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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3133話 はるかな過去編 ――湖底探索――

 『時空流異門』と呼ばれる時空間の異常現象に巻き込まれ、数百年も昔のセレスティア達の世界へと飛ばされてしまったソラ達。そんな彼らは元の時代に戻れるまで冒険者としての活動を行う事となっていた。

 というわけでこの時代に存在していた後に八英傑と呼ばれる八人の英雄の一角として名を残す過去世のカイトや彼が仕えるシンフォニア王国からの支援を貰いながら冒険者として活動していた一同であったが、その最中にカイトの負傷とそれに端を発する貴族達の暗躍を知らされる。

 そうしてシンフォニア王国第一王女ロレインと共に貴族達と共謀したメハラ地方という一年ほど前にカイトを主軸としてシンフォニア王国が制圧した地方の豪族達を鎮圧するべく、一同はメハラ地方に潜入。ソラと瞬の二人は豪族達が集まる街への潜入ルートを調査するべく街の近くの湖に足を運んでいた。


「ここらが……ちょうど湖の中心という所か」

「そう……っすね。地図見るとあの小島が目印っぽいですから……うん。形としても合致するし、目印も一致してる。ここっすね」

「良し……後は、か」

「そうっすね……後はこの湖底にあるっていう地下水脈が街まで繋がってれば、って話っす」


 この地下水脈が街の地下水路まで繋がっているかどうか、というのは現在噂でしかなく、街を管理する豪族達も掴みかねていたらしい。一応調査しようとはしたらしいのだが、魔物などからうまくは進んでいないらしかった。というわけで潜水の魔術をもう一度だけしっかりチェックした二人は頷きを交わして、水の中へと潜水する。


『あーあー……通信用の魔導具のチェックだ。大丈夫そうか?』

『オッケーっす。問題ないっすね』

『良し……水が澄んでいるのが有り難いな。視界の確保が楽だ』

『それ、逆説的に言うと魔物から見つかりやすいって話でもあるんであんまり良い事でもないですけどね。実際、豪族達の調査がうまく進んでないのもそれが一因ですし。もちろん向こうが情報不足ってのもありますけど』


 やはり荒れていた地方だ。基本的に統治機構への信頼度は高くない。手帳によると冒険者達から豪族達への情報提供はかなり渋られているとの事であった。もちろんそれはシンフォニア王国相手でも一緒だったのだが、そこは密偵達が色々と情報を集めてこの中心の小島付近が怪しいと割り出したそうである。

 というわけで中央の小島付近から潜水を開始した二人であるが、湖底までたどり着くと周囲は少しだけ薄暗い様子だった。


『……かなり潜ったな』

『大体……50メートルほどって所っすかね。いや、もうちょっと行ったかな……まだ割りと明るい感じではありますけど……』


 瞬の言葉に応じながら、ソラは湖面を見上げる。まだ十分に光は届いている様子ではあるが、それでも視界は制限されている様子だった。


『流石に上から見てわかるほどじゃないっすね』

『ああ……追手の心配をしなくて良いのが幸いという所か』

『それは大丈夫そうっすね……で、問題はこっからどこをどう調べれば良いか、って所っすけど……』


 密偵達が掴んだ噂によると、この中央の小島付近のどこかに更に深みに繋がる亀裂があり、そこから更に繋がる亀裂を抜けると地下水脈に出る事ができるらしい。が、この亀裂とやらがかなり見つけにくいらしく、情報が錯綜しこの小島以外の所の亀裂から入れたなどの噂もあるそうだった。


『とりあえず亀裂を探す所からっすね。まぁ、これで他の所にある亀裂から繋がってるとかだと面倒くさいんですけど』

『それは笑えんな……まぁ、その場合は第二案の地下水路を使うプランに移行するだけではあるが』

『そうっすね……つっても、こっちは流石に出入り口は見張られてるでしょうから結構荒事前提になるでしょうけど』


 街の地下水路であるが、これは街に飲水などを供給する上水道らしい。かなり古い時代から存在するもので、魔物は生息しているし豪族達も全貌は把握しきっていない――湖から繋がる水脈の出口がわからないのもそのため――そうだ。

 が、流石に出入り口に関しては掴めているのでそこは厳重に見張られており、もし地下水路を潜入ルートとして利用する場合は出入り口で戦闘をしなければならなかった。


『避けれるなら避けたいか……バレないで潜入したいからな』

『っすね……どうします? 時間を考えれば別行動が良いんでしょうけど』

『俺に考えがある。少し任せてくれないか?』

『? 良いっすけど……』


 瞬の提案に、ソラは小首をかしげながらも頷いた。調査が手早く進められるのならそれに越したことはないのだ。というわけでひとまず瞬に任せた彼はジェスチャーで少し離れてくれと指示する瞬に従ってその場から少し離れる。


