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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3221話 はるかな過去編 ――倉庫――

 『方舟の地』という超古代文明の遺跡に起きた異変を解決し、セレスティアの故国レジディア王国の王都レジディアへと足を踏み入れていた瞬達。そんな彼らは後にカイトと共に八英傑と呼ばれる英雄となるアイクという人魚族の青年との会合や、王都レジディアの冒険者を統括するゴルディアスという騎士にして熟達の冒険者との会合を経ていた。

 そんなゴルディアスとの会合の最中にレックスの率いる騎士団の幹部が一人ライゼムと出会う事になった瞬は、ゴルディアスの要請を受けたカイトからの要請で彼と共に飛空艇のチェックに携わる事になっていた。

 というわけで王都レジディアの冒険者ギルド支部の地下に格納されていた飛空艇の部品のチェックを終えた後。一同はライゼムと共に王城にあるという倉庫へと向かっていた。


「まぁ、カイトさんがいるんで案内は要らないっしょうけど」

「そういうなよ。オレも他所様の家は詳しいってわけじゃないんだから」

「うっす……てか、王城を他所様の家って言うのも変なもんっすね」

「あははは。そうだが、事実だからな」


 カイトはいるし、ライゼムも居るのだ。なので警戒が厳重なレジディアの王城の中であってもほぼほぼ素通りというような状態だった。そうして一同は警戒が厳重な一角へとたどり着いた。


「ここっす……通してくれ」

「「「はっ!」」」


 ライゼムの指示を受けて、入り口を守っていた衛兵達が敬礼して応ずる。そうして一番格の高いらしい兵士が少し離れた場所へと視線を送ると、そちらにいた兵士が指示を飛ばして仕掛けを作動させる。それを見ながら、兵士の一人がカイトへと口を開いた。


「ライゼム卿、マクダウェル卿。ご存知と思いますが、この倉庫の解錠がされる時間には限りがあります。もし別に出られます場合は中の兵士にお声がけください」

「わかっている……もしくは、だな」

「は」


 チャリン。カイトが耳のイヤリングを指で軽く弾いて鳴らすと、それに衛兵が笑う。本来この倉庫から出るには中の兵士が持つ専用の通信機を使わないとならないのだが、その通信機はノワールが開発したものらしい。カイトの持つ通信機と繋げる事が出来るのであった。そんな話をしていると、倉庫の扉が開く。


「どうぞ」

「ああ」


 ががががっ。重苦しい音を上げて倉庫の扉が動いていく。そうして中に入るわけであるが、そこは非常に広い空間で、その中にはいくつかの大型な部品が置かれていた。と、そんな部品の横には何人かの研究者らしい者たちが色々と調べている様子だった。


「ん?」

「誰か来ましたね」


 どうやら中の者たちには外の様子は伝えられていなかったらしい。まぁ、専用の通信機が無いと連絡が取れないというのだし、全員が専用の通信機を持っているとも思えない。と、その内の一人はわかっていたようだ。


「ああ、お兄さん……カイトさん……マクダウェル卿が来るという事ですので彼らですねー」

「あ、そうなんですか……え?」


 マクダウェル卿。その名に研究者達が仰天した様子で後ろを向く。まさか彼が来るとは思っていなかったようだ。


「おう……研究に精が出るな」

「ええ……あ、そうだ。お兄さん、外でフラウ見ませんでした? ちょっと出るって言って戻ってこないんですよー」

「いや、見てないが……どうした?」

「やっぱりどうしても足りない部品が出てくると思いますから、その足りない部品を作る必要があるんですけど……その部品を作るにはこれの素材を調べる必要があるわけですね。で、その魔導具を取りに行ったんですね」

「で、戻らないと」


 今の七竜の同盟にとって、この飛空艇の再生は急務だ。なので同盟の総力を結集して事に臨んでいるわけで、フラウの所属する『銀の山』も素材の面から協力してくれているのであった。


「とりあえず見てはいないよ。来るまでにすれ違ってもいない」

「そうですかー……仕方がないですね」


 ぱちん。カイトの返答にノワールが指をスナップさせる。すると数体の妖精のような使い魔が現れる。


「フラウ探してきて」

「「「はーい」」」


 ノワールの指示を聞くと同時に、妖精達がふわっと消える。強固な結界に守られたこの倉庫であるが、そもそもノワールの編んだ結界なので抜ける事は容易なのであった。というわけでフラウを探しに行く使い魔達を見る事もせず、そのままカイトへとノワールが告げる。


「で、部品点数のチェックですねー……抜けてはいないと思いますよ。こっちに来てから私もまず点数のチェックしましたけど、報告書との相違はありませんでしたし」

「そうか……まぁ、一応念のためのチェックって事で一つ」

「そうですねー。チェックを命じられてやらないのは背信行為ですから」


 どうやら自分の邪魔さえしなければノワールとしてはどうでも良いらしい。先程からこちらを見る事もせずただただひらすたに専用の魔導具を用いて墜落した飛空艇の部品を解析。足りない部分に対する推測を書き殴っていた。そんな彼女に、カイトが問いかけた。


