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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3101話 はるかな過去編 ――治療――

 『時空流異門』と呼ばれる時空間の異常現象に巻き込まれ、過去の時代のセレスティア達の世界へと飛ばされてしまったソラや瞬達。そんな彼らであったが、何の因果かそこは後に八英傑と呼ばれる英雄の一人として名を残す過去世のカイトが居る時代であった。

 そんな彼との出会いや彼の配下の騎士達。そして同じく八英傑として後に名を残す若き英雄達との出会いを経ながらも元の時代に戻るまで冒険者としての活動を開始した一同であったが、その最中にもたらされたのはカイトが大怪我を負って行動不能に陥っていたという情報と、その隙を狙って動き出したという貴族達の暗躍の情報であった。

 というわけでそれの阻止に向けて動くおやっさんの要請を受けて協力する事になったソラ達であったが、その手始めにカイトの見舞いの体で王城を訪れていた。


「……」


 東棟上層階に向けて階段を上がるソラであるが、先にメイドから言われていた通り口を閉ざして進んでいた。


(というか足音一つしない、ってこの人……どんな歩き方してるんだよ)


 コツコツコツ。静かな東棟の中に響くのは、ソラの歩く音だけだ。若いメイドの足音は一切鳴っていない。というわけで改めて実力差を知らされたわけであるが、そんな彼の内心はさておき。二人は最上層の一つ下までたどり着く。そこで、メイドが足を止めた。


『この階層がカイト様の部屋がある場所となります』

『一番上じゃないんですか?』

『この上は倉庫などがありますので』


 地下じゃないんだ。ソラは荷物が上に収納されているという話を聞いて少し意外感を感じる。とはいえ、実際には一番上だと天井が破られて侵入されるなどの警備上の問題もあったそうだ。なので倉庫など、のなどの中には色々な意味合いが含まれている様子だった。


『ではこちらへ』

『はい』


 メイドの言葉に続いて廊下に出て、ソラは自身を案内する若いメイド以外の若いメイド達が立っている事に気が付いた。


(あそこが、カイトの部屋ってわけか)


 騎士団の本部が中庭にあるのでなにか妙な感じはするが、本来カイトの役割はヒメア専属の騎士。彼女の直近の護衛を務める事が本来の仕事だ。なのでここに部屋がある事の方が正しいのだろう。ソラはそう思いながら、廊下を歩いていく。そしてどうやら、彼が訪れる事はメイド達も知っていたらしい。特に止められる事もなく、一礼してくれた。


『姫様。天城様が参りました』

『通して頂戴。今動けない』

『かしこまりました』


 知っていたのはヒメアも一緒だったようだ。メイドの念話にヒメアもまた念話で答える。そうして扉が開かれ、ソラは中へと通される。


「……え?」


 思わず声がこぼれたのは、仕方がない事だっただろう。その光景はある意味それほどまでに神秘的な様子だった。


(巨大なクリスタル……?)


 部屋の中央に鎮座していたのは、巨大なクリスタルだ。その中は伺いしれないが、その前でヒメアが跪いてまるで祈りを捧げるかのような姿勢で微動だにしていなかった。言うなれば、絵画の一場面。時さえ止まっているのではないかという印象さえ受ける幻想的できれいな光景だった。そしてヒメアはこちらを見る事さえなく、念話を飛ばした。


『ごめんなさい。今こんな状態で動けなくて……』

『あ、いえ……すんません。こっちこそ邪魔しちゃって……』

『良いの良いの。このバカが怪我したら治すのは私の仕事だから。面倒とかは全部こいつが悪いから』

『は、はぁ……』


 どうやらこのクリスタルの中に、カイトは居るらしい。ソラはヒメアの言葉からそう理解する。というわけで、一応は友人であると思っている事もあり、ソラは心配になり聞いてみる事にした。


『えっと……それでカイトはどんな状況なんですか?』

『このバカ? 酷いわよ。全身の骨は折れてるし、内蔵も一部傷付いてる。こいつが頑丈だから生きて帰れたけど普通の人なら死んでるわね』


 ヒメアの言葉にはかなりの悪態が見て取れたが、彼女こそが一番カイトを心配しているだろうというのは自身のすべてを切り捨て治療に専念する彼女の様子からも見て取れるだろう。

 後に聞けば食事や排泄などの生命活動その他一切――呼吸は魔力の回復の意味もあるのでしているが――を魔術で切り捨て、本当に治療する機械のような状態になっているという事であった。


『足も折れてるのに怪我した子抱えて帰ってくるし……こいつ本当に助かるつもりあるの、って領域。ったく……あんたが無茶すると他の子が真似するからやめろ、って何度言ってもきかないんだから』


 ヒメアの愚痴は留まる事を知らない。が、それでも祈りを捧げる動きは一切微動だにしない所はやはり、彼女の技術の高さを如実に示しているのだろう。


『ああ、そうだ。それでお見舞いの果物ね。有り難う』

『あ、いえ……えっと、これどうすれば?』

『置いておいて。こいつが目覚めたら食べれそうだったら口に突っ込むから』

『あはは』


 優しいのか優しくないんだか。少しだけ冗談めかした様子のヒメアに、ソラがようやく僅かに笑う。ちなみに、カイトがここから出られるのは十分に回復した後なので食べられそうだったら、というが食べられる状態にならないと出られないのであった。というわけで、それから暫くの間。ソラはカイトの状態やいつ頃復活出来そうかなどの必要な情報を聞いていくのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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