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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3145話 はるかな過去編 ――それから――

 『時空流異門』と呼ばれる現象に巻き込まれ、数百年前のセレスティア達の世界へと飛ばされてしまっていたソラ達。そんな彼らはこの時代に存在していた過去世のカイトと会合し、冒険者としての活動を開始していた。

 が、カイトの負傷をきっかけとして貴族達の暗躍とメハラ地方と呼ばれる地方の豪族達の共謀が明るみに出る事になり、一同はシンフォニア王国第一王女ロレインの指示を受けてメハラ地方の豪族達の鎮圧に参加。暗躍の露呈をきっかけとして反乱を起こしたメハラ地方の豪族の首謀者の一人であるラート家の撃破に成功すると、後始末を後詰の部隊に任せ一同はロレインと共に王都に戻ってきていた。


「ふぅ……」


 メハラ地方の反乱未遂から一週間ほど。一同は今回の一件を受けての大休止を挟んで再び動くか、という所になっていたのであるが、それもまだ少し先の話。今は朝食を食べてゆっくりとしている所であった。

 と、いうわけで朝からのんびりとした雰囲気の中でソラはお茶を飲んで冒険者ギルドの発行する新聞を読んでいたわけであるが、そこに来客がやって来る事になる。


「おーう。元気してるか?」

「カイト……お前、戻ってきてたのか」

「そっちが終わらせる前の日ぐらいに鎮圧そのものは終わってたからな。三日ぐらい前に姫様の治療も完全に終了。昨日からは完全復帰って所だ」


 やって来たのはカイトだ。そんな彼であるが貴族達の反乱の鎮圧を見届けると、再びクリスタルに入って治療を再開。ようやく完全復活と相成ったわけであった。

 そして彼の場合は完全に軍人扱い。顔さえ出せばそれで良く、後始末は四騎士の実家から派遣された文官達の仕事だ。というわけで今回の暗躍の首謀者達が捕まるのを見届けると、そのまま王都へ取って返して再び休眠となっていたのであった。


「ってことはもう大丈夫なのか」

「ああ……魔族達が個々の戦闘力に長けてるのならこっちは回復力の高さに長けてるからな。早いペースで復帰して戦線復帰ってわけだ」

「それ、狂ってるな……」

「あはは……ま、おかげでこっちは敗戦を避けられているんだ。若干バーサーカーじみてるがそれで守れるならそれで良いさ」


 ソラの指摘にカイトは少し自嘲気味に笑いながら、そうしなければ負けるのだから仕方がないと受け入れていたようだ。と、そんな彼にソラが問いかける。


「で、どうしたんだ?」

「ん、ああ……そう言えば瞬やセレスティア達は?」

「先輩はギルドの支部でおやっさんとか馴染みの冒険者から情報収集と次の依頼を探すって。セレスティア達は今回の一件で色々と情報収集したくなったらしいから、王城の書庫に入らせて貰ってるって」

「あら……入れ違ったか」


 今更言うまでもないが、カイトは王城で寝泊まりしている。なので王城に向かったセレスティア達とはどこかで遭遇していても不思議はなかったのだが、運悪く遭遇しなかったようだ。


「まぁ、良いや。誰かに伝えられればそれで良いし……こっちに来たのはメハラ地方の件でな」

「あー……今新聞読んでたけど、特に情報はなかったんだよな」

「まぁ、そりゃな……で、そんな所だろうと思ったから一応その後だけは教えておいてやろうと思った……というかオレも教えてもらって出る前にお前らにも教えておいてやってくれ、ってロレイン様から頼まれたんだ」

「出る?」

「ああ……オレはこの通り復帰してるんだが、レックスはまだ本復帰にはなってないだろうからな。何よりあいつは王子様。色々とやらにゃならん事も多い」


 前に触れられているが、八英傑の中でもっとも治癒の能力に優れているのはヒメアだ。なので彼女が回復させられるカイトの方が復帰は早くなるのであった。というわけで彼の復帰が終わった事もあり、今度はレックスの復帰に向けて注力する事にしたのであった。


