気を取り直す。


「ああ、すまん。作業の邪魔をしちまった。作業に取り掛かってくれ。オレもソラの様子やら他の連中の様子やら、全体の統率もあるしな」

「あ、わかりました。では作業に取り掛かります」


 その話が出たのでうっかり話し込んでしまったが、時間は有限だしカイトにもまだまだ色々と仕事があった。というわけで、一同は改めて出発に向けた準備を急ぐのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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