表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3169/3941

第3152話 はるかな過去編 ――虹降る谷――

 『時空流異門』と呼ばれる現象に巻き込まれ、数百年昔のセレスティア達の世界へと飛ばされてしまったソラ達。そんな彼らはこの時代に存在していた過去世のカイトと会合し、その支援を受けながら元の時代に戻れ類まで冒険者として活動する事になっていた。

 というわけで冒険者として活動する中で大精霊達の指示でカイトの仲間である八英傑という英雄達との会合を目指していたわけであるが、その一貫で一同はカイトの幼馴染にして同じく八英傑の一人であるレックスの結婚式の贈り物を作るべく素材集めに奔走する事になっていた。


「おはー……何ここ」

「『虹降る谷』だ……虹というよりオーロラだけどな。昔の人はオーロラが垂れ込める様子をそう言ったんだと」

「はー……」


 これは見事と言うしかない。ソラは昼間にも関わらず闇夜のように暗くなった天を見ながら、それを覆う満点の星空とオーロラを見る。

 一同が訪れた地はシンフォニア王国の外れ。常に闇夜の帳が覆う特殊な地で、中心に近付くにつれて星空とオーロラが見えるようになっていたのであった。

 無論そう言ってもまだ中心までは遠く、今はようやくその地の端に立ったという所である。というわけで見事な絶景に見惚れていたソラであったが、もう一つ感じていた事があった。


「……でも寒くね」

「そりゃ、お日様が照ってないからな。いや、照ってはいるんだが……」

「……え? あれ月じゃないの?」

「おいおい。まだ昼間だぞ? お月さまが出るわけないじゃねぇか」


 ソラの問いかけに、星空でひときわ大きく輝く星を指差すカイトは楽しげに笑いながら道理を告げる。一応昼間とはいえ新月であれば月は出ていても不思議はないのであるが、今日はそういうわけでもない。というわけで月と思えるほどに大きな星は月ではなく太陽らしかった。というわけで月と太陽を見間違えていたソラに、セレスティアが笑って告げる。


「中心はもっと寒くなりますよ。ここではまだ温かいぐらいです」

「これでまだ?」

「ええ……だから防寒具が必要、というわけです」

「納得」


 この世界というかこの星では現在気候としては春の終わりから夏先ぐらいだったのであるが、それ故に防寒具などは一切用意していなかった。

 が、今回向かうとなった場所をカイトから聞いてセレスティアもイミナも季節外れではあるが防寒具の必要性を提言。知っている二人が言うのだから、と半信半疑で一同は防寒具を用意しておいたのであった。というわけで必要性を実感した瞬は試しに息を思い切り吐いてみる。


「ふむ……まだ白くはならないな」

「流石にここではまだ……ですが奥になると今も雪が積もっているのではないでしょうか」

「多分な……奥の方で雪が溶けているのは見たことがない」


 となるとこの奥は相当な寒さがあるというわけか。瞬はカイトの言葉にそう理解する。というわけでそんな『虹降る谷』へと足を踏み入れた一同であったが、そこで瞬がそう言えばと口を開いた。


「そう言えばどこにあるんだ? その『虹の枝』とやらは……やはりこういった場合はお決まりで最奥なのか?」

「お、お決まり? いや、まぁ……そうなんだが」


 お決まりとはどういう事なのだろうか。そんな様子で困り顔で笑うカイトであるが、そうである以上はそうと言うしかなかった。というわけで、カイトは気を取り直す。


「まぁ良いや。とりあえずこの奥へ行くが、道中はかなり寒くなる。更にはこの暗さだ。今回はオレが居るから良いが下手をすると夜の到来を察知出来ない可能性があるから、十分に注意しておくように」

「ああ」


 外であれば周囲の変化で時間の経過は察せられるわけであるが、昼間でもこの暗闇の状況だ。しかもさっきソラがそうだったように、太陽と月を見間違える可能性もある。星やらを頼みに動くと時間経過を察せられず、痛い目に遭う事があるのであった。