『良し……実は少し前の地質調査の任務……というか遺跡調査の時にカイトというかユスティーナからソナーを使った調査の魔術を聞いた事があったんだ。それと通信機をリンクさせる方法もな』

『そんなのあるんですか?』

『あったらしい……やってみようと思う』


 今更言うまでもない事であるが、二人が使う通信機はティナが作ったものだ。というわけで二人どころかカイトでさえその機能の全てを使いこなせていないほどで、こういった地質調査もできるようになっているらしかった。というわけで瞬はかなり前に習ったやり方を思い出して、左手に通信機。右手を地面に当てて教わった魔術を展開する。


『……来た。水中でも使える、という事だしユスティーナの言葉だったから疑ってはいなかったが……』

『やっぱ色々とあるんっすね』

『だな……凄いな。水草に覆われていても問題なく岩石とかを検出できている』

『どんな感じっすか?』


 やはりソラとしても自分の見ず知らずの機能には少し興味があったらしい。通信機を振って周囲を確認している様子の瞬に興味深い様子で問いかける。それに、瞬がスマホ型通信機の画面を見せる。


『こんな塩梅だ』

『うおっ、すげっ……ARって奴っすかね』

『の、応用だとかなんとか言っていたな……地形が丸わかりだ』

『へー……でもこれなら亀裂とか隠れてても見つけられそうっすね』

『ああ……流石に豪族達はこんな便利な道具は持っていないだろう。手早く見つけられそうだ』


 これは言うまでもなくティナが未来の世界で更に地球に渡った事で出来ている技術だ。この世界の豪族達ができるわけがなかった。

 というわけで二人は通信機に備わっていた地質調査の機能を利用して、周囲の探索を行っていく。そうしておよそ一時間ほど。幾つかの亀裂を見つけてはいたが、一向にあたりは見つからなかった。


『……ソラ。あれを見てくれ』

『へ? あ……』


 瞬からやり方を教わって自身の通信機で確認していたソラであるが、そんな彼も瞬の言う方向に通信機をかざしてみて目を見開く。


『亀裂……だと思うが』

『これは……こいつ無いとわからないっすね。上からは岩が蓋になっちまってる』

『ああ……まぁ、これがあたりであってくれというばかりなんだが』

『あはは……とりあえず行ってみますか』


 ここまでに何度かハズレの亀裂を引いていた二人だ。それ故にか若干諦めも入っていた。というわけで岩が蓋をするような形で隠していた亀裂へと二人は入っていく。


『……これは……思った以上に深いな』

『ええ……しかも暗い。気を付けないとマズいっすね』

『ああ……む? 底か』

『あちゃ……』


 ここもハズレか。そう二人は残念そうにしながらも、一応は底まで進んで見る事にする。そしてそれが功を奏したようだ。底までたどり着いた所で、瞬が小首を傾げる。


『……ん?』

『どうしました?』

『ここ……まだ行けそうか? 寝そべって、になるが……』

『あ、本当だ……』


 底まで進んで更に奥底をしっかりと確認してようやく分かるぐらいの僅かな亀裂。それがこの亀裂の底には存在していた。というわけで瞬が中を覗き込んでみて、目を見開いた。


『……行けそうだ。が、ソラ。お前は一度こっちで待っていてもらえるか? 進んで戻らないと、となると面倒そうだ』

『了解っす』


 亀裂はかなり細く、人が一人通れるかどうかというレベルだ。その規模になると魔物も存在は出来かねるだろうから、ソラが外で待機して万が一の場合に救援できるようにしておく方が良いと判断したようだ。というわけで瞬は寝そべって底に手を付いて腕の力で奥へと進んでいく。そうして進むこと少し。かなり複雑になっていた地形を抜けると、唐突に空気の層が現れる。


「これは……ソラ。おそらくあたりだ。こんなものを見つけた冒険者は少し興味があるな」

『マジっすか? すぐ行きます』


 おそらくあたりの地下水脈だとは思うのだが、これがあたりかどうかは進んでみないとわからないのだ。となると後は合流して二人で進むだけであった。というわけで二人はかなり入り組んだ所にあった地下水脈をなんとか見つけ出す事に成功し、その探索に臨む事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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