第3216話 はるかな過去編 ――白銀の巨竜――
『方舟の地』と呼ばれる超古代文明の遺跡に起きた異変。それはソラ達の来訪により未来の情報の流入が起き、未来のカイトを遺跡が再現しようとして失敗した事が原因であった。
というわけで未来のカイトのデッドコピーを討伐し異変を解決した一同はその後、レジディア王国は王都レジディアへと足を踏み入れていた。
そうして後の八英傑にしてカイトの幼馴染の一人であるアイクとの出会いを経ながらも王都レジディアにて客人としての日々を過ごしていたソラ達であったが、そんなある日。カイトとレックスの来訪を受けていた一同であるが、そこに鳴り響いた地響きをきっかけとしてこれまたカイトの幼馴染の一人にして後の八英傑が一人、フラウの到着を知る事となる。
『終わった終わった……旦那。とりあえずこれで終わったんだけど、いつも通りで良いかい?』
「おう。まぁ、とりあえず色々とあるだろ。顔見せはそれが終わってからで良いよ」
『すまないね。まぁ、慣れてるからそんな時間は掛からないよ』
レックスの返答にフラウはそう告げる。そしてそれと同時に再び白銀の巨竜が歩き始め、地響きが響き渡りだす。
「……いや、もう言われなくてもわかるんっすけど。なんすか、あれ」
「いや、地竜だろ」
「見たまんまっすけど」
あんな巨大な地竜が居てなるものか。ソラは笑うレックスの返答にそう思う。が、実際にいるのだから、なんとも言い難かった。
「てか、あんなのよく飼い慣らして? ますよね」
「飼い慣らしてる、っていうかあれは『銀の山』の守護竜みたいなもんでな……あいつは未来まで生きてるよな?」
「ええ……あ、あはは……」
レックスの問いかけに頷くセレスティアであるが、その顔は大いに引きつっていた。そんな彼女に、レックスが小首を傾げる。
「どした?」
「い、いえ……私達が知ってるよりかなり大きかったものですから……」
「え? 未来のあいつ、もっとちっさいの?」
「あー、そう言えばフラウのヤツ、デカくなってろっつってデカくならせてたんじゃなかったか? 派手だろ、つって」
「あー……そう言えば昔そんなこと言ってたなぁ」
そう言えば、と口を挟んだカイトの言葉に、レックスもそう言えばと思い出したようだ。まぁ、あんな全長数キロメートルもあろうかという超巨体だ。
今もそうであるが、一歩歩くだけで地響きは鳴り響き大地は揺れ動くのだ。普通は生活にも影響が出るはずなのであるが、これに慣れてお祭り騒ぎに拍車が掛かる王都レジディアの住人達がおかしいのであった。
「にしても、そっかぁ……俺達はあのサイズに見慣れちまってて違和感無いけど、そっちだとどれぐらいなんだ?」
「山一つぶん……ぐらいでしょうか」
それでもそんなデカさなんだ。ソラ達はどうにせよ歩くだけで地響きは鳴り響くのだろうな、とどこか場違いな感想を抱く。と、その一方でセレスティアの言葉にカイトがおおよその推測が出来たらしい。
「あー……速度重視の時のデカさか」
「なるほど。それぐらいか……ま、戻るか。別に外で話しとかないと駄目ってわけじゃないし」
「そうだな。どうせドワーフ達も荷物を降ろしたりで時間掛かるだろうし……話せるとすると明日ぐらいか?」
「どうだろうな。明日か、明後日か……フラウのヤツも色々とあるだろうし、アイクの方にも行かないとだろうしなぁ……」
カイトの言葉に対して、レックスもどうだろうかと考える。まぁ言うまでもないが後の八英傑の面々はこの時代ですでに英雄として名を馳せているのだ。個々には顔を合わせていても、こうして集まれる方が珍しいぐらいには忙しいのであった。というわけで何時ぐらいには顔合わせさせられそうか考えるカイトであったが、そこでふと思い出したかのようにソラを見る。
「あ、そうだ……ソラ……いや、瞬もリィルもだが」
「ん? 何だ?」
「武器と防具の準備はしておけ。ノワもそうだが、フラウも武器や防具……特に冶金についちゃあいつの領分だ。手っ取り早い話がフラウが外装を整えて、ノワが内装を整えるってわけだな。だから細かな歪みやらはフラウの領分だ」
「頼めるのか?」
「頼める頼めないも見ない事にはなんとも言えんだろ」
当たり前といえば当たり前の話だろう。カイトは瞬の言葉にそう告げる。軽装備で一見関係の無いように思える瞬とて、インナーには魔法銀を織り込んだ鎖帷子を着用している。金属製の武器防具を身に着けていない冒険者の方が珍しいのだ。
「ま、どっちにしろ数日後になるだろうけどな」
「そう言えばあのフラウさん? 以外のドワーフ達ってどこにいるんだ?」
「え? ああ、そっちは見えていなかったか」
ソラの問いかけに、カイトは空中で停止して反転する。そうしてそれに釣られて一同もまた再び白銀の巨竜の方を見る。
「えーっと……あった。ほら、あの背中の所」
「……家? ってか村?」
「家、っていうか倉庫も兼ねた家……かな。あいつはデカい商談とかの時には出てくるんだが、その時にドワーフ達、面倒くさいってんで上に簡易の家を作らせて貰ってるんだと」
「その都度作ってるのか?」
作らせて貰っているという事は、と理解したソラが思わず目を見開いて驚きを露わにする。そんな彼の見る白銀の巨竜の背には体育館ほどの建物が幾つかと生活できそうな家が幾つか載っていた。
これを毎度毎度作るというのだ。いくら土建技術に長けたドワーフ達とて大変だろう。とはいえ、これにカイトは一つ頷いた。
「ああ……ドワーフ達だからな。ああいった大物はお手の物だ。それに流石に『銀の山』の守護竜に建物乗っけたままってのもあんまり良くないそうだ……その守護竜の頭の上に乗って乗り回すのがフラウなんだけどな」
「はー……」
流石は後に『銀の山』の女王と呼ばれるようになるだけの事はあるのだろう。そういった事はお構いなしに平然と乗り回しているのであった。というわけで笑うカイトに、今度は瞬が問いかける。
「いつもあの守護竜? に乗ってるというわけか?」
「そうだな。楽つって」
「良いのか?」
「さぁ……良いんじゃね? 当人何も言わないし」
「まぁ……それはそうか」
あれだけの力を持つ竜なのだ。おそらく幻獣達と同等かそれ以上の力を持つ事は明白で、人語なぞ簡単に理解しているだろう事は想像に難くない。となると、なんだかんだ許されているというわけであった。
「ま、どうにしろあの守護竜が居なかった所でフラウに問題があるわけでもないけどな。あれよりフラウのが強いし」
「「「……」」」
あの超巨大な白銀の巨竜より強い。一同はわかってはいたものの、あの小柄な女の子の強さに言葉を失う。まぁ、何をか言わんや彼女もまた後の八英傑。英雄達が束になっても敵わないカイト達があまりにおかしいだけで、サルファやノワールのように本来なら英雄達の上澄みでさえ相手にならないほどの戦闘力は有しているのであった。
というわけで改めての明言に言葉を失う一同であったが、そんな所に。レックスのお目付け役の四騎士が現れる。
「殿下。やはりこちらでしたか」
「あ、悪い。もう時間か?」
「はい。大神官様がお待ちです……ああ、そうだ。カイト殿」
「なんだ?」
「貴殿にも大神官様が後でお時間を頂戴したい、と。お客人もご一緒して頂ければとも」
「わかった……セレスは?」
「勿論私も構いません」
カイトの視線を受けたセレスティアは二つ返事で了承を示す。先に言われているが、今回の結婚式ではスイレリアが主導する事になっている。彼女もすでに到着済みという事なのだろう。というわけで一同はこれ以上空中に留まる意味もなかったことから、再び王城に戻っていくのだった。
お読み頂きありがとうございました。