「で、ここからだが……最奥に向かうと『水晶の木』という木が見えてくるようになる。その中のどこかに、『虹の枝』はある」

「どれかはわからないのか?」

「『虹の枝』は『水晶の木』が成長する中で魔素が蓄えられ、偶発的に出来るものです。なので探すしか」

「そうか……それで一泊する覚悟はしておけ、という事なのか」


 セレスティアの解説に瞬は改めて納得を示す。まずここから最奥まで向かい、更にその上で『水晶の木』を見つけその中から『虹の枝』が生えている個体を探さねばならないのだという。かといって時間を優先して人海戦術でやる事も危険だろう。というわけで、今回一同はここで一泊する予定になっていた。


「そういうことだな……オレ一人なら別に一泊も必要無いが……いや、オレでも最悪は一泊もあり得るか」

「お前でもそうなのか?」

「これが悲しいかな、上空から探しても見つからない時は見つからない。そうなると地道に降りて探すしかなくなる。いっそてっぺんに生えててくれていたりすれば楽になるんだがな」


 ぽんぽん。カイトは瞬の問いかけにいつものようにエドナの背を撫ぜる。基本カイトの機動力はエドナの機動力に依存しているものだ。

 そしてその機動力は上空を飛べるという事と空間を踏破出来るという二つの力によって支えられているわけであるが、モノ探しに関してはその二つの力も意味がないのであった。というわけで諦めた様子の彼に、瞬が問いかけた。


「ダウジングとかは出来ないのか?」

「出来るは出来るが……そんな便利に使えるほどじゃあない」

「そうなのか」

「ほ、本当に多才だな、未来のオレってのは……」


 意外そうな様子を見せる瞬の様子で、カイトは未来の自分がダウジングにおいてもかなりの力を有しているのだと察したようだ。というわけでカイトを含め一同諦めて地道に探すしかないのであった。と、そうして話すわけであるが、そこでふと瞬が思い出した。


「そう言えば……カイト。お前は何を探しに来たんだ? こっちに行く用事があるから連れて行っても良いぞ、という事で連れてきてもらったわけだが」

「え? ああ、そう言えば教えてなかったな。オレが探しているのは『虹の枝』より更に希少な『虹の珠』っていうまぁ、早い話が『水晶の木』の『虹の枝』に極稀に生る木の実だ」

「木の実?」


 ということは今回の贈り物で使うというわけではないのか。瞬はカイトの返答に対してそう思ったのか、小首を傾げる。とはいえ、これにカイトはしっかりと教えてくれた。


「木の実と言っても食べられるは食べられるが、多分お前らが考えるような木の実じゃない……セレスは見た事あるか?」

「ええ、何度か……『虹の珠』は儀式で使われますので……」

「ああ、そうか。そう言えばこの世界の巫女だったな……ま、そういうわけでな。今回の婚礼で使われる事になるんだが、数が足りなくなっちまったらしくてな。黒き森から連絡が来てオレが動いた、ってわけだ」


 やはり王族の結婚式だ。色々と格式張った事や儀式じみた事をしなければならないのだろう。一同はそう考え、木の実が必要だというカイトに納得する。と、その一方のカイトはそれならとセレスティアに問いかけた。


「っと、それならセレスはおおよその流れはわかるのか? レジディアの姫でもあったろ?」

「ええ。一通りの流れはスイレリア様から教わっています……流石に流れとその意味を教わっただけで参列した事も行ったこともありませんが」

「だろうな。今回の婚礼の儀はレジディア王国でももっとも格式張った物になってる。どっちかっていうとそんな未来まで伝わっている方がびっくりだ」


 セレスティアの返答にカイトは楽しげに笑っていた。どうやらそれほどまでに格式高い物になっていたようだ。そしてそうだからこそ、『虹の珠』という非常に希少な木の実も必要との事であった。


「ま、そんなのだから使う個数やら使い方やらはスイレリア様や一部神官ぐらいしか正確には把握していないみたいで、土壇場になって足りなくなっちまったってわけだ」

「エルフ達でもそういう事があるんだな」

「あははは。そうだな……ま、さっきも言ったが下手しちまうと時間を忘れちまう。さっさと行くか。魔物も出るしな」


 今が何時というのがわからない場所なのだ。一同は幸いにして時計を持っているので大丈夫は大丈夫だが、夜に動かないで良いようにはしたい所だろう。こうしてカイトの号令により一同は最奥を目指して出発するのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