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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3230話 はるかな過去編 ――情報――

 『方舟の地』と呼ばれる超古代文明の遺跡で起きていた異変を解決したどり着いたセレスティアの故国レジディア王国。そんなレジディア王国の王都レジディアにてソラや瞬達はレックスの客人として扱われる事になっていた。

 そうして客人としての日々を過ごす傍らカイトやレックスと同じく後に八英傑と呼ばれる事になる八人の英雄達や王都レジディアを統率するゴルディアスという冒険者にして貴族という稀有な肩書を持つ者等との会合を重ねていた。そんなある日。瞬はカイトに誘われ運動がてら魔物の討伐に赴くわけであるが、その後。スイレリアとの再会をきっかけとしてこの世界に世界の情報の抹消という謎の現象が起きた事を知り、その対処について話し合う会議に参加する事になっていた。


「ふぅむ……となるとやはり最終的にはどこかのタイミングで大精霊様よりご助言を頂くのが良いと」

「そうなるでしょう。世界の情報の抹消や復元、そういった事に関しては大精霊様の領分。我ら人の子の手に余る事柄です」


 レイマールの問いかけに対して、スイレリアははっきりと最終的には大精霊の助力を受けるしかない事を明言する。


「そも、今回の一件は先に陛下が言われた魔法のようなもの。魔法により破損した情報の修繕は我らではどうしようもない」

「出来る……と?」

「出来るでしょう。かつて……はじまりのマクダウェル卿が活躍された頃。まだ私が大神官となる前の事です。先代の大神官と共に風の大精霊様の身許へと向かった事があります」

「「「え?」」」


 スイレリアの口にしたはるか過去の事柄に、その場の全員が思わず目を見開く。それはカイトもそうだったし、未来のマクダウェル家に属するイミナさえそうだった。

 はじまりのマクダウェル卿。それは言うまでもなく魔族の血を引くの大英雄。開祖マクダウェルだろう。その彼が大精霊と会っていたというのは、一族に伝わる逸話にも。世間一般に伝わる伝説にも記されていない事だった。が、これは自然な話だったらしい。


「そうでしょう……この話はエルフ達さえ知らぬ話。事柄の重要性から時のシンフォニア王家でも限られた者しか知らなかった事。大精霊様より彼は直々に指示を頂いた事があるのです」

「開祖マクダウェルが……それほどの危機だったのですか?」

「ええ……あの時は事象の混濁……例えば猛暑の中で吹雪が吹きすさぶようなあり得ぬ事態が起きた事があったのです」

「それは……」


 情報の抹消も中々にあり得ない事態だが、事象の混濁という現象も中々にあり得ない。カイトは自身の家の開祖たる大英雄が密かに成し遂げていたという活躍をより詳しく聞きたいと思いながら自制しつつ、流石はと尊敬の念を強めていた。


「ええ。今と同じくあり得ない……そこではじまりのマクダウェル卿……貴方の言う開祖マクダウェルを当時の大神官様が呼び寄せたのです。これはおそらく貴方はご存知でしょう」

「大神官グウィネス……彼が?」

「ええ。開祖マクダウェルと竹馬の友となったと言われるグウィネス。今はどこを旅しているのかもわからない呆れた先代」

「ご存命なのですか?」

「おそらく……が、どこで何をしているのやら。少なくともこの大陸にはいない様子ですが」


 珍しく、スイレリアが大神官としての仮面を取り払い呆れた様子でため息を吐く。とはいえ、そんな彼女に興味の抑えられないカイトは重ねて問いかける。


「連絡を取り合われていらっしゃるのですか?」

「いえ……どうにもマクダウェルさんとの旅で旅をする事に目覚めたそうで。今は吟遊詩人の真似事なぞしながら呑気に旅をしているみたいです。つい何年か前に訪れた異大陸のエルフが偶然会ったと伺いました……いえ、あの愚兄の事はどうでも良いでしょう」

「……兄?」

「はぁ……これ以上聞きたければ時間がある時にでも神殿へ。貴方にも言いたい事はありますし」

「は、はぁ……」


 スイレリアはどうやらこの先代の大神官グウィネスの妹だったらしい。が、だからこそ自身に大神官という要職を放り投げ、自由人と化した兄に盛大に呆れ果てているらしかった。というわけでカイトを黙らせたスイレリアは気を取り直した。


