第3087話 はるかな過去編 ――改修――
『時空流異門』と呼ばれる時間と空間の異常現象に巻き込まれ、過去の時代のセレスティア達の世界へと飛ばされてしまったソラ達。そんな彼らは後の時代に八英傑と呼ばれる八人の英雄の一角として名を残す事になる過去世のカイトや、その配下の騎士達。そして同じく後の八英傑の英雄達と会合を果たしていた。
そうして彼らの支援を受けたり、彼らからの要請を受けてその活動に協力したりしつつ元の時代へ戻るべく冒険者としての活動を重ねていたソラ達であったが、ひとまずは今後の活動に備え拠点の改修に臨んでいた。
というわけで、カイト達がレジディア王国と足並みを揃え古代の飛空艇の発掘作業と復元に向けた研究に勤しんでいた一方。ソラ達はというとおやっさんの要請を受けていたドワーフの職人達との顔合わせになっていた。
「お前さんがアルダートの小僧が言っていた小僧だな! 思ったより若いじゃねぇか!」
「え? アルダート?」
「ああ、お前さんも知らねぇのか! あははは! 多分お前さんがおやっさん、って言ってる小僧の事だ!」
「あぁ、おやっさんの」
カイトを含めた全員、それこそソラ達がこちらに来て知り合った冒険者達さえ全員揃っておやっさんと呼ぶものだから名前をソラは把握していなかったのだが、どうやらおやっさんの名前はアルダートというらしい。というわけで、ソラの様子を見ておおよそを察したドワーフの棟梁はドワーフらしい豪快な様子で笑う。
「おうよ。あの小僧、慕われてるからかおやっさんって言われるもんだから知らねぇガキが多いみてぇだな」
「あはは……あ、すんません。ソラ・天城です。今回の依頼人……って所っす」
「おうおう。俺ぁ銀の山のオリクト。お前さんらの拠点とシンフォニア王都の冒険者ギルドの改修を請け負った。よろしくたのまぁ」
「ありがとうございます」
やはりエルフとドワーフであればドワーフはかなり人懐っこさが見受けられるのが特徴と言えるだろう。これに関してはエネフィアもこの世界も変わらないらしく、ソラの差し出した手をオリクトは全く躊躇せず握る。その手は職人だからか非常にゴツゴツとしており、巌のような印象が強かった。が、そんなオリクトが少しだけ顔を顰める。
「まー、森のエルフの野郎が参加するってのは若干気に食わねぇが……しゃーねぇ。面白い発想がいくらかあったし、あれになると流石に俺らじゃ手に負えん。奴ら、細かいからよ。それは俺らも認めてやる」
「あははは……ありがとうございます」
どうやらグイオンが参加する事については一家言あるらしいが、それでも同じ職人だからこそ認める所は認めているようだ。グイオンも合作に参加する事からもわかるようにドワーフ達の腕は認めているあたり、彼らはお互いに根っこは似ているのかもしれなかった。
「おう……で、早速だが仕事の話に入ろうじゃねぇか。まずわかってると思うが、俺らの仕事の間は家には立ち入らねぇでくれ。仕事の邪魔になっちまうし、居住区も改修してぇ、って依頼って聞いてるからよ」
「それは大丈夫です。こっちでもう仮住まいも決めて、手続きも全部終わってます」
「おう……その代わりと言っちゃなんだが、ウチの若い衆が近くで寝泊まりして絶対に馬鹿野郎が入ったりはしないように注意する。もちろん、俺達が作ってるもんだ。何か仕掛けようもんなら俺達が分からねぇはずもねぇがな」
オリクトはソラに対してはっきりと、自分達がなにか貴族の手勢が悪い事をしようとしても対処するとはっきり口にする。これにソラは頭を下げた。
「よろしくお願いします……それで見込みどれぐらいの工事になりそうです?」
「そうだなぁ……見積書は見てくれてるか?」
「ええ、二ヶ月と」
「おう。おおよそそれと見て貰いたいが、実際の作業をやってみねぇと分からねぇ所もある。若干の前後は見ておいてくれ」
「わかりました」
元々提示された見積書にも前後する可能性はある、とはっきり書かれていた。如何せんこの世界は地球より若干文明の水準が低い。保管されているべき見取り図などの一部に紛失が見受けられ、ドワーフ達も実際に作業をしてみなければわからない、と言っていたのであった。
「ま、それでも俺達だ。なぁに、この程度の仕事なら資料が無くても実物がありゃ問題にゃならねぇさ。この仕事は多分人間の職人がやったヤツだろうしな。腕は悪かぁねぇが……ま、まだまだだ」
「あはは」
がはははは、と呵々大笑に笑うオリクトに、ソラが豪快なのか頼もしいのかと笑う。そうして顔合わせが終わった後。ソラは暫くはオリクトに拠点の各所を案内していくのだった。
さてソラがオリクトとの顔合わせを終えてから数日後。この日からついに実際の改修工事が開始となっていた。
「おう、おめぇら! 仕事に取り掛かるぞ!」
「「「おう!」」」
オリクトの号令に合わせて、若いドワーフ達が声を上げる。そうして荒々しく豪快ながらも見事な手さばきで、拠点の周辺に一気に防音効果のある布を張り巡らせ足場を組立てていく。
「おい、そこ! しっかり貼れ! 周囲の皆さんを音で驚かせるんじゃねぇぞ!」
「すんません! 貼り直します!」
「おう!」
それ以前に貴方の声で周囲が驚きませんかね。大声で叱責なのか注意なのか、それとも単なる指導なのかわからない様子のオリクトに、ソラは苦笑混じりに笑う。というわけでオリクト陣頭指揮の下ドワーフの職人達により工事の前段階が進められていくのであるが、そんな様子を見るソラに声が掛けられた。
「ソラ・天城」
「あ、グイオンさん」
「久しぶりだ……相変わらず……いや、よそう」
一応、グイオンも空気は読んだらしい。相変わらず五月蝿い奴らだ、と言おうとしたらしい彼であるが、同時に聞いている可能性も鑑みて言わない事にしたのであった。
実際、彼がなにかを言おうとした瞬間に一瞬だけオリクトの手が止まったのをソラも目撃していたので、おそらくオリクトは工事の僅かな違和感を聞き分けるために聴覚を引き上げている事が察せられた。
「前に言ったと思うが、先にアルダートの所でそちらの改修の準備を執り行う事にしている」
「はい……大体聞いてるので大丈夫です」
冒険者ギルドはやはり何か攻め込まれる事も多く、更に言うとやはり施設の特性上基盤はかなり強固なものだ。先に魔道具の設置や調整などを行う事にしていた。それに対してソラ達は基盤の改修を先にしてもらう事になっていたのである。
「そうか……では今回は挨拶だけだが、なにかがあったら冒険者ギルドへ来てくれ」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「ああ……ではな」
頭を下げるソラに、グイオンが足早にその場を後にする。そうして、ソラは工事の開始を見届けて今度の仮住まいへと帰る事にするのだった。
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