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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3164話 はるかな過去編 ――支度――

 『時空流異門』と呼ばれる非常に稀な時空間の異常現象に巻き込まれ、数百年も過去のセレスティア達の世界へと飛ばされてしまっていたソラ達。そんな彼らはこの時代に存在していた過去世のカイトと遭遇。冒険者としての活動を開始させる。

 そうして大精霊指示の元カイトとその幼馴染、後の八英傑と呼ばれる八人の英雄を訪ねる事になった一同であるが、その一端として八英傑の一人英雄レックスの結婚式に招かれる形で隣国レジディア王国へと足を伸ばす事になっていた。

 というわけで、それをきっかけとしてカイト達からレジディア王家に縁のある『方舟の地』と呼ばれる遺跡を訪ねる事になった一同はその打ち合わせを終えて、更に今回の旅路の準備を整えていた。


「良し……荷物オッケ。由利! 食材関連は!?」

「こっちもオッケー!」

「りょうかーい! 先輩! そっちどっすか!?」

「こっちも概ね問題ない! 魔導具のシーリングも大丈夫そうだ!」

「うし……基本装備は問題なし。一応念のため、つって遺跡の調査に使う魔導具を整えておいてよかった」


 ソラは各所からの報告に一つ頷いて、用意しておいた今回の旅路のチェックリストにチェックを入れていく。今の一同は遺跡調査を専門としていないが、戻った後もまた遺跡調査を専門として動かねばならないのだ。感覚を忘れないために、と遺跡調査のための魔導具で手に入る物については手に入れており、今回の任務では使えると判断して持ち込む事にしていたのであった。


「遺跡調査の任務は受けられれば、ってか数ヶ月先ぐらいになるかもなー、って考えてたけど。後は……あ、そっか。ノワールさんに相談する内容が幾つか、か……お金掛からないと良いんだけど……」


 こればかりは話してみないとなんとも言えないか。ソラはチェックリストとは別。この世界にはどうしても存在しない技術。地球の技術を利用した魔導具類についてどうするか考えていた。

 これらの魔導具はカイトとティナが居て初めて開発された魔導具だ。こちらの世界にあるはずもなく、どうするかは要相談というわけであった。と、そんな所に。カイトとの打ち合わせに出ていたセレスティアとイミナが戻ってきた。


「ソラ」

「っと、イミナさん。戻ったんっすか?」

「ああ……あちらは用意はほぼ完了しているとの事だ。後は吉日を選んで出るだけ、という所だな」

「こっちも全部の荷物が届いてるんで、後はあっちの牽引の竜待ちですね」

「出発を合わせられそうか?」

「問題ないすね」


 今更言うまでもないが、今回の旅路ではカイト達と共にソラ達。王都の冒険者の一部も同行する事になっている。少数の方が小回りが利くので良い事も多いが、今回は寄らば大樹の陰と大勢で移動した方が色々と都合が良いと判断された事が大きかった。

 というわけで出発の予定はしっかり定められており、それに遅れないようにしっかり予定を組んでいた。と、そんなわけで用意の最終チェックを進めていた一同に、上から声が掛けられた。


「すいませーん! ソラさん達で合ってますー!?」

「「「へ?」」」


 上から響いた女の子の声に、一同のみならず周囲の人々が作業の手を止めて上を見上げる。そうしてそんな声に上を見上げてみれば、そこには箒に腰掛けたノワールの姿があった。


「ノワール様?」

「あ、セレスティアさんですね。じゃあ、あたりか……よっと」


 セレスティアのつぶやきで探している一団と理解したノワールは箒の高度を下げると、地面に着地。服のシワなどを伸ばして箒を異空間に収納する。と、そんな彼女に対してどこからともなく声が響いた。


『はぁ……言ってくれればどこか見つけておいたんだが。大方新型の探索用の魔術の試験でもしたんだろう』

「あはは……」

「はぁ。するならするで一声掛けてくれ」

「ごめんなさい」

「わかっているから良いけどね」


 着地したノワールに苦言を呈したのは、彼女の婚約者にしてハイ・エルフの王子サルファだ。そんな彼に照れくさそうに視線を逸していたノワールであったが、気を取り直してセレスティアに向き直る。どうやら、ソラでなくても良かったらしい。というわけで、彼女はセレスティアへと一つの小さな袋を手渡す。


「細工師のグイオンさんからこれを預かって来ました」

「これは……ああ、リースですね」

「はい。伝言ですが、一応緩衝材に包んでいるがそこまで無茶な扱いを想定しているわけではない……だそうです。というわけでこっちで緩衝材込みの袋に入れておいたんですが、お節介でした?」

