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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3179話 はるかな過去編 ――マイナス1――

 『方舟の地』というセレスティアの一族に所以のある超古代の文明の遺跡。その遺跡に起きた異変の調査を頼まれたカイト達に要請されその調査に同行する事になったソラ達であるが、そんな彼らは情報にない区画の発見やセレスティアが世界からの介入を受けるなどのトラブルに見舞われたものの、なんとか初日の調査を完了。

 二日目に入るとカイトや彼が率いる四騎士達と共に新たに見付かった地下へ向かう昇降機に乗り込み、地下へと赴く事になっていた。というわけで昇降機に乗り込み、暫く。昇降機を動かすまでの僅かな間にカイトがふと問いかける。


「この軌道エレベーター? どんなものなのかはもう聞かないが、多いのか? 地球とやらでもエネフィアとやらでも良いんだが」

「いや、軌道エレベーターそのものはまだ理論の域を出ていない……色々と制約が大きいらしくてな。こういうのが出来たら良いな、という話が出ているだけだ」

「そうか……いや、そりゃそうか」


 瞬の返答に、カイトはそれでも自分達よりはるかに技術水準は高いだろうと思いながらも流石にそこまで突き放されてはいないかと少しだけ安堵する。流石の彼もこんな超巨大建造物を何個も建造出来るような技術があってはたまったものではなかった。


「こんな巨大な塔だ。どれだけ資材が必要なことやら……それに倒れたらどうするつもりなんだ」

「それがやはり問題らしくてな。色々と候補地などはあるらしいんだが……倒れたらどうするか、とか資材は、とか……色々と問題が山積みしているらしい」

「ああ、やっぱりそうなるのか」


 自分が考えた通りの問題に、カイトは少しだけ嬉しそうに笑う。こんな超巨大な塔だ。彼でなくてもどこからこんな膨大な資材を集めてきたのか。倒れたらどうするつもりだったのか、と疑問は尽きなかった。そして現代文明が解決出来ない問題が解決しているからこそ、数千年もここにあるのだった。


「やっぱこの『方舟の地』が倒壊したら、って思うとあんまりバカでかい力も使えないしな。だから戦いにくいっちゃありゃしない。まぁ、幸いな事にこの『方舟の地』にはゴーレムしか出てこないみたいだから、楽なんだが」

「ゴーレムしか出ないのか?」

「ああ……といっても、オレらが到達している第七階層までだけどな。それ以上先に関してはなんとも。そして勿論、この地下がどうなっているかも未知数だ」


 ここが古代文明の遺跡である以上ゴーレムが主体として現れる事には疑問はなかった瞬に対して、カイトはあくまでも今まではと口にする。そうしてそんな事を話していると、どうやら支度が整ったらしい。ノワールの使い魔が口を開いた。


「降下準備整いました……お兄さん、どうしますか?」

「どうするもこうするもない……やってくれ」

「はい……多分いつもどおり、途中真っ暗になると思います」

「わかっている」


 どうしても壁の中や床の中を通過する際、周囲の光景が見えなくなってしまうらしい。そしてそれはいつもであれば到着間際になるはずだったのだが、今回は逆になるだろうというのがノワールらの見立てだった。というわけでカイトの返答を受けて、ノワールがコンソールを操作。案の定、周囲が真っ暗闇に包まれる。


「……本当に下に向かっていくわね」

「今まで疑っていたのか」

「それは疑うでしょう。今まで上へ上へしか続かなかったはずの昇降機が下に下っていくのだもの」

「ま、それはそうだがな」


 ライムの言葉に、グレイスが半笑いで同意する。ライムの言う通り、『方舟の地』の昇降機は今まで一度も地下に向かった事はない。第一階層の昇降機ならそのままでも地下へ降りて不思議はないはずなのだが、それが今の今まで一度も地下へ向かった事はなかったのだ。

 それが別の所に地下への昇降機があるから、と言われれば納得するしかないのであるが、同時に少し解せないものがあったとしても不思議はないだろう。と、そんな彼女の疑問にノワールが口を挟む。


『おそらく何かしらのロックが掛けられているのではないか、というのが私とロレインさんの推測ですねー』

「なるほど……この昇降機はメインの昇降機が動かないなどが起きた場合の非常用、というわけね」

『理解が早くて助かりますー。とどのつまりそういう事では、という事ですね。後は遺跡によくある専用の鍵が無い限り制限されている、というのも往々にして考えられます。現にこの『方舟の地』にはそういった一角が幾つもあり、我々もまだ未解明のエリアが非常に多いですから。昇降機にロックが無いと考える方が不自然かと』


