表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3108/3942

第3091話 はるかな過去編 ――開戦前――

 『時空流異門』と呼ばれる時空間の異常現象に巻き込まれ、数百年前のセレスティア達の世界へと飛ばされたソラ達。そんな彼らであったが、幸いな事にそこは後の世に八英傑と呼ばれる事になる過去世のカイトが活躍した世界でもあった。というわけで彼やその配下の騎士達、同じく後に八英傑と呼ばれる英雄達の支援を受けながら冒険者としての活動を開始させる事になった一同であったが、その最中。偉大なる巨岩(グラン・ギガント)と呼ばれる超巨大な魔物の討伐に臨む事になってしまっていた。


「ふぅ……」

「気負うな……つっても無理だろうけどよヤツは勢いに乗らない限りは速度は無い。その代わり、一度勢いに乗っちまったら止めるのは並大抵な労力じゃねぇけどな」

「避けるのは容易い、ってことですね」

「まぁ、容易いのは容易いな。一キロぐらいかっ飛ばせる力があれば、十分に攻撃からは逃げられる」

「それぐらいなら自分は余裕です」


 おやっさんの言葉に、瞬はなんとかソラの世話にならないで良さそうだと僅かに胸を撫で下ろす。やはりあれだけの巨体だ。その一撃は察するに余りある。となると、もし万が一攻撃に直撃しそうであればソラになんとかして貰うしか手はなかった。


「だろう……ってなわけで、ソラ。お前さんだけがキツイぞ」

「最悪っすね」

「あっははは。ま、なんか不思議な力を持ってるなら使う事を勧める……踏み潰されたら一巻の終わりだ」

「ですよねー」


 見えている限りでも数百メートル級の山と同等のサイズだ。地脈から魔力を貪っているという事であるなら、正しく氷山の一角である可能性も十分にあり得る。そんな巨大物質に踏み潰されては碌なことにならなかった。というわけで笑うソラであったが、すぐに気を引き締める。


「……どんなもんっすか? 後ろ」

「砲台の準備は完了……地竜共も準備は出来てる。問題は……」

「魔術師達……というわけですね」

「ああ……魔術師達が行動を開始すると間違いなくヤツが起きる。そこからヤツが起き上がって攻撃を放つ前にこっちが初撃を打ち込めるかどうか……それが重要だ」


 今更だが、魔術師達は膨大な魔力を消耗して魔術を展開する事を予定している。魔力をあまり使わない攻撃はこの巨体の前には無意味だからだ。さりとて膨大な魔力を使うとなると、眠りから覚めかけている偉大なる巨岩(グラン・ギガント)を完全に叩き起こす事になるだろう。

 ギリギリまで蓄積し、なるべく奇襲を打てるように繊細な準備が必要だった。というわけで、そこらの繊細な調整を行う魔術師達の統率を取るおやっさんであったが、なにかの連絡に僅かに手を挙げる。


「……ん。わかった。すまん、お前ら。一旦裏の連中と話をする。少し待っておいてくれ」

「うっす……まぁ、勝手にははじめないんで」

「あはは。そりゃそうだ……おう。それで」


 ソラの冗談に笑うおやっさんが離れていく。それを一同で見送った所で、ソラが問いかけた。


「……そう言えばイミナさん。偉大なる巨岩(グラン・ギガント)と交戦した経験は?」

「実を言うとある……もちろん、その時には主軸でもなかったが」

「懐かしいですね……あの時は姉さんが一太刀に斬り伏せたんでしたか」

「そうですね……無数の砲撃を掻い潜り、流星雨を隠れ蓑に……凄まじい一撃でした」


 当時の事を思い出したのか、セレスティアの言葉にイミナが笑う。そんな彼女らに、ソラが問いかける。


「レクトールさんじゃなくて?」

「ええ……まぁ、兄さんでも出来るでしょうけど。あの時は砲撃を掻い潜る必要があったので、姉さんが適任と判断されました」

「レクトール様では敵の攻撃を無視して直進。迎撃する可能性もありましたからね」

「あはは。兄さんなら、絶対にそうするでしょう。そのための大鎧だ、とかなんとか……」


 そうならないで良いように支援を用意しているのにそれでは全く意味がない。二人は楽しげにレクトールについてを笑う。と、そんな二人の会話を聞いていて、ソラがふと思った事を口にする。