「いえ! ありがとうございます。こちらでも用意はしておりましたが……ノワール様の物の方が安心です」

「あはは。そう持ち上げられても何も出ませんよー。何より単に手慰みで作った物を使っただけですし」


 なにせ八英傑の中で魔導具作成に長けた大魔女ノワールの魔導具だ。喩え手慰みで作った物とて、市販されている輸送用の魔導具よりはるかに高性能だろう。


「それでも、ありがとうございます。お二人はこれから王城へ?」

「ああ。軍は外で待たせているが……来た以上は出立前に陛下にご挨拶はせねばな」

「そうですね……それならあまりここで引き止めるのは駄目でしょうか」

「そうだな……僕としても君とは話してみたい所ではあるが。共に旅するのなら時間は出来るだろう。その時を楽しみにしておくよ。ではな」

「では私もまた」


 ソラや瞬には比較的辛辣なサルファであるが、レックスの子孫であるセレスティアやクロードの子孫であるセレスティアに対してはやはり興味が強い事もありあたりは柔らかだった。

 というわけで、サルファとノワールの二人はセレスティアに一つ謝辞の言葉を告げると、そのまま方や再び消えて。方や箒に乗って王城へと向かっていった。


「これでリースも良し、と」

『了解。リース確認、と』


 おおよそ用意は整ってきたな。セレスティアの報告を受けたソラはチェックリストにチェックを入れつつ、そう思う。ちなみにサルファも言っているが、今回の渡航においてはロレイン率いるシンフォニア王国の部隊と黒き森の部隊は一緒にレジディア王国へ向かう事になっていた。と、いうわけで用意を進める一同であったが、そこでソラが問いかける。


『そういやふと思ったんだけど、レジディアだよな?』

「そうですが……それが何か?」

『いや、それならある意味里帰りなのかなー、って思ったり』

「ああ、そういう」


 今更な話であるが、セレスティアの家名はレジディア。レックスと同じというか、レックスの子孫なのだから当然だ。というわけで本来はレジディア王国にいるのが正しいわけで、ある意味彼の言う通り里帰りになるはずだった。とはいえ、はずだったである。そこにはシンフォニア王国同様未来の事情があった。


「まぁ……確かにある意味里帰りは正しいかもしれませんが」

『何かあるのか?』

「以前シンフォニア王国は後に戦災に見舞われ遷都する、と話しましたね」

『ああ……それでその際、このシンフォニア王国の王都が遷都されて別の街に。ここは学園都市? だかなんだかになってるって聞いた』

「はい。それでその後、学園都市の生徒達を中心として第二期統一王朝が設立されるとも。まぁ、謂わばシンフォニア王国にせよレジディア王国にせよ地方自治体のようになっているわけですね」


 セレスティア曰く、この第二期統一王朝はこの時代の七竜の同盟を基盤としながらも、北にあるという帝国やら第一期統一王朝には面従腹背だった国の多くも納得の上で臣従してくれている事などから、第一期統一王朝に比べかなり盤石な組織になっているらしい。といってもこれは第一期統一王朝の失敗も踏まえているのだから、当たり前といえば当たり前であった。


「そういうわけですので、私はレジディア王家の名を継いでいますがどちらかと言えば統一王朝側の人間に近い」

『さっきの例で言えば中央政府側、ってわけか』

「そうなります。シンフォニア王家の血を継いでいるのも、そこらに起因しているわけです。なので確かにレジディア王国の王都レジディアは私の故郷ではあるのですが……というか、過ごした時間であればこの王都シンフォニアの方が圧倒的に長いかと。なので里帰り、と言うと微妙かなと」

『へー……』


 やはり王族として色々とあるのだろう。血筋としては里帰りであるが、セレスティアの生まれや育ちで見ればレジディア王国の王都レジディアは故郷とは言い難いらしい。とはいえ、興味が無いわけではなかったようだ。


「でも興味がないわけではないです。王都レジディアはやはり血筋としては故郷になりますから」

『なるほど……ってか、それで言えばある意味この王都……王都シンフォニアにいるのも里帰りしてるようなものだったわけか』

「そうですね。私の時代には学園都市と言われているのでそこらは微妙ですが……」


 ソラの指摘にセレスティアも言われてみれば、と笑う。かねてより言われているが、彼女はレジディア王家の血と共にシンフォニア王家の血も継いでいるのだ。確かにそう言われてみれば、であった。というわけで、それからも暫くはそんな雑談を交えながら出発に向けた用意を進めていくのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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