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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3198話 はるかな過去編 ――終了――

 『方舟の地』と呼ばれるセレスティア達の世界に存在する超古代文明の遺跡。そこは同時にレジディア王国に縁のある遺跡でもあった。そんな遺跡に起きた異変の解決への協力を要請されたカイト達は、遺跡調査を専門とするソラ達の協力を受けなが調査を開始。本来存在していないはずの地下階を見つけるに至り、そこで原因となる未来のカイトのデッドコピーと交戦。これを撃破。なんとか異変の解決に至っていた。


「おーう。そっちも大変だったみたいだな」

「ああ、カイトか」

「おう。悪かったな、通訳みたいなこと頼んじまって」

「いや、構わん。それぐらいしか役に立てなかった所でもあるが」


 カイトの言葉に瞬が少しだけ苦笑を滲ませ首を振る。実際の所、戦力としては彼らでさえこの二つの騎士団の連合軍では下から数えた方が早い領域だ。戦力的に足手まといは仕方がない所ではあっただろう。しかもその彼らとて人類として見れば上澄みなのだ。上澄みも更に上澄みを集めたこの騎士団がおかしいだけであった。


「にしても……まだまだ遠いか」

「影か……知り合いでもいたのか?」

「居たな」


 誰のコピーが居たのか、というのは未来の自身の繋がりなればこそこの時代のカイトにはわからなかった。が、瞬には思い当たる節があったらしい。その顔には苦笑が浮かんでいた。


「近づくことはまだまだ出来んしそんなことはわかっていたが。まさかここで戦うことになるとは思っていなかった人が居た」

「どんな人だ?」

「俺の師匠みたいな人だ……確かに、ここに出てきているのがあいつが強いと認めた人物達なら出てきても不思議はないんだろうな」


 瞬の口ぶりからするに、彼が相手にしたのはケルト神話の大英雄。クー・フーリンその人だったのだろう。この影には生者を模した影も居た以上、未来のカイトの兄弟子たるクー・フーリンが居ても不思議はなかった。


「なるほどね……それでどこか悔しそうでも納得感があったわけか」

「あははは……ああ。コーチはやはり強い。まだまだ勝てん」

「そうか」


 どさっという音と共に大の字になる瞬に、カイトは微笑ましげに笑う。そしてそんな彼は次いですでに大の字だったソラを見た。


「ソラの方は……もっと疲れてるな」

「おう……アスラエルさん出てくると思ってなかった……」

「そっちは誰なんだ?」

「こいつの仕える神様の戦士長……」

「お、おぉ……」


 かしゃん、と僅かに<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>を持ち上げたソラに、カイトは未来の自身の繋がりに思わず頬を引き攣らせる。まさかそんな超高位の存在と繋がるとは思っていなかったようだ。と、そんな彼を<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>が笑う。


『本物はあんなものではない……言うまでもないだろうがな』

「知ってるよ……一度やってるだろ」

『そうだな。あれで平然とされるのがアスラエル殿だ』


 自分と同じ神剣を授けられた神々の戦士長。その強さを思い出し、それにまだ遠く及ばないことを実感するソラに<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>は笑う。

 というわけで今回召喚されていた影達はほぼすべてがカイトが猛者と認めた人物ばかりで、ソラ達曰く雑兵と言うのは烏滸がましいとのことであった。というわけで大の字になって倒れ伏すソラが、それでもと口にした。


「はぁ……それでもティナちゃん相手にしなかっただけまだマシか……」

「あぁ……確かにユスティーナが居たらと思うとゾッとするな」

「それは……笑えませんね……」


 これだけ猛者がいる状況でティナまで出てきたら。ソラも瞬も横で話を聞いていたセレスティア達も揃って苦笑する。


「ふーん……ま、無事だったなら何よりだ」


 今回、カイトとしてもここまでの激闘になるとは思っていなかった。なので彼らが大丈夫か様子を見に来ただけだったようだ。今回は呼び出されなかったという猛者が誰かと興味はなかったようだ。と、そんな所に。安全圏に居たロレインがやって来る。


「やぁ……お疲れか」

「あ、ロレインさん」

「ああ……ああ。良いよ、そのままで。これでひとまず今回の調査は終了となるからね。撤収の準備はこちらでやるから気にするな。色々と予定と異なってしまったが……とりあえず協力に感謝しよう」


 今回のソラ達は冒険者というより協力者という立ち位置に近い。なので協力のねぎらいという所だったのだろう。というわけで上体を起こして立ち上がろうとしていたソラであるが、ロレインが気にするなと言ってくれていることもあり有り難く座ったままでいさせて貰うことにする。


「は、はぁ……」

「よいしょ……ま、ここからは単なる私の推測として聞いてくれ。いや、単に私が考えをまとめるために話したいだけなんだがね」


 どうやら今回の異変の原因など、ロレインは色々と推測はしていたらしい。が、それを開陳する相手が現状ソラ達ぐらいしかいなかったので話し相手として付き合え、という所だったようだ。確かに撤収の支度に忙しい騎士達に話すのも邪魔だろう。というわけでそこらを察したソラが問いかける。