「そう言えば……そのお姉さん? って義理のお姉さんなんだよな?」

「ええ。遠縁の親戚……ですね」

「どんぐらい強いんだ? というか、具体的にはどんな人なんだ?」


 時折、未来のカイトとセレスティアの会話で姉という人物が出てきているのをソラは耳にしている。なので今回も出てきたので少し気になったらしかった。


「どんな人……まぁ、かなり武張った人ではありますね。血筋を辿るとシンフォニア家とレジディア王家、マクダウェル家とスカーレット家まで混ざっている正真正銘英雄の血筋です」

「うわぁ……」


 凄いサラブレッド。ソラはセレスティアから語られる彼女の義理の姉の血統に思わず頬を引き攣らせる。と、そんな彼女にイミナがそう言えばと口にした。


「そう言えば……今思えばグレイス様にどこか似ていたのは、やはり遠い未来とはいえ先祖だからなのでしょうか」

「どうでしょう……スカーレット家はそもそもグレイス様が継がれたわけではありませんし……」

「あ、そう言えばそうでしたね」

「え? グレイスさん、結局継がないのか?」


 てっきり四騎士達は未来でそれぞれが自分の家を継ぐのだと思っていた。そんな様子でソラが目を丸くする。


「ええ……ライム様も含め……いえ、それこそ言ってしまえばカイト様もマクダウェル家を継いでいません。その理由はそれぞれですが……とりあえず継がなかった事は事実ですよ」

「へー……」


 意外だ。ソラはセレスティアの言葉にそう思いつつ、なんだか納得出来るような気もしていた。と、そんな彼にセレスティアは続けた。


「それはそれとして。風貌や人格などはグレイス様に似ています。容姿も……そうですね。グレイス様に似ている。ただ、有する覇気などに関してはレックス様に似ていらっしゃいます」

「そう言えば初めてレックスさんに会った時に姉さん、って叫んでたもんな」

「あ、あははは……」


 できれば忘れていてほしいなぁ。セレスティアは悪気が無いソラの言葉に半笑いでそう思う。それが回り回って当人に聞かれれば、どう拗ねられるかわかったものではなかった。というわけで、彼女はすぐに話題を転換する。


「えーっと……それは兎も角。姉さんはカイト様の武器を継承され、使われています。そして我々の時代柄、ああいう強い魔物とも戦う事はありました。訓練の側面も兼ねて、ですね」

「訓練……」


 その当時のセレスティア達がどれだけの強さだったかはわからないが、大幅に弱いというわけではないだろう。それを理解するソラであるが、同時にだからこそなんとかなるかもという希望も若干あったようだ。


「その訓練だと、俺らなんとかなりそう?」

「十分、なんとかなります。お二人共あの当時の私達よりは強いでしょうから。もちろん、それで油断出来る相手で無い事も事実ですが……あの当時の私達より強くても、あの当時の姉さんや兄さんより強いとは思えませんから」

「そっか……でもまぁ、なんとかなりそうかな」


 少なくとも当時自分達より弱かったセレスティア達が前線に立たされて、そして生還しているのだ。もちろんそこには数々の支援があった事も事実だろうが、それは今の彼らも変わらない。

 ならば油断しなければ良いだけだった。というわけで気を引き締めつつも過度に緊張しないように心掛ける事にしたソラであったが、そんな話を繰り広げていると時間が流れていたらしい。おやっさんが戻ってきた。


「おう、悪い。待たせたな」

「おやっさん……どうでした?」

「おう……後五分って所だ。魔導砲の初撃で使う砲弾は全弾装填済み。同じ原理で魔術師共の初撃で使う魔術のための魔力の蓄積も後少し……後は全員のタイミングをあわせるために、ってわけだな」


 この世界の魔導砲にはどうやら、エネフィアのグレネード型の魔銃同様に魔石を砲弾として使用する事の出来る機能が備わっていたらしい。なので今回は不意打ち出来るようにそれを初撃として装填。第二射からは普通の魔弾を放っていく事にしたとの事であった。と、そんな事を教えてくれたおやっさんに瞬が問いかける。


「魔術師の魔力の蓄積? バレないんですか?」

「魔石に蓄積するんだよ……知らねぇか? 魔石に魔力を装填して、一度限りの外部電池みたいにするって方法」

「あー……いや、あんまり聞かなかったものですから」

「そうか……まぁ、それを持ってきて魔術を使う、ってやるもんだから結構面倒なんだと。ま、そこらは奴らが考えることだ。俺らはあっち」


 瞬の返答に納得したおやっさんであったが、開戦が近付いてきた事から一同に偉大なる巨岩(グラン・ギガント)に集中するように促す。そうして、数分後。荷車に据え付けられた魔導砲と魔術師の一団からの砲撃が開始され、それを合図に戦いが始まるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