「脱線しましたね。それで開祖マクダウェルと共に事象の混濁に対応するべく奔走した先代の大神官グウィネスですが、その根源が世界に記された情報が不自然に書き換えられている事を掴みました。が、こうなってはいくら大神官と言えど所詮は人の子。彼らの手には余る事態と判断されました」

「そこで、大精霊様のご助力を頂く事になったと」

「ええ……彼らも藁にも縋るという様子ではありました。世界の情報が書き換えられては世界の情報を読み解く大精霊達でも無理ではないか、と」


 当たり前の話だろう。大精霊達はあくまでもこの世界の法則に則ってそれぞれの属性を司るだけだ。その法則そのものが狂ってはどうしようもない。というわけでこの先こそ、自分達の求める答えであると理解したロレインが問いかける。


「ですが、大精霊様はその無理を覆す力をお持ちだった……と」

「その通りです……この世界……ある種の創造主とも言える者たちはこういった世界の法則がかき乱される事象をも想定していたようです。世界は万が一に備えて別に情報を有している、と」

「バックアップ……ですか」

「そういうことです。この世界全ての情報のバックアップ……それを有しているそうです。どこにあるのか。どうやってそれを保存しているのか……そういった物は一切分かりませんが、少なくともそれがある、と」

「「「……」」」


 そんな事が出来るのか。スイレリアの語る話に一同は言葉を失う。が、そのバックアップがあればこそかつての事件は解決出来たのだ。そうして押し黙る一同に対して、スイレリアは続ける。


「そして、大精霊様は世界の法則を元通りにする宝玉を開祖マクダウェルへ授けられました。それを手に、彼が向かったのは……」

「世界樹の麓……」

「そういうことです。無論、そこに至る前には事象の混濁の情報を集め、最適な解決策を見つけ出すなど色々とあったみたいですが」


 色々と腑に落ちた。スイレリアの視線を受けて答えを口にしたカイトは、今まで伝説や逸話に隠れて見えてこなかった開祖達の旅路の真実の一端にそう思う。と、そんな彼女の言葉にロレインがはたと気付いた。


「ん? ということは……今回もその最適な解決策を見出した上でないと大精霊様からのご助力は」

「頂けないでしょう。なので必然、調査隊の派遣は行うべきですね」

「そうか……なるほど。大精霊様に甘えてばかりもいられない、と」

「そういうことですね」


 大精霊達は人の子で解決出来ないと判断されれば手を貸してくれるが、同時にそうであるかどうかはしっかりと見極めた上でないと手を貸してくれないらしい。これはカイトの呼び出しとあらば即参上――呼ばれていなくても勝手に出てくるが――する彼女らを知るソラ達からすると少し意外だった。が、逆に彼でなければそれが普通であったようで、ロレインも当たり前過ぎたと少し反省する様子を見せるほどだった。


「話を進めましょう。その後ですが、おそらく先の事例を鑑みるにカイト。貴方とセレスティア達は必須でしょう」

「私……ですか?」

「ええ。聖域以外で大精霊様が顕現されるには縁が必要。その縁として貴方達は必須となる。異変の原因が見つかり次第、貴方達がそこに赴き大精霊様のお力添えを頂く事になるかと」

「カイト」

「ご命令とあらば」


 ヒメアの言葉に、カイトは即座に応諾する。そうして今度はロレインがソラ達を見る。


「君達の方はどうかね」

「問題無いと思います。この間の大精霊様のお言葉を鑑みるに、おそらくこういう事態が解決されない限り私達も戻れないでしょうから」

「そうか。そう言えばそういう話だったな」


 ソラ達が元の時代に戻るためには、こういう原因不明の事態の内彼らが関わらねばならない事象を全て解決しなければならないのだ。今回がそれに該当するかは分からないが、そうかもしれないのなら否やはなかった。というわけでこの謎の事象の解決に向けてひとまずの目処を立てた一同は、その後は情報収集に向けた話し合いをこの日一日行う事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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