 確かにノワールの言っている事はある程度の筋が通っていそうだ。一同は彼女の推測に対してそう思う。というわけでノワールの開陳する推測に、ライムがひとまずの目標を口にする。


「となると、何かしらの鍵がこの地下で見付かれば良いのだけれど」

『後はセキュリティルームあたり、ですね。ロックが全解除できれば話は早いんですが』

「それは高望みじゃない?」

『そうですけど。でも鍵が落ちてれば、というより現実的ではあるかと』

「セキュリティを解除出来るか、となるとそれはそれで鍵が必要そうじゃないかしら」

『それは全然あり得る話ですねー』


 ここからの指針はどうするべきか。ノワールとライムはそれを話し合う。と、そんな事を話しているとガラス板のような周囲が唐突に明るくなる。


「……抜けた、か」

「みたいね……でも案の定というかなんというか」


 僅かに警戒を露わにするグレイスの言葉に、ライムもまた警戒を露わにしつつ応ずる。暗闇を抜けて地下へとたどり着いた一同を待ち受けていたのは、真っ赤なライトに照らされた地下階だ。

 それは明らかに異変が起きている事を視覚的に訴えかけていた。というわけで流石に警戒しながらおしゃべりというのはカイト達でも難しかったようだ。暫くの沈黙が続いた後。昇降機が地下一階へとたどり着いて停止する。


「……地下一階へご到着……と。ノワール。こちらの光景は使い魔を介して見れているか?」

『はい。また念話も幸いにして繋がっているようです。どうやら地下である以外、その他の階層と基本的な仕様は違わないみたいですね』

「そうか……ならこのまま待てば良い……んだな?」

『はい……何か気になる事でもありました?』

「いや、まぁ今回は昨日もそうなんだが、やはりこの階層でもゴーレムの音があまり聞こえない。決して聞こえないわけでもないが……警戒状態にあるにも関わらず、どうにもゴーレム達が活発に動いているわけではないみたいだ」


 ノワールの問いかけに対して、カイトは聴覚を魔術で底上げして耳を澄ませる。それに合わせて一同も耳を澄ませてみるわけであるが、彼の言う通りゴーレムの立てる物音は非常に少なく、また聞こえたとしてもかなり遠くばかりであった。と、そんな事を話す一同であったがグレイスが口を開いた。


「だが……これは何かが小さく爆ぜるような音が混ざっていないか? 『方舟の地』では滅多に聞こえないような、炎の爆ぜる音だ」

「ふむ……確かに何かぱちっぱちっ……という焚き火をした時のような音がするな……」

『それは気になりますね……やはり地下階は地上階と色々と異なっている所がありそうです。お兄さん。わかっていると思いますが、迂闊に先へ進まないでくださいね』

「わかってる。死にに行くつもりはないよ」


 ノワールの再度の制止に、カイトはどこか辟易とした様子で頷いた。というわけで一同は昇降機を降りると、操作を行うノワールの使い魔だけを乗せて再び昇降機が上昇していく。


「さて……」

「何か近付いてきているな」

「ああ……戻ってくるまでの時間を考えると、これは一戦ありそうだな」


 グレイスの言葉に、カイトは双剣の鞘に手を伸ばしながらそう告げる。上に戻る昇降機が地上階に到着するまでは数分。そこから更に次の人員を乗せて、更に資材の運び込みを行うのに十数分。往復で最低でも二十分は必要そうだった。となると必然、一戦ぐらいは起きて不思議のない状況だった。


「弓、持ってくりゃよかったか」

「使えるのか?」

「弓とランスは騎士の基礎訓練の一環だ。使える」


 瞬の問いかけに、カイトは騎士としての基礎訓練であればこそ問題ないと頷く。が、如何せん今回は『方舟の地』という事で持ってきていなかった。彼にとって狭すぎるからだ。というわけで小声で雑談混じりのすり合わせを行っていると、正面の通路の先から響く何かの物音が段々と大きくなる。


「……駄目だな。こりゃ来るわ。全員、戦闘に備えろ。流石に曲がり角を突き進むつもりはないが、見敵必殺で行く」

「「「……」」」


 どうやらカイトの言う通り、戦いは避けられそうにない。一同は自分達の聴覚でも比較的しっかりと掴める物音にそう判断する。そうして、一同の到着からおよそ十分。地下階での初の戦いが開始される事になるのだった。

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