「そうなのか……ってことは今日は一日?」

「いや、数日向こうに泊まる。一気に回復させちまおう、って算段だ。どちらかというとオレじゃなくて姫様がメインだからな」

「へー……こういうことってよくあるのか?」

「多くはないが……大将軍級との戦いの後にはままある。やはりあいつらは強いからな」


 やはり大将軍級の強さはカイト達が良くわかっているのだろう。彼らとの戦いを語るカイトの顔は苦かった。と、そんな事を語った彼であったがすぐに気を取り直す。


「っと、それはどうでも良いな。とりあえずメハラ地方の件だ……まず瞬が捕まえたっていうラート家当主だが、これが死んだというか死刑が執行されたというか……」

「歯切れ悪いな」

「医療行為を打ち切った、という所だ。ただし流石に温情で麻酔だけは掛けたまま、だったがな」

「……そうか」


 元々瞬との戦いでラート家の当主は死んでなかったというだけだ。傷としては致命傷に近く、放置すれば死ぬのは確定していた。意識もほぼ無い状態だったらしく、そんな状態で聴取を取る事は不可能だし絞首台などに立たせる事も出来はしない。なので治療行為を継続せず、ある種の安楽死に近い措置が取られる事になったとの事であった。


「で、それ以外だが……ラート家子息については長男から三男までは主体的に反乱に関わっていた事が確定した。軍も概ね彼らが率いていた確証も取れている」

「ってことは……」

「ああ。流石に王族を狙った上に反乱を起こした以上、死罪で確定した」

「そうか」


 報告を聞くソラの反応はどこかドライだった。これについては仕方がないと諦められるだけの情報があったし、勝てば官軍負ければ賊軍だ。負けた以上、こうなるのは道理というしかなかった。


「で、ラート家はどうなるんだ?」

「改易の上、お家としては年若く唯一今回の一件に不参加だった次女が継ぐ事になった……年若く、というより稚児だったんで何がなんだかさっぱり、という所なんだろうが」

「大丈夫なのか? こういうのって一族郎党根切りで後顧の憂いを、ってのが通例だと思うんだが」

「シンフォニア王国からお目付け役は大量に派遣されるし、ラート家の騎兵隊は惜しい。在野に下られるぐらいなら、という打算的な判断だ……それに、ラート家の家人は一人残らず彼女から引き離される。実の母とも乳母ともな。全員総取っ替え。実母と会える日があるかどうか……という領域だろう。今は家人達のその後の扱いを協議中……といった所か」

「……」


 ある意味ラート家という存在は完全に有名無実と化すというわけか。ソラはカイトというかロレインの判断にそう思う。そして更に彼女の待ち受ける先が厳しいものである事もあった。


「彼女を待っているのは単にラート家で生まれた女、というだけのお飾りと言えるだろう。まだその運命さえ理解出来ぬほどの幼子だ……傀儡とするには良い……という事だそうだ」

「そうか」


 それが反乱を起こした家の末路。ソラはドライな様子でそう思う。そんな彼に対して、カイトもまたどこかドライな様子で更に続ける。


「で、それ以外の所だが……残る二つの首謀者については完全にお言え取り潰し。まぁ、ここに関してはもう誰かが引き継げる状況でもないからな」

「分家とかは無いのか?」

「分家も揃って今回の反乱に参加していたんでな。体よく傀儡に使えそうなのがラート家だけだったんだそうだ。それでも、ある意味血筋が残るだけまだ良かったという所かもしれん」


 ソラの問いかけに対して、カイトはため息混じりに首を振る。というわけでラート家やその他御三家と呼ばれた家の処遇についてを話したカイトであったが、そんな彼にソラが重ねて問いかけた。


「そういや、お前の方はどうなったんだ?」

「ああ、オレの方? オレの方は流石に王族を狙ったという事もあって首謀者はお家取り潰し。それ以外は……まぁ、概ね改易やら減封という所だろう。ここらは国内の事になっちまうからなぁ」


 どうやら政治的なあれやこれやがあるというわけなのだろう。カイトは苦笑気味ではあったが、そういうものだと思っている様子だった。そんな彼に、ソラが口を開いた。


「ふーん……未来のお前だったら政治的にも手を回して叩き潰しそうなもんだけど。お前はそんな感じなのな」

「オレは政治的な力を一切持ってないからな……まぁ、持つと厄介だから持つな、ってのが大きいらしいんだけど。こっちについては政治的な力学? ってのが働くからロレイン様も今対応を検討中との事だそうだ」


 やはりこの世界のカイトは庇護してくれる存在が多いからだろう。政治的な事に関しては不干渉を貫く様子だった。そうして彼はその後も幾つかの事を話すと、レジディア王国へ向かう時間が近付いてきた事もあって瞬達が戻る前に王城へ戻る事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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