「……なんとかなりそうか?」

「難しいですねー……やはり全体を見ないことには組み合わせで不適合を起こす可能性が高いですから・それでも抜けている部分は独自解釈で色々と組み込むんですけどねー……うーん……ここも抜けている……どうしたものでしょうかねー」

「……頑張ってくれ」


 やはり本来刻まれていた刻印が消えてしまっているのだ。それを周囲の術式の痕跡から類推するのは容易ではないのだろう。カイトは彼女についてはそのまま仕事をしておいてもらう事にして、自分達もまた仕事に取り掛かることにする。


「じゃあ、これがリストだ。このリストに相違が無いか確認してくれ。で、何か気になる事があったら報告頼む」

「わかりました」

「わかった」


 カイトの言葉に瞬とセレスティアが応ずる。そうして一点一点部品を探してはチェックリストにチェックを入れていく。


「……問題はなさそうだな。だがなんというか……しっかり組み上げられるような感じで配置されているな」

『ああ。前にお前らから聞いた情報を参考にして物理的に組み上げも出来るようにしているんだ……まぁ、手探り感も強いから時々変な形になって全員はてなマークが頭に浮かんだりするそうなんだけどな』

「そうか」


 やはり別世界とはいえ参考となる情報があったのはノワール達にとって有り難かったらしい。飛翔機にせよ飛空艇にせよどういう形なのかわかっていなかった頃には海に浮かぶ船のような形状を思い浮かべ、まるっきり当てはまらないだろう場所や部品の不足なり余りなりが起きてしまっていた、という事であった。


『それでも飛空艇の形状がおおよそわかったのは大きかったですねー。昔は飛翔機が船で言う所のスクリューの部分にあったりしたのでどうしてもおかしい事になったんですよねー。今思えば確かにもっと上にあるのが普通です……わかっているからおかしいと思えるのかもしれませんが』

「どうなんでしょう……翼にないとも限りませんけど」

『それについてはわかっていますよー……うん。ここはこんな所でしょうか』


 自身の感謝に対して少しだけこそばゆい様子を出しながら一応の明言を行う瞬にノワールは少しだけ咲いながら、今の部品のチェックを終わらせて次の部品に向かう。


「……うん。こちらは問題なさそうだ。そっちは?」

『ああ、こっちも問題なさそうだな……うん。部品形状も写真にある通りだ。内部も抜かれていなさそうだな』

『こちらも同じくです……あら?』

「ん?」


 セレスティアが振り向くと同時。瞬も同じ事に気が付いて後ろを振り向く。そしてそれと同時に、扉が勢い良く開かれた。


「いやー! ノワール、ごめんごめん! 途中旦那に会ってさぁ! 話が長引いちまったよ!」

『もう……仕事途中なんだから長話しないでよ』

「悪い悪い! って、マクダウェルの若旦那!」


 とんっ。入ってきたのは銀の髪と褐色の肌を持つ小柄なドワーフの少女だ。そんな彼女はカイトを見るなり床を蹴って彼の所へと移動する。


「おう、カイト! お久しぶり!」

「呼び方統一しろよ……おう、久しぶり。で、探しに行ってたの、そいつか?」

「おう……流石に古代の文明ってだけあって使ってる素材は良いの使ってるよ。強度は高いけど、軽さもある。これを使用して鎧を作ると良い軽鎧が出来そうだ。多分色々な金属の合金なんだろうけど……ちょっと気になるのは耐冷能力がかなり強めって所さね。再現しようとするとちょっとそこらに強い配合になるかと思ってね」


 銀の髪の少女が双眼鏡とカメラを合わせたような魔導具を掲げる。そんな彼女を見ながら、カイトが声を上げた。


「あ、そうだ……セレス、瞬!」

「「「ん?」」」

「ちょっと来い」


 カイトの呼び寄せに、二人がそちらへと移動する。


「この間言ってた未来からの来訪者」

「ああ、こいつらが……はー……確かに旦那……いや、ベルの顔に似てるねぇ……」


 元々ドワーフ族の中でも小柄な少女だ。セレスティアを見上げるような様子で彼女の顔を覗き込む。と、そんな彼女からいきなり、猛烈な力が迸る。


「「っ」」

「……ふーん。この程度は問題ない、か……こっちは護衛?」

「いや、そっちは未来の方のオレの仲間らしい」

「へぇ……面白いね。悪くはない」


 今度は瞬を見ながら、ドワーフ族の少女が牙を剥く。それに瞬もセレスティアも身構えるが、戦闘になる事はなかった。


「はぁ……戦わないよ。単に威圧してみただけ。一介の鍛冶師のアタシに威圧された程度で膝を屈するのなら呆れ返ったんだがね」

「一介の鍛冶師……」


 今のはおそらくランクSの冒険者でも相当な実力者でなければ出せないだろう圧だ。瞬は並み居る猛者達と並び立った経験から、そう認識していた。


「ああ、名乗りが遅れたね。銀の山の棟梁の娘フラウだ。よろしく頼むよ」


 やはりこの少女こそがフラウだったか。瞬はそう思う。こうして瞬とセレスティックは八英傑残る二人の片方。フラウと出会う事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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