「何かわかったんですか?」

「ああ……おそらく今回の異変の原因としてはやはりカイト……未来の彼の再現に失敗したからなのだろう。本来、第5階層の守護者(ガーディアン)はあのような影ではなくしっかりとした実体を持っている。が、むべなるかな。あれだけ無茶苦茶をしてのけるのだ。再現なんてできるわけもない」


 情報も足りず、再現する力もあまりに特殊。さりとて管理者が居ない以上、途中で中断させることも出来ない。異変が続き続けたのも無理はなかっただろう。ロレインはそう告げる。


「おそらくなのだが、どこかでフェイル・セーフは掛かるのだろう。それが何日か何週間か、何年かまではわからないがね」

「フェイル・セーフ?」

「ああ……ま、この遺跡を作った側もあんな存在がいることを想定はしていないだろうがね。が、異変は起きるものとして想定して作り込んでいるはずだ」

「あんな存在って……」

「ははは。褒めているんだ。素直に受け取りたまえ」


 どこかしょげた様子を見せるカイトに、ロレインが楽しげに笑う。まぁ、その実カイトとヒメアが幼馴染である以上、その姉であるロレインとも実質幼馴染のようなものなのだ。彼と関わる時にはどこか王女としての取り繕った様子が見られなかった。


「まぁ、そういうわけでね。おそらく再現を試みる動作はどこかで停止するのだろう……セレスティアくん。未来の世界では後一度だけ、今回と同じく異変が確認されているのだったね?」

「はい……何時かまでは私も覚えていないのですが……」

「そうかね。そのもう一度が何時で何が原因なのか、気にはなる所ではあるが」


 なにせあの未来のカイトに匹敵するような特殊な存在を再現しようとしたのではと考えられるのだ。そうでない場合はそうでない場合で原因が気になる所ではあったものの、ロレインはひとまず今回を前提として話を進めることにする。


「とりあえず。どこかで自動で停止することはするだろう。ここで問題なのは、途中で停止した存在を遺跡側が消すかどうかだ。今回はおそらく再現途中だったので消えずに残っていたのだと推測される。が、再現失敗と判断された場合にどうなるか……そこは気にしておくべきかもしれないね」

「なるほど……確かにそうですね。消えてくれれば楽ですが……」

「ああ。消さない限り残り続けるのであれば、非常に面倒だ。おそらく今回の未来のカイトとて再現途中だっただろう。つまり、本来はあれよりもっと精度が高く再現されるはずだ……あれ以上は考えたくないがね」


 なにせカイトにレックスというこの時代最強の二人が本気で戦ってようやく鎮圧できる領域なのだ。もし完全とはいかずともより再現がきちんとできていれば、それこそ神陰流を使いこなせる領域の再現ができていればと考えると空恐ろしいものがあった。


「とりあえず、次に異変が起きた時は最大戦力を差し向けるべきだろうね。どんな相手が来るかは知らんが」

「ですね……こちらの時代でも共有しておきます」

「そうした方が良いだろうね」

「はい……あれ?」

「どうしたね」

「いえ……そう言えば気になったことが一つ」

「うん?」


 何かね。セレスティアが気付いた何かに、小首を傾げるロレインが先を促す。


「いえ……ですが未来の世界ではカイト様達の再現が現れています」

「そう言えば言っていたね。故に第5階層の突破が出来なくなってしまった、と」

「ええ……情けないのですが」


 先の会議でセレスティアは未来の世界において第5階層以降の踏破が出来なくなってしまった理由を語っていた。が、この通りこの未来のカイトの再現は失敗しているのだ。矛盾が生じていると言えた。


「ふむ……そうだね。先に話したと思うが、今回の調査結果をベースにノワールくん達が調査を進めるはずだ。おそらくそこで、ある程度の制御ができるようになったのだろう」

「ああ、なるほど……」


 確かにそれはあり得るかもしれない。セレスティアはロレインの言葉に納得を示す。今回の調査の情報はこの後、レジディア王国により秘匿されることになるのだが、調査そのものは進められていたはずというのがロレインらの推測だ。なのでノワール達がそこらを改良したと考える方が筋が通っていた。


「うん。キャパシティオーバーが起きた場合の対応を組み込んだと考えた方が良いだろう……ノワールくん」

『はい。平和になった後はそれをベースとして対策を考えておきます……何年先になるかわかりませんが』

「ま、私も生きている限りは協力するよ」

『お願いします』

「うむ……む?」

「ロレインさん」


 ノワールの返答を聞いたタイミングで、今度は外に出ていたはずのレックスが現れる。そしてその用件は考えるまでもなかった。


「撤収の作業の指示が出来ました。こちらも撤収を開始するべきかと」

「そうか……ああ、すまなかったね。付き合わせて。君らも一休みしたら外に出てくれ。閉鎖された後にどうなるかはわからないからね」

「はい」


 ロレインの言葉に、セレスティアが立ち上がる。彼女の方はやはり実力としてはソラ達以上であることもありまだ余力が残っていたようだ。というわけで、同じ様に小休止を終えた一同は騎士たちと共に撤収するのだった。

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