表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3111/3948

第3094話 はるかな過去編 ――巨山崩し――

 『時空流異門』と呼ばれる時空間の異常現象に巻き込まれ、過去の時代のセレスティア達の世界へと飛ばされてしまったソラ達。そんな彼らは後のセレスティア達の時代には八英傑と呼ばれる八人の英雄の一人として名を残す過去世のカイトや、その配下の騎士達。そして同じく八英傑の英雄達との会合を果たしていた。

 というわけでそんな彼らの支援を貰いながらも元の時代に戻るまで冒険者としての活動を重ねていた一同であったが、その最中。一同は偉大なる巨岩(グラン・ギガント)と呼ばれる魔物の討伐任務を請け負っていた。


「はぁ……」

『先輩。魔力の残量とか大丈夫っすか?』

「ああ。さっき回復薬をがぶ飲みした……大分と効いてきた」

『了解っす。もし取りに行くとかある場合は言って下さい』

「助かる」


 交戦開始から、足掛け3時間ほど。偉大なる巨岩(グラン・ギガント)との戦いは想定されていた通り、長期戦に及んでいた。とはいえ、これは一撃で仕留めきれないような超巨大な魔物を相手にする場合の鉄則のようなものだ。それを、ソラも瞬も思い出す。


『デカい魔物の対処法?』

『ああ……やはり図鑑とかを見ていると、本当にこんな魔物がいるのかと思うほどの巨大な魔物が時々いてな』

『まー、そうだな。時々嘘だろ、って言いたくなるようなデカさの魔物はいる』


 この時はまだ八岐大蛇(やまたのおろち)暴食の罪(グラトニー)と言った魔物達とは未遭遇だったわけであるが、それ故にこそ瞬は実感は湧かなかったようだ。

 というわけでユニオンが発行している図鑑を見て対処法が考えつかなかったらしい瞬の問いかけに、未来のカイトがその存在を認めながら教えてくれた。


『そうだな。基本的にはオレやティナのように一撃で大規模な破壊を起こせない限りは持久戦になる』

『持久戦? 圧倒的に不利じゃないか? 相手は膨大な魔力を保有してるだろ?』

『そ。人だとそうじゃないが、魔物の魔力の保有量はその身体の大きさに依存する事が多い……まぁ、身体のほぼすべてが魔素で構築されている魔物だからこその話というわけなんだろうな』


 そこらの詳しい話はオレも知らんよ。未来のカイトはそう笑う。とはいえ、自分達の不利を認めながらも持久戦を推奨する以上には理由があった。


『だが、それでも有限だ。だから補給線を整えられれば、こっちは擬似的にはそういった巨大な奴らよりはるかに魔力を保有出来るとも考えられる』

『あ、なるほど……回復薬を飲んで補給し続ける事ができれば、理論的にはほぼ永遠に戦い続けられるのか』

『そういうこと……もちろん、永遠に戦い続けられると言っても結局は精神論が絡んでくるから限界はあるけどな。それでも、しっかり作戦を立てられれば奴らの限界よりその限界が先に来る事はない』


 だから持久戦はかなり有効なんだ。こちらの持久力が個人ではなく人類という種になる点を理解し納得した瞬に、カイトは一つ頷いた。そうして、彼は更に話を進める。


『で、持久戦を推奨する理由……というか、そうしなければならない理由はもうひとつある』

『持久戦をしなければならない理由?』

『そう……回復力だな。デカい魔物はそれに見合った回復力を有している事が多い。だから多少のかすり傷では回復されてしまうんだ。さりとてこちらのデカい一撃でも相手にとってはかすり傷、みたいな事も少なくない。デカいからな』


 全長300メートルの魔物を想像してみろ。オレ達の一太刀なんてやつらにとってみれば猫に引っ掻かれたようなもんだぞ。笑いながら、カイトはそう告げる。

 実際、普通に斬撃を放つ場合の効果範囲は3メートルもないのだ。全体の1%にも満たない程度の切り傷。人間で言えば1センチほどの切り傷で、気にならないほどではないが無視出来る程度でもあった。

 より巨大な魔物であれば、もはや何をか言わんやだろう。それで自己回復までされるのだ。到底通用するとは思えなかった。


『が、その回復力も魔力が続く限りの回復だ。だから徹底的に魔力を削っていき、回復力が落ちてきた所で大火力を連続して叩き込む』

『すると回復が追い付かなくなって、最終的には致命的なダメージを与えられる、というわけか』

『そういうこと……もちろん、それまでに十分なダメージを与えておかないといけない事も事実だから、温存を重視して攻撃をしなければ何の意味もないけどな』


 そういう意味では飛空艇が出動するのは理にかなっているんだ。カイトは魔導炉を兼ね備え、ある程度の火力を発揮出来る飛空艇の有用性を語る。無論だからこそ致命打にはならないわけであったが、その有用性は説かれてみれば瞬にも理解出来たようだ。というわけで、その後は基本戦略としてこの持久戦を考える事になる。


「……随分と回復力が落ちてきたな」

『っすね……後ひと押し、って所かと』


 足掛け3時間も戦い続けたのだ。偉大なる巨岩(グラン・ギガント)の回復力は随分と落ちてきていた。それは最初はすぐに復元した体皮を覆う岩盤がなかなか修復されなくなってきた事からも明らかだった。


「おやっさん。もう少しで行けそうですがどうですか?」

『ああ、そうだな……あともう一歩で、って所か。で、昨日打ち合わせた通り最後の最後はちょっと危険だし、お前さんらにも手を貸してもらう必要がある。そろそろその支度に入ってくれ』

『「了解」』


 おやっさんの言葉に、ソラも瞬も即座に承諾を示す。未来のカイトが語った通り、十分に削った後は大火力を連続して叩き込んで偉大なる巨岩(グラン・ギガント)の回復力を上回る必要がある。というわけで、瞬らはそれに向けての支度に入る事にして順番に一度前線を離れる事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