第3081話 はるかな過去編 ――招聘――
『時空流異門』と呼ばれる時空間の異常現象に巻き込まれ、過去の時代のセレスティア達の世界へと飛ばされてしまったソラ達。そこで彼らが出会ったのは、後の時代に八英傑と呼ばれる事になるこの時代のカイトやその配下の騎士達。そして同じく後に八英傑と呼ばれる事になる超級の戦士達であった。
というわけで、そんな彼らの支援を貰いながら元の時代へ戻るべく冒険者としての活動を開始させるソラ達であったが、そんな彼らが再び王都に戻って活動を開始させた一方。王城地下に安置された古代の魔道具の前でノワールが調査を進めていた。
「……うん。やっぱりこの部分……前に見せてもらった部分の刻印に酷似しています」
「となると、やはり?」
「はい。これはおそらく古い寝物語に語られる空飛ぶ船の推進装置と考えて間違いないですね」
カイトの問いかけに対して、ノワールは技術者として最終的なジャッジを下す。敢えて言うのであれば、現代の地球に言い表すのならジェット機の推進装置。ジェットエンジンにも似た形状。それが、『復元の光』により復元された古代の魔道具の見た目だった。というわけで、そんな結論を下した彼女にカイトが嘆息する。
「なるほど。未来というのだから技術的にはオレ達の数段上を行くとは思っていたが……この推進装置? とやらを小型化し、鎧に取り付けられる事に成功していたのか」
「それに関しては正直今の私では手が出せません。まだ技術的な見込みが甘いですし、おそらく空気抵抗やらの改善など色々な制約が存在すると思われます。正直、これで物語の空飛ぶ船……飛空艇を作るのはまだ不可能と言って良いです」
「……なりふり、構ってる場合じゃない?」
「構ってる場合じゃないですねー。ぶっちゃけ、追々こっち追い込まれて全滅します。後何年保つかどうか、って所でしょう」
「ですよねー」
どこか困った様子で問いかける自身に対して、同じ様に困った様子ながらもノワールが現実を叩きつける。これに、カイトが盛大にため息を吐いた。
「情勢は年々悪化していく一方。まだ同盟は良いが……」
「他はだめですね」
「我々同盟の国々以外、主力の戦力が君以下の時点でお察しだろう」
「サルファか……とりあえず結論は出たらしい」
「視ていました……まさかあの時図書室で持ってきた絵本が正解だなんて」
カイトの言葉に対して、サルファは少しだけ恥ずかしげながらも苦笑を浮かべる。そんな彼の視線の先にはこの大陸ではよく知られた寝物語が置かれていて、その表紙には空飛ぶ船――ただし魔道具のような金属ではなく帆船のような木造の船だが――の甲板に一人の青年が立って舵を取っていた。
実はこれなのだが、ソラがサルファと図書館で出会った時にサルファが探していた本だった。馬鹿げた話だと思いつつもしかすると、と思った彼がなにかの参考になればと藁にもすがる思いで持ってきたのであった。
「はぁ……とりあえず結論は出た。で、問題は次をどうするか、だが」
「どうするか、について結論は出ているのでは? 流石になりふり構っては居られません。何より、修繕は我々がする事になっていますし」
「そうだな……しゃーない。ちょっと連れてきて意見聞いてみるか」
そうと決まれば。カイトは座っていた椅子から立ち上がる。どうするかこれからの方針が定まったのなら、それに動くのであった。というわけで彼は後の事――そもそも彼に技術者のような事は出来ないが――をノワール達に任せ、自身は行くべき所に向かうのだった。
さて王城の地下を後にしたカイトであったが、そんな彼が向かったのは何を隠す事もなくソラ達の所であった。というわけで、そんな彼は偶然揃っていた全員を集めると事情を説明。協力を仰いでいた。
「というわけなんだ。おそらく、発見された古代の魔道具はそちらの持っている鎧に取り付けられる物の大型版……もしくは技術的にまだ未熟な物という所だと思う」
「飛翔機……ですか」
「ひしょうき?」
「あ、えっと……この鎧に取り付ける飛行専用のユニットです」
「ゆにっと」
「……」
だめだ。リィルは彼女の認識でもカイトがカイトであるがゆえに説明に困る。なにせ彼女らの常識では飛翔機も飛空艇もカイトが音頭を取って作り上げたものだ。その彼から飛翔機やユニットなどの単語に対して疑問が呈される事が違和感でしかなかったのだ。というわけで、どうしようと困った様子の彼女に視線を投げかけられ、瞬が取って代わる。
「あー……えっと。飛翔機はその発見された魔道具の事で、おそらくこんな形状をしているんじゃないか?」
「おー……そう。もっと複雑だったが……」
不要な紙の裏側にサラサラサラとエネフィアで一般的な飛翔機の形状を描いた瞬に、カイトが思わず驚きに目を見開く。
「おそらくこのどちらかから魔力が噴出。それの反動で推進する、というのが一般的な飛翔機らしい。まぁ、高性能なものになると重力を制御したり色々とするらしいんだが……そこは俺も詳しくない。ただ最初期のモデルはこれだった、と聞いているだけだ」
「そうか……まぁ、技術者じゃないお前らに聞いても、って所だな。それに言っている事は多分正しいんだろう。同盟の技術者からの推論もおそらくこれは魔力を放出する事で推進力を得ているのでは、という報告が上がっている」
これは確定で彼らは知っているという事で良いだろう。カイトは瞬の返答に、一同に助力を求める事が正解と判断する。
「……まぁ、それは良い。というわけで、協力を頼みたい」
「いや、流石にこんなものを作れと言われたって出来ないぞ?」
「それはわかっている……でも使ってるのならある程度はわかるだろ?」
「……」
カイトの問いかけに、視線を投げかけられたリィルが僅かに考える。当たり前の話であるが、彼女は軍学部を、それも飛空艇に掛けては最先端のマクダウェル家が運営する学校の軍学部を卒業している。万が一の場合には応急修理が出来る程度には基礎知識は学ばされていた。
「……どこまでわかっているかもわかりませんし、こちらの世界の古代の魔道具なので私の知識が通用するとも思えませんが」
「残念ながら、オレ達に至ったちゃまるっきりゼロだ。君の方がまだマシだ」
「出来るのに限りがありますよ」
「それでも良い……どういう発想で生み出されたか、どういう形状が主流なのか、とか聞ければそれで」
「くっ……」
どういう発想で飛空艇がエネフィアで生み出されたか。それを未来とはいえ当の本人に聞かれているのだ。リィルはそんな事態に思わず笑いが吹き出した。とはいえ、そこに至っては自分がさほど役に立たない事は彼女は理解していた。
「形状についてはお話は出来るかと。これでも軍に所属していますので……ただどういう発想で生み出されたか、については逆に私がお聞きしたい」
「オレにか?」
「未来の……来世とはいえ未来の貴方が音頭を取られたものですので。当時は馬鹿げた話としか受け入れられなかったものを実現しているのですから……とはいえ、そこらの話は私よりこちらの二人の方が聞いているかもしれません」
「俺達か?」
水を向けられ、瞬が驚いたような顔をする。これにリィルは頷いた。
「ええ……我々は騎士ですから、戦士の側面では教えは頂いています。ですがそれ以外になると、聞いていない事も少なくない。貴方達なら雑談半分でも聞いている事はあるかと」
「まぁ……いや、どうだろう……」
リィルの指摘に、瞬もソラもどうなのだろうかと少し悩む。確かに普通なら立場なども相まって聞きにくい色々と素朴な疑問を聞いているのは二人だとは言えるだろう。というわけで、そんな様子を見たカイトが二人にも告げた。
「それなら二人にも頼む。何、難しい事はしなくて良い。これからの修繕に際し、少し情報がほしいだけだからな」
「……まぁ、それなら」
カイトの要請に対して、瞬はその程度で良いのならと応諾する事にしたようだ。そうして、一同は古代の魔道具こと飛翔機の修繕に関する助力を請け負う事になるのだった